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第八十ニ章
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第八十二章
急いで屋敷へ帰ったグインは寝静まっている廊下を通り抜け、礼拝の間へ入った。
立ち並ぶ神像の前に置かれた背もたれの高い肘掛け椅子に自称『闇の王』のコルウスが座っていた。玉座の剣を椅子の横に立てかけ、いつもは深き泉の水を捧げている青銅の椀で酒を飲んでいる。足の下には砕けたダファネアの頭があった。
「我が王よ……闇の王よ……」
グインはいそいそとコルウスの前にひざまずき、王宮さながらの礼法で頭を下げた。コルウスは無言のまま長老を見下ろしていた。
「畏れながら、我が族長は賢き決断に至りませんでした……つまり……」
「俺の下にはつかねえっていうんだろう。まわりくどい言い方しねえでも分かりきったことだぜ……」
族長ともあろう者がそう簡単に土地の精霊を捨てて、『闇の王』などという得体の知れない物に屈服するわけがない。コルウスにも最初から予想がついていた。
「族長はどうするつもりだ。ちゃんと探って来たんだろうな」
コルウスはバレルに指示された堅苦しい言葉使い、重々しく見える態度をかなぐり捨てていた。酔っているせいもあるが、バレルが書いた茶番劇に飽きてきたせいもある。
グインはさらに深く頭を下げてから目ばかりを卑屈にコルウスへうわ向けた。
「それはもちろん。族長ホワソンはナビ教祭司クレオン、そして、テン族族長アーメルと手を結ぶべく使者を出すつもりでおります。今のうちに止めるのが……」
グインの話を最後まで聞きもせず、コルウスは神像の陰へ声をかけた。
「おい、使者が出るぞ。街道を見張らせて仕留めろ」
神像の陰から杖を突いて現れたのはバレルだった。戸惑うグインに軽く会釈したバレルはいったん廊下へ出ると、窓から顔を出し、短く一つ呼子の笛を吹いた。
すぐに黒衣の者が窓の下に姿を見せた。以前から町に潜入させていた密偵だ。バレルが指示を与えると、黒衣の者は闇に消えた。
礼拝の間へ戻って来たバレルにグインは怪訝そうな表情になった。
「闇の王よ、この方はいったい……」
コルウスは水瓶から椀へ酒を注ぎながら面倒そうに顎をしゃくった。
「こいつは軍師さ。当てにはならねえがな」
最後の方は酒の椀に口をつけてくぐもった声で言ったコルウスに当の軍師バレルは苦い顔になった。
長老グインはバレルの顔をまじまじと見て目を見張った。
「その刺青は……もしやブルクット族の……」
「ほお、長老はこんな刺青をどこかで見ましたか」
「見ましたとも。王の血脈の立ち会われた部族和解の場で。ちょうどあなたのような若者で、なぜこのような者がと不審に思ったのだが……」
バレルは万事承知だという顔でうなずいた。
「それはブルクット族族長ウルの息子でカラゲルでしょう。稲妻の刺青の者です。私の刺青は鷲、これは長老の息子のしるしです。もしかして長老は王都で私の父に会ったことはありませんか。ジャルガと言って……」
グインはジャルガの名前に感嘆の表情を浮かべた。荒れ野に逃れたシュメル王子を見つけ出し、王として王都に帰還させた男。カナ族とメル族の半ば公然たる王権簒奪の陰謀へ待ったをかけた男。グインはジャルガをそう記憶していた。
しかし、感嘆の表情はすぐに怪訝な表情に変わった。
「ブルクット族は王の血脈の側についているのではないのですか。なぜ、あなたは闇の王に仕えているのです」
「まあ……それは話すと長くなりますが……」
コルウスがフンと鼻を鳴らして笑った。
「部族のできそこないだからさ。長老、これから戦争になったら、こいつもどこかで役に立つはずだ。なにしろ兵隊を持っているからな」
「なんと、軍勢を……」
グインはやや顔色を青ざめさせたようだった。軍勢が乗り込んでくるとなれば、この町の主導権はどうなるのか。さらにはオルテン河流域の支配権は。
「長老よ、お前たちのような百姓ばかりで戦争ができると思っていたのか。戦争には兵隊と軍師、それに……」
玉座の剣を取り上げ鞘から引き抜いたコルウスは闇をまとう刀身をグインの鼻先に突きつけて見せた。
「王が必要なのさ」
夜明け前、グインは町の主だった者たちのもとへ使者を走らせた。
まだ朝焼けも消えやらぬうちに豪農のあるじたちは供を連れ、みずから馬に乗ってグインの屋敷へ集まってきた。
農耕にたずさわる者たちは朝が早い。皆が畑へ出払ってしまう前の早朝に使者を立てることはごく普通のことだった。
中庭に面した広間に迎え入れられたあるじたちは朝食が準備された長い食卓の両側に座って顔を見合わせた。旨そうな料理がたっぷりと大皿に盛られていたが、もし、この家の井戸が穢されていたら、という疑いの念があった。
遅れて広間に姿を現したグインは朝食の皿に手をつけようとしないあるじたちへ両手を広げ、どうしたのだという顔をして見せた。
「あるじたちよ、話をする前に食事をしよう。実は私はこの数日、身体の具合が良くなかったのだ。もしや疫病にかかったのではと用心して家を出なかったのだが、何のことはない、ご覧のとおりの老いた身、調子の悪い時もあるというだけのことだった」
グインは部族の大事に駆けつけられなかったお詫びをかねて食事を振る舞いたいと言った。皿の上の料理をみずから食べて見せ、椀の水も飲んで見せると、あるじたちも安心したのか手を動かしだした。
食事は豪勢なものだった。屋敷の倉にはいつもこうした振る舞いのための食料が十二分に蓄えられていた。街道が生きていた以前ならばこの広間はほとんど毎日、隊商を率いる商人たちをもてなす場となっていたのだ。
あるじたちは存分に食った。こうした振る舞いにおいて遠慮するのは食物に唾を吐くのとと同じくらい礼を失したこととされていた。
「南の地の乾燥イチジクを切らしてしまってな。残念なことだ。早く街道が使えるようになるとよいのだが」
グインは羊肉の脂に濡れた唇でそう言った。あるじの一人が笑いながら答えた。
「まったくですな。どうにかしてこの騒動をおさめないことには、この腹がしぼんでシワだらけの乾燥腹になってしまう」
食卓のまわりからドッと笑い声が上がった。
別のひとりが言った。
「長老は南の地とおっしゃった。南の地でも闇の王は猛威を奮っているのでしょうかな」
この者たちが言う『南の地』とはダファネア王国の南方、砂漠の彼方に広がるウラレンシス帝国のことを指していた。
帝国はダファネア王国への野心を抱いていると考えられていたから、貿易はもちろん、人の行き来も禁止されていた。もちろん抜け道はあった。メル族の隊商は砂漠を越えるすべを知っていた。
グインが問いに答えようとした時、広間へ絹物を着たナビ教祭司たちが入ってきた。脂ぎった顔に満面の笑みを浮かべ、純白の長衣をひるがえして強い香油の匂いを漂わせている。
祭司たちは食卓の料理を眺めながら、グインへ愛想を振りまいた。
「長老よ、信心深き果報者よ。どうしたのだ音沙汰無しで。心配しておったが元気そうじゃないか」
「私はてっきり屋敷じゅうの者が死んでしまったかと思っていたのだぞ。どうしてどうして、皆、ピンピンしておるようだ。この家は神々の計画の外にあるのか」
「いつもの顔が揃っているな。この顔を見ていると、まことに不謹慎ながら……酒でも一杯やりたくなる」
食卓からドッと笑い声が上がった。
勧められもしないのに、祭司たちは顔なじみの使用人に合図して椅子を運ばせた。豪農たちの間に割り込むように座った祭司たちは主人のグインに向かって催促するような目つきをしてみせた。
苦笑いしたグインが使用人に酒の用意をせよと命じると、客たちの笑い声はいっそう下卑たものになった。
遠慮のない祭司たちは遅れを取り戻そうとでもいうのか、せっせと料理を口に詰め込み始めた。
「まったく、この家は別天地というべきだな。町はどこも辛気臭くてかなわん」
「虫の騒ぎといい、井戸水の騒ぎといい、騒ぎ過ぎなのだ。貧乏人どもは噂話が好きでな」
祭司たちの言葉に豪農たちはおもねるような笑い声で答えた。
酒はまだかと家の奥をのぞき込みながら、祭司の一人が言った。
「なあに、いらぬ心配はせぬことよ。こんな騒動はいずれ時が解決してくれる。何しろオルテン河のほとりは精霊の繁きところ、ダファネアの加護もひとしおなのだ。あるじたちよ、神殿への供え物は欠かさずにおくことだ」
酒が来ると祭司たちは我先に手を伸ばした。食卓の上に純白の絹布がひらひらとはためいた。
あるじのひとりが祭司たちへ声をかけた。
「祭司さまがた、いかがでしょう。虫を払い、疫病を払う祈祷をしていただいたら。祭司さまがたの法力をもってすれば土地の精霊や神々もお聞き届けになるのではありませんか」
「それはたやすいこと。しかし、その前に神殿とそのまわりの広場を浄めることだ」
「と申しますと……」
祭司たちは広場で市を開いている者たちが町のならず者に金を渡していることが気に入らないらしかった。
「神殿前の広場はそもそも神々のもの。すなわち、我らナビ教祭司の手の下にあるべきなのだ。この際、あの汚らわしい『コウモリ』どもを一掃せねばなるまい。それには、自警団の強化が必要だな。どうだ、グインよ」
それまで上の空だったグインだが、ごもっともでとだけ答えた。
「そこでだ。今後、自警団を我らナビ教祭司の支配下に置くというのはどうだ。畑仕事の忙しいお前たちには自警団の組織は無理だ。穀物倉の警備もお前たちがめいめい勝手にやるよりも、我らのもとで訓練を施した者たちを派遣する方がいいのではないか」
あるじたちは呆れてものも言えなかった。祭司たちはこの機に乗じて、得体の知れない『法力』だけでなく、実体のある力を手に入れようとしているらしい。
「なあ、長老グインよ。このことをどう思う。族長ホワソンは反対したが、お前が賛同するならば、また状況も違ってくるのだが」
グインは自警団とおっしゃるかとつぶやき、フンと鼻で笑った。
「まあ、いかようにもお好きなように。いずれにせよ、時は刻々と迫っております」
「時だと、何のことだ。しかし、グインはこれに賛同するということだな。そうだろうと思っていた、長老はいつもあの若い族長とは意見が合わぬようだから」
祭司たちは上機嫌になり、戸惑いに顔を見合わせているあるじたちに構わず、酒をなみなみと注いだ椀をかかげた。
「どうだ、乾杯しようではないか。我らの大地をしろしめす至高の神ダファネアへ」
その時、家の奥から叫び声が聞こえてきた。狂気に陥ったグインの孫娘の叫びだった。そのぞっとするような声に食卓のまわりの空気が凍りついた時、また別のぞっとするような声音が広間に響いた。
「おい、お前たち。乾杯する相手を間違えているぜ」
皆が声のする方を振り向いた。そこに立っていたのは、今は『闇の王』を名乗っているコルウスだった。
グインが席を立って膝を屈め、王に向かってする礼をコルウスに向かってした。
「皆、聞くがいい。このお方こそ、闇の王。我らがお仕えするべき王だ」
食卓のまわりは一斉にざわめきたった。神殿前の広場に『闇の王』を称する者が現れたと噂には聞いていたが、それがすぐ目の前にいるとなると、どう判断すべきか見当もつかなかった。
祭司たちは席を立ち、探るような目でコルウスを眺めまわした。
「なんだと、馬鹿らしい。こんな男が闇の王なものか。闇の王というのはこんなものじゃない」
コルウスは口元に薄笑いを浮かべていた。
「ほお、お前は闇の王がどんなものか知っているのか。闇の王とどこかで会ったことがあるのか」
「いや、会ったことなどはない。しかし、お前のようなものじゃないことは分かるぞ。そうとも、私には分かるんだ」
祭司たちは口々にコルウスが闇の王でないと言った。しかし、その一人でも闇の王がどんなものか知ってはいなかった。
コルウスはますます面白そうに笑って言った。
「そうか、しかし、お前たちは間違っている。闇の王がどんなものか、俺が教えてやろう」
コルウスは街道のならず者特有のすばしっこさで祭司の一人に詰め寄った。思わずのけぞった祭司は白髪交じりの髪をわしづかみにされ、コルウスと鼻と鼻を突き合わせるような形になった。
「お前は真の『闇』を見るだろう……」
コルウスは顔の半分を隠した前髪をかきあげた。祭司の片目とコルウスの闇の目がまつ毛が触れそうな距離で相対した。
祭司の怯えた瞳に『闇』が忍び込んだ。まぶたが引き攣り、震えた。絹布に包まれた身体もガクガクと震えたが、やがて、ちょうど薬が効いた時のように安静を取り戻した。
コルウスが祭司から手を離すと、祭司の口から甲高い笑い声がほとばしった。祭司は絹物の衣服を胸元から引き裂き、不潔に崩れた裸体を露わにした。
「な、何たることだ!」
「まさか、気が狂ったか」
豪農のあるじたちも残った祭司たちも席を立ち、うろたえ騒いだ。
狂気に取り憑かれた全裸の祭司は食卓のまわりを踊るような仕草でよろめき歩き、卑猥な仕草で腰をくねらせた。
笑い声はいっそう甲高く、下卑た声音になり、唇の端からは涎が垂れて、毛むくじゃらの胸元へ糸を引いていた。
コルウスはニタニタ笑いを浮かべてそれを眺めていたが、やがて吐き気を催したのか顔をしかめると、腰から玉座の剣を引き抜いた。
「お前は死霊の群れに加わるがいいぜ」
何の躊躇もなくコルウスは闇をまとった刀身を祭司の身体に突き通した。背中から串刺しにされた祭司は大きく身体を反らし、痙攣させた。
噴き出す血潮は剣にまとわりつく闇に吸い込まれた。あたかも、蛇が獲物を丸呑みにするかのようだった。
あたりに硫黄の臭気がたちこめた。広間にいた者たちはどよめき、お互いにすがりつき合いながら恐怖の叫び声を上げた。
「騒ぐな、クズどもめ!」
コルウスは祭司の身体から引き抜いた闇の剣を食卓の真ん中に叩きつけた。
そのとたん、食卓いっぱいに載せられていた食物の山は一瞬で腐敗し、腐臭を放ちだした。
コルウスは食卓から腐った羊肉の塊を手づかみでちぎり取り、口に運んだ。コルウスはこのところ腐敗した食物を美味と感じるようになっている自分に気付いていた。また、闇の旦那を恨むネタが増えたというわけだ。
「なかなか、いけるじゃねえか。おい、お前たちも食え。さあ、食うんだ!」
食卓のまわりで震え上がっていた者たちは命じられるまま腐った食物を口に入れ、吐き気に悶えた。
コルウスは広間に高笑いを響かせた。
「分かったか、それが『闇の王』の味だ。これから、お前たちにたらふく食わせてやるぜ」
急いで屋敷へ帰ったグインは寝静まっている廊下を通り抜け、礼拝の間へ入った。
立ち並ぶ神像の前に置かれた背もたれの高い肘掛け椅子に自称『闇の王』のコルウスが座っていた。玉座の剣を椅子の横に立てかけ、いつもは深き泉の水を捧げている青銅の椀で酒を飲んでいる。足の下には砕けたダファネアの頭があった。
「我が王よ……闇の王よ……」
グインはいそいそとコルウスの前にひざまずき、王宮さながらの礼法で頭を下げた。コルウスは無言のまま長老を見下ろしていた。
「畏れながら、我が族長は賢き決断に至りませんでした……つまり……」
「俺の下にはつかねえっていうんだろう。まわりくどい言い方しねえでも分かりきったことだぜ……」
族長ともあろう者がそう簡単に土地の精霊を捨てて、『闇の王』などという得体の知れない物に屈服するわけがない。コルウスにも最初から予想がついていた。
「族長はどうするつもりだ。ちゃんと探って来たんだろうな」
コルウスはバレルに指示された堅苦しい言葉使い、重々しく見える態度をかなぐり捨てていた。酔っているせいもあるが、バレルが書いた茶番劇に飽きてきたせいもある。
グインはさらに深く頭を下げてから目ばかりを卑屈にコルウスへうわ向けた。
「それはもちろん。族長ホワソンはナビ教祭司クレオン、そして、テン族族長アーメルと手を結ぶべく使者を出すつもりでおります。今のうちに止めるのが……」
グインの話を最後まで聞きもせず、コルウスは神像の陰へ声をかけた。
「おい、使者が出るぞ。街道を見張らせて仕留めろ」
神像の陰から杖を突いて現れたのはバレルだった。戸惑うグインに軽く会釈したバレルはいったん廊下へ出ると、窓から顔を出し、短く一つ呼子の笛を吹いた。
すぐに黒衣の者が窓の下に姿を見せた。以前から町に潜入させていた密偵だ。バレルが指示を与えると、黒衣の者は闇に消えた。
礼拝の間へ戻って来たバレルにグインは怪訝そうな表情になった。
「闇の王よ、この方はいったい……」
コルウスは水瓶から椀へ酒を注ぎながら面倒そうに顎をしゃくった。
「こいつは軍師さ。当てにはならねえがな」
最後の方は酒の椀に口をつけてくぐもった声で言ったコルウスに当の軍師バレルは苦い顔になった。
長老グインはバレルの顔をまじまじと見て目を見張った。
「その刺青は……もしやブルクット族の……」
「ほお、長老はこんな刺青をどこかで見ましたか」
「見ましたとも。王の血脈の立ち会われた部族和解の場で。ちょうどあなたのような若者で、なぜこのような者がと不審に思ったのだが……」
バレルは万事承知だという顔でうなずいた。
「それはブルクット族族長ウルの息子でカラゲルでしょう。稲妻の刺青の者です。私の刺青は鷲、これは長老の息子のしるしです。もしかして長老は王都で私の父に会ったことはありませんか。ジャルガと言って……」
グインはジャルガの名前に感嘆の表情を浮かべた。荒れ野に逃れたシュメル王子を見つけ出し、王として王都に帰還させた男。カナ族とメル族の半ば公然たる王権簒奪の陰謀へ待ったをかけた男。グインはジャルガをそう記憶していた。
しかし、感嘆の表情はすぐに怪訝な表情に変わった。
「ブルクット族は王の血脈の側についているのではないのですか。なぜ、あなたは闇の王に仕えているのです」
「まあ……それは話すと長くなりますが……」
コルウスがフンと鼻を鳴らして笑った。
「部族のできそこないだからさ。長老、これから戦争になったら、こいつもどこかで役に立つはずだ。なにしろ兵隊を持っているからな」
「なんと、軍勢を……」
グインはやや顔色を青ざめさせたようだった。軍勢が乗り込んでくるとなれば、この町の主導権はどうなるのか。さらにはオルテン河流域の支配権は。
「長老よ、お前たちのような百姓ばかりで戦争ができると思っていたのか。戦争には兵隊と軍師、それに……」
玉座の剣を取り上げ鞘から引き抜いたコルウスは闇をまとう刀身をグインの鼻先に突きつけて見せた。
「王が必要なのさ」
夜明け前、グインは町の主だった者たちのもとへ使者を走らせた。
まだ朝焼けも消えやらぬうちに豪農のあるじたちは供を連れ、みずから馬に乗ってグインの屋敷へ集まってきた。
農耕にたずさわる者たちは朝が早い。皆が畑へ出払ってしまう前の早朝に使者を立てることはごく普通のことだった。
中庭に面した広間に迎え入れられたあるじたちは朝食が準備された長い食卓の両側に座って顔を見合わせた。旨そうな料理がたっぷりと大皿に盛られていたが、もし、この家の井戸が穢されていたら、という疑いの念があった。
遅れて広間に姿を現したグインは朝食の皿に手をつけようとしないあるじたちへ両手を広げ、どうしたのだという顔をして見せた。
「あるじたちよ、話をする前に食事をしよう。実は私はこの数日、身体の具合が良くなかったのだ。もしや疫病にかかったのではと用心して家を出なかったのだが、何のことはない、ご覧のとおりの老いた身、調子の悪い時もあるというだけのことだった」
グインは部族の大事に駆けつけられなかったお詫びをかねて食事を振る舞いたいと言った。皿の上の料理をみずから食べて見せ、椀の水も飲んで見せると、あるじたちも安心したのか手を動かしだした。
食事は豪勢なものだった。屋敷の倉にはいつもこうした振る舞いのための食料が十二分に蓄えられていた。街道が生きていた以前ならばこの広間はほとんど毎日、隊商を率いる商人たちをもてなす場となっていたのだ。
あるじたちは存分に食った。こうした振る舞いにおいて遠慮するのは食物に唾を吐くのとと同じくらい礼を失したこととされていた。
「南の地の乾燥イチジクを切らしてしまってな。残念なことだ。早く街道が使えるようになるとよいのだが」
グインは羊肉の脂に濡れた唇でそう言った。あるじの一人が笑いながら答えた。
「まったくですな。どうにかしてこの騒動をおさめないことには、この腹がしぼんでシワだらけの乾燥腹になってしまう」
食卓のまわりからドッと笑い声が上がった。
別のひとりが言った。
「長老は南の地とおっしゃった。南の地でも闇の王は猛威を奮っているのでしょうかな」
この者たちが言う『南の地』とはダファネア王国の南方、砂漠の彼方に広がるウラレンシス帝国のことを指していた。
帝国はダファネア王国への野心を抱いていると考えられていたから、貿易はもちろん、人の行き来も禁止されていた。もちろん抜け道はあった。メル族の隊商は砂漠を越えるすべを知っていた。
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祭司たちは食卓の料理を眺めながら、グインへ愛想を振りまいた。
「長老よ、信心深き果報者よ。どうしたのだ音沙汰無しで。心配しておったが元気そうじゃないか」
「私はてっきり屋敷じゅうの者が死んでしまったかと思っていたのだぞ。どうしてどうして、皆、ピンピンしておるようだ。この家は神々の計画の外にあるのか」
「いつもの顔が揃っているな。この顔を見ていると、まことに不謹慎ながら……酒でも一杯やりたくなる」
食卓からドッと笑い声が上がった。
勧められもしないのに、祭司たちは顔なじみの使用人に合図して椅子を運ばせた。豪農たちの間に割り込むように座った祭司たちは主人のグインに向かって催促するような目つきをしてみせた。
苦笑いしたグインが使用人に酒の用意をせよと命じると、客たちの笑い声はいっそう下卑たものになった。
遠慮のない祭司たちは遅れを取り戻そうとでもいうのか、せっせと料理を口に詰め込み始めた。
「まったく、この家は別天地というべきだな。町はどこも辛気臭くてかなわん」
「虫の騒ぎといい、井戸水の騒ぎといい、騒ぎ過ぎなのだ。貧乏人どもは噂話が好きでな」
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酒はまだかと家の奥をのぞき込みながら、祭司の一人が言った。
「なあに、いらぬ心配はせぬことよ。こんな騒動はいずれ時が解決してくれる。何しろオルテン河のほとりは精霊の繁きところ、ダファネアの加護もひとしおなのだ。あるじたちよ、神殿への供え物は欠かさずにおくことだ」
酒が来ると祭司たちは我先に手を伸ばした。食卓の上に純白の絹布がひらひらとはためいた。
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「祭司さまがた、いかがでしょう。虫を払い、疫病を払う祈祷をしていただいたら。祭司さまがたの法力をもってすれば土地の精霊や神々もお聞き届けになるのではありませんか」
「それはたやすいこと。しかし、その前に神殿とそのまわりの広場を浄めることだ」
「と申しますと……」
祭司たちは広場で市を開いている者たちが町のならず者に金を渡していることが気に入らないらしかった。
「神殿前の広場はそもそも神々のもの。すなわち、我らナビ教祭司の手の下にあるべきなのだ。この際、あの汚らわしい『コウモリ』どもを一掃せねばなるまい。それには、自警団の強化が必要だな。どうだ、グインよ」
それまで上の空だったグインだが、ごもっともでとだけ答えた。
「そこでだ。今後、自警団を我らナビ教祭司の支配下に置くというのはどうだ。畑仕事の忙しいお前たちには自警団の組織は無理だ。穀物倉の警備もお前たちがめいめい勝手にやるよりも、我らのもとで訓練を施した者たちを派遣する方がいいのではないか」
あるじたちは呆れてものも言えなかった。祭司たちはこの機に乗じて、得体の知れない『法力』だけでなく、実体のある力を手に入れようとしているらしい。
「なあ、長老グインよ。このことをどう思う。族長ホワソンは反対したが、お前が賛同するならば、また状況も違ってくるのだが」
グインは自警団とおっしゃるかとつぶやき、フンと鼻で笑った。
「まあ、いかようにもお好きなように。いずれにせよ、時は刻々と迫っております」
「時だと、何のことだ。しかし、グインはこれに賛同するということだな。そうだろうと思っていた、長老はいつもあの若い族長とは意見が合わぬようだから」
祭司たちは上機嫌になり、戸惑いに顔を見合わせているあるじたちに構わず、酒をなみなみと注いだ椀をかかげた。
「どうだ、乾杯しようではないか。我らの大地をしろしめす至高の神ダファネアへ」
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「おい、お前たち。乾杯する相手を間違えているぜ」
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「皆、聞くがいい。このお方こそ、闇の王。我らがお仕えするべき王だ」
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「なんだと、馬鹿らしい。こんな男が闇の王なものか。闇の王というのはこんなものじゃない」
コルウスは口元に薄笑いを浮かべていた。
「ほお、お前は闇の王がどんなものか知っているのか。闇の王とどこかで会ったことがあるのか」
「いや、会ったことなどはない。しかし、お前のようなものじゃないことは分かるぞ。そうとも、私には分かるんだ」
祭司たちは口々にコルウスが闇の王でないと言った。しかし、その一人でも闇の王がどんなものか知ってはいなかった。
コルウスはますます面白そうに笑って言った。
「そうか、しかし、お前たちは間違っている。闇の王がどんなものか、俺が教えてやろう」
コルウスは街道のならず者特有のすばしっこさで祭司の一人に詰め寄った。思わずのけぞった祭司は白髪交じりの髪をわしづかみにされ、コルウスと鼻と鼻を突き合わせるような形になった。
「お前は真の『闇』を見るだろう……」
コルウスは顔の半分を隠した前髪をかきあげた。祭司の片目とコルウスの闇の目がまつ毛が触れそうな距離で相対した。
祭司の怯えた瞳に『闇』が忍び込んだ。まぶたが引き攣り、震えた。絹布に包まれた身体もガクガクと震えたが、やがて、ちょうど薬が効いた時のように安静を取り戻した。
コルウスが祭司から手を離すと、祭司の口から甲高い笑い声がほとばしった。祭司は絹物の衣服を胸元から引き裂き、不潔に崩れた裸体を露わにした。
「な、何たることだ!」
「まさか、気が狂ったか」
豪農のあるじたちも残った祭司たちも席を立ち、うろたえ騒いだ。
狂気に取り憑かれた全裸の祭司は食卓のまわりを踊るような仕草でよろめき歩き、卑猥な仕草で腰をくねらせた。
笑い声はいっそう甲高く、下卑た声音になり、唇の端からは涎が垂れて、毛むくじゃらの胸元へ糸を引いていた。
コルウスはニタニタ笑いを浮かべてそれを眺めていたが、やがて吐き気を催したのか顔をしかめると、腰から玉座の剣を引き抜いた。
「お前は死霊の群れに加わるがいいぜ」
何の躊躇もなくコルウスは闇をまとった刀身を祭司の身体に突き通した。背中から串刺しにされた祭司は大きく身体を反らし、痙攣させた。
噴き出す血潮は剣にまとわりつく闇に吸い込まれた。あたかも、蛇が獲物を丸呑みにするかのようだった。
あたりに硫黄の臭気がたちこめた。広間にいた者たちはどよめき、お互いにすがりつき合いながら恐怖の叫び声を上げた。
「騒ぐな、クズどもめ!」
コルウスは祭司の身体から引き抜いた闇の剣を食卓の真ん中に叩きつけた。
そのとたん、食卓いっぱいに載せられていた食物の山は一瞬で腐敗し、腐臭を放ちだした。
コルウスは食卓から腐った羊肉の塊を手づかみでちぎり取り、口に運んだ。コルウスはこのところ腐敗した食物を美味と感じるようになっている自分に気付いていた。また、闇の旦那を恨むネタが増えたというわけだ。
「なかなか、いけるじゃねえか。おい、お前たちも食え。さあ、食うんだ!」
食卓のまわりで震え上がっていた者たちは命じられるまま腐った食物を口に入れ、吐き気に悶えた。
コルウスは広間に高笑いを響かせた。
「分かったか、それが『闇の王』の味だ。これから、お前たちにたらふく食わせてやるぜ」
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帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
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自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……
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