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第二十四章
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第二十四章
「セレチェン!」
クランは床に倒れているセレチェンに駆け寄った。抱き起こそうとすると胸の傷口から新たな血が流れ出した。
「セレチェン、死ぬな。村へ帰るぞ。こんな旅なら来るのではなかった」
育ての父の頭の後ろを支え、鷲の刺青に顔を近づけたクランは、セレチェンがこの世を去りかけていることを感じた。
セレチェンは力の弱った手でクランを抱き、かすれた声で言った。
「そうではない。お前の旅はこれから始まるのだ。お前の運命の旅が」
クランは涙に濡れた青い瞳でセレチェンを見た。
「私はどこまでも運命を背負わねばならないのか。セレチェン、お前が死んだら私にはもう何も残っていない」
「お前の運命は重荷ではない。神々からの贈り物だ……クランよ、我が娘よ……受けた贈り物は必ず返せ……必ず……」
クランの腕の中でセレチェンは死んだ。鷲の刺青が生気を失った。高い天窓の向こうから鷲の鳴き声が聞こえた。オローだろうか。
クランはその場にブルクット族長老の身体を横たえた。切れ長の目元が鷲の翼よりもっと険しく尖った。
「セレチェンよ、我が父よ、この仇はきっと取るからな」
クランはセレチェンの剣を形見に取って立ち上がった。その遺体を持って帰るにはベルーフ峰はあまりにも遠かった。
大聖堂が轟々と唸り始めた。風の音かと思われた音はしだいに高まり、石壁や天井がきしんで細かな砂粒が落ちてきた。
「まずい、崩れるぞ。みんな逃げるんだ!」
天井を仰いだカラゲルは差し込む日射しの中、天窓が窓枠ごと落ちて来るのを見た。身震いするような轟音が湧き上がった、大聖堂は崩壊しはじめた。
カラゲルはセレチェンの脇にうずくまっているクランの腕を引き、ユーグとミアレ姫は頭をかばいながら逃げ出した。
扉から飛び出し、石段を駆け下りた時、背後で轟音はすさまじいばかりに高まった。
振り返りながら逃げる一行の目の前で大聖堂の屋根は崩落し、建物は下半分ほどの壁を残して廃墟と化した。
カラゲル、ユーグ、ミアレ姫、そして、クラン。彼らの顔は涙と砂にまみれていた。これが運命の旅の始まりだとしたら、神々の計画は不可解で残酷なものに違いなかった。
あたりの空気が絶え間なく震えていた。呆けたように立ち尽くす四人のまわりであらゆるものが壊れ、崩れていく音がした。いまや王都全体が泣き叫ぶように身震いし、滅亡へ向かっていた。
「セレチェン様、お連れの皆様!」
四人の背後から聞き覚えのある大声が聞こえてきた。宿屋の隠居ウエスが預かっていた三頭の馬を曳いて駆けつけて来たのだった。
「おお、姫さま、ユーグさまもご無事で。セレチェンさまはどうなさいました」
カラゲルがセレチェンの死を告げると、ウエスは顔を覆って泣きだした。
「なんと、おいたわしいこと。どうしてこんなことになったのです」
ウエスは涙に濡れた顔で改めてあたりを見回した。
華やかな祭りの衣装を来た者たちが折り重なるように倒れていた。壊れた楽器や神像のかけらが地下から噴き出した泥にまみれ、踏みにじられている。
車輪の外れた山車が傾いて、その上にも仮装をした者たちが手足を放り出した姿で死んでいた。
気を取り直したウエスは馬の手綱を引き寄せながら言った。
「皆さま、宿のある外郭地域も大蛇が暴れまわって、みな王都から逃げ出すので精一杯です。さあ、馬をお召しになって逃げるのです」
力強くうなずいたカラゲルはウエスに礼を言った。
「うむ、俺たちはミアレ姫を守らねばならん。王の血脈が滅びたら、王国が滅ぶ」
「そうでございます。どうか、カラゲルさま、それに皆さま。王国をお救いください」
カラゲルとクランはめいめいの馬にまたがり、ユーグはセレチェンの馬にミアレ姫を同乗させた。
ウエスは鞍袋にできるだけの食糧などを詰め込んでくれていた。
「クランさまの鷲は窓から放ちましたが姿をご覧になりましたか」
クランは抜けるような青空の一画を指さした。
「オローならあそこだ。おかげで助かった」
「大蛇が現れるより先に鷲が騒ぎ始めたのです。それで、もしや何かあったのではと窓から放したのです」
ウエスの手の甲には繋ぎ紐をほどいた時にできたらしいひっかき傷があった。オローも焦っていたらしい。
「さあ、皆さま、一刻も早く王都を離れるのです。城門はどこもごった返しているでしょうが、北のブルクット族の門はいくらかましでしょう」
カラゲルが息子夫婦はどうしたと尋ねた。
「二人はもう馬車に乗せて逃がしました。うまくゆけば、どこかの城門から草原へ逃れている頃でしょう」
「よし、分かった。親父、俺の後ろに乗るんだ」
カラゲルが差し出した手にウエスはかぶりを振った。
「いいえ、私が乗っては馬の脚が遅くなります。お行きください」
「馬鹿を言うな。早く乗れ」
ウエスは足元に落ちていた棒きれを拾うと、いきなり三頭の馬の尻を叩いた。馬は元から浮足立っていたせいもあって全速力で走りだした。カラゲルは慌てて手綱を引いたが言うことを聞かなかった。
その時、広場に疾風が吹き渡るような音がしたかと思うと、また、あの闇の蛇が地下から姿を現した。
カラゲルは馬の上からそちらを振り返り、大声を振り絞った。
「逃げろ、逃げるんだ!」
ウエスの目の前に漆黒の蛇の群れが鎌首をもたげていた。手した棒切れを振り上げたウエスは精一杯の怒鳴り声を上げた。
「邪悪な魔物め。王都は滅びぬぞ。神々よ、ダファネアよ、私に力をお貸しください!」
瀧の水が落ちるような音とともに闇の蛇はウエスに襲いかかった。
ウエスは必死に棒きれを振り回したが、その姿はたちまち呑み込まれてしまった。蛇は狂暴にうねり、漆黒の胴体の隙間から鮮血が飛び散った。
思わず引き返しかけたカラゲルをクランが止めた。
「おい、ここは引き時だ。急ぐぞ」
馬上の四人は広場から出て城門への道を駆けた。あれほど群衆でごった返していた路上は洪水の過ぎた後のように荒れ果て、道端には苦悶の表情を浮かべたまま死んでいる者たちが血まみれで転がっていた。
外郭地域にはまだ人々が泣き叫びながら右往左往していた。王宮の地下で始まった闇の奔流は同心円状に王都へ広がっているのだろう。
それでも、このあたりが安全だというわけではなかった。
いきなり土台ごと崩れ落ちて瓦礫の山と化す建物。道路は鋤き返された畑のようになって、あちこちに開いた穴を避けて進まねばならない。
民家の井戸から噴き出してきた闇の奔流によって周囲の人間や動物が地下へ引きずり込まれる。そうかと思うと、いきなり地上へ飛び出してきた蛇に空中高く弾き飛ばされる者が建物の向こうに見えたりした。
振り返って見ると王宮へ向かって高く丘のようになっていた王都が奇妙に形をゆがめていた。紺碧の都の象徴だった尖塔が見えないのはもちろんだが、丘の高いあたりは街区ごと地盤が傾いてしまったようだった。
「あのあたりにいた者たちは逃げる間もなかっただろう」
ユーグが無念そうに言った。王宮にはたくさんの仲間がいた。その者たちとまた会える日が来るとはとても思えなかった。
ミアレ姫は蒼白な顔で王宮のあたりを見上げた。
「ユーグよ。このことはすべて、お父さまがなさったことなのですか」
「まだ、はっきりしたことは分かりません。しかし、王はおそらく王国の禁忌に触れたのです」
ミアレ姫の涙に濡れた目がユーグの顔を見上げた。
「王宮へ帰りましょう。いいえ、私ひとりでも帰ります。王家の者が民をさしおいて逃げるなど許されることではありません」
空に不気味な轟音が響いた。王都の中心近くに巨大な砂埃が舞い上がるのが見えた。
「ユーグ、降ろしてください。私は、私は!」
先頭を走っていたカラゲルはミアレ姫の声を聞くと、それをさえぎるように鋭く甲高い声を放った。
「オホーイ、ホーイッ……ホイッ、ホイッ、ホイッ……」
これは狩りの勢子を務める時の声で草原の疾風にも砂嵐にも負けない音色を持っていた。場違いに甲高い声にミアレ姫も驚いてカラゲルを見た。
「姫さま、今は駄々をこねている時ではない。今は逃げる時だ」
「私は駄々をこねてなどいません。王家の者の命は王国に捧げるためにあるのです」
カラゲルはまた甲高く勢子声を上げた。
「馬鹿を言っては困る。姫さまの命がすなわち王国の命だろう。俺は稲妻の刺青にかけて王の血脈を守る。それが王国の戦士だ」
その時、前方の道をふさぐ馬車が見えてきた。幌のかかった馬車に制服を来た衛兵隊が五人がかりで群がっていた。
「おい、馬車を降りろ。こいつは俺たちがいただくぜ」
「この女、なかなかいける顔じゃねえか。馬車ごともらって行こう」
見ると、馬車の主はあの宿屋の若夫婦だった。
「ふざけるんじゃないよ、この火事場泥棒め!」
女房が怒鳴り声を上げ、手にしたすりこぎ棒のようなものを振り回していた。
手綱を握った若主人は剣を抜いた衛兵たちに怯えきっていた。
「やめてくれ、あんたたちは衛兵隊じゃないか」
この衛兵たちは制服こそ着ているが、混乱に乗じてやりたい放題やってやろうというつもりで町を荒らしまわっていたのだった。
しょせんは、ならず者の傭兵に過ぎない連中だ。こんな状況になって腐った性根がむき出しになっただけのことだった。
「衛兵隊がなんだ。王都がどうした。この世の終わりが来たら、すべてチャラだぜ」
「そうとも、こんな時こそ俺たちの天下だ。いっそ、みんな滅びちまったら面白れえや」
下卑た笑い声とともに衛兵たちは女房の腕をつかみ、若主人を引きずり下ろしにかかった。
「待て、クズども!」
カラゲルが馬の脚を速め、若夫婦を助けに向かった。クランもすぐ後に続いた。
衛兵たちは驚いた顔になり剣を抜いて身構えた。
「田舎者が余計な邪魔だてするんじゃねえ」
「俺たちに敵うと思ってるのかよ」
衛兵たちは若い二人を侮り嘲るように怒鳴った。
軽い身ごなしで馬から降りたカラゲルとクランは素早く剣を抜き放った。すでに闘う構えに入っている。横向きの8の字が二つ、刀身は生き物のように揺れた。
カラゲルはクランに耳打ちした。
「これは剣の稽古じゃないぜ。やるか、やられるかだ」
「分かっている。お前だって本当に人を斬るのは初めてだろう」
「そうだ。村を出た時はまさかこんなことになるとは思わなかったがな」
その時、衛兵たちは少し離れたところにいるユーグとミアレ姫の姿を見つけた。
「おい、あれを見ろ。姫さまじゃないか。それにお偉いお守り役も」
「なるほど、こいつらはお偉方の護衛ってわけか。いよいよ、ぶった斬ってやりたくなったぜ」
「いっそのこと姫さまも頂いて行こうじゃねえか。ウラレンシス帝国の奴らに高く売れるかもしれないぜ」
衛兵たちは一斉に斬りかかってきた。
カラゲルは最初の一人を軽く受け流し、よろけた肩口へ容赦なく剣を叩き込んだ。衛兵隊の制服が切り裂かれ鮮血が空中に飛び散った。
クランも突いてきた相手の剣先をブルクット族特有のうねるような剣さばきで弾いた。二の太刀が来る前にクランの剣は相手の胸を貫いていた。
次々と絶叫を上げながら衛兵たちは倒れていった。
ならず者の力任せの剣がブルクット族の鍛えた剣法に敵うわけもなかった。それだけではない。カラゲルとクランは怒っていた。
怒れる若い戦士たちは容赦ということを知らなかった。馬車の上の若夫婦は抱き合って震え、ミアレ姫もユーグの背中に顔を伏せていた。
たちまち衛兵たちは一人残らず斬り捨てられてしまった。
カラゲルとクランは血にまみれた剣を拭うと腰の鞘に納めた。カラゲルは馬車の上の二人に声をかけた。
「おい、お前たち、早く逃げるんだ。それから……」
カラゲルは口ごもった。代わりにユーグがウエスのことを言うと、若夫婦は天を仰いで泣きだした。
「ウエスは私たちを助けて死んだ。勇敢な死だった。神々もきっと……」
「神々ですって!」
女房は天に向かってすりこぎ棒を突き上げた。
「そんな結構な方々がいらっしゃるなら、どうして私たちの都はこんなことになったんです。どうして私たちの父はこんなことに」
若主人は女房の手をつかんで言った。
「やめるんだ。神々の御心など俺たちに分かるわけがないだろう。なあ、お前、きっと帰って来れるさ。そうだ、姫さまさえご無事なら王都もきっと……」
二人は四人に会釈すると、女房の故郷のナホ族のところへ行くと言って去った。
カラゲルが声を励まして言った。
「さあ、俺たちも行こう。今の王都は危険だ」
もうミアレ姫も王宮へ戻ろうとは言わなかった。今は命を捨てるべき時ではない。
まだあちこちからガラガラと何かが崩れる音や切り裂くような悲鳴が聞こえていた。王都全体が怖れと怒りに震え、おののいている。
晴れ渡っていた真昼の空が今は細かな砂埃で紗がかかったように見えた。空気は乾いたほこり臭さと血生臭さで濁っていた。そこにうっすらと硫黄の臭気が漂っている。
それでも、ウエスの言ったように南の城門の方はいくらか静かなように思えた。馬上の四人はそちらへ向かった。
城門のあたりは王都の住民と旅人とが混じり合って、ごった返していた。宿屋の若夫婦のように帰る故郷のある者はいいが、そうでない者たちは定住できる土地を求めて草原を彷徨うことになるだろう。
四人は街道へと馬を進めた。道沿いに長い行列ができている。その者たちはミアレ姫の顔を見ると安心した表情になった。ユーグの白い長衣も頼もしく見えた。
しかし、中には王家の者へ反感を持った視線を向ける者もいた。
シュメル王が聖剣と聖杖を我が手に集めようとした涜神の行為が早くも噂話となって人々の間に広まっていたのだった。おそらくその風聞の元は衛兵隊だろう。
クランは先頭に立つカラゲルに声をかけた。
「おい、どこへ行くつもりなんだ」
「もちろん、村へ帰るさ」
「ユーグと姫さまを連れてか」
クランは後ろについてくる二人の姿へ目をやった。ユーグはともかく、ミアレ姫はさすがに疲れた様子だった。宿を出る時、頭に載せてきたミアレの花冠はすっかりしおれて傾いていた。
クランは自分の頭から花冠を取ると街道脇へ投げ捨てた。
「カラゲル、私たちはいったい、どうしたらいいのだ」
「うむ、まずは一番近くの宿駅まで行こう。今日はそこまで行くのが精一杯だろう。そこで、できることなら姫に馬を調達する必要があるな。二人乗りで長旅は無理だ」
クランはカラゲルの稲妻の刺青を見ているうちに腹が立ってきた。
「お前、いやに落ち着いているな。分かっているのか、王都は滅びたのだぞ。あれを見ろ」
クランは後にしてきた王都を指さした。城壁の向こうで王都は舞い上がる砂塵や煙にかすんでいた。またも空高く、建物の崩壊する轟音が響いた。
「分かっている」
カラゲルはまっすぐ前を向いたままだった。その横顔へ食い入るような目を当てたクランは手綱をとる手をきつく握りしめた。
「セレチェンはコルウスに殺された。シュメル王も闇の王に肉体を乗っ取られて死んだ。お前の父のウルもどうなっているか分からないのだぞ」
「それは帰ってみれば分かる。あるいは部族の誰かが王都へ向けて使者を放ってくれたかもしれないな。街道のどこかで会えるといいが」
クランは怒りに任せて怒鳴り声を上げた。
「カラゲル、お前は怒っていないのか。コルウスに対して、闇の王に対して、怒っていないのか!」
カラゲルはクランを振り返った。その目にはこれまで見たこともないような冷徹な暗さがあった。
カラゲルは族長の息子だった。もし父に何かあれば、ブルクット族の族長となって王国のために立つべき男だった。クランは初めてカラゲルを遠く感じた。
「クランよ、我らブルクット族は王国の戦士だ。復讐や怒りに任せて闘うのは王国の守護者のすべきことではない。俺はこれをセレチェンに学んだ。俺はさっき衛兵たちを斬ったのも少し後悔しているのだ」
クランはカラゲルの言葉を聞くと切れ長の目元を険しくした。
「カラゲルよ。私にもブルクット族のように生きろと言うのか。セレチェンは死んだ。私は本当のみなしごになったのだ」
クランは街道を離れ、ひとり草原へ馬を走らせていった。オローを呼ぶ声が空に響いた。
「セレチェン!」
クランは床に倒れているセレチェンに駆け寄った。抱き起こそうとすると胸の傷口から新たな血が流れ出した。
「セレチェン、死ぬな。村へ帰るぞ。こんな旅なら来るのではなかった」
育ての父の頭の後ろを支え、鷲の刺青に顔を近づけたクランは、セレチェンがこの世を去りかけていることを感じた。
セレチェンは力の弱った手でクランを抱き、かすれた声で言った。
「そうではない。お前の旅はこれから始まるのだ。お前の運命の旅が」
クランは涙に濡れた青い瞳でセレチェンを見た。
「私はどこまでも運命を背負わねばならないのか。セレチェン、お前が死んだら私にはもう何も残っていない」
「お前の運命は重荷ではない。神々からの贈り物だ……クランよ、我が娘よ……受けた贈り物は必ず返せ……必ず……」
クランの腕の中でセレチェンは死んだ。鷲の刺青が生気を失った。高い天窓の向こうから鷲の鳴き声が聞こえた。オローだろうか。
クランはその場にブルクット族長老の身体を横たえた。切れ長の目元が鷲の翼よりもっと険しく尖った。
「セレチェンよ、我が父よ、この仇はきっと取るからな」
クランはセレチェンの剣を形見に取って立ち上がった。その遺体を持って帰るにはベルーフ峰はあまりにも遠かった。
大聖堂が轟々と唸り始めた。風の音かと思われた音はしだいに高まり、石壁や天井がきしんで細かな砂粒が落ちてきた。
「まずい、崩れるぞ。みんな逃げるんだ!」
天井を仰いだカラゲルは差し込む日射しの中、天窓が窓枠ごと落ちて来るのを見た。身震いするような轟音が湧き上がった、大聖堂は崩壊しはじめた。
カラゲルはセレチェンの脇にうずくまっているクランの腕を引き、ユーグとミアレ姫は頭をかばいながら逃げ出した。
扉から飛び出し、石段を駆け下りた時、背後で轟音はすさまじいばかりに高まった。
振り返りながら逃げる一行の目の前で大聖堂の屋根は崩落し、建物は下半分ほどの壁を残して廃墟と化した。
カラゲル、ユーグ、ミアレ姫、そして、クラン。彼らの顔は涙と砂にまみれていた。これが運命の旅の始まりだとしたら、神々の計画は不可解で残酷なものに違いなかった。
あたりの空気が絶え間なく震えていた。呆けたように立ち尽くす四人のまわりであらゆるものが壊れ、崩れていく音がした。いまや王都全体が泣き叫ぶように身震いし、滅亡へ向かっていた。
「セレチェン様、お連れの皆様!」
四人の背後から聞き覚えのある大声が聞こえてきた。宿屋の隠居ウエスが預かっていた三頭の馬を曳いて駆けつけて来たのだった。
「おお、姫さま、ユーグさまもご無事で。セレチェンさまはどうなさいました」
カラゲルがセレチェンの死を告げると、ウエスは顔を覆って泣きだした。
「なんと、おいたわしいこと。どうしてこんなことになったのです」
ウエスは涙に濡れた顔で改めてあたりを見回した。
華やかな祭りの衣装を来た者たちが折り重なるように倒れていた。壊れた楽器や神像のかけらが地下から噴き出した泥にまみれ、踏みにじられている。
車輪の外れた山車が傾いて、その上にも仮装をした者たちが手足を放り出した姿で死んでいた。
気を取り直したウエスは馬の手綱を引き寄せながら言った。
「皆さま、宿のある外郭地域も大蛇が暴れまわって、みな王都から逃げ出すので精一杯です。さあ、馬をお召しになって逃げるのです」
力強くうなずいたカラゲルはウエスに礼を言った。
「うむ、俺たちはミアレ姫を守らねばならん。王の血脈が滅びたら、王国が滅ぶ」
「そうでございます。どうか、カラゲルさま、それに皆さま。王国をお救いください」
カラゲルとクランはめいめいの馬にまたがり、ユーグはセレチェンの馬にミアレ姫を同乗させた。
ウエスは鞍袋にできるだけの食糧などを詰め込んでくれていた。
「クランさまの鷲は窓から放ちましたが姿をご覧になりましたか」
クランは抜けるような青空の一画を指さした。
「オローならあそこだ。おかげで助かった」
「大蛇が現れるより先に鷲が騒ぎ始めたのです。それで、もしや何かあったのではと窓から放したのです」
ウエスの手の甲には繋ぎ紐をほどいた時にできたらしいひっかき傷があった。オローも焦っていたらしい。
「さあ、皆さま、一刻も早く王都を離れるのです。城門はどこもごった返しているでしょうが、北のブルクット族の門はいくらかましでしょう」
カラゲルが息子夫婦はどうしたと尋ねた。
「二人はもう馬車に乗せて逃がしました。うまくゆけば、どこかの城門から草原へ逃れている頃でしょう」
「よし、分かった。親父、俺の後ろに乗るんだ」
カラゲルが差し出した手にウエスはかぶりを振った。
「いいえ、私が乗っては馬の脚が遅くなります。お行きください」
「馬鹿を言うな。早く乗れ」
ウエスは足元に落ちていた棒きれを拾うと、いきなり三頭の馬の尻を叩いた。馬は元から浮足立っていたせいもあって全速力で走りだした。カラゲルは慌てて手綱を引いたが言うことを聞かなかった。
その時、広場に疾風が吹き渡るような音がしたかと思うと、また、あの闇の蛇が地下から姿を現した。
カラゲルは馬の上からそちらを振り返り、大声を振り絞った。
「逃げろ、逃げるんだ!」
ウエスの目の前に漆黒の蛇の群れが鎌首をもたげていた。手した棒切れを振り上げたウエスは精一杯の怒鳴り声を上げた。
「邪悪な魔物め。王都は滅びぬぞ。神々よ、ダファネアよ、私に力をお貸しください!」
瀧の水が落ちるような音とともに闇の蛇はウエスに襲いかかった。
ウエスは必死に棒きれを振り回したが、その姿はたちまち呑み込まれてしまった。蛇は狂暴にうねり、漆黒の胴体の隙間から鮮血が飛び散った。
思わず引き返しかけたカラゲルをクランが止めた。
「おい、ここは引き時だ。急ぐぞ」
馬上の四人は広場から出て城門への道を駆けた。あれほど群衆でごった返していた路上は洪水の過ぎた後のように荒れ果て、道端には苦悶の表情を浮かべたまま死んでいる者たちが血まみれで転がっていた。
外郭地域にはまだ人々が泣き叫びながら右往左往していた。王宮の地下で始まった闇の奔流は同心円状に王都へ広がっているのだろう。
それでも、このあたりが安全だというわけではなかった。
いきなり土台ごと崩れ落ちて瓦礫の山と化す建物。道路は鋤き返された畑のようになって、あちこちに開いた穴を避けて進まねばならない。
民家の井戸から噴き出してきた闇の奔流によって周囲の人間や動物が地下へ引きずり込まれる。そうかと思うと、いきなり地上へ飛び出してきた蛇に空中高く弾き飛ばされる者が建物の向こうに見えたりした。
振り返って見ると王宮へ向かって高く丘のようになっていた王都が奇妙に形をゆがめていた。紺碧の都の象徴だった尖塔が見えないのはもちろんだが、丘の高いあたりは街区ごと地盤が傾いてしまったようだった。
「あのあたりにいた者たちは逃げる間もなかっただろう」
ユーグが無念そうに言った。王宮にはたくさんの仲間がいた。その者たちとまた会える日が来るとはとても思えなかった。
ミアレ姫は蒼白な顔で王宮のあたりを見上げた。
「ユーグよ。このことはすべて、お父さまがなさったことなのですか」
「まだ、はっきりしたことは分かりません。しかし、王はおそらく王国の禁忌に触れたのです」
ミアレ姫の涙に濡れた目がユーグの顔を見上げた。
「王宮へ帰りましょう。いいえ、私ひとりでも帰ります。王家の者が民をさしおいて逃げるなど許されることではありません」
空に不気味な轟音が響いた。王都の中心近くに巨大な砂埃が舞い上がるのが見えた。
「ユーグ、降ろしてください。私は、私は!」
先頭を走っていたカラゲルはミアレ姫の声を聞くと、それをさえぎるように鋭く甲高い声を放った。
「オホーイ、ホーイッ……ホイッ、ホイッ、ホイッ……」
これは狩りの勢子を務める時の声で草原の疾風にも砂嵐にも負けない音色を持っていた。場違いに甲高い声にミアレ姫も驚いてカラゲルを見た。
「姫さま、今は駄々をこねている時ではない。今は逃げる時だ」
「私は駄々をこねてなどいません。王家の者の命は王国に捧げるためにあるのです」
カラゲルはまた甲高く勢子声を上げた。
「馬鹿を言っては困る。姫さまの命がすなわち王国の命だろう。俺は稲妻の刺青にかけて王の血脈を守る。それが王国の戦士だ」
その時、前方の道をふさぐ馬車が見えてきた。幌のかかった馬車に制服を来た衛兵隊が五人がかりで群がっていた。
「おい、馬車を降りろ。こいつは俺たちがいただくぜ」
「この女、なかなかいける顔じゃねえか。馬車ごともらって行こう」
見ると、馬車の主はあの宿屋の若夫婦だった。
「ふざけるんじゃないよ、この火事場泥棒め!」
女房が怒鳴り声を上げ、手にしたすりこぎ棒のようなものを振り回していた。
手綱を握った若主人は剣を抜いた衛兵たちに怯えきっていた。
「やめてくれ、あんたたちは衛兵隊じゃないか」
この衛兵たちは制服こそ着ているが、混乱に乗じてやりたい放題やってやろうというつもりで町を荒らしまわっていたのだった。
しょせんは、ならず者の傭兵に過ぎない連中だ。こんな状況になって腐った性根がむき出しになっただけのことだった。
「衛兵隊がなんだ。王都がどうした。この世の終わりが来たら、すべてチャラだぜ」
「そうとも、こんな時こそ俺たちの天下だ。いっそ、みんな滅びちまったら面白れえや」
下卑た笑い声とともに衛兵たちは女房の腕をつかみ、若主人を引きずり下ろしにかかった。
「待て、クズども!」
カラゲルが馬の脚を速め、若夫婦を助けに向かった。クランもすぐ後に続いた。
衛兵たちは驚いた顔になり剣を抜いて身構えた。
「田舎者が余計な邪魔だてするんじゃねえ」
「俺たちに敵うと思ってるのかよ」
衛兵たちは若い二人を侮り嘲るように怒鳴った。
軽い身ごなしで馬から降りたカラゲルとクランは素早く剣を抜き放った。すでに闘う構えに入っている。横向きの8の字が二つ、刀身は生き物のように揺れた。
カラゲルはクランに耳打ちした。
「これは剣の稽古じゃないぜ。やるか、やられるかだ」
「分かっている。お前だって本当に人を斬るのは初めてだろう」
「そうだ。村を出た時はまさかこんなことになるとは思わなかったがな」
その時、衛兵たちは少し離れたところにいるユーグとミアレ姫の姿を見つけた。
「おい、あれを見ろ。姫さまじゃないか。それにお偉いお守り役も」
「なるほど、こいつらはお偉方の護衛ってわけか。いよいよ、ぶった斬ってやりたくなったぜ」
「いっそのこと姫さまも頂いて行こうじゃねえか。ウラレンシス帝国の奴らに高く売れるかもしれないぜ」
衛兵たちは一斉に斬りかかってきた。
カラゲルは最初の一人を軽く受け流し、よろけた肩口へ容赦なく剣を叩き込んだ。衛兵隊の制服が切り裂かれ鮮血が空中に飛び散った。
クランも突いてきた相手の剣先をブルクット族特有のうねるような剣さばきで弾いた。二の太刀が来る前にクランの剣は相手の胸を貫いていた。
次々と絶叫を上げながら衛兵たちは倒れていった。
ならず者の力任せの剣がブルクット族の鍛えた剣法に敵うわけもなかった。それだけではない。カラゲルとクランは怒っていた。
怒れる若い戦士たちは容赦ということを知らなかった。馬車の上の若夫婦は抱き合って震え、ミアレ姫もユーグの背中に顔を伏せていた。
たちまち衛兵たちは一人残らず斬り捨てられてしまった。
カラゲルとクランは血にまみれた剣を拭うと腰の鞘に納めた。カラゲルは馬車の上の二人に声をかけた。
「おい、お前たち、早く逃げるんだ。それから……」
カラゲルは口ごもった。代わりにユーグがウエスのことを言うと、若夫婦は天を仰いで泣きだした。
「ウエスは私たちを助けて死んだ。勇敢な死だった。神々もきっと……」
「神々ですって!」
女房は天に向かってすりこぎ棒を突き上げた。
「そんな結構な方々がいらっしゃるなら、どうして私たちの都はこんなことになったんです。どうして私たちの父はこんなことに」
若主人は女房の手をつかんで言った。
「やめるんだ。神々の御心など俺たちに分かるわけがないだろう。なあ、お前、きっと帰って来れるさ。そうだ、姫さまさえご無事なら王都もきっと……」
二人は四人に会釈すると、女房の故郷のナホ族のところへ行くと言って去った。
カラゲルが声を励まして言った。
「さあ、俺たちも行こう。今の王都は危険だ」
もうミアレ姫も王宮へ戻ろうとは言わなかった。今は命を捨てるべき時ではない。
まだあちこちからガラガラと何かが崩れる音や切り裂くような悲鳴が聞こえていた。王都全体が怖れと怒りに震え、おののいている。
晴れ渡っていた真昼の空が今は細かな砂埃で紗がかかったように見えた。空気は乾いたほこり臭さと血生臭さで濁っていた。そこにうっすらと硫黄の臭気が漂っている。
それでも、ウエスの言ったように南の城門の方はいくらか静かなように思えた。馬上の四人はそちらへ向かった。
城門のあたりは王都の住民と旅人とが混じり合って、ごった返していた。宿屋の若夫婦のように帰る故郷のある者はいいが、そうでない者たちは定住できる土地を求めて草原を彷徨うことになるだろう。
四人は街道へと馬を進めた。道沿いに長い行列ができている。その者たちはミアレ姫の顔を見ると安心した表情になった。ユーグの白い長衣も頼もしく見えた。
しかし、中には王家の者へ反感を持った視線を向ける者もいた。
シュメル王が聖剣と聖杖を我が手に集めようとした涜神の行為が早くも噂話となって人々の間に広まっていたのだった。おそらくその風聞の元は衛兵隊だろう。
クランは先頭に立つカラゲルに声をかけた。
「おい、どこへ行くつもりなんだ」
「もちろん、村へ帰るさ」
「ユーグと姫さまを連れてか」
クランは後ろについてくる二人の姿へ目をやった。ユーグはともかく、ミアレ姫はさすがに疲れた様子だった。宿を出る時、頭に載せてきたミアレの花冠はすっかりしおれて傾いていた。
クランは自分の頭から花冠を取ると街道脇へ投げ捨てた。
「カラゲル、私たちはいったい、どうしたらいいのだ」
「うむ、まずは一番近くの宿駅まで行こう。今日はそこまで行くのが精一杯だろう。そこで、できることなら姫に馬を調達する必要があるな。二人乗りで長旅は無理だ」
クランはカラゲルの稲妻の刺青を見ているうちに腹が立ってきた。
「お前、いやに落ち着いているな。分かっているのか、王都は滅びたのだぞ。あれを見ろ」
クランは後にしてきた王都を指さした。城壁の向こうで王都は舞い上がる砂塵や煙にかすんでいた。またも空高く、建物の崩壊する轟音が響いた。
「分かっている」
カラゲルはまっすぐ前を向いたままだった。その横顔へ食い入るような目を当てたクランは手綱をとる手をきつく握りしめた。
「セレチェンはコルウスに殺された。シュメル王も闇の王に肉体を乗っ取られて死んだ。お前の父のウルもどうなっているか分からないのだぞ」
「それは帰ってみれば分かる。あるいは部族の誰かが王都へ向けて使者を放ってくれたかもしれないな。街道のどこかで会えるといいが」
クランは怒りに任せて怒鳴り声を上げた。
「カラゲル、お前は怒っていないのか。コルウスに対して、闇の王に対して、怒っていないのか!」
カラゲルはクランを振り返った。その目にはこれまで見たこともないような冷徹な暗さがあった。
カラゲルは族長の息子だった。もし父に何かあれば、ブルクット族の族長となって王国のために立つべき男だった。クランは初めてカラゲルを遠く感じた。
「クランよ、我らブルクット族は王国の戦士だ。復讐や怒りに任せて闘うのは王国の守護者のすべきことではない。俺はこれをセレチェンに学んだ。俺はさっき衛兵たちを斬ったのも少し後悔しているのだ」
クランはカラゲルの言葉を聞くと切れ長の目元を険しくした。
「カラゲルよ。私にもブルクット族のように生きろと言うのか。セレチェンは死んだ。私は本当のみなしごになったのだ」
クランは街道を離れ、ひとり草原へ馬を走らせていった。オローを呼ぶ声が空に響いた。
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