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1章女神の願い
1章3話異世界の晩餐会1
しおりを挟むとある異世界。
小さな山の頂上にとある銀の城がある。
その銀城から漏れ出る賑やかな光は妖しげな山々の中に、存在し、一際異彩を放つ。
今日のこの城では世界を恐怖で震撼させたあの魔王が逝去したということで、祝杯が上げられていた。
ここには世界中の国王や大富豪、貴族、そして女神が集まり、世界一の豪華な料理を食べ、希少価値のある年代物のワインを飲み、世界的な歌手を招き歌わせ、世界一有名な道化師に踊らせ、欲望の限りに楽しむ。
それにしても、どの人間達もどこか他人を見下し、醜悪な欲望に満ちた目だ。汚い大人の世界。
男達がふしだらな目つきで、女を品定める。
ある爬虫類顔の男がウェイターの黒髪の女神に近づき、賤しげな目つきで、誘う。
この男は職業【神勇者】。
なお、今回、女神達は王神の命令で、大物達にもてなしを図っていた。
「やぁ? 踊らないか?」
「……いえ、私は」
「少しぐらいいいだろ? なぁ何か欲しい物はあるか?」
「……何も」
すると、男は表情を怒りと変え、口から唾を女神の美しい顔に掛ける。
「女神風情が……神勇者の誘いを断る気か?」
「すいません」
「この王神の娼婦がァ」
「申し訳ありません」
「謝るなら、裸になり、地べたに這いつくばって詫びろ」
黒髪の女神は涙を流し、不本意ではないと云った表情で、白い天衣の胸元を開ける。
男は賤しげに笑う。
その時、
「やめなさい」
男が振り向いた瞬間、そこにクリーム色の長い髪をし、白い翼を背負った女神がいた。
先日、異世界転移し、女神に転生した、名はアカリ。
透明な白布、天衣を纏い、清楚な、柔らかな胸が布にぴっしりと張り付き、神秘さと同時に、挑戦的な紫眼は騎士の眼を宿す。
その瞬間、女神が右手で思いっ切り、男の頬をビンタする。
「!!!!」
その衝撃が物語るように、城内は騒然となる。
男は頬に赤い手の痕を付け、顔を歪め、呆然とする。
「貴様ぁぁぁぁぁ……何をやってるか分かってるのか!」
「弱い者を痛めつける最低な者には当然の報いだと思いますが」
「言いたいことはそれだけか……騎士よ!!!!こいつを捕らえよ」
そして、アカリは危険を察知し、走り出し、二階への階段を登って、二階の貴族達の宴の中を通り過ぎる。
アカリは外のデッキに行き、柵を乗り越え、翼を使い、暗闇の森へと、逃げ込んだ。
それにしても、こんな場所にいたら、本当に息が詰まってしまう。
異世界へ来て数日だが、この世界には嫌気がする。
欲望にまみれた大人達。
本当に吐き気がする。
救われない者や貧困に喘ぐ者は切り捨て、自らの至福を肥やすために、金や権力を使う。
そんな不平等が許せない。
でも、いつか、正義、平等ある世界を私が実現させて見せる。
それは、職業女神を授かった私の生涯の責務。
女神は人々に幸福と平等という平和を与えること。
その時、誰かが何かを叫んでいる声がする。
目を凝らして見ると、黒影の男の後ろ姿が見えた。
「誰?」
こんな夜中に、この峠に人なんているはずがないのに。
興味半分で、その方角を行ってみる。
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