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第百四十章
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第百四十章
ちょうど同じ時。ミアレ姫とクランは水晶洞窟の入り口近くを進んでいた。
斬られた結晶の残骸がさながら生首が転がるように散乱していた。
「クランよ。いったいこれは誰の仕業でしょう」
先を急ぎつつミアレ姫は尋ねた。
「ここが禁忌めいた場所であることを知っていてあえて足を踏み入れた者。そして、おそらくは龍の禁忌を知っている者……恐れを知らぬ者……」
クランは禁忌を避ける仕草をしたが、瞬間、耳元に冷たい風のようなものが触れて過ぎるのを感じた。これは死霊だ。
水晶の切り口へ目をやったクランはその断面の鮮やかさを見てとった。これを斬った剣は並々ならぬ剣のはず。
クランは青い目を閉じ、いにしえの言葉の朗唱を始めた。
明暗反転した視野の中で斬られた水晶が悲鳴を上げていた。洞窟の高い天井には巨大な蚊柱のように死霊の影が閃き、渦巻き、のたうっている。
「急ごう、誰かに先を越されたのかもしれない」
クランの言葉に姫は口元を引き締めてうなずいた。二人は腰の剣に手を当てて道を進んでいった。
やがて二人はすでにコルウスとココが入り込んでいた正六角形の広間にたどり着いた。
それはちょうどコルウスたちが耳の根舌の根を手にしようとしていた時だった。
クランはひと目でそこにいるのがコルウスだと見てとった。腰の剣、すなわち、セレチェンの剣が身震いするように震え、金属的な唸りを上げた。
素早く剣を抜き放ったクランはその切っ先をコルウスへ向けて叫んだ。
「コルウスよ、父セレチェンの命を奪った仇よ。そんなところで何をしている!」
祭壇へ屈み込んでいたコルウスとココは響き渡るその声に振り返った。
コルウスはまるでこのことを予期していたかのように口の端を吊り上げて笑った。
「おい、ココよ。お前の勘ってやつも馬鹿にならねえな。見ろ、イーグル・アイと王の血脈が俺たちと同じところへ。こいつは多分、同じものを探しに来たんだぜ。てことは……」
コルウスは無造作な手つきで扇の形をした耳の根舌の根を拾い上げた。それには一切、重さがなかった。
「こいつは正真正銘、本物だってことだ。どうだい、クランよ。そして、姫さま。こいつを探しに来たんだろう」
コルウスが二人に見せつけるようにそれを突き出した時、扇形の薄片はその指先からスルリと逃れ、鳥の羽のようにフワリと宙に舞った。
まるで捕らえた虫に逃げられたようにコルウスは慌て、両手ではさむようにしてそれを捕まえようとした。
ココも脇から手を出したが、その空気の動きのせいだろうか、耳の根舌の根は二人の手先で踊るように飛び跳ね、なかなか捕らえられない。
クランはセレチェンの剣とともにコルウスへ突進して行った。
「コルウスよ、それはお前の手に負えるものではない!」
渾身の力をこめた刀身は水晶洞窟の光を集めてすさまじいばかりに輝いた。
その太刀風を感じたか、コルウスはとっさに一歩、片足を引いて剣を抜き放った。
光の剣と闇の剣とがぶつかって鋭い金属音をさせた。その音は六角形の水晶洞窟へ反響し、耳を圧する轟音になって帰ってきた。
刀身と刀身とを合わせたまま二人はにらみ合った。
コルウスの剣はのたうつ蛇のように闇をまとわりつかせていた。その闇がクランの剣をも取り込んでやろうと触手を伸ばしていた。
しかし、クランの剣はそれにあらがっていた。闇がクランの剣に触れようとすると、小さな火花が飛んで焦げ臭い匂いが漂った。セレチェンの魂は剣とともに生きていた。
その匂いを嗅いだコルウスは苦い顔になった。
「ちっ、しぶとい親父だぜ。親父の魂の根ってのはどこにあるんだ、クランよ。俺がそいつを断ち切ってやろう」
「黙れ、ならず者め。お前こそ魂をどこへ捨ててきた。闇の王の玉座の下か」
コルウスは力任せにクランの剣をはねのけた。
素早く体勢を整え、間合いを取り直したクランの剣はブルクット族の流儀で横方向の8の字を描いた。すでにクランの姿にはセレチェンの魂が二重映しになっていた。
ジリジリと左へ左へと回り込みながら、コルウスと対峙するクラン。シャーマンの装束が揺れてビーズが乾いた音をさせた。
コルウスの切っ先も横方向の8の字を描いていた。イライラしたように、せわしなく刀身を揺らすコルウス。その口元に皮肉な笑みが浮かんだ。
「おい、クランよ。お前、腕を上げたんじゃねえのか。その剣に血を吸わせてよ。姫さまのお供もつらいな」
クランは思わずカッとなって横殴りに斬ってかかった。
軽く身をひるがえしたコルウスはその剣を払い除け、大胆に踏み込んで突きを繰り出した。
クランはそれをかわすのがやっとで手の甲に浅手を追った。血がしたたって剣の柄を濡らした。
「どうした、クラン。お前の青い目が血走って赤くなっているじゃねえか」
コルウスの挑発にクランは荒っぽく剣を振り回した。コルウスは難なくそれを避けた。クランは久々に仇敵コルウスを間近にして冷静を失っていたのだった。
「クラン、セレチェンの魂と息を合わせるのです!」
ミアレ姫の声が響いて、クランは、はやる気持ちを落ち着かせた。浅くなっていた呼吸を深くして、また切っ先で横8の字を描く。
姫とココとは、二人のブルクット族の戦いを遠巻きにしていた。扇形の薄片は頭上高く舞い上がってしまって水晶のきらめきの中に姿を消している。
ココはミアレ姫にじっと視線を向けていた。姫のまわりに精霊が群れ集うのが分かった。自分は死霊の側に、姫は精霊の側にいるというわけだった。
ふたたび剣と剣が打ち合う鋭い音がしはじめた。
すでにクランは冷静を取り戻していた。セレチェンの魂とともに打ち込んでいく。
クランはコルウスの二の腕に手傷を負わせた。
「ちくしょう、親父と二人がかりとは面倒だぜ」
コルウスはよろめいたが、漆黒の上着の中で赤い傷口はすぐにふさがった。闇の蛇の力は健在だ。
このままでは決着がつかない。クランはそう悟った。今はセレチェンの仇を討つことより耳の根舌の根を確保することが先決だ。
その時、コルウスも同じことを考えていた。しょせん自分の剣技ではブルクット族一の剣士の魂とイーグル・アイを相手に勝てるわけがない。それならば。
コルウスはとっさに鴉に化身した。耳の根舌の根はこの大空間の中空を漂っているはずだ。鴉のコルウスは翼を羽ばたかせて六角形の空間へ舞い上がった。
しまったとクランが頭上を見上げた時、轟音とともに火球が飛んだ。とっさにミアレ姫が放ったものだった。
一瞬で火に包まれたコルウスはしわがれた鳴き声を上げ漆黒の翼を乱した。羽毛が燃え上がり空中で化身が解けたコルウスは漆黒の衣服から白煙を上げながら地面に叩きつけられた。
「余計なことするんじゃないよ!」
怒りにかられたココがミアレ姫に向かって死霊の炎を放った。その魔法印は姫の結んだ印と同じものだったが、手順も形も乱れていて火球を成さず、炎の蛇のように姫に迫った。
ミアレ姫はあくまでも冷静を保っていた。精霊と共にあるためには魂の静けさが求められるとユーグから学んでいた。
王都にいた頃はそれを試されることもほとんどなかったが、草原を、森を、荒れ野を旅するうちには姫の心にも変化があった。
いまや、ミアレ姫は魔法を見事に制御していた。ココの放った炎の蛇は姫がとっさに展開した魔法障壁にさえぎられ、震える悲鳴めいた音ともに中空に消えた。
ココは魔法印を結び直し、もう一度、炎を放った。しかし、その炎は前の時以上に乱れて力ない雲のようだった。
ミアレ姫はもう魔法障壁を展開すらしなかった。炎は姫の頬を舐め、髪をかき乱したが、火傷ひとつ負わせることはできなかった。
ココは印を結んだ手を震わせて、その場に突っ立っているばかりだった。
ココの死霊魔法には真の力がなかった。
魔法は精霊の力を使役するのではない。その加護を請い、同時に我が身を投げ出すのだ。ココは死霊を下僕のように使おうとばかりしていた。
ココと同じくコルウスも、すでに肉体の傷は消えていたが、焼け焦げた漆黒の装束姿で立ちすくみ、クランとにらみ合うばかりだ。
中空を漂っていた耳の根舌の根がくるくると回転しながら舞い降りてきた。蝶のように空中を滑った薄片は王の血脈に慕い寄った。ミアレ姫はそれを手に取った。
扇形の薄片は姫の手のひらの上で息づくように光っていた。語りかけてくるように、また、何かを警告するかのように。
コルウスとココはそれを見ていながら手を出すことができずにいた。まるで聖地に拒まれた者たちのように身をすくませているばかりだ。
ミアレ姫はクランを振り返った。
「イーグル・アイよ。これはあなたの領分でしょう。あなたが持っていてください」
すでにセレチェンの剣を納めていたクランが光る扇を受け取ろうとした時、第三の者たちがこの聖なる場所へ踏み込んできた。
ちょうど同じ時。ミアレ姫とクランは水晶洞窟の入り口近くを進んでいた。
斬られた結晶の残骸がさながら生首が転がるように散乱していた。
「クランよ。いったいこれは誰の仕業でしょう」
先を急ぎつつミアレ姫は尋ねた。
「ここが禁忌めいた場所であることを知っていてあえて足を踏み入れた者。そして、おそらくは龍の禁忌を知っている者……恐れを知らぬ者……」
クランは禁忌を避ける仕草をしたが、瞬間、耳元に冷たい風のようなものが触れて過ぎるのを感じた。これは死霊だ。
水晶の切り口へ目をやったクランはその断面の鮮やかさを見てとった。これを斬った剣は並々ならぬ剣のはず。
クランは青い目を閉じ、いにしえの言葉の朗唱を始めた。
明暗反転した視野の中で斬られた水晶が悲鳴を上げていた。洞窟の高い天井には巨大な蚊柱のように死霊の影が閃き、渦巻き、のたうっている。
「急ごう、誰かに先を越されたのかもしれない」
クランの言葉に姫は口元を引き締めてうなずいた。二人は腰の剣に手を当てて道を進んでいった。
やがて二人はすでにコルウスとココが入り込んでいた正六角形の広間にたどり着いた。
それはちょうどコルウスたちが耳の根舌の根を手にしようとしていた時だった。
クランはひと目でそこにいるのがコルウスだと見てとった。腰の剣、すなわち、セレチェンの剣が身震いするように震え、金属的な唸りを上げた。
素早く剣を抜き放ったクランはその切っ先をコルウスへ向けて叫んだ。
「コルウスよ、父セレチェンの命を奪った仇よ。そんなところで何をしている!」
祭壇へ屈み込んでいたコルウスとココは響き渡るその声に振り返った。
コルウスはまるでこのことを予期していたかのように口の端を吊り上げて笑った。
「おい、ココよ。お前の勘ってやつも馬鹿にならねえな。見ろ、イーグル・アイと王の血脈が俺たちと同じところへ。こいつは多分、同じものを探しに来たんだぜ。てことは……」
コルウスは無造作な手つきで扇の形をした耳の根舌の根を拾い上げた。それには一切、重さがなかった。
「こいつは正真正銘、本物だってことだ。どうだい、クランよ。そして、姫さま。こいつを探しに来たんだろう」
コルウスが二人に見せつけるようにそれを突き出した時、扇形の薄片はその指先からスルリと逃れ、鳥の羽のようにフワリと宙に舞った。
まるで捕らえた虫に逃げられたようにコルウスは慌て、両手ではさむようにしてそれを捕まえようとした。
ココも脇から手を出したが、その空気の動きのせいだろうか、耳の根舌の根は二人の手先で踊るように飛び跳ね、なかなか捕らえられない。
クランはセレチェンの剣とともにコルウスへ突進して行った。
「コルウスよ、それはお前の手に負えるものではない!」
渾身の力をこめた刀身は水晶洞窟の光を集めてすさまじいばかりに輝いた。
その太刀風を感じたか、コルウスはとっさに一歩、片足を引いて剣を抜き放った。
光の剣と闇の剣とがぶつかって鋭い金属音をさせた。その音は六角形の水晶洞窟へ反響し、耳を圧する轟音になって帰ってきた。
刀身と刀身とを合わせたまま二人はにらみ合った。
コルウスの剣はのたうつ蛇のように闇をまとわりつかせていた。その闇がクランの剣をも取り込んでやろうと触手を伸ばしていた。
しかし、クランの剣はそれにあらがっていた。闇がクランの剣に触れようとすると、小さな火花が飛んで焦げ臭い匂いが漂った。セレチェンの魂は剣とともに生きていた。
その匂いを嗅いだコルウスは苦い顔になった。
「ちっ、しぶとい親父だぜ。親父の魂の根ってのはどこにあるんだ、クランよ。俺がそいつを断ち切ってやろう」
「黙れ、ならず者め。お前こそ魂をどこへ捨ててきた。闇の王の玉座の下か」
コルウスは力任せにクランの剣をはねのけた。
素早く体勢を整え、間合いを取り直したクランの剣はブルクット族の流儀で横方向の8の字を描いた。すでにクランの姿にはセレチェンの魂が二重映しになっていた。
ジリジリと左へ左へと回り込みながら、コルウスと対峙するクラン。シャーマンの装束が揺れてビーズが乾いた音をさせた。
コルウスの切っ先も横方向の8の字を描いていた。イライラしたように、せわしなく刀身を揺らすコルウス。その口元に皮肉な笑みが浮かんだ。
「おい、クランよ。お前、腕を上げたんじゃねえのか。その剣に血を吸わせてよ。姫さまのお供もつらいな」
クランは思わずカッとなって横殴りに斬ってかかった。
軽く身をひるがえしたコルウスはその剣を払い除け、大胆に踏み込んで突きを繰り出した。
クランはそれをかわすのがやっとで手の甲に浅手を追った。血がしたたって剣の柄を濡らした。
「どうした、クラン。お前の青い目が血走って赤くなっているじゃねえか」
コルウスの挑発にクランは荒っぽく剣を振り回した。コルウスは難なくそれを避けた。クランは久々に仇敵コルウスを間近にして冷静を失っていたのだった。
「クラン、セレチェンの魂と息を合わせるのです!」
ミアレ姫の声が響いて、クランは、はやる気持ちを落ち着かせた。浅くなっていた呼吸を深くして、また切っ先で横8の字を描く。
姫とココとは、二人のブルクット族の戦いを遠巻きにしていた。扇形の薄片は頭上高く舞い上がってしまって水晶のきらめきの中に姿を消している。
ココはミアレ姫にじっと視線を向けていた。姫のまわりに精霊が群れ集うのが分かった。自分は死霊の側に、姫は精霊の側にいるというわけだった。
ふたたび剣と剣が打ち合う鋭い音がしはじめた。
すでにクランは冷静を取り戻していた。セレチェンの魂とともに打ち込んでいく。
クランはコルウスの二の腕に手傷を負わせた。
「ちくしょう、親父と二人がかりとは面倒だぜ」
コルウスはよろめいたが、漆黒の上着の中で赤い傷口はすぐにふさがった。闇の蛇の力は健在だ。
このままでは決着がつかない。クランはそう悟った。今はセレチェンの仇を討つことより耳の根舌の根を確保することが先決だ。
その時、コルウスも同じことを考えていた。しょせん自分の剣技ではブルクット族一の剣士の魂とイーグル・アイを相手に勝てるわけがない。それならば。
コルウスはとっさに鴉に化身した。耳の根舌の根はこの大空間の中空を漂っているはずだ。鴉のコルウスは翼を羽ばたかせて六角形の空間へ舞い上がった。
しまったとクランが頭上を見上げた時、轟音とともに火球が飛んだ。とっさにミアレ姫が放ったものだった。
一瞬で火に包まれたコルウスはしわがれた鳴き声を上げ漆黒の翼を乱した。羽毛が燃え上がり空中で化身が解けたコルウスは漆黒の衣服から白煙を上げながら地面に叩きつけられた。
「余計なことするんじゃないよ!」
怒りにかられたココがミアレ姫に向かって死霊の炎を放った。その魔法印は姫の結んだ印と同じものだったが、手順も形も乱れていて火球を成さず、炎の蛇のように姫に迫った。
ミアレ姫はあくまでも冷静を保っていた。精霊と共にあるためには魂の静けさが求められるとユーグから学んでいた。
王都にいた頃はそれを試されることもほとんどなかったが、草原を、森を、荒れ野を旅するうちには姫の心にも変化があった。
いまや、ミアレ姫は魔法を見事に制御していた。ココの放った炎の蛇は姫がとっさに展開した魔法障壁にさえぎられ、震える悲鳴めいた音ともに中空に消えた。
ココは魔法印を結び直し、もう一度、炎を放った。しかし、その炎は前の時以上に乱れて力ない雲のようだった。
ミアレ姫はもう魔法障壁を展開すらしなかった。炎は姫の頬を舐め、髪をかき乱したが、火傷ひとつ負わせることはできなかった。
ココは印を結んだ手を震わせて、その場に突っ立っているばかりだった。
ココの死霊魔法には真の力がなかった。
魔法は精霊の力を使役するのではない。その加護を請い、同時に我が身を投げ出すのだ。ココは死霊を下僕のように使おうとばかりしていた。
ココと同じくコルウスも、すでに肉体の傷は消えていたが、焼け焦げた漆黒の装束姿で立ちすくみ、クランとにらみ合うばかりだ。
中空を漂っていた耳の根舌の根がくるくると回転しながら舞い降りてきた。蝶のように空中を滑った薄片は王の血脈に慕い寄った。ミアレ姫はそれを手に取った。
扇形の薄片は姫の手のひらの上で息づくように光っていた。語りかけてくるように、また、何かを警告するかのように。
コルウスとココはそれを見ていながら手を出すことができずにいた。まるで聖地に拒まれた者たちのように身をすくませているばかりだ。
ミアレ姫はクランを振り返った。
「イーグル・アイよ。これはあなたの領分でしょう。あなたが持っていてください」
すでにセレチェンの剣を納めていたクランが光る扇を受け取ろうとした時、第三の者たちがこの聖なる場所へ踏み込んできた。
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