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第一部 魔法少女は、ふたつの世界を天翔る
第23話 虎のマスクと豹頭の仮面 その一
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チーム白音は、消息を絶った桃澤千尋の行方を追っていた。
そして千尋のスマホチップが地下50メートルの大深度地下に在ると特定した白音たちは、転移魔法でその地点へと急行する。
しかし転移ゲートを出た途端、彼女たちは狐面を付けた巫女と鉢合わせしてしまった。
その巫女は驚くそぶりもなく即座に戦闘態勢を取り、魔法で金属製の人形を操って白音たちと対峙させる。
巫女が使うその魔法は、白音たちがかつて見たことのあるものだった。
「金髪パーマの魔法?!」
「金髪パーマ…………、じゃなくて山本さんね? 人形遣いの」
「あい……」
思わず叫んだライオンが、トラに少し厳しい口調で訂正される。
佳奈も莉美も、あの人そういう名前だったんだ、と初めて知った。
白音はやはり凶悪犯だったとは言え、救えなかった人間に対して少し思うところがあるようだった。
しかし人形遣いが凍結巫女に殺されるところは確かに見ている。
あれが何かのトリックだったのか、それともどうにかして死者の能力を奪えるのか……。
パペットを操っているのは、後ろに飛び退った巫女に見える。
巫女は複数いると聞いていたから、既に倒した凍結巫女とは別人だろう。
個体識別を困難にして能力を予測させにくくするのが、狐面をかぶる目的なのかもしれない。
地下の空間はノイズがちだったとは言え、おおよそそらにもらった脳内のマップどおりの形をしている。
ドーム状の天井がかなり高く造られており、この深さでその構造は、それなりの資金を投入して建設されたものだろう。
施設自体はコンクリートで造られているものの、あちこちが朽ちかけていてかなり古い印象がある。
おそらくは五十年以上前のものだ。
ただ備えられた設備は新しいものだと思える。
昔からあった何かの施設を流用して研究に使っている、という感じだろうか。
地下50メートルということを考えると驚くほど広いのだが、大小様々な機器が大量に設置されているせいで手狭にすら感じる。
手術台や無影灯、手術具などの医療的な器具や分析機器、実験用具など、ぱっと見たたげでも実に多様なものが取り揃えられている。
しかしそれらは皆、効率よく整然と配置されているようだった。
機能的な研究室ではあるのだろう。
ただ、がっちりとした金属製の拘束具付きベッドがあるため、どうしても医療設備というよりは拷問部屋に見えてしまう。
具体的な方法までは分からないが、これらを使って魔法少女の力を手に入れるつもりなのだろう。
莉美はめざとく、隅の方に鉄格子でできた檻のような物を見つけていた。
中に囚われた少女たちがいるのも見える。
莉美はここに来る前に、他のすべてのことはふたりに任せてとにかく少女たちを探すように言われていた。
そして彼女たちを見つけたら、強力な魔力障壁を張って安全を確保するのが任務だ。
さらった子供たちを魔法少女に仕立てるのが目的であれば、すぐに危害が及んでいる可能性は低いと予測している。
「確保オッケー!! 二十人いる。若葉の子もみんないるよ!」
白音が少しほっとして莉美に感謝する。
正帰還増幅強化で極硬となった魔法障壁で子供たちの周りを囲って保護する。
たとえここが崩落したとしても壊れはしないだろう。
あとは安心して敵を叩きのめすだけだ。
莉美は強力な障壁越しに少女たちに話しかける。
魔法障壁が少し濃い目の色合いに調整されているので、少し離れたものははっきりとは見えない。
すぐ傍に張り付くようにして見守っている莉美以外はあまり判別できていないはずだ。
これも、彼女たちに精神的な負担を掛けないようにと予め決めていたことだ。
「がおー、助けに来たよー。あたし、ならず者だけど悪いライオンじゃないよー」
莉美のその素っ頓狂な言動で、正体がばれなければいいがと白音は思う。
目の前にいる四体の人型兵器は形状こそ以前見た人形遣いのものと似ているが、材質は瓦礫ではなく、金属でできているようだった。
材質を変えることで性能が変わるとするならば、瓦礫のものよりは耐久性があるのだろう。
「でも、テカテカじゃないなら反射できないよね」
莉美はミスリルゴーレムのことを言っているのだろう。
あれをポンポン造られたらたまったものではないが、目の前のパペットは多分そんな高価な材料でできてはいない。
もっと現代的で実用的なもの。
例えば鋼鉄とかでできていそうだった。
莉美が少女たちを背に庇って視界を遮りつつ、魔力のビームを放つ。
自分たちの破壊行為をあまり少女たちに見せたくはない。
「無頼砲っ!!」
莉美は白音から、少女たちを確保したらまず一発ビームで牽制して欲しいと言われていた。
莉美のビームの威力を見たら、そちらへ近づくのを諦めて前衛との乱戦を望むだろうと読んでのことだ。
とうとう命名されたらしいビームだったが、パペット一体の上半身が一瞬でなすすべもなく溶けて消えてしまった。
さらに威力がありすぎて貫通したビームが、そのままドームの壁面に突き刺さって爆音を巻き起こす。
コンクリート製の壁に大穴が開いて地面が揺れた。
天井の一部が崩落を起こして少しひやりとする。
「そこなライオン、ウェイトっ!」
再びライオンがトラに怒られる。
「もう! ちょっとは加減しなさいよ。あの子たち、バリアが壊れなくても生き埋めになっちゃうじゃないのっ!」
「加減したんだよぅ……。撃ったあたしがびっくりだよぅ…………」
(加減してあれか…………)
白音は壁面にできた横穴を見て呆れる。
これは魔法少女が最終回にみんなで力を合わせて最後の敵に向かって撃つような奴だ。
変な名前が付いたようだが。
「あとはわたしたちが穏便に倒すから、莉美はその子たちを守りつつ警戒待機ね」
「あい! …………あっ!? 白音ちゃん」
「ん?」
「後ろの巫女の髪の色!!」
鋼鉄のパペットが一体吹っ飛んだことで、後ろに守られていた巫女の様子が少し覗える。
髪の毛が乱れて狐面からはみ出している。
それは見覚えのある金髪で、ウエーブのかかったロングヘアだった。
「巫女じゃないし! 男だし!!」
莉美の言うとおり、確実ではないが確かにこの状況、あの髪、山本――人形遣い――だと判断してよさそうだった。
だとすれば能力を奪うのではなく生きていたのか、それとも死者を蘇らせでもしたのか……。
いずれにせよ人形遣いが凍結巫女によって回収されたことは白音たちが見ているし、外事特課とやらも把握しているはずだ。
この場所であの人形遣いが誘拐された少女たちと共にいることは、根来衆関与の証拠になるのではないだろうか。
「莉美ちゃん、彼が生きてるのか死んでるのかは分からないけど、絶対あっち向けてビーム撃たないでね」
「オッケー?」
「あんなの直撃したら蒸発しちゃう」
「ハハ、まああんまり傷つけないように確保ってことね」
黒豹が笑っている。
「ちょっとくらい硬くなったからって、あんな人形、今のアタシたちの敵じゃないね」
頷いた白音が先に突っ込む。
ミスリルゴーレムを殴った時、佳奈は手が痛そうだったなと思ったのだ。
魔力の剣ならその心配はない。
パペットは機動力自体は瓦礫製のものと大差はないようで、白音があっという間に距離を詰めると一手二手対処が遅れてしまっている。
「せいやっ!!」
真正面から両断しようと魔力の剣を振り上げたのだが、その瞬間フルメタルパペットの胸が蓋のようにぱかっと両側に開いた。
内部には銃身と思われる黒い筒が大量に並んでいる。
「ちょっ、ちょっと、待っ……」
勢いのついた白音は止まれず、黒い筒からの一斉射撃を浴びる。
「はぐっ!!」
白音が苦悶の呻きを上げて白煙に包まれる。
銃弾を大量に食らってはじき飛ばされた白音はゴロゴロと転がり、やがて動きを止めた。
パペットはとどめとばかりに肘を折り曲げ、そこから顔を覗かせた大口径の発射口を白音に向ける。
「白音っ!!」
ポンっという音と共に擲弾のようなものが発射された。
佳奈はそれが銃弾とは違って爆発すると直感した。
「ちょっ、近っ!! 自爆覚悟かよっ!」
佳奈が白音の前に滑り込んで擲弾を起爆させないように蹴り上げる。
「莉美っ! 頼んだっ!!」
「あいよー」
ふわっと上がった擲弾を、魔力障壁で丸く包んでサッカーボールのようにする。
ボールの中で擲弾が炸裂した。
くぐもった爆音が響いたが障壁はびくともしていない。
内部の爆発で軌道が不規則になって再び佳奈の前に落ちてきたそれを、今度はパペットめがけて思い切り蹴飛ばした。
……少なくとも佳奈はそのつもりだった。
しかしボールは狙いを逸れて背後の巫女|(?)の狐面に直撃した。
その殺人的なシュートで狐面は粉々に砕けてしまったが、おかげで勢いが逸れて中身は無事のようだった。
むき出しにされたその顔には生気がまったく感じられないが、やはりあの時の人形遣いで間違いない。
「や、山本さんだっけ?」
佳奈は咄嗟に白音に怒られる、と思った。
まかり間違って判別できないほど顔にダメージを与えていたら、また根来衆にシラを切られるかもしれない。
だが白音はまだ倒れたまま丸くなっていた。
震えている。
「お、おい泣いてるのか? 大丈夫か?」
パペットからの弾丸の嵐は、すべて莉美が盾状の障壁を作り出して防いでくれている。
しかし白音はそのまま立ち上がるそぶりがない。
あの程度の攻撃なら白音は平気だろうと思っていたのだが…………。
佳奈はさーっと血の気が引くのを感じた。
駆け寄って白音の横に膝をつく。
震えているその体を確かめるが、酷く出血しているようなところはない。
「どこか、痛かったのか?」
「……痛かった。同じ攻撃いっぱい受けたの、痛かったからよく覚えてる」
「ん??」
「それ、橘香さんのと同じ攻撃だよっ!!」
そして千尋のスマホチップが地下50メートルの大深度地下に在ると特定した白音たちは、転移魔法でその地点へと急行する。
しかし転移ゲートを出た途端、彼女たちは狐面を付けた巫女と鉢合わせしてしまった。
その巫女は驚くそぶりもなく即座に戦闘態勢を取り、魔法で金属製の人形を操って白音たちと対峙させる。
巫女が使うその魔法は、白音たちがかつて見たことのあるものだった。
「金髪パーマの魔法?!」
「金髪パーマ…………、じゃなくて山本さんね? 人形遣いの」
「あい……」
思わず叫んだライオンが、トラに少し厳しい口調で訂正される。
佳奈も莉美も、あの人そういう名前だったんだ、と初めて知った。
白音はやはり凶悪犯だったとは言え、救えなかった人間に対して少し思うところがあるようだった。
しかし人形遣いが凍結巫女に殺されるところは確かに見ている。
あれが何かのトリックだったのか、それともどうにかして死者の能力を奪えるのか……。
パペットを操っているのは、後ろに飛び退った巫女に見える。
巫女は複数いると聞いていたから、既に倒した凍結巫女とは別人だろう。
個体識別を困難にして能力を予測させにくくするのが、狐面をかぶる目的なのかもしれない。
地下の空間はノイズがちだったとは言え、おおよそそらにもらった脳内のマップどおりの形をしている。
ドーム状の天井がかなり高く造られており、この深さでその構造は、それなりの資金を投入して建設されたものだろう。
施設自体はコンクリートで造られているものの、あちこちが朽ちかけていてかなり古い印象がある。
おそらくは五十年以上前のものだ。
ただ備えられた設備は新しいものだと思える。
昔からあった何かの施設を流用して研究に使っている、という感じだろうか。
地下50メートルということを考えると驚くほど広いのだが、大小様々な機器が大量に設置されているせいで手狭にすら感じる。
手術台や無影灯、手術具などの医療的な器具や分析機器、実験用具など、ぱっと見たたげでも実に多様なものが取り揃えられている。
しかしそれらは皆、効率よく整然と配置されているようだった。
機能的な研究室ではあるのだろう。
ただ、がっちりとした金属製の拘束具付きベッドがあるため、どうしても医療設備というよりは拷問部屋に見えてしまう。
具体的な方法までは分からないが、これらを使って魔法少女の力を手に入れるつもりなのだろう。
莉美はめざとく、隅の方に鉄格子でできた檻のような物を見つけていた。
中に囚われた少女たちがいるのも見える。
莉美はここに来る前に、他のすべてのことはふたりに任せてとにかく少女たちを探すように言われていた。
そして彼女たちを見つけたら、強力な魔力障壁を張って安全を確保するのが任務だ。
さらった子供たちを魔法少女に仕立てるのが目的であれば、すぐに危害が及んでいる可能性は低いと予測している。
「確保オッケー!! 二十人いる。若葉の子もみんないるよ!」
白音が少しほっとして莉美に感謝する。
正帰還増幅強化で極硬となった魔法障壁で子供たちの周りを囲って保護する。
たとえここが崩落したとしても壊れはしないだろう。
あとは安心して敵を叩きのめすだけだ。
莉美は強力な障壁越しに少女たちに話しかける。
魔法障壁が少し濃い目の色合いに調整されているので、少し離れたものははっきりとは見えない。
すぐ傍に張り付くようにして見守っている莉美以外はあまり判別できていないはずだ。
これも、彼女たちに精神的な負担を掛けないようにと予め決めていたことだ。
「がおー、助けに来たよー。あたし、ならず者だけど悪いライオンじゃないよー」
莉美のその素っ頓狂な言動で、正体がばれなければいいがと白音は思う。
目の前にいる四体の人型兵器は形状こそ以前見た人形遣いのものと似ているが、材質は瓦礫ではなく、金属でできているようだった。
材質を変えることで性能が変わるとするならば、瓦礫のものよりは耐久性があるのだろう。
「でも、テカテカじゃないなら反射できないよね」
莉美はミスリルゴーレムのことを言っているのだろう。
あれをポンポン造られたらたまったものではないが、目の前のパペットは多分そんな高価な材料でできてはいない。
もっと現代的で実用的なもの。
例えば鋼鉄とかでできていそうだった。
莉美が少女たちを背に庇って視界を遮りつつ、魔力のビームを放つ。
自分たちの破壊行為をあまり少女たちに見せたくはない。
「無頼砲っ!!」
莉美は白音から、少女たちを確保したらまず一発ビームで牽制して欲しいと言われていた。
莉美のビームの威力を見たら、そちらへ近づくのを諦めて前衛との乱戦を望むだろうと読んでのことだ。
とうとう命名されたらしいビームだったが、パペット一体の上半身が一瞬でなすすべもなく溶けて消えてしまった。
さらに威力がありすぎて貫通したビームが、そのままドームの壁面に突き刺さって爆音を巻き起こす。
コンクリート製の壁に大穴が開いて地面が揺れた。
天井の一部が崩落を起こして少しひやりとする。
「そこなライオン、ウェイトっ!」
再びライオンがトラに怒られる。
「もう! ちょっとは加減しなさいよ。あの子たち、バリアが壊れなくても生き埋めになっちゃうじゃないのっ!」
「加減したんだよぅ……。撃ったあたしがびっくりだよぅ…………」
(加減してあれか…………)
白音は壁面にできた横穴を見て呆れる。
これは魔法少女が最終回にみんなで力を合わせて最後の敵に向かって撃つような奴だ。
変な名前が付いたようだが。
「あとはわたしたちが穏便に倒すから、莉美はその子たちを守りつつ警戒待機ね」
「あい! …………あっ!? 白音ちゃん」
「ん?」
「後ろの巫女の髪の色!!」
鋼鉄のパペットが一体吹っ飛んだことで、後ろに守られていた巫女の様子が少し覗える。
髪の毛が乱れて狐面からはみ出している。
それは見覚えのある金髪で、ウエーブのかかったロングヘアだった。
「巫女じゃないし! 男だし!!」
莉美の言うとおり、確実ではないが確かにこの状況、あの髪、山本――人形遣い――だと判断してよさそうだった。
だとすれば能力を奪うのではなく生きていたのか、それとも死者を蘇らせでもしたのか……。
いずれにせよ人形遣いが凍結巫女によって回収されたことは白音たちが見ているし、外事特課とやらも把握しているはずだ。
この場所であの人形遣いが誘拐された少女たちと共にいることは、根来衆関与の証拠になるのではないだろうか。
「莉美ちゃん、彼が生きてるのか死んでるのかは分からないけど、絶対あっち向けてビーム撃たないでね」
「オッケー?」
「あんなの直撃したら蒸発しちゃう」
「ハハ、まああんまり傷つけないように確保ってことね」
黒豹が笑っている。
「ちょっとくらい硬くなったからって、あんな人形、今のアタシたちの敵じゃないね」
頷いた白音が先に突っ込む。
ミスリルゴーレムを殴った時、佳奈は手が痛そうだったなと思ったのだ。
魔力の剣ならその心配はない。
パペットは機動力自体は瓦礫製のものと大差はないようで、白音があっという間に距離を詰めると一手二手対処が遅れてしまっている。
「せいやっ!!」
真正面から両断しようと魔力の剣を振り上げたのだが、その瞬間フルメタルパペットの胸が蓋のようにぱかっと両側に開いた。
内部には銃身と思われる黒い筒が大量に並んでいる。
「ちょっ、ちょっと、待っ……」
勢いのついた白音は止まれず、黒い筒からの一斉射撃を浴びる。
「はぐっ!!」
白音が苦悶の呻きを上げて白煙に包まれる。
銃弾を大量に食らってはじき飛ばされた白音はゴロゴロと転がり、やがて動きを止めた。
パペットはとどめとばかりに肘を折り曲げ、そこから顔を覗かせた大口径の発射口を白音に向ける。
「白音っ!!」
ポンっという音と共に擲弾のようなものが発射された。
佳奈はそれが銃弾とは違って爆発すると直感した。
「ちょっ、近っ!! 自爆覚悟かよっ!」
佳奈が白音の前に滑り込んで擲弾を起爆させないように蹴り上げる。
「莉美っ! 頼んだっ!!」
「あいよー」
ふわっと上がった擲弾を、魔力障壁で丸く包んでサッカーボールのようにする。
ボールの中で擲弾が炸裂した。
くぐもった爆音が響いたが障壁はびくともしていない。
内部の爆発で軌道が不規則になって再び佳奈の前に落ちてきたそれを、今度はパペットめがけて思い切り蹴飛ばした。
……少なくとも佳奈はそのつもりだった。
しかしボールは狙いを逸れて背後の巫女|(?)の狐面に直撃した。
その殺人的なシュートで狐面は粉々に砕けてしまったが、おかげで勢いが逸れて中身は無事のようだった。
むき出しにされたその顔には生気がまったく感じられないが、やはりあの時の人形遣いで間違いない。
「や、山本さんだっけ?」
佳奈は咄嗟に白音に怒られる、と思った。
まかり間違って判別できないほど顔にダメージを与えていたら、また根来衆にシラを切られるかもしれない。
だが白音はまだ倒れたまま丸くなっていた。
震えている。
「お、おい泣いてるのか? 大丈夫か?」
パペットからの弾丸の嵐は、すべて莉美が盾状の障壁を作り出して防いでくれている。
しかし白音はそのまま立ち上がるそぶりがない。
あの程度の攻撃なら白音は平気だろうと思っていたのだが…………。
佳奈はさーっと血の気が引くのを感じた。
駆け寄って白音の横に膝をつく。
震えているその体を確かめるが、酷く出血しているようなところはない。
「どこか、痛かったのか?」
「……痛かった。同じ攻撃いっぱい受けたの、痛かったからよく覚えてる」
「ん??」
「それ、橘香さんのと同じ攻撃だよっ!!」
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