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第二部 魔法少女は、ふたつの世界を天秤にかける
第4話 この素晴らしき異世界に女子会を その三
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白音とリプリンは、自分たちを襲ったリックたちを馬車の中に捕縛している。
その事を伝えると、奴隷も扱う雑貨店の店主は興味を持ったようだった。
「なんだ、そうか…………。じゃあ買ってやろうか?」
白音は店主のその言葉に少し戸惑ったが、確かにこの世界では重犯罪者を捕まえたのなら、それは犯罪奴隷ということになる。
そしてこの町では、真っ当な裁判などというものも存在しないのだろう。
だから彼は、『リックたち』を『買う』と言っているのだ。
「そのためにわざわざ殺さずに連れてきたんじゃないのか? それにいくら強くても召喚されたてじゃあ先立つ金がないだろ? 引き渡してくれれば俺が買うぜ?」
しかし白音は、そんなことのためにここへ来たのではない。
「そうじゃないの。探してる人たちがいるのよ。奴隷にされてるかもしれない」
「……ああ、なるほどね。今日はひとりしか入荷してないんだけど見るかい?」
今日入荷したと聞いて、白音は思わず立ち上がった。
リプリンも急いで立ち上がる。
「ああ……、案内するよ。あまり焦らないでくれ。心臓に悪い」
店主はずっと堂に入った態度を取っていたが、内心はかなり緊張していた。
店主自身は魔力を感じ取ることはできないが、二日前の日本人たちの動揺を見ていれば分かる。
この少女たちはただ者ではない。
白音が何かするたびに鼓動が跳ね上がる。
店主によれば、ここでは奴隷は買い取りのみ行っているということだった。
買い取った後はすぐに奴隷市場へと送るのだそうだ。
もし売るとなるとここで奴隷を管理しなければならないので、とてもそんなリスクは負えないらしい。
無法の町で襲撃者や奴隷の反乱への対策をするとなると、確かに大規模な奴隷商でないと厳しいだろう。
「おーい! お客さんが奴隷をご覧になる。鍵を持ってこい!!」
部屋を出て店主が大声で呼ばわると、店先の方から
「ひっ」
という小さな返事が聞こえてきた。
「あんたらみたいなのと事を構える気はないし、言われれば引き渡すしかないが、できたら買い取ってくれないか? ぼろぼろだから安くしとくよ」
ぼろぼろ、と言われて白音が鋭く反応した。
「ぼろぼろ? 怪我でもしてるの? 何かしたの? 治療はしたんでしょうねっ?!」
「いやいや、待ってくれ。ホントに待ってくれ……。ここへ来た時には自分で歩いてたのに、見る間に弱っていったんだ。多分何かの病だろう。流行病だとまずいから、手を出してないんだ」
白音の剣幕に、店主が壁際へと追い詰められる。
詰め寄られて彼は、リプリンの方に救いの目を向けた。
しかしリプリンはちょっと小首を傾げて、「ん?」という顔をしただけだった。
「……いや、俺もあんな年寄りの召喚者を見たのは始めてで、どうしていいものやら、困ってるんだよ」
その奴隷には悪いが、『年寄り』と聞いて白音は少しほっとしてしまった。
白音の親友たちではなさそうだ。
しかし老齢の身で異世界に召喚されて、病気持ち、となればその人物にはこの先相当な苦難が待ち構えていることだろう。
「あんたらの方で病を治す魔法とかないのか? 安く買った病気の奴隷を召喚者の魔法で治療して、有能に育て上げて賢く運用する、なんて話も聞いたことあるぜ?」
確かにその身の上には同情を禁じ得ない。
何かできることはないだろうかと白音も思う。
「ともかく会わせていただけますか?」
商談用個室のさらに奥、窓もなく薄暗い場所に座敷牢が設けられていた。
壁は石組みで補強され、金属製の頑丈な格子がはめ込まれている。
その中に、ぼろ布を纏った人物がうつ伏せに倒れていた。
店主が呼びかけても、ピクリとも動かない。
「!?」
慌てて白音が駆け寄ろうとしたが、それを店主が押しとどめた。
「待ってくれ。ありぁもう死んでるに違いない。近づいたらあんたたちまで病にかかっちまうかもしれない」
確かにその人物からは何の魔力も感じない。
はぐれ召喚者なのだとしたらもう生きてはいないだろう。
遅れて鍵を持ってやって来た青年にも、絶対に近づかないようにと店主が言い含めている。
「あんたたちには不愉快な言い方かもしれないが、貧乏くじを引いちまった。後の処理はこちらでするから、あんたたちは近づかない方がいい」
防疫に対する知識も多分日本人が持ち込んだものだろう。
白音たちを守ろうとしてくれている。
「…………顔だけ、確認させてくれる?」
「……ああ、分かった。だがあまり近づくなよ?」
老人は酷い有様だった。
体は痩せ衰え、手足は節くれ立って拘縮し、体中の皮膚に水疱ができてじくじくと体液が漏出している。
性別どころか、枯れ木か人かの区別もままならないほどだった。
落ちくぼんだ目は苦しげに見開かれ、口は声にならない無念の叫びを上げている。
「探してた奴かい?」
店主にそう聞かれて、白音は静かに首を横に振った。
「そうか…………」
白音はせめて手足に付けた枷を外せないものかと思ったのだが、店主がその場から早々に離れるようにと促す。
だが白音たちが立ち去ろうとした時、牢の方から金属質の物を叩きつけたようなガチャンという大きな音が響いた。
その場の全員がハッとして振り向いたのだが、何かが動いたような様子はなかった。
店主が警戒して牢の中を覗き込むが、もちろん老人の遺体が動いたような形跡もない。
結局その音の原因がなんだったのか、何も分からなかった。それ以上考えていても疫病のリスクを高めるだけなので、老人の遺体はひとまずそのままにしてその場を離れた。
「他にも奴隷商があるのは知ってるのか? そっちも当たってみたらどうだ」
商談室に戻ると店主がそう言った。
「あ、ええ。ありがとう。そのつもり」
白音の方はまだ、先程の老人の姿が頭から離れていない。
遠い異境の地であんな死に方、どれほど無念だったろうかと思う。
「それと、リックたちなんだが、ホントに買うよ。そのままだとあんたたちも困るだろう?」
白音はこの町に衛士か憲兵でもいれば処置を任せるつもりでいたのだが、どうやらここはそういう町ではないらしい。
かといって彼らをこのまま自由にするのもよろしくはない。
白音は引き渡しを認めた。
「本当は法の下で裁いて欲しいのだけど」
白音がそう言うと、店主はにやりと笑った。
「善処するよ」
ここでは法に則って生きることよりも、周囲の人間に良く思われているか、ということの方が身を守ってくれるらしい。
「代金はそうだな…………。リック以外は何人捕まえてあるんだ?」
店主が買い取り代金を段取りし始めた。
「いえいえ、それじゃこっちが追いはぎみたいになるから、お金は受け取れないわ」
「まあ受け取っときなって。さっきも言ったけど、文無しだろ? ここじゃカードなんて使えないぜ?」
店主の事情通ぶりには感心するが、今時はもうカードじゃなくてスマホ決済だろうと白音は思う。
「ちなみに、あいつらお尋ね者だから、タイアベル連邦の勢力圏まで連れて行けば賞金が出る。その時はあいつらは奴隷落ち。同じ事だぜ?」
まあ、それはそうか、と白音も納得する。
『タイアベル連邦』というのは聞いたことがないが、人族の国家なのだろう。
「それにしても随分親切にしてくれるのね。さすがに何か魂胆があるんじゃないかと疑いたくなるんだけど?」
白音が半目になってそう言うと、店主が少し気安い笑顔を浮かべた。
「恩を売っておきたいのさ。召喚英雄たちはそもそも特別な存在なんだろうが、あんたみたいな本当に別格のイレギュラーがたまにいるんだ。そういう奴はこの先必ず名を上げる。だから恩を売るだけの価値はあるってもんだろ?」
多分店主は、ずっと白音の行動を観察していたのだろうと思う。
相手が小娘だからといって舐めてはいなかった。
対等の商売相手として白音を認めているようだった。
「何しろそもそも英雄となるべく召喚されてるんだからな。足下を見て酷い目に遭わせて、後で復讐にこられる、なんて話もたまに聞くぜ?」
店主は青年に声をかけて代金を用意するように言った。
呼ばれた青年はびっくりするくらい小さな音でノックをすると、恐る恐る商談室に入ってきた。何故かつま先立ちになっている。
踵を床につけると死ぬと思っているのかもしれない。
青年はずっしりと重量感のある革袋を店主に渡すと、部屋の中を見回した。
そこにいてはならないものがいるのではないかと探している感じだ。
しかし狭い個室内で、店主の他にはフードを脱いだ白音たちがいるだけである。
青年はふたりを見てはっと目を見開いた。
その容貌に目が吸い寄せられて離せなくなってしまったようだった。
多分青年は1+1が2である事を忘れているのだ。
リプリンが青年の方をチラッと見ると、彼の相好がニヘラッと音が聞こえそうなくらいに崩れた。
彼はきっと、トラウマなどとは無縁の人生を送るのだろう。
店主が青年に、店番を続けるように言いつけて早々に追い出す。
「ひとまずは頭数分の代金を払おう」
「この町から少し離れた所に縛ってあるんだけど」
「いいぜ、こっちで引き取りに行かせる。じゃあひとまず前金で一割払おう。後で来てくれればのこりを渡そう」
「いやいや、いくらなんでも信用しすぎじゃない? そもそもリックが捕まってるところすら見てないじゃない」
店主がふっと笑った。
「騙そうとしてる奴がそんな言い方はしないだろうな。……日本人てのは面白い。信用できない奴もいるが、正直な奴はとことん正直だ。特にあんたみたいなのは、相手を騙して儲けるなんてことは絶対しない。そうだろ?」
「いや、まあ、そうだけど…………。そんなんでいいの?」
「いいんだよ。その代わりあんたが英雄王にでもなって世界を支配したら、俺を御用商人にしてくれよ」
支配するならきっと『英雄王』じゃなくて、『女帝』って呼ばれるんだろうなと白音は思った。
その事を伝えると、奴隷も扱う雑貨店の店主は興味を持ったようだった。
「なんだ、そうか…………。じゃあ買ってやろうか?」
白音は店主のその言葉に少し戸惑ったが、確かにこの世界では重犯罪者を捕まえたのなら、それは犯罪奴隷ということになる。
そしてこの町では、真っ当な裁判などというものも存在しないのだろう。
だから彼は、『リックたち』を『買う』と言っているのだ。
「そのためにわざわざ殺さずに連れてきたんじゃないのか? それにいくら強くても召喚されたてじゃあ先立つ金がないだろ? 引き渡してくれれば俺が買うぜ?」
しかし白音は、そんなことのためにここへ来たのではない。
「そうじゃないの。探してる人たちがいるのよ。奴隷にされてるかもしれない」
「……ああ、なるほどね。今日はひとりしか入荷してないんだけど見るかい?」
今日入荷したと聞いて、白音は思わず立ち上がった。
リプリンも急いで立ち上がる。
「ああ……、案内するよ。あまり焦らないでくれ。心臓に悪い」
店主はずっと堂に入った態度を取っていたが、内心はかなり緊張していた。
店主自身は魔力を感じ取ることはできないが、二日前の日本人たちの動揺を見ていれば分かる。
この少女たちはただ者ではない。
白音が何かするたびに鼓動が跳ね上がる。
店主によれば、ここでは奴隷は買い取りのみ行っているということだった。
買い取った後はすぐに奴隷市場へと送るのだそうだ。
もし売るとなるとここで奴隷を管理しなければならないので、とてもそんなリスクは負えないらしい。
無法の町で襲撃者や奴隷の反乱への対策をするとなると、確かに大規模な奴隷商でないと厳しいだろう。
「おーい! お客さんが奴隷をご覧になる。鍵を持ってこい!!」
部屋を出て店主が大声で呼ばわると、店先の方から
「ひっ」
という小さな返事が聞こえてきた。
「あんたらみたいなのと事を構える気はないし、言われれば引き渡すしかないが、できたら買い取ってくれないか? ぼろぼろだから安くしとくよ」
ぼろぼろ、と言われて白音が鋭く反応した。
「ぼろぼろ? 怪我でもしてるの? 何かしたの? 治療はしたんでしょうねっ?!」
「いやいや、待ってくれ。ホントに待ってくれ……。ここへ来た時には自分で歩いてたのに、見る間に弱っていったんだ。多分何かの病だろう。流行病だとまずいから、手を出してないんだ」
白音の剣幕に、店主が壁際へと追い詰められる。
詰め寄られて彼は、リプリンの方に救いの目を向けた。
しかしリプリンはちょっと小首を傾げて、「ん?」という顔をしただけだった。
「……いや、俺もあんな年寄りの召喚者を見たのは始めてで、どうしていいものやら、困ってるんだよ」
その奴隷には悪いが、『年寄り』と聞いて白音は少しほっとしてしまった。
白音の親友たちではなさそうだ。
しかし老齢の身で異世界に召喚されて、病気持ち、となればその人物にはこの先相当な苦難が待ち構えていることだろう。
「あんたらの方で病を治す魔法とかないのか? 安く買った病気の奴隷を召喚者の魔法で治療して、有能に育て上げて賢く運用する、なんて話も聞いたことあるぜ?」
確かにその身の上には同情を禁じ得ない。
何かできることはないだろうかと白音も思う。
「ともかく会わせていただけますか?」
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壁は石組みで補強され、金属製の頑丈な格子がはめ込まれている。
その中に、ぼろ布を纏った人物がうつ伏せに倒れていた。
店主が呼びかけても、ピクリとも動かない。
「!?」
慌てて白音が駆け寄ろうとしたが、それを店主が押しとどめた。
「待ってくれ。ありぁもう死んでるに違いない。近づいたらあんたたちまで病にかかっちまうかもしれない」
確かにその人物からは何の魔力も感じない。
はぐれ召喚者なのだとしたらもう生きてはいないだろう。
遅れて鍵を持ってやって来た青年にも、絶対に近づかないようにと店主が言い含めている。
「あんたたちには不愉快な言い方かもしれないが、貧乏くじを引いちまった。後の処理はこちらでするから、あんたたちは近づかない方がいい」
防疫に対する知識も多分日本人が持ち込んだものだろう。
白音たちを守ろうとしてくれている。
「…………顔だけ、確認させてくれる?」
「……ああ、分かった。だがあまり近づくなよ?」
老人は酷い有様だった。
体は痩せ衰え、手足は節くれ立って拘縮し、体中の皮膚に水疱ができてじくじくと体液が漏出している。
性別どころか、枯れ木か人かの区別もままならないほどだった。
落ちくぼんだ目は苦しげに見開かれ、口は声にならない無念の叫びを上げている。
「探してた奴かい?」
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「そうか…………」
白音はせめて手足に付けた枷を外せないものかと思ったのだが、店主がその場から早々に離れるようにと促す。
だが白音たちが立ち去ろうとした時、牢の方から金属質の物を叩きつけたようなガチャンという大きな音が響いた。
その場の全員がハッとして振り向いたのだが、何かが動いたような様子はなかった。
店主が警戒して牢の中を覗き込むが、もちろん老人の遺体が動いたような形跡もない。
結局その音の原因がなんだったのか、何も分からなかった。それ以上考えていても疫病のリスクを高めるだけなので、老人の遺体はひとまずそのままにしてその場を離れた。
「他にも奴隷商があるのは知ってるのか? そっちも当たってみたらどうだ」
商談室に戻ると店主がそう言った。
「あ、ええ。ありがとう。そのつもり」
白音の方はまだ、先程の老人の姿が頭から離れていない。
遠い異境の地であんな死に方、どれほど無念だったろうかと思う。
「それと、リックたちなんだが、ホントに買うよ。そのままだとあんたたちも困るだろう?」
白音はこの町に衛士か憲兵でもいれば処置を任せるつもりでいたのだが、どうやらここはそういう町ではないらしい。
かといって彼らをこのまま自由にするのもよろしくはない。
白音は引き渡しを認めた。
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白音がそう言うと、店主はにやりと笑った。
「善処するよ」
ここでは法に則って生きることよりも、周囲の人間に良く思われているか、ということの方が身を守ってくれるらしい。
「代金はそうだな…………。リック以外は何人捕まえてあるんだ?」
店主が買い取り代金を段取りし始めた。
「いえいえ、それじゃこっちが追いはぎみたいになるから、お金は受け取れないわ」
「まあ受け取っときなって。さっきも言ったけど、文無しだろ? ここじゃカードなんて使えないぜ?」
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「ちなみに、あいつらお尋ね者だから、タイアベル連邦の勢力圏まで連れて行けば賞金が出る。その時はあいつらは奴隷落ち。同じ事だぜ?」
まあ、それはそうか、と白音も納得する。
『タイアベル連邦』というのは聞いたことがないが、人族の国家なのだろう。
「それにしても随分親切にしてくれるのね。さすがに何か魂胆があるんじゃないかと疑いたくなるんだけど?」
白音が半目になってそう言うと、店主が少し気安い笑顔を浮かべた。
「恩を売っておきたいのさ。召喚英雄たちはそもそも特別な存在なんだろうが、あんたみたいな本当に別格のイレギュラーがたまにいるんだ。そういう奴はこの先必ず名を上げる。だから恩を売るだけの価値はあるってもんだろ?」
多分店主は、ずっと白音の行動を観察していたのだろうと思う。
相手が小娘だからといって舐めてはいなかった。
対等の商売相手として白音を認めているようだった。
「何しろそもそも英雄となるべく召喚されてるんだからな。足下を見て酷い目に遭わせて、後で復讐にこられる、なんて話もたまに聞くぜ?」
店主は青年に声をかけて代金を用意するように言った。
呼ばれた青年はびっくりするくらい小さな音でノックをすると、恐る恐る商談室に入ってきた。何故かつま先立ちになっている。
踵を床につけると死ぬと思っているのかもしれない。
青年はずっしりと重量感のある革袋を店主に渡すと、部屋の中を見回した。
そこにいてはならないものがいるのではないかと探している感じだ。
しかし狭い個室内で、店主の他にはフードを脱いだ白音たちがいるだけである。
青年はふたりを見てはっと目を見開いた。
その容貌に目が吸い寄せられて離せなくなってしまったようだった。
多分青年は1+1が2である事を忘れているのだ。
リプリンが青年の方をチラッと見ると、彼の相好がニヘラッと音が聞こえそうなくらいに崩れた。
彼はきっと、トラウマなどとは無縁の人生を送るのだろう。
店主が青年に、店番を続けるように言いつけて早々に追い出す。
「ひとまずは頭数分の代金を払おう」
「この町から少し離れた所に縛ってあるんだけど」
「いいぜ、こっちで引き取りに行かせる。じゃあひとまず前金で一割払おう。後で来てくれればのこりを渡そう」
「いやいや、いくらなんでも信用しすぎじゃない? そもそもリックが捕まってるところすら見てないじゃない」
店主がふっと笑った。
「騙そうとしてる奴がそんな言い方はしないだろうな。……日本人てのは面白い。信用できない奴もいるが、正直な奴はとことん正直だ。特にあんたみたいなのは、相手を騙して儲けるなんてことは絶対しない。そうだろ?」
「いや、まあ、そうだけど…………。そんなんでいいの?」
「いいんだよ。その代わりあんたが英雄王にでもなって世界を支配したら、俺を御用商人にしてくれよ」
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