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第一部 魔法少女は、ふたつの世界を天翔る
第21話 魔法少女狩り、再び その四
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行方不明になった桃澤千尋の足取りを追っていると、白音のスマホに名字川敬子からのコールがあった。
「…………あ、お母さん、はい、はい。今佳奈ちゃんと莉美ちゃんと三人でいます。はい。あ、いえ、少し遅くなるかも……。ああ、いや、あの…………。できるだけ早く帰ります。はい…………」
通話を終えると、白音が「むぅ……」と唸った。
「どした?」
「蔵間さんが通達出してくれたでしょ?」
「うん」
「お母さんのとこにも連絡が来て」
「うん」
「だから危ないから早く帰ってうちで大人しくしてろって」
「あー、そうなるわなぁ……」
佳奈が苦笑いした。
「蔵間さんに、上手く口裏合わせてもらうように言っとくべきだったぁ……」
「いやどうなんだろ。嘘通じるの?」
「う……」
莉美もやれやれ、という顔をしている。
処置なしだろう。
そしてふと、疑問を口にする。
「あたしさぁ、魔法使えるようになってから思ったんだけど」
「ん?」
「白音ちゃんも変身してなくても魔法使えるじゃない。敬子先生って、読心の魔法とか使えたりしない?」
「うわ…………それ、無敵すぎてヤダ…………。ほんとに、ヤダ…………」
白音は莉美の言葉に何度も頭を振る。
しかし今更どうにもならないので、白音はとりあえずすべてが終わってから怒られることに決めた。
すぐ帰らなかったことを、どうやっても上手く説明できそうにない。
佳奈と莉美も一緒に怒られてもらおう。
持つべきものは親友だ。
小学校へ到着する頃には、辺りが暗くなり始めていた。
やはり夏休みも後半に入ると、日が暮れるのが少しずつ早くなってきているように感じる。
小学校は立ち入り禁止にされており、現在は誰も使っていない。
「やっぱ悪い事するなら体育館裏とかだよねー」
そう言って先頭を切って廃校へ突入しようとする莉美を、白音が引き留めた。
学園のならず者なら確かにそうかもしれない。
だが魔法少女襲撃班がそう単純とは限らないだろう。
「念のため、変身しておきましょう」
「あいよ」
「おけおけ!」
廃校ではあるが、防犯のための常夜灯が灯されている。
しかし黄昏れ時になって、その心許ない明かりだけでは校舎の奥の方が見通しにくくなり始めている。
以前の莉美なら明かりいらずだったのだが、残念ながらもう光ってはいない。
そこで白音が魔法で明かりを出した。
コスチュームと同じ桜色の光が三つ、三人それぞれの斜め上方に浮遊している。
移動すれば勝手についてきてくれる。
そういうことを片手間にやってのける白音は、やはり器用だと佳奈は感心する。
「でもさ、これ…………」
佳奈が莉美の方を見て同意を求める。
「うん…………。白音ちゃん、この色なんか妖しいムードになるんだけど……」
「しょ、しょうがないでしょ、この色が一番楽なのよ」
星石に選ばれる前には待望されていた桜色の魔力色のはずなのに、今は『妖しい』呼ばわりされている。
白音はなんだか理不尽に感じる。
この小学校は校舎がコの字型になっていて、中庭があった。
しかし手入れがされておらず荒れ放題になっている。
藪のように雑草が生えていて視線が通りにくいので、転移などを行うには絶好のポイントだと思えた。
何か手がかりがないかと三人で中庭に足を踏み入れると、突然足下が崩れた。
落とし穴のように地面が崩落する。
「なんでぇ、あたしだけぇ…………」
白音と佳奈は咄嗟に飛び退いて避けたのだが、莉美だけは落とし穴に綺麗に落ちた。
「もうちょっと危機感持ちなさいよ。罠か何かだったら危ないでしょ」
そう言いながらも、白音は周囲に油断なく目を配る。
その間に、佳奈が莉美を救出する。
いたずらと言うにはかなり深い穴だ。
「おい白音、この形…………」
莉美の腕を掴んで引っ張り上げながら、佳奈が気づいた。
落とし穴は、上から見ると矢印の形になっていた。
莉美を発掘し終えてから地面を隈なく調べる。
崩れる箇所を全部崩してみると、向かい合わせになったふたつの矢印ができあがった。
かなり崩落させてしまったが、鉛直に穿たれて直角も綺麗に出ている。
とても人力で掘ってできるような形ではなかった。
転移でえぐり取ってこの形を作ったのだろう。
地表だけ薄皮一枚残して、落とし穴のようになっていたのだ。
その精緻な出来栄えはやはり、千尋の手によるもので間違いないだろう。
「矢印の向き合う真ん中で何かが起こったってことでしょうね」
白音はその矢印の向き合う、中央の地面に立って周囲を見渡してみた。
「んだね。あちこちで草が踏み荒らされて、靴跡もたくさん、こすれてついてる。これ、『争ったような跡』って奴だろ、白音?」
佳奈が、ニュースか刑事ドラマでしか聞かないような用語で現状を表現する。
「うん……。ここで襲われて、その後スマホだけ転移したってことでしょうね」
「白音ちゃんこれ!!」
しゃがみ込んで地面を調べていた莉美が、コンクリートブロックの欠片を拾って差し出した。
ブロックの表面に文字が書かれている。
やはり転移で削り取って刻み込んだのだろう。
『サイコ』とカタカナで彫刻されていた。
「騙し討ちをされて、それでもその一瞬に、できるだけのヒントをのこしてくれたんだわ…………」
白音は、胸がきゅっと締め付けられたような心持ちがした。
「それってやっぱ逆巻彩子のことだよな……。千尋はやっぱ拉致られてんのかな。ああっ、腹立つ!!」
佳奈が憤激し始めたのだが、その隣で莉美もぼそっと呟く。
「彩子。絶対に許さない……」
それを聞いて佳奈は逆に少し冷静になった。
気持ちはまったく同じなのだが、もしかしたら自分は莉美を止める役回りをしなければならないのかもしれないと、佳奈は思った。
ムード満点のピンク色の明かりの下で、中庭をひと通り調べてみる。
隅の方に大量の土砂が積まれて山になっているのを見つけた。
ぽろぽろと簡単に崩れて、まだできてからそれほど時間は経っていない様子だった。
おそらくは矢印の形に穴を掘った時に出たものだろう。
しかしよく見ると、それらは不自然に円弧を描くような形に積もっている。
「これって…………」
白音が少し考え込む。
「んん、どした?」
一緒に佳奈たちも土を検分する。
考えているわけではない。
ふたりは白音の答えを待っているのだ。
「転移がこういう円の形から外に出られないように妨害されてて、外へ飛ばそうとした土がここに落ちたんじゃないかな?」
落とし穴にせよ、白音たちへのメッセージにせよ、掘った土がすぐ側に出現したら敵に気づかれてしまって意味がない。
本当はもっと遠くへ飛ばすつもりだったのが、これ以上先へは飛ばせずに落ちてしまったのではないだろうか。
円はおおよそこの中庭がすっぽり納まるような大きさになっている。
「転移で出られないってことは、つまりこの狭い中庭に閉じ込められて追い回されてたってことだな?」
佳奈の目が鋭くなった。
「しかも相手が彩子ならあの切断髪で攻め続ければ、千尋さんは短い距離の転移で回避せざるを得なくなるでしょう。きっとそれを繰り返して消耗させて捕らえたのね。彩子は動く必要すらなかったでしょう」
そう言いながら白音は、スマホで現場の写真を撮影していく。
あまり感情的にならないように、できるだけ調査に集中している。
写真はあとでそらに解析を頼むべきだろう。
ピンク色の明かりだと妙な雰囲気の写真になりそうだったので、莉美に明かりを頼んだ。
「あ、でもあまり明るくしないで…………」
遅かった。
莉美はまるで人工太陽のような強烈な光源を何気なく作ってしまった。
中庭がほぼ真昼になる。
白音は近隣から不審に思われないかとひやひやしたが、おかげで鮮明な写真は撮れた。
その後念のため魔力の反応も探ってはみたが、何も引っかかるものはないようだった。
「もっと感知能力の高い魔法少女にお願いして、救難信号の受信を試してみるべきでしょうね。リンクスさんに報告しましょう。あとはそらちゃん待ちかな……」
多分捕らえられた後、転移を妨害している結界が解かれるその最後の隙に、のこしておいた僅かな魔力でスマホを転移したのだろう。
その時の千尋の気持ちを想像すると、三人はやるせない気持ちになった。
「あたし人のことこんなに腹が立つって思ったの、生まれて初めてかもしれない……」
そんな風に言う莉美はしかし、少し困ったような顔をしていた。
割と感情的になりやすい白音や佳奈と違い、怒りや憎しみといった激情との付き合い方を、莉美はあまり知らないのだろう。
「分かった、分かったから、莉美、ひとまずあの眩しい奴を消してくれ。なあ白音、もう撤収だろ?」
「そうね。莉美、私たちも気持ちは同じだからね」
莉美が代わりに怒ってくれるおかげで、ふたりは冷静でいられた。
「ひとまず帰りましょ?」
「うん」
白音にそう言われて、莉美は人工太陽を手にとった。
ぎゅっと握りしめると、「きゅん」とかいう変な音を立てて明かりが消える。
「莉美…………」
「どしたの、白音ちゃん?」
「いや、いいの、いいのよ」
小首を傾げた莉美を見て佳奈が少し笑った。
「いやいや、消し方な。消し方」
莉美は見た目とは裏腹に、割と力尽くで物事を解決しようとする傾向がある。
そして白音はそれを見て、少し困った顔をする。
佳奈にとっては見慣れた光景のひとつだ。
「お前が一番ならず者っぽいだろうに」
「えー、そうかなぁ。えへへ」
「照れんな!」
辺りはすっかり日が暮れていた。
急に昼間のような明かりが消えてしまったので、しばらく目が慣れるのを待つ。
一旦情報を持ち帰るため一恵に連絡を取ろうと考えていると、その前にギルドの方から着信があった。
この状況に予定外の連絡だったから、白音は胸騒ぎがした。
連絡は、蔵間からだった。
「白音君、若葉学園の子供たちが拉致されたようだ。一恵君に迎えに行ってもらう。合流して学園に向かってくれ。不甲斐なくてすまない」
「…………あ、お母さん、はい、はい。今佳奈ちゃんと莉美ちゃんと三人でいます。はい。あ、いえ、少し遅くなるかも……。ああ、いや、あの…………。できるだけ早く帰ります。はい…………」
通話を終えると、白音が「むぅ……」と唸った。
「どした?」
「蔵間さんが通達出してくれたでしょ?」
「うん」
「お母さんのとこにも連絡が来て」
「うん」
「だから危ないから早く帰ってうちで大人しくしてろって」
「あー、そうなるわなぁ……」
佳奈が苦笑いした。
「蔵間さんに、上手く口裏合わせてもらうように言っとくべきだったぁ……」
「いやどうなんだろ。嘘通じるの?」
「う……」
莉美もやれやれ、という顔をしている。
処置なしだろう。
そしてふと、疑問を口にする。
「あたしさぁ、魔法使えるようになってから思ったんだけど」
「ん?」
「白音ちゃんも変身してなくても魔法使えるじゃない。敬子先生って、読心の魔法とか使えたりしない?」
「うわ…………それ、無敵すぎてヤダ…………。ほんとに、ヤダ…………」
白音は莉美の言葉に何度も頭を振る。
しかし今更どうにもならないので、白音はとりあえずすべてが終わってから怒られることに決めた。
すぐ帰らなかったことを、どうやっても上手く説明できそうにない。
佳奈と莉美も一緒に怒られてもらおう。
持つべきものは親友だ。
小学校へ到着する頃には、辺りが暗くなり始めていた。
やはり夏休みも後半に入ると、日が暮れるのが少しずつ早くなってきているように感じる。
小学校は立ち入り禁止にされており、現在は誰も使っていない。
「やっぱ悪い事するなら体育館裏とかだよねー」
そう言って先頭を切って廃校へ突入しようとする莉美を、白音が引き留めた。
学園のならず者なら確かにそうかもしれない。
だが魔法少女襲撃班がそう単純とは限らないだろう。
「念のため、変身しておきましょう」
「あいよ」
「おけおけ!」
廃校ではあるが、防犯のための常夜灯が灯されている。
しかし黄昏れ時になって、その心許ない明かりだけでは校舎の奥の方が見通しにくくなり始めている。
以前の莉美なら明かりいらずだったのだが、残念ながらもう光ってはいない。
そこで白音が魔法で明かりを出した。
コスチュームと同じ桜色の光が三つ、三人それぞれの斜め上方に浮遊している。
移動すれば勝手についてきてくれる。
そういうことを片手間にやってのける白音は、やはり器用だと佳奈は感心する。
「でもさ、これ…………」
佳奈が莉美の方を見て同意を求める。
「うん…………。白音ちゃん、この色なんか妖しいムードになるんだけど……」
「しょ、しょうがないでしょ、この色が一番楽なのよ」
星石に選ばれる前には待望されていた桜色の魔力色のはずなのに、今は『妖しい』呼ばわりされている。
白音はなんだか理不尽に感じる。
この小学校は校舎がコの字型になっていて、中庭があった。
しかし手入れがされておらず荒れ放題になっている。
藪のように雑草が生えていて視線が通りにくいので、転移などを行うには絶好のポイントだと思えた。
何か手がかりがないかと三人で中庭に足を踏み入れると、突然足下が崩れた。
落とし穴のように地面が崩落する。
「なんでぇ、あたしだけぇ…………」
白音と佳奈は咄嗟に飛び退いて避けたのだが、莉美だけは落とし穴に綺麗に落ちた。
「もうちょっと危機感持ちなさいよ。罠か何かだったら危ないでしょ」
そう言いながらも、白音は周囲に油断なく目を配る。
その間に、佳奈が莉美を救出する。
いたずらと言うにはかなり深い穴だ。
「おい白音、この形…………」
莉美の腕を掴んで引っ張り上げながら、佳奈が気づいた。
落とし穴は、上から見ると矢印の形になっていた。
莉美を発掘し終えてから地面を隈なく調べる。
崩れる箇所を全部崩してみると、向かい合わせになったふたつの矢印ができあがった。
かなり崩落させてしまったが、鉛直に穿たれて直角も綺麗に出ている。
とても人力で掘ってできるような形ではなかった。
転移でえぐり取ってこの形を作ったのだろう。
地表だけ薄皮一枚残して、落とし穴のようになっていたのだ。
その精緻な出来栄えはやはり、千尋の手によるもので間違いないだろう。
「矢印の向き合う真ん中で何かが起こったってことでしょうね」
白音はその矢印の向き合う、中央の地面に立って周囲を見渡してみた。
「んだね。あちこちで草が踏み荒らされて、靴跡もたくさん、こすれてついてる。これ、『争ったような跡』って奴だろ、白音?」
佳奈が、ニュースか刑事ドラマでしか聞かないような用語で現状を表現する。
「うん……。ここで襲われて、その後スマホだけ転移したってことでしょうね」
「白音ちゃんこれ!!」
しゃがみ込んで地面を調べていた莉美が、コンクリートブロックの欠片を拾って差し出した。
ブロックの表面に文字が書かれている。
やはり転移で削り取って刻み込んだのだろう。
『サイコ』とカタカナで彫刻されていた。
「騙し討ちをされて、それでもその一瞬に、できるだけのヒントをのこしてくれたんだわ…………」
白音は、胸がきゅっと締め付けられたような心持ちがした。
「それってやっぱ逆巻彩子のことだよな……。千尋はやっぱ拉致られてんのかな。ああっ、腹立つ!!」
佳奈が憤激し始めたのだが、その隣で莉美もぼそっと呟く。
「彩子。絶対に許さない……」
それを聞いて佳奈は逆に少し冷静になった。
気持ちはまったく同じなのだが、もしかしたら自分は莉美を止める役回りをしなければならないのかもしれないと、佳奈は思った。
ムード満点のピンク色の明かりの下で、中庭をひと通り調べてみる。
隅の方に大量の土砂が積まれて山になっているのを見つけた。
ぽろぽろと簡単に崩れて、まだできてからそれほど時間は経っていない様子だった。
おそらくは矢印の形に穴を掘った時に出たものだろう。
しかしよく見ると、それらは不自然に円弧を描くような形に積もっている。
「これって…………」
白音が少し考え込む。
「んん、どした?」
一緒に佳奈たちも土を検分する。
考えているわけではない。
ふたりは白音の答えを待っているのだ。
「転移がこういう円の形から外に出られないように妨害されてて、外へ飛ばそうとした土がここに落ちたんじゃないかな?」
落とし穴にせよ、白音たちへのメッセージにせよ、掘った土がすぐ側に出現したら敵に気づかれてしまって意味がない。
本当はもっと遠くへ飛ばすつもりだったのが、これ以上先へは飛ばせずに落ちてしまったのではないだろうか。
円はおおよそこの中庭がすっぽり納まるような大きさになっている。
「転移で出られないってことは、つまりこの狭い中庭に閉じ込められて追い回されてたってことだな?」
佳奈の目が鋭くなった。
「しかも相手が彩子ならあの切断髪で攻め続ければ、千尋さんは短い距離の転移で回避せざるを得なくなるでしょう。きっとそれを繰り返して消耗させて捕らえたのね。彩子は動く必要すらなかったでしょう」
そう言いながら白音は、スマホで現場の写真を撮影していく。
あまり感情的にならないように、できるだけ調査に集中している。
写真はあとでそらに解析を頼むべきだろう。
ピンク色の明かりだと妙な雰囲気の写真になりそうだったので、莉美に明かりを頼んだ。
「あ、でもあまり明るくしないで…………」
遅かった。
莉美はまるで人工太陽のような強烈な光源を何気なく作ってしまった。
中庭がほぼ真昼になる。
白音は近隣から不審に思われないかとひやひやしたが、おかげで鮮明な写真は撮れた。
その後念のため魔力の反応も探ってはみたが、何も引っかかるものはないようだった。
「もっと感知能力の高い魔法少女にお願いして、救難信号の受信を試してみるべきでしょうね。リンクスさんに報告しましょう。あとはそらちゃん待ちかな……」
多分捕らえられた後、転移を妨害している結界が解かれるその最後の隙に、のこしておいた僅かな魔力でスマホを転移したのだろう。
その時の千尋の気持ちを想像すると、三人はやるせない気持ちになった。
「あたし人のことこんなに腹が立つって思ったの、生まれて初めてかもしれない……」
そんな風に言う莉美はしかし、少し困ったような顔をしていた。
割と感情的になりやすい白音や佳奈と違い、怒りや憎しみといった激情との付き合い方を、莉美はあまり知らないのだろう。
「分かった、分かったから、莉美、ひとまずあの眩しい奴を消してくれ。なあ白音、もう撤収だろ?」
「そうね。莉美、私たちも気持ちは同じだからね」
莉美が代わりに怒ってくれるおかげで、ふたりは冷静でいられた。
「ひとまず帰りましょ?」
「うん」
白音にそう言われて、莉美は人工太陽を手にとった。
ぎゅっと握りしめると、「きゅん」とかいう変な音を立てて明かりが消える。
「莉美…………」
「どしたの、白音ちゃん?」
「いや、いいの、いいのよ」
小首を傾げた莉美を見て佳奈が少し笑った。
「いやいや、消し方な。消し方」
莉美は見た目とは裏腹に、割と力尽くで物事を解決しようとする傾向がある。
そして白音はそれを見て、少し困った顔をする。
佳奈にとっては見慣れた光景のひとつだ。
「お前が一番ならず者っぽいだろうに」
「えー、そうかなぁ。えへへ」
「照れんな!」
辺りはすっかり日が暮れていた。
急に昼間のような明かりが消えてしまったので、しばらく目が慣れるのを待つ。
一旦情報を持ち帰るため一恵に連絡を取ろうと考えていると、その前にギルドの方から着信があった。
この状況に予定外の連絡だったから、白音は胸騒ぎがした。
連絡は、蔵間からだった。
「白音君、若葉学園の子供たちが拉致されたようだ。一恵君に迎えに行ってもらう。合流して学園に向かってくれ。不甲斐なくてすまない」
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