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第一部 魔法少女は、ふたつの世界を天翔る
第9話 真夏の魔法少女たち その一
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Hitoeの突然の芸能活動休止発表から数週間が過ぎた。
季節は真夏の盛りへと向かい、白音たちは高校生活最初の一学期を終えていた。
公立も私立も一斉に終業式を迎え、明日からは夏休みとなる。
さすがに曙台高校の補習組もそれは同じはずである。
この数ヶ月、白音たちにとっては実に様々な事があった。
あり過ぎたと言った方がいいかもしれない。
特に鬼軍曹からは厳しく鍛えられて何度も痛い目を見た。
そしてその分、得るものも多かった。
最初はやたら口が悪くて取っつきの悪い印象だったが、まあ……今でも口は悪い。
だが信頼は寄せている。
夏休みを前に、白音たち五人は通知表よろしくS級に昇格、との認定を軍曹から受けた。
もちろんこれで訓練が終わるわけはない。
夏休みにはさらなる特訓が待っているぞと、当たり前のように告げられている。
軍曹が、白音たちを自分よりも強い魔法少女に鍛えると言っていたのは、どうやら本気のようだった。
ギルドの中でも最強クラス、SS級の戦闘能力を持つ鬼軍曹を超えなければいけないのだ。
◇
白音とそらの通う、黎鳳女学院には名門の家柄の子女が多い。
長期休暇は別荘や海外で過ごす子がほとんどで、だから夏休みに友人同士で遊ぶという機会はあまりない。
それでもやはり休みを前にした雰囲気は浮き立っており、皆楽しげに会話を交わしながら下校していく。
もちろん白音とそらもその例に漏れず、はやる気持ちを抑えきれないといった様子で校門へと向かっていた。
ふたりが連れ立って下校するのは、いつもの光景になりつつある。
しかしそれでも今日のように、珍しくそらが満面の笑顔で白音の腕に絡みついていたりすると、まだ周囲がどよめいたり、スマホのカメラを向けられたりはする。
今日は初めて五人全員の予定が空いている日ということで、勢揃いしてアジトへ向かうことになっている。
一恵がアジトへ行くのは初めてなので、みんなで集合してから道案内をするつもりだ。
市内をひと周りする路線バスで行けば、アジトへは黎鳳女学院前の停留所の方が近い。
前回はいつも遅くまで勉強を頑張っている佳奈と莉美のために曙台高校の前で待っていたが、今回は五人で黎鳳女学院の前で待ち合わせをしている。
終業式にまで補習がなくて幸いだった。
佳奈たちが先に着いた場合は、あまり周囲の耳目を集めないよう隅っこの日陰で待っているようにとは言ってある。
だが白音とそらが校門を出ると、果たしてそこに人だかりができていた。
人だかりというものは不思議とその関心事の内容を空気感として纏うもので、凶事か吉事か、周りを見ただけで何となく察しがつく。
今回のものは珍事に分類される注目の集め方だ。
「うちのがすみません」
と言いながら白音が駆け寄ると、問題を起こしていたのは『うちの』ではなかった。
黎鳳の警備員が四人組の女の子たちと押し問答をしていた。
四人はもはや見知った顔、『エレメントスケイプ』の面々だった。
学校に入ろうとして火浦いつきが襟首を掴まれている。
「だから知り合いに会いに来ただけっすよ」
「名前を言ってくれればその子に連絡するから」
初老の男性警備員は普段は柔和な印象なのだが、今は少し厳しい顔をしている。
「名前…………制服エプロンの人っす!!」
「……………あのね、素性の分からない子たちを、それで通すわけないよね?」
うん、通すわけないと白音も賛成する。
だがエレスケのメインボーカル、風見詩緒も警備員に食ってかかる。
「素性って、わたしたち☆、エレメントスケイプよ。みんな知ってるでしょ?」
「いや、そう言われてもねぇ」
今日、朝一番のテレビ情報番組で『今注目のネットアイドル』としてエレメントスケイプを紹介していた。
そのせいもあってか、黎鳳の中にも彼女たちの事を知っている生徒がちらほらいるようだった。
しかし夜勤あがりの警備員にとっては知ったことではない。
困った子たち以外の何者でもなかった。
火浦いつきの言う『制服エプロン』とは、この前共同戦線を張った時に白音がしていた格好のことであろう。
白音たちは回れ右をして、他人のふりをして通り過ぎようとするが、大きな声で呼び止められた。
「ピンクちゃん、ブルーちゃん!!」
水尾紗那が目ざとく白音たちを見つけてしまった。
確か青いコスチュームを着ていたメンバーだと思う。
しかしこの人だかりの中でコスチュームカラーで呼ぶのはやめて欲しい。
それだけでかなり魔法少女っぽい。白音は走って逃げ出したくなっていた。
「なんでここが分かったのよ……」
「この前ここの制服着てたじゃないの」
ちょっと残念な子たちなのかと思い始めていたが、意外と抜け目がないのかもしれない。
確かにこの前はリンクスから任務終了の宣言が出た時に、白音とそらだけが律儀に変身を解いていたように思う。
佳奈は何も気にせずそのまま帰ってしまったし、莉美などは変身したままみんなに魔力を分け与えて回っていた。
だから曙台組は身元を突き止める手がかりがなくて、黎鳳の方へ来たのだろう。
そう考えると、白音はなんだかちょっとモヤっとした。
「ここじゃ迷惑ですから、どこか場所を移しましょうか」
エレスケのリーダー、土屋千咲がたしなめるような口調でそう言った。
アイドルはスルースキルが大事なのかしら、と思いながら白音はしかし断固拒否する。
ここでみんなと待ち合わせをしているのだ。四人に用はない。
そこへタイミングがいいのか悪いのか、佳奈と莉美がやって来た。
「白音ちゃん、そらちゃん、お待たせー」
「おお、なんだ、変なのに絡まれてるのか?」
佳奈が言った『変なの』の部分に詩緒が反応した。
絡んでいるのは間違いない。
「変じゃない!! ああ、あなたたちは! この前テレビ塔の時、一緒だったでしょ?」
「ああ。……えーと、んー、エロスケ?」
「覚えてないにしてもそれなんかヤダ……」
なんとなくでも佳奈が覚えていたのは、それなりに興味を持っていたのだろう。
莉美が小声で訂正してくれる。
「エレスケだよ。エレメントスケイプ」
「ああ、ごめんごめん。エレスケね。んで、白音たちに用事? アタシたちこれから行くとこあるんだけど」
絡んでくる人対策に佳奈は大変有能である。それは十年前から間違いない。
「じゃあわたしたちも一緒に☆」
「いやいや、なんでさ」
「なんでって、お近づきになりたいのよ☆」
「だからなんで?」
「わたしたち、同業者なんだから、ライバル☆としていい関係を築きたいのよ」
「ライバル……なん?」
佳奈がこっちを向いて聞いてきた。
もちろん白音もそんな話は知らない。
しかしこの詩緒という子は結構押しの強い子だなと思う。
アイドルとしてやっていこうなんて人は、やはりそうでないと生き残れないのかもしれない。
「だって同じ魔法少女アイドル☆なんだし、そうでしよ?」
「いやいや、アイドルなんかやらないって」
「四人組でパーソナルカラーがあって、どこからどう見てもそうでしょ?」
「違うって」
「メインのピンクさん、どう見てもアイドルでしょ」
「まあ、そりゃ……、うん」
押し問答で佳奈を押せるとは大したものだが、いやいやそこも否定してよ、と白音は思う。
警備員が白音に「知り合いなのかい?」と聞いてきた。
否定すると彼女たちが警察に通報されそうだったので肯定する。
そうすると当然「あまり校門前で騒がないでね」と退去を促されたので、「もうひとり待ち合わせているので待たないといけない」と頼み込む。
警備員にとってはエレスケは知らない子たちだが、白音とそらは学院の有名人である。
真面目な生徒なのはよく知っているので、「できるだけ静かにね」と容認してくれる。
成績優秀者にはそれなりの特権があるものだ。
「じゃあ一緒に来る? わたしは別にいいよ」
と白音は受け容れることにした。彼女たちのチームに興味があるのは確かだ。
ただ、この場では大人しくしていて欲しい。
佳奈が何か言いかけたが、莉美が止める。
「白音ちゃん、エレスケの事、前から興味あったみたいだよ? 佳奈ちゃんのせいなんだけど」
白音が魔法少女に憧れたのは佳奈がきっかけである。
それは面はゆいが佳奈にとって誇らしい想い出である。
それで白音は魔法少女のことを調べるようになって、エレスケを知ったのだ。
確かに自分のせいだなと佳奈は認める。
「リーダーの決定は絶対なの」
「う……。了解」
そしてそらに駄目を押された。
そんな風に言われれば佳奈には返す言葉もない。
リーダーになって欲しいと言ったのは自分たちだ。
まあ今日は大人数でわいわいやればいいかと佳奈は切り替えた。
「ただし、身元は明かしてもらうの」
そらに言われて、魔法少女ギルドの登録証をスマートフォンに表示させてみんなで見せ合う。
軍曹に教えてもらったやり方だ。
伏せたいところを選択できるようになっている。
ギルドが間接的に身元を保証してくれるわけだ。
端から見ればみんなでSNSの連絡先を交換しているようにしか見えないだろう。
「みんな、お待たせっ!!」
そこへ一恵が遅れてやって来た。
『異世界エルフ』はもう異世界へ帰りました。
というくらいキャラクターが崩壊している。
ハイテンションで駆けてくる一恵は年相応の女子高生に見える。
一恵は曙台の二年生である。
当然佳奈たちと同じ終業式に出ていたのだが、芸能活動休止の報告と、今後について担任の先生と相談していたので少し遅れたのだ。
「えぁ?!」
「うあぅ?!」
エレスケの面々が一恵を見て、それぞれオリジナリティ溢れる素っ頓狂な声を出して目をむいている。
「ん? 誰?」
瞬時に、一恵がテレビでよく見せていた無表情になってエレスケたちを訝しむ。
「わたしたち、☆エレメントスケイプ☆ですっ!」
特に示し合わせたわけでもないだろうに、綺麗に四人で決めポーズを作って自己紹介した。
ネット動画のオープニングで使っている奴だ。
Hitoeは、芸能界を夢見るエレスケたちが目標とする存在だった。
「ああ、うん、そう」
一恵が、一応ちらりとだけ見て生返事をする。
白音が心の中で「興味を持ってあげて!!」と叫んだ。
季節は真夏の盛りへと向かい、白音たちは高校生活最初の一学期を終えていた。
公立も私立も一斉に終業式を迎え、明日からは夏休みとなる。
さすがに曙台高校の補習組もそれは同じはずである。
この数ヶ月、白音たちにとっては実に様々な事があった。
あり過ぎたと言った方がいいかもしれない。
特に鬼軍曹からは厳しく鍛えられて何度も痛い目を見た。
そしてその分、得るものも多かった。
最初はやたら口が悪くて取っつきの悪い印象だったが、まあ……今でも口は悪い。
だが信頼は寄せている。
夏休みを前に、白音たち五人は通知表よろしくS級に昇格、との認定を軍曹から受けた。
もちろんこれで訓練が終わるわけはない。
夏休みにはさらなる特訓が待っているぞと、当たり前のように告げられている。
軍曹が、白音たちを自分よりも強い魔法少女に鍛えると言っていたのは、どうやら本気のようだった。
ギルドの中でも最強クラス、SS級の戦闘能力を持つ鬼軍曹を超えなければいけないのだ。
◇
白音とそらの通う、黎鳳女学院には名門の家柄の子女が多い。
長期休暇は別荘や海外で過ごす子がほとんどで、だから夏休みに友人同士で遊ぶという機会はあまりない。
それでもやはり休みを前にした雰囲気は浮き立っており、皆楽しげに会話を交わしながら下校していく。
もちろん白音とそらもその例に漏れず、はやる気持ちを抑えきれないといった様子で校門へと向かっていた。
ふたりが連れ立って下校するのは、いつもの光景になりつつある。
しかしそれでも今日のように、珍しくそらが満面の笑顔で白音の腕に絡みついていたりすると、まだ周囲がどよめいたり、スマホのカメラを向けられたりはする。
今日は初めて五人全員の予定が空いている日ということで、勢揃いしてアジトへ向かうことになっている。
一恵がアジトへ行くのは初めてなので、みんなで集合してから道案内をするつもりだ。
市内をひと周りする路線バスで行けば、アジトへは黎鳳女学院前の停留所の方が近い。
前回はいつも遅くまで勉強を頑張っている佳奈と莉美のために曙台高校の前で待っていたが、今回は五人で黎鳳女学院の前で待ち合わせをしている。
終業式にまで補習がなくて幸いだった。
佳奈たちが先に着いた場合は、あまり周囲の耳目を集めないよう隅っこの日陰で待っているようにとは言ってある。
だが白音とそらが校門を出ると、果たしてそこに人だかりができていた。
人だかりというものは不思議とその関心事の内容を空気感として纏うもので、凶事か吉事か、周りを見ただけで何となく察しがつく。
今回のものは珍事に分類される注目の集め方だ。
「うちのがすみません」
と言いながら白音が駆け寄ると、問題を起こしていたのは『うちの』ではなかった。
黎鳳の警備員が四人組の女の子たちと押し問答をしていた。
四人はもはや見知った顔、『エレメントスケイプ』の面々だった。
学校に入ろうとして火浦いつきが襟首を掴まれている。
「だから知り合いに会いに来ただけっすよ」
「名前を言ってくれればその子に連絡するから」
初老の男性警備員は普段は柔和な印象なのだが、今は少し厳しい顔をしている。
「名前…………制服エプロンの人っす!!」
「……………あのね、素性の分からない子たちを、それで通すわけないよね?」
うん、通すわけないと白音も賛成する。
だがエレスケのメインボーカル、風見詩緒も警備員に食ってかかる。
「素性って、わたしたち☆、エレメントスケイプよ。みんな知ってるでしょ?」
「いや、そう言われてもねぇ」
今日、朝一番のテレビ情報番組で『今注目のネットアイドル』としてエレメントスケイプを紹介していた。
そのせいもあってか、黎鳳の中にも彼女たちの事を知っている生徒がちらほらいるようだった。
しかし夜勤あがりの警備員にとっては知ったことではない。
困った子たち以外の何者でもなかった。
火浦いつきの言う『制服エプロン』とは、この前共同戦線を張った時に白音がしていた格好のことであろう。
白音たちは回れ右をして、他人のふりをして通り過ぎようとするが、大きな声で呼び止められた。
「ピンクちゃん、ブルーちゃん!!」
水尾紗那が目ざとく白音たちを見つけてしまった。
確か青いコスチュームを着ていたメンバーだと思う。
しかしこの人だかりの中でコスチュームカラーで呼ぶのはやめて欲しい。
それだけでかなり魔法少女っぽい。白音は走って逃げ出したくなっていた。
「なんでここが分かったのよ……」
「この前ここの制服着てたじゃないの」
ちょっと残念な子たちなのかと思い始めていたが、意外と抜け目がないのかもしれない。
確かにこの前はリンクスから任務終了の宣言が出た時に、白音とそらだけが律儀に変身を解いていたように思う。
佳奈は何も気にせずそのまま帰ってしまったし、莉美などは変身したままみんなに魔力を分け与えて回っていた。
だから曙台組は身元を突き止める手がかりがなくて、黎鳳の方へ来たのだろう。
そう考えると、白音はなんだかちょっとモヤっとした。
「ここじゃ迷惑ですから、どこか場所を移しましょうか」
エレスケのリーダー、土屋千咲がたしなめるような口調でそう言った。
アイドルはスルースキルが大事なのかしら、と思いながら白音はしかし断固拒否する。
ここでみんなと待ち合わせをしているのだ。四人に用はない。
そこへタイミングがいいのか悪いのか、佳奈と莉美がやって来た。
「白音ちゃん、そらちゃん、お待たせー」
「おお、なんだ、変なのに絡まれてるのか?」
佳奈が言った『変なの』の部分に詩緒が反応した。
絡んでいるのは間違いない。
「変じゃない!! ああ、あなたたちは! この前テレビ塔の時、一緒だったでしょ?」
「ああ。……えーと、んー、エロスケ?」
「覚えてないにしてもそれなんかヤダ……」
なんとなくでも佳奈が覚えていたのは、それなりに興味を持っていたのだろう。
莉美が小声で訂正してくれる。
「エレスケだよ。エレメントスケイプ」
「ああ、ごめんごめん。エレスケね。んで、白音たちに用事? アタシたちこれから行くとこあるんだけど」
絡んでくる人対策に佳奈は大変有能である。それは十年前から間違いない。
「じゃあわたしたちも一緒に☆」
「いやいや、なんでさ」
「なんでって、お近づきになりたいのよ☆」
「だからなんで?」
「わたしたち、同業者なんだから、ライバル☆としていい関係を築きたいのよ」
「ライバル……なん?」
佳奈がこっちを向いて聞いてきた。
もちろん白音もそんな話は知らない。
しかしこの詩緒という子は結構押しの強い子だなと思う。
アイドルとしてやっていこうなんて人は、やはりそうでないと生き残れないのかもしれない。
「だって同じ魔法少女アイドル☆なんだし、そうでしよ?」
「いやいや、アイドルなんかやらないって」
「四人組でパーソナルカラーがあって、どこからどう見てもそうでしょ?」
「違うって」
「メインのピンクさん、どう見てもアイドルでしょ」
「まあ、そりゃ……、うん」
押し問答で佳奈を押せるとは大したものだが、いやいやそこも否定してよ、と白音は思う。
警備員が白音に「知り合いなのかい?」と聞いてきた。
否定すると彼女たちが警察に通報されそうだったので肯定する。
そうすると当然「あまり校門前で騒がないでね」と退去を促されたので、「もうひとり待ち合わせているので待たないといけない」と頼み込む。
警備員にとってはエレスケは知らない子たちだが、白音とそらは学院の有名人である。
真面目な生徒なのはよく知っているので、「できるだけ静かにね」と容認してくれる。
成績優秀者にはそれなりの特権があるものだ。
「じゃあ一緒に来る? わたしは別にいいよ」
と白音は受け容れることにした。彼女たちのチームに興味があるのは確かだ。
ただ、この場では大人しくしていて欲しい。
佳奈が何か言いかけたが、莉美が止める。
「白音ちゃん、エレスケの事、前から興味あったみたいだよ? 佳奈ちゃんのせいなんだけど」
白音が魔法少女に憧れたのは佳奈がきっかけである。
それは面はゆいが佳奈にとって誇らしい想い出である。
それで白音は魔法少女のことを調べるようになって、エレスケを知ったのだ。
確かに自分のせいだなと佳奈は認める。
「リーダーの決定は絶対なの」
「う……。了解」
そしてそらに駄目を押された。
そんな風に言われれば佳奈には返す言葉もない。
リーダーになって欲しいと言ったのは自分たちだ。
まあ今日は大人数でわいわいやればいいかと佳奈は切り替えた。
「ただし、身元は明かしてもらうの」
そらに言われて、魔法少女ギルドの登録証をスマートフォンに表示させてみんなで見せ合う。
軍曹に教えてもらったやり方だ。
伏せたいところを選択できるようになっている。
ギルドが間接的に身元を保証してくれるわけだ。
端から見ればみんなでSNSの連絡先を交換しているようにしか見えないだろう。
「みんな、お待たせっ!!」
そこへ一恵が遅れてやって来た。
『異世界エルフ』はもう異世界へ帰りました。
というくらいキャラクターが崩壊している。
ハイテンションで駆けてくる一恵は年相応の女子高生に見える。
一恵は曙台の二年生である。
当然佳奈たちと同じ終業式に出ていたのだが、芸能活動休止の報告と、今後について担任の先生と相談していたので少し遅れたのだ。
「えぁ?!」
「うあぅ?!」
エレスケの面々が一恵を見て、それぞれオリジナリティ溢れる素っ頓狂な声を出して目をむいている。
「ん? 誰?」
瞬時に、一恵がテレビでよく見せていた無表情になってエレスケたちを訝しむ。
「わたしたち、☆エレメントスケイプ☆ですっ!」
特に示し合わせたわけでもないだろうに、綺麗に四人で決めポーズを作って自己紹介した。
ネット動画のオープニングで使っている奴だ。
Hitoeは、芸能界を夢見るエレスケたちが目標とする存在だった。
「ああ、うん、そう」
一恵が、一応ちらりとだけ見て生返事をする。
白音が心の中で「興味を持ってあげて!!」と叫んだ。
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