28 / 214
第一部 魔法少女は、ふたつの世界を天翔る
第9話 真夏の魔法少女たち その三
しおりを挟む
かつて大空家の倉庫を間借りして作られていた『ちびマフィアのアジト』。
そこを改修して白音たち魔法少女のアジト(あるいは秘密基地、たまり場、集会所、会議室)とすることにした。
大がかりな模様替えだったのでもっと時間がかかるかと思っていたのだが、あっという間に終わってしまった。
魔法少女に変身していると疲れ知らずなのと、エレスケたちが手伝ってくれたおかげだろう。
彼女たちは文句を言いながらも、なんだかんだでよく働いてくれた。
「ねぇ、さすがにドクロとか飾るのやめない?」
莉美の暴走を白音が抑える格好で少しずつ修正して、どうにかみんなで落ち着ける空間を確保する。
どうやら莉美はヘヴィメタとかハードロックとか、そういうMVの世界観を目指していたようだった。
莉美ん家の自分の部屋は、ちゃんと女の子らしくてかわいい。
それでいいのにと白音は思う。
ひと段落してみんなでお菓子を用意していると、突然エアコンがおかしくなった。
吹き出し口からぽたぽたと水が垂れ始めて、吹き出す風がぬるくなった。
「あ、これダメな奴だ」
白音は似たような症状を見たことがある。
若葉学園の寮で同じような故障をした時には、買い換えるしかなかったと思う。
真夏にこうなってしまうと…………。
「もう古いからねぇ。さっき頼まれたネット回線と一緒に、エアコンもお父さんに頼んどくね」
莉美と莉美パパに感謝ではあるのだが、さて今日はどうやって生き延びたものか。
気持ちのいい晴天で、本格的な夏の到来を予感させる日だった。
このままだと熱中症や“死”すらも予感させる。
魔法少女に変身していれば過酷な環境に対しても耐性がつく。
しかし佳奈や莉美じゃあるまいに、ずっと変身したままというわけにもいくまい。
「よし、みんなで遊ぼ!!」
そう言って一恵が立ち上がった。
そらとまた何やら相談を始める。
たまには自分も混ぜて欲しいと白音が思っていると、またまた手招きして呼ばれた。
今度は何かの実験台にされるわけではなく、みんなで遊ぶ段取りの相談だった。
ちょっと嬉しい。
三人で少し話し合った後、そのまま連れ立って外へと出て行く。
魔法少女たちは、今度は何が起こるのかと全員、興味津々でその後に続いた。
灼熱に輝く太陽の下に出ると、まずは白音が能力強化でそらと一恵の能力を底上げする。
次にそらが、リーパーによって強化された空間認識能力を使って地面の下を探っていく。
元整備工場の二棟の建物の間には、アスファルトで固められた広い地面がある。
その地下の空間を探査し、その結果を精神連携によって一恵と共有する。
そして一恵が、その情報を元に地下の配管等を避けて地面に直方体の穴を作る。
コンピュータルームの時と同じ要領で、その場所を異空間に繋げたのだ。
ただし規模が違った。25メートル×10メートル、深さ2メートル。
白音のリーパーなしには到底不可能な大きさだ。
勘のいい者なら、その形状で一恵が何をしようとしているのか察することができよう。
先程白音が莉美をお尻で突き飛ばした時のような、虹色の揺らめきは見られない。
一恵はこの穴を『完全開放系』と表現した。
要はコンピュータルームのようにセキュリティをかける必要がないので、入り口が開きっぱなしということだ。
「海水でいいよね」
そう言いのこして一恵が転移ゲートで消えた。
ややあって戻ってくると、
「ストレージ解放」
そう言って穴の上にストレージの出入り口を開いた。
轟音と共に大量の海水が降り注ぎ、あっという間に巨大な箱が満水になった。
さすがに魔力切れを起こしたようで、一恵が少しふらついている。
「一恵ちゃん、魔力分けてあげるね」
「あ、うん。助かるわ」
嬉しそうに莉美が一恵の背後から近づく。
エレスケたちは一度経験したことがあるものの、これから何が起こるのかぴんと来てはいないようだった。
しかし白音たちは何度も体験しているからよく知っている。
思わず一恵の方へと視線が集中する。
そして期待したとおり、莉美が背後から一恵をそっと抱きしめると、その体がびくんと跳ねた。
「んんっ……、あん。……もう」
一恵は莉美の腕の中でくるっと回ると、莉美を正面から抱きしめ返した。
「ありがと」
白音がぞくぞくするほど色っぽい声だった。
そして何事もなかったように一恵は作業に戻る。
ただ、心なしか先程よりも楽しそうには見える。
「魚とか、いないよね、いたら元に戻さないと……」
わざわざ南洋から取ってきてくれたそうで、水温も既に調度いい。
あっという間にプールが完成してしまった。
本当に便利すぎて怖い能力だった。
エレスケたちも呆然と見とれている。
「みんな凄まじい能力ね……。Hitoe様もさすがなんだけど、これだけの魔法を回す魔力量って、やっぱり莉美さんよね」
負けん気の強い詩緒が素直な賛辞を述べる。
エレスケは魔法少女チームの先輩だけあって、魔法を運用する際の肝をよく理解している。
確かに莉美がいなければ今頃みんな魔力切れだろう。
遊ぶ気力がなくなってしまってはこの一大事業にも意味がない。
「水着ないよ?」
そして莉美は、遊びの肝をよく理解している。
白音も目の前に突然現れたプールに心浮き立っていたのだが、そうだ水着がなければ楽しめないではないかと気がついた。
しかし白音が肩を叩かれて振り返ると、エレスケたちはいつの間にか全員水着になっていた。
例のエレスケの決めポーズをみんなで決めてくれる。
「あ、あれ?」
しかもその水着は、それぞれの魔法少女のコスチュームを何となく彷彿とさせるような、イメージラインを引き継いだデザインになっている。
アイドル衣装のような水着だ。
戸惑う白音に千咲が説明してくれた。
どうやら着替えたわけではなく、それは魔法少女のコスチュームらしかった。
本人の心に寄り添ってコスチュームは構成されるものだから、泳ぐ気で変身すればそうなるのだそうだ。
初めの印象からは遠く離れないから、似たイメージにはなる。
だからなんとなく元のコスチュームを思わせるデザインになるのだとか。
「私たちはアイドルになりたかったからこういう衣装になったのね。あなたたちは変身ヒロインみたいな魔法少女になりたかったんでしょ? ちゃんと星石がイメージを具現化してくれてるのよ」
「ああ、スライムに襲われた時、佳奈が『魔法少女に変身』って言ったからこうなったのね…………」
佳奈は多分そういうことを知っていたのだろう。
なかなかどうして策士だったわけだ。
佳奈の方を見ると、またあの時のちょっと悪そうな笑みを浮かべた。
「ふふ、でもピンクになったのは白音の気持ちだよ」
「だから白だってば、これ…………」
みんなで変身してみると、一発で水着になれた。
プールで遊びたい一心のなせる技だろう。
千咲の言うとおり、みんな魔法少女のコスチュームのイメージがしっかり引き継がれている。
顔を見なくとも誰が誰だかすぐ当てられただろう。
みんなかわいい水着姿に変身したので、ひときわ一恵が狂喜していた。
(ああ、これ、うん)
一恵は初めからプールを作る気満々だったんだな、と白音は確信した。
ビーチボールとか浮き輪とか、パラソルとかビーチチェアとか、一恵のストレージから際限なく海の必需品が出てくる。
中でもアスファルトの熱い地面にビーチサンダルは必須だった。
参加人数を上回る大量のサンダルをしっかり用意していた一恵は、
「みんなのおかげで大きなプールができた」
と嬉しそうだ。
浮き輪やボールに空気を入れ、パラソルやチェアを設置していく。
何も言わなくともこういう時はみんなテキパキと働いてくれる。
それぞれが思い思いに遊びの準備を始める中、莉美がしゃがんでプールの側壁をじっと見つめていた。
「どうしたの?」
一恵が莉美と並んでしゃがみ込む。
「土の断面が見えて気持ち悪い感じかと思ったんだけど、真っ黒だね」
確かにプールの壁はどこも真っ黒で、その向こうは何も見えない。
「穴を掘ったわけじゃなくて、プールと土の中は完全に別の空間になってるの。エネルギーの行き来がまったくないから真っ黒なのよ。イベントホライズンって奴ね」
「そかー。イベントなのに誰も来ないのは寂しいねぇ」
「ふふふ。その代わり今日は水着の魔法少女がいっぱい」
「だね! 今日は一大イベント!!」
「うんうん」
莉美と一恵の会話は噛み合っているような、噛み合っていないような、でもそんなことどうでもいいような気さえしてくる。
「ほい、白音っ! パス!!」
佳奈が白音に向かってビーチボールをアタックした。
パスしたようにはとても見えない殺人的な速度だった。
多分みんな水着コスチュームになっているから、自分が変身していることを忘れていたのだ。
ボールが割れなくて良かったのか、割れた方が良かったのか。
白音が慌てて手でガードすると、跳ね返ったボールが詩緒に向かった。
時間にすると0・1秒にも満たないくらい、音にすると『ボボボン』とひとつながりの音に聞こえるくらいの瞬間。
詩緒が顔面に超高速のそれを食らって吹っ飛んだ。
一瞬死んだかと思ったが、そこはさすが魔法少女である。
むくりと起き上がった。
「ちょっと何すんのよ。アイドル☆の顔に酷いことしないでよ!!」
「悪い、悪い。加減間違った」
言いながら佳奈は、跳ね返ったボールを苦もなくキャッチしている。
「ちょっと、みんな聞いて」
詩緒がエレスケに集合をかけた。
四人で何やらひそひそと話をし始める。
変身しているので感覚が鋭敏になっているはずなのだが、何故かその声は白音たちには聞こえてこなかった。
ただ、最後に「作戦決行」という言葉が聞こえたので、それはどうやら想定内の行動らしい。
怒らせてしまったわけではないのかなと少し安心した。
みんないろんな計画を立ててここへ来たんだなと、白音は妙に感心する。
エレスケたちが白音に対して綺麗に横一列に並んだ。
「アイドルとしてどっちが格上か勝負よ!!」
そこを改修して白音たち魔法少女のアジト(あるいは秘密基地、たまり場、集会所、会議室)とすることにした。
大がかりな模様替えだったのでもっと時間がかかるかと思っていたのだが、あっという間に終わってしまった。
魔法少女に変身していると疲れ知らずなのと、エレスケたちが手伝ってくれたおかげだろう。
彼女たちは文句を言いながらも、なんだかんだでよく働いてくれた。
「ねぇ、さすがにドクロとか飾るのやめない?」
莉美の暴走を白音が抑える格好で少しずつ修正して、どうにかみんなで落ち着ける空間を確保する。
どうやら莉美はヘヴィメタとかハードロックとか、そういうMVの世界観を目指していたようだった。
莉美ん家の自分の部屋は、ちゃんと女の子らしくてかわいい。
それでいいのにと白音は思う。
ひと段落してみんなでお菓子を用意していると、突然エアコンがおかしくなった。
吹き出し口からぽたぽたと水が垂れ始めて、吹き出す風がぬるくなった。
「あ、これダメな奴だ」
白音は似たような症状を見たことがある。
若葉学園の寮で同じような故障をした時には、買い換えるしかなかったと思う。
真夏にこうなってしまうと…………。
「もう古いからねぇ。さっき頼まれたネット回線と一緒に、エアコンもお父さんに頼んどくね」
莉美と莉美パパに感謝ではあるのだが、さて今日はどうやって生き延びたものか。
気持ちのいい晴天で、本格的な夏の到来を予感させる日だった。
このままだと熱中症や“死”すらも予感させる。
魔法少女に変身していれば過酷な環境に対しても耐性がつく。
しかし佳奈や莉美じゃあるまいに、ずっと変身したままというわけにもいくまい。
「よし、みんなで遊ぼ!!」
そう言って一恵が立ち上がった。
そらとまた何やら相談を始める。
たまには自分も混ぜて欲しいと白音が思っていると、またまた手招きして呼ばれた。
今度は何かの実験台にされるわけではなく、みんなで遊ぶ段取りの相談だった。
ちょっと嬉しい。
三人で少し話し合った後、そのまま連れ立って外へと出て行く。
魔法少女たちは、今度は何が起こるのかと全員、興味津々でその後に続いた。
灼熱に輝く太陽の下に出ると、まずは白音が能力強化でそらと一恵の能力を底上げする。
次にそらが、リーパーによって強化された空間認識能力を使って地面の下を探っていく。
元整備工場の二棟の建物の間には、アスファルトで固められた広い地面がある。
その地下の空間を探査し、その結果を精神連携によって一恵と共有する。
そして一恵が、その情報を元に地下の配管等を避けて地面に直方体の穴を作る。
コンピュータルームの時と同じ要領で、その場所を異空間に繋げたのだ。
ただし規模が違った。25メートル×10メートル、深さ2メートル。
白音のリーパーなしには到底不可能な大きさだ。
勘のいい者なら、その形状で一恵が何をしようとしているのか察することができよう。
先程白音が莉美をお尻で突き飛ばした時のような、虹色の揺らめきは見られない。
一恵はこの穴を『完全開放系』と表現した。
要はコンピュータルームのようにセキュリティをかける必要がないので、入り口が開きっぱなしということだ。
「海水でいいよね」
そう言いのこして一恵が転移ゲートで消えた。
ややあって戻ってくると、
「ストレージ解放」
そう言って穴の上にストレージの出入り口を開いた。
轟音と共に大量の海水が降り注ぎ、あっという間に巨大な箱が満水になった。
さすがに魔力切れを起こしたようで、一恵が少しふらついている。
「一恵ちゃん、魔力分けてあげるね」
「あ、うん。助かるわ」
嬉しそうに莉美が一恵の背後から近づく。
エレスケたちは一度経験したことがあるものの、これから何が起こるのかぴんと来てはいないようだった。
しかし白音たちは何度も体験しているからよく知っている。
思わず一恵の方へと視線が集中する。
そして期待したとおり、莉美が背後から一恵をそっと抱きしめると、その体がびくんと跳ねた。
「んんっ……、あん。……もう」
一恵は莉美の腕の中でくるっと回ると、莉美を正面から抱きしめ返した。
「ありがと」
白音がぞくぞくするほど色っぽい声だった。
そして何事もなかったように一恵は作業に戻る。
ただ、心なしか先程よりも楽しそうには見える。
「魚とか、いないよね、いたら元に戻さないと……」
わざわざ南洋から取ってきてくれたそうで、水温も既に調度いい。
あっという間にプールが完成してしまった。
本当に便利すぎて怖い能力だった。
エレスケたちも呆然と見とれている。
「みんな凄まじい能力ね……。Hitoe様もさすがなんだけど、これだけの魔法を回す魔力量って、やっぱり莉美さんよね」
負けん気の強い詩緒が素直な賛辞を述べる。
エレスケは魔法少女チームの先輩だけあって、魔法を運用する際の肝をよく理解している。
確かに莉美がいなければ今頃みんな魔力切れだろう。
遊ぶ気力がなくなってしまってはこの一大事業にも意味がない。
「水着ないよ?」
そして莉美は、遊びの肝をよく理解している。
白音も目の前に突然現れたプールに心浮き立っていたのだが、そうだ水着がなければ楽しめないではないかと気がついた。
しかし白音が肩を叩かれて振り返ると、エレスケたちはいつの間にか全員水着になっていた。
例のエレスケの決めポーズをみんなで決めてくれる。
「あ、あれ?」
しかもその水着は、それぞれの魔法少女のコスチュームを何となく彷彿とさせるような、イメージラインを引き継いだデザインになっている。
アイドル衣装のような水着だ。
戸惑う白音に千咲が説明してくれた。
どうやら着替えたわけではなく、それは魔法少女のコスチュームらしかった。
本人の心に寄り添ってコスチュームは構成されるものだから、泳ぐ気で変身すればそうなるのだそうだ。
初めの印象からは遠く離れないから、似たイメージにはなる。
だからなんとなく元のコスチュームを思わせるデザインになるのだとか。
「私たちはアイドルになりたかったからこういう衣装になったのね。あなたたちは変身ヒロインみたいな魔法少女になりたかったんでしょ? ちゃんと星石がイメージを具現化してくれてるのよ」
「ああ、スライムに襲われた時、佳奈が『魔法少女に変身』って言ったからこうなったのね…………」
佳奈は多分そういうことを知っていたのだろう。
なかなかどうして策士だったわけだ。
佳奈の方を見ると、またあの時のちょっと悪そうな笑みを浮かべた。
「ふふ、でもピンクになったのは白音の気持ちだよ」
「だから白だってば、これ…………」
みんなで変身してみると、一発で水着になれた。
プールで遊びたい一心のなせる技だろう。
千咲の言うとおり、みんな魔法少女のコスチュームのイメージがしっかり引き継がれている。
顔を見なくとも誰が誰だかすぐ当てられただろう。
みんなかわいい水着姿に変身したので、ひときわ一恵が狂喜していた。
(ああ、これ、うん)
一恵は初めからプールを作る気満々だったんだな、と白音は確信した。
ビーチボールとか浮き輪とか、パラソルとかビーチチェアとか、一恵のストレージから際限なく海の必需品が出てくる。
中でもアスファルトの熱い地面にビーチサンダルは必須だった。
参加人数を上回る大量のサンダルをしっかり用意していた一恵は、
「みんなのおかげで大きなプールができた」
と嬉しそうだ。
浮き輪やボールに空気を入れ、パラソルやチェアを設置していく。
何も言わなくともこういう時はみんなテキパキと働いてくれる。
それぞれが思い思いに遊びの準備を始める中、莉美がしゃがんでプールの側壁をじっと見つめていた。
「どうしたの?」
一恵が莉美と並んでしゃがみ込む。
「土の断面が見えて気持ち悪い感じかと思ったんだけど、真っ黒だね」
確かにプールの壁はどこも真っ黒で、その向こうは何も見えない。
「穴を掘ったわけじゃなくて、プールと土の中は完全に別の空間になってるの。エネルギーの行き来がまったくないから真っ黒なのよ。イベントホライズンって奴ね」
「そかー。イベントなのに誰も来ないのは寂しいねぇ」
「ふふふ。その代わり今日は水着の魔法少女がいっぱい」
「だね! 今日は一大イベント!!」
「うんうん」
莉美と一恵の会話は噛み合っているような、噛み合っていないような、でもそんなことどうでもいいような気さえしてくる。
「ほい、白音っ! パス!!」
佳奈が白音に向かってビーチボールをアタックした。
パスしたようにはとても見えない殺人的な速度だった。
多分みんな水着コスチュームになっているから、自分が変身していることを忘れていたのだ。
ボールが割れなくて良かったのか、割れた方が良かったのか。
白音が慌てて手でガードすると、跳ね返ったボールが詩緒に向かった。
時間にすると0・1秒にも満たないくらい、音にすると『ボボボン』とひとつながりの音に聞こえるくらいの瞬間。
詩緒が顔面に超高速のそれを食らって吹っ飛んだ。
一瞬死んだかと思ったが、そこはさすが魔法少女である。
むくりと起き上がった。
「ちょっと何すんのよ。アイドル☆の顔に酷いことしないでよ!!」
「悪い、悪い。加減間違った」
言いながら佳奈は、跳ね返ったボールを苦もなくキャッチしている。
「ちょっと、みんな聞いて」
詩緒がエレスケに集合をかけた。
四人で何やらひそひそと話をし始める。
変身しているので感覚が鋭敏になっているはずなのだが、何故かその声は白音たちには聞こえてこなかった。
ただ、最後に「作戦決行」という言葉が聞こえたので、それはどうやら想定内の行動らしい。
怒らせてしまったわけではないのかなと少し安心した。
みんないろんな計画を立ててここへ来たんだなと、白音は妙に感心する。
エレスケたちが白音に対して綺麗に横一列に並んだ。
「アイドルとしてどっちが格上か勝負よ!!」
10
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説


転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜
言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。
しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。
それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。
「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」
破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。
気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。
「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。
「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」
学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス!
"悪役令嬢"、ここに爆誕!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
MAN in MAID 〜メイド服を着た男〜
三石成
ファンタジー
ゴブリンに支配された世界で、唯一人間が住むことのできる土地にある、聖エリーゼ王国。
ユレイトという土地を治める領主エヴァンは、人道的な優れた統治力で知られる。
エヴァンは遠征から帰ってきたその日、領主邸の庭園にいる見知らぬメイドの存在に気づく。その者は、どう見ても男であった。
個性的な登場人物に囲まれながら、エヴァンはユレイトをより良い領地にするため、ある一つのアイディアを形にしていく。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる