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3話 月神の魔眼、そして【鑑定】

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3話   月神の魔眼、そして【鑑定】

   3人が王都を発ってから4日目の夜、ユフィーナとゼクトは馬車の中で身を寄せ合い、お互いを見つめあっていた。


「ユフィ、緊張してるか? 」

「んっ、いいえ。大丈夫です…… ゼクトさんなら。」

   彼女の声は少し震えており右目は少しだけ潤み、しかし不安半分、期待半分といった目でゼクトを見つめている。

「そうか。じゃあ、入れるぞ。」

「はい。…………………………いっ、痛いです。もうちょっとゆっくりお願いします。」

   ユフィーナの熱い吐息が首筋にかかり、自然にゼクトの顔は紅潮する。

「お、おぉ、ごめんな。こっちも初めてでさ、緊張しちゃって。もう一回いくぞ。」

「いっ、んん………はぁっ、んっ……はぁ、ふぅ、んんっ‼︎ 」

「はぁ、はぁ。入ったぞ、ちゃんとしっかり奥まで。」

「はい。じゃあ、よろしくお願いします……  」

「わかった。いくぞ……… 」







「 【治癒】 」
そう呟くとゼクトの手が光り出し、ユフィーナの左目を覆っていく。
光が収まった時、彼女の左目には今までなかった水晶玉が埋め込まれていた。
王に褒美としてもらった月神の魔眼である。

   「どうだ?しっかり奥まで入ったか?もう痛くはないか? 」

   ユフィーナは少しキョロキョロと辺りを見回したり、左目を開けたり閉じたりして感触を確かめる。
「えぇ。ちゃんと生体適合してるみたいです。ありがとうございます、治癒魔法の使えるゼクトさんが居て良かったです。」


   ユフィーナは生まれつき左の眼球がない。だからその部分に少し傷をつけて月神の魔眼をはめ込む、そしてそのまま治癒魔法で傷を治してしまう。そうすることで魔眼ごと傷口が塞がって、魔眼はユフィの身体に適合して一部になる。

   今までは閉じっぱなしだった彼女の左目には、今や美しい水晶玉がランプの灯りを映して綺麗だ。そして何よりも、その喜びを噛み締めて鏡を見ながら微笑んでいるユフィが本当に美しくて目を奪われてしまう。





   「 ………まったく。なんて声出してるのよ2人とも…………もう。」
声が小さくてよく聞こえないが、カレアがぶつくさ言いながら馬車に入ってくる。彼女にはさっきまで目の前の森の索敵を行ってもらっていた。

   「おお、カレアお疲れ様。見て見て、ほらユフィの左目にに月神の魔眼が上手くはまったぞ‼︎ 」

「ええ、そうみたいね。成功してよかった~ ユフィ凄い綺麗だよほんと。」

「本当にありがとうございます‼︎ インさんとジキルさんはここには居ないですけど、皆さんのおかげです‼︎ 」
そう言って勢いよく頭を下げる。目には嬉し涙が浮かんでいて、口には幸せそうな微笑を浮かべている。


   「良かったな、義眼としてはちゃんと機能してるようだし。魔眼としてはどうだ? 」
「ちょっと待ってくださいね~ 魔力を流せばいいんですよね。」

   そう言って彼女が左目に魔力を流す。すると水晶玉が透明から緑色、というかエメラルドグリーンに光輝き始める。
緑色、つまり【鑑定】の魔眼だ。


   「おおっ‼︎ スゴいですこれ‼︎ 2人の身体的特徴から身につけてる物の材質まで判りますよこれ‼︎ 」
ユフィがこっちをジロジロ見ながら興奮してまくし立てる。いやん、視姦されてるわ俺。

【鑑定】の魔眼とはその名の通り、見たものを鑑定する力だ。目にした物の情報が可視化されるらしい。その対象は生物だろうと無機物だろうと関係なく、材質やサイズ、それに年季まで分かるらしい。
元所有者の王様達はこれを国宝の鑑定に使っていたらしい。


   「ほんとにコレ凄いですよ‼︎ カレアちゃん身長166cmもあるんですか~ それに対して私は147……… 」
なんだかショックを受けてる。ロリっ子はそれはそれでいいと思うぞ。

「ゼクトさんのコートも凄いですね~ 魔法付与何個ついてるんですかこれ⁉︎ しかも作られたのは2391年前⁉︎ 」
どうやら本人が隠したい情報も丸裸になっちゃうらしい。それはそれで厄介だな。魔眼のもう1つの能力を使って仕舞えばもうユフィに隠し事はできないな。


   「お~  へぇ~…………あれ?ゼクトさんゼクトさん?」
「なんだいユフィちゃん? 」
「ゼクトさんの下腹部あたりに、最大◯◯cm、通常時約◯◯cmって書いてあるんですけどこれなんなんですか? 」


   どうやらマジで全ての情報が見えてしまうらしい。どうしよう?そこそこ恥ずかしいんですけど。


なにやらカレアが慌てて
「ちょっと⁉︎ ユフィ、それは聞いちゃダメだから⁉︎ 」とか言っている。
しかし俺はユフィちゃんのためにも答えてあげようと思う。



   「コレは魔剣だ。」
「はあ⁉︎ ちょっとゼクト、やめなさいよ 」カレアが喚いているけどとりあえず無視。まぁちょっと待ってろ。

「魔剣、ですか?」
「あぁ、魔剣性剣だ。生物の約半数しか持っていないという、伸び縮みする魔剣だ。今まで隠してきたんだけどな。」
「へぇ~ そんなの持ってたんですか。」
どうやらユフィは信じたらしい。さすが穢れを知らない元シスターだ。

   「あぁ、今はまだダメだけどいつかユフィにも握らせてやるよ。」
「はい‼︎ 楽しみにしてますね。」
ユフィはそう言って微笑む。純真無垢な娘って本当に面白い。

「あんたって本気で最低ね……… 」
どっかの姫騎士が背中をつねってくるけど、上手く誤魔化した俺を褒めてくれてもいいのに。
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