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3巻

3-2

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「お兄ちゃん。料理するのに時間がかかるから、ゆっくりお酒を飲んで待っててね。旭、一言でも文句言ったら、この店に置いて帰るから」

 私の殺気を感じたのか、旭は大人しくうなずいた。
 個室から出て厨房に入ると鮪の短冊たんざく、あおりいか、雲丹、鯛、金目鯛、すき焼き用の国産和牛、伊勢海老が生の状態で準備されていた。
 せめてもの救いは、一匹の鮪じゃなく短冊だったことか。
 その他、必要な食材、調味料、盛皿、料理道具なども全て揃っていた。
 はぁ~、溜息も吐きたくなるでしょ。
 私は一度深呼吸をし、厨房に置かれている割烹着かっぽうぎを着る。
 なんでこんなところだけ用意周到なんだか……お洒落した意味が全くないよ!
 ええっと、まずは御造里ね。私、板前いたまえじゃないんだけど。
 鮪の短冊は、刺身包丁を使用して食べやすい大きさに切る。
 あおりいかはさばいてから切り込みを入れ、大葉と巻いて切っていく。
 こうすると、見た目がえるでしょ?
 雲丹は殻から外し塩水でよく洗う。洗った殻に大根のつまと海藻かいそうを入れ、その上に雲丹を載せる。
 この三つを用意されている皿に盛りつけ、なま山葵わさび紫蘇しその花、いろどりに黄色の小菊を添えたら『本日の三種盛』は完成。
 もしかして、運ぶのも私がやらないとダメなのか……
 御造里を個室に運んで、私の分は残すようにと二人に注意する。
 さて、次は割鮮ね。立派な鯛で、こんなに大きいものは初めて見た。
 でも、鯛の薄つくりなんて作ったことないわよ!
 これはもう、塩焼きにメニュー変更だ。
 鱗と内臓の処理はしてあるから、飾り包丁と化粧塩をして焼いていく。
 呑気に炭火焼きしている場合じゃないので、火魔法ひまほうのファイアーボールを使用。よし、できた!
 これも個室へ運ぶ。冷めてしまうけど仕方ない。
 厨房に戻り、煮物の準備だ。
 まぁ、美味しそうな金目鯛! 大きな目玉がんでいて、鮮度抜群ね~。
 こちらも下処理は済んでいるから、白髪しらがねぎを作り、生姜しょうがをスライスする。
 金目鯛には、味がよく染み込むよう、隠し包丁を入れておく。
 鍋に水と酒とザラメを入れ、強火で沸騰ふっとうさせ、酒を飛ばす。金目鯛と醤油しょうゆ、みりん、生姜を加え、再び煮立ったらとしぶたをして弱火で煮る。時々煮汁を回しかけ、照りが出てきたら火を止める。
 あぶらがのっており、今すぐご飯と一緒に食べたいけど我慢。
 皿へ金目鯛の煮物を移し、上に白髪ねぎを載せたら完成。
 個室へ運び、くれぐれも私の分は残しておくようにと注意する。
 もうなんか個室と厨房を行ったり来たりして、凄く忙しいんですけど!?
 次は国産和牛のすき焼き鍋か。これはいつも作っているから簡単だ。
 すき焼きのタレがないから割り下を作る。
 白ねぎ、椎茸しいたけ、焼き豆腐、糸こんにゃく、ごぼう、春菊しゅんぎくを切り、皿に盛る。
 割り下と食材はこのまま持って行って、最後に個室で調理することにしよう。
 やっと、伊勢海老の鬼殻焼まで辿り着いたよ。それにしても、大きな伊勢海老だなぁ。
 さっき鯛は塩焼きにしたから、メニューを変更して御造里にしよう。
 伊勢海老の頭を外し、身を取りやすいよう出刃包丁でばぼうちょうで半分に割る。
 身を取り出して一口大に切ったら氷水で締め、伊勢海老の頭と殻と一緒に皿へ盛りつける。
 私の感性を駆使くしし、豪華ごうかに見えるよう食用花を添えてみた。
 個室にすき焼きの材料と伊勢海老の御造里を運んで、やっと席に着く。
 こんなの、私が知ってる外食じゃないよ!
 私が本日の三種盛、鯛の塩焼き、金目鯛の煮付け、伊勢海老の御造里を食べている間、兄たちにすき焼きを作ってもらう。
 あ~、雲丹が甘くて美味しいよ~! あおりいかも鮪も新鮮だ。
 鯛と金目鯛は味付けばっちり! 伊勢海老もプリプリで美味しい! 
 伊勢海老の頭はもったいないのでアイテムボックスに収納する。
 できれば店の料理が食べたかった……
 自分で作った料理に舌鼓したつづみを打ち、ようやく少し落ち着いてきた。
 しかし、ボリュームのある懐石料理だなぁ。三食分一気に食べたような感じがする。
 御食事、香物、汁物、デザートは電子メニューの『タイミング』の表示で、出てくるタイミングを選べるらしい。これらはすき焼きを食べている途中に出した。
 懐石料理は最後にご飯物が出るのがちょっとね……
 料理とご飯は一緒に食べたい派です。きっと、私と同じように思っている人は沢山いるはずだ!
 汁物は蛤のお吸い物だけど、伊勢海老があるなら、伊勢海老の味噌汁をいただきたかった……
 デザートのメロンを食べたら、お腹いっぱい。
 旭めぇ、覚えときなさいよ! この恨み、いつか絶対に晴らしてやる。
 結局、一人二万千六百円も払い五品も作る羽目になった。
 しかも兄たちの飲み代がえげつない。
 大吟醸だいぎんじょう七百ミリリットル、二本一万円とか何様ですか!?
 よく考えたら私、無料の温かい玉露しか飲んでないじゃん!
 もう今日は疲れて、私の従魔のシルバーウルフ、シルバーの散歩には行けそうにない。
 ごめんよシルバー……明日は草原で沢山遊ぼうね。
 こうしてお疲れ様会とは全然違う、私が客から料理長兼給仕係になった食事会は終わった。
 日本酒を飲んでご機嫌な兄たちは、そのまま二軒目へ向かうと言うので私は自宅に帰る。
 車もあるし、適当なホテルに泊まり、明日帰ってくるだろう。
 私をこの世界に召喚した人、何故なぜこんな意味不明の設定にしたんでしょうか……?
 誰も料理できなかったら、生の食材がテーブルの上に置かれるだけになっていますよ!
 そのおかげで散々な目に遭いました。臨機応変な対応にも限度ってものがあると思います。
 異空間の街のお店が二十四時間営業なのには大変感謝していますが、自分たちで料理をする仕様は必要ないです!
 私の心の叫びは届いただろうか……


 翌日の朝八時になっても、兄たちはまだ戻ってこない。
 朝食にふわふわのホットケーキを作り、上にバターを載せ、たっぷりとメープルシロップをかけて食べる。一緒にアイスティーを飲んだら、喫茶店きっさてんで食べるのと変わらないくらい美味しい!
 市販のホットケーキミックスは、誰でも簡単に作れるから大変便利だ。
 アレンジも色々可能だしね。ドーナツとかアメリカンドッグとか蒸しパンやクッキーなど、子供の頃は母がよくドーナツを揚げてくれたなぁ……
 一応、兄たちの分も作り、アイテムボックスに収納して服を着替えて異世界に移動する。
 迷宮都市にある高級店、奏屋かなでやに地下十一階の梨、地下十三階のピオーネとシャインマスカットを卸しに行くのだ。さてさて、いくらになるのか楽しみだと思い、つい顔がほころんでしまう。
 いけない、こんな表情で町を歩いていたら不審人物に見えるよ。
 表情を元に戻して店内へ入ると、いつもの店員さんが応接室まで案内してくれる。
 テーブルの上に用意された紅茶とクッキーを食べ、のんびり待つと店長さんが入ってきた。
 席を立って挨拶をする。

「こんにちは。いつもお世話になっています」
「こちらこそ大変お世話になっております。当店にダンジョン産の果物を毎週卸してくださり、ありがとうございます」

 お互い頭を下げて、席に着いた。

「今日は、また新しい果物を持ってきました。梨とぶどうです。味の確認をしてもらえますか?」

 マジックバッグから梨とピオーネとシャインマスカットを取り出し、側に控えていた店員さんに手渡す。
 店員さんは受け取った果物を店長さんに見せると、店長さんから梨を切るよう指示を受け、部屋から出ていった。ぶどう二房は陶器製の綺麗な皿に置かれている。

「どうぞ試食してください。紫色のぶどうは皮を剥く必要があるけれど、緑色のぶどうは皮ごと食べても大丈夫です。味の好みはあると思いますが、緑色をしたぶどうのほうが貴重です」

 桃と同様に見つかりにくいことをやんわりと伝えておく。
 これで買い取りの値段も上がるだろう!

「では失礼して、いただきます」

 店長さんは、まず初めにピオーネの皮を剥いて食べ始めた。
 ピオーネを二、三粒食べた店長さんは、その味に感心しているように見える。
 次に私のアドバイス通り、皮を剥かずシャインマスカットを一粒口に入れた。
 皮ごと食べられるぶどうを初めて食べたのか、少し驚いた表情をしている。
 店長さんがぶどうを食べ終わる頃、店員さんがカットした梨を綺麗に盛った皿を持って入ってきた。皿がテーブルの上に置かれると、店長さんは梨を一切れ、フォークで刺して食べる。
 続けてもう一つ食べたあと、私の顔を見ると頷いた。
 おおっ、これは好感触だ! 高価買い取りが期待できる。

「全て大変美味しゅうございます。ところでいただいた梨とぶどうは、どの階層で採れたものになりますでしょうか?」
「はい。梨は地下十一階、ぶどうは地下十三階のものです」
「なるほど、よくわかりました。では梨一個で銀貨八枚、紫色のぶどう一房で銀貨十枚、緑色のぶどう一房で銀貨二十枚はいかがでしょうか? 梨とぶどう二種類を各十個、卸してくださると助かります」

 予想通り、高価買い取りきましたよ! ちなみに日本円で銀貨一枚は一万円くらいの価値だ。
 シャインマスカットは、なんと一房銀貨二十枚の超高級フルーツになった。
 一体、誰がそんな値段を払って食べるの? この世界にも、お金持ちは沢山いるんだろうなぁ。

「その価格で問題ありません」

 私は店員さんから渡されたマジックバッグに、果物を入れて返却する。

「代金をお支払いしますので、少々お待ちください」

 店員さんが部屋から出ていくと、私は以前から確認したかったお米のことを店長さんにたずねた。
 店内を探したけど、お米は見つからなかったんだよね。

「私が探している食材について聞きたいんですけど、お米を知っていますか?」
「お米でございますか? 申し訳ありません。私は聞いた覚えのない食べ物です。それは一体どんな形をしているのでしょうか? 地域によっては名称が変わることもございます。詳しく教えていただけませんか?」

 う~ん、なんて言ったら伝わるのかなぁ。

「小麦みたいに実が生ります。でも粉を引いてパンなどにして食べるのではなく、もみ殻から外した状態のものに、水を入れてくんですけど……」

 上手く説明できただろうか?

「私の勉強不足か、やはりそのような食材は存じあげません。お客様の期待に応えられず、非常に残念です。もし王都の本店に知っている人間がおりましたら、またお伝えさせていただきます」

 残念、やはりこの世界にお米はないのか……

「よろしくお願いします。それと今日は植物油を購入したいんですが、ありますか?」

 油は魔物から取れるラードに近いものを使用するのが普通だけど、私はダンジョンの食事改善のためにどうしても植物油が欲しい。

「それでしたら当店にございます。すぐにご用意いたしますので、お待ちください」

 その時ちょうど店員さんが果物の代金を持って部屋に入ってきたところだったので、店長さんは植物油を持ってくるよう指示を出した。
 私がお金を受け取ると、店員さんが部屋から出て行き、植物油を持って戻ってきた。

「こちらがオリーブで、お値段は一壺ひとつぼ、銀貨三枚になります」

 私は渡された壺の蓋を取り、確認した。
 新鮮な匂いがするから酸化している様子はない。量は一リットルくらいだろうか?
 この世界にもオリーブの木があるんだなぁと妙なことに感心しながら一壺購入して、店員さんに銀貨三枚を支払った。
 この世界は機械がないから手摘てづみでの収穫になるだろうし、オリーブ油をしぼるのは大変な作業だろう。日本で暮らしていた時は、オリーブ油はイタリアンを作る時しか使用しないから、大抵賞味期限が切れちゃっていた。

「それでは失礼します」
「本日も貴重なしなをありがとうございます。今後ともご贔屓ひいきのほど、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

 店長さんにそう言われて、席を立つ。
 応接室から退室して店を出る際、また深々とお辞儀をされてしまった。
 もうなんというか、このやり取りが落ち着かない。
 私はしがない一般市民です。こんなに丁寧な扱いをされる人間ではございませんよ。
 でもまぁ、定期的に高級食材を卸してくれる取引先を失いたくないのかもしれないね。
 オリーブ油を入手したのである料理を作ろうと、露店の野菜屋さんへ寄ってキャベツとトマトを購入した。本当はレタスが欲しかったけど、ないのでキャベツを代わりにしよう。
 果物が高値で売れたため、大変ご機嫌な状態で自宅に戻った。
 お昼を簡単に食べてから、シルバーと異世界へ出かけようと思い、駐車場に下りる。
 シルバーは部屋で住むには狭いだろうと、駐車場で暮らしてもらっているのだ。
 そこで車から降りてきた兄たちと鉢合わせた。どうやら泊まったホテルから帰ってきたらしい。
 二人共、もうお昼を大分過ぎてるよ? チェックアウトギリギリまでいたと見える。

「とってもお早いお帰りで。私はこれからシルバーと草原を駆けてくるから、お昼は適当に何か食べてね。じゃ、いってきます!」

 私が嫌味っぽく手を振ると、兄は二日酔いで頭が痛いのか顔をしかめ、手を振り返す。

「あぁ、いってらっしゃい」

 昨夜、店を出てから相当飲んだらしく、旭は兄の隣でぐったりとしている。
 二日酔いの二人は忘れて、私とシルバーはいつもの草原に転移した。
 さあ、今日も風になって走るのよシルバー!
 三十分ほどシルバーの背中に乗り、早駆けを楽しんだあと、フリスビー投げをする。
 追いかけっこは……遮蔽物しゃへいぶつの全くない草原では全力ダッシュするしかなく、疲れるだけだった。
 シルバーも、私を追いかける意味がわからないようで反応が悪いしね。
 大縄跳びを一緒に跳ぶ遊びも考えたけど、そもそも縄を回してくれる人間が二人必要なことに気付き、非常に残念だけど諦めた。
 兄は頼んでも絶対してくれないだろうし、旭一人じゃ縄を回せない。
 ううっ、こんなところでパーティーの人数が少ない落とし穴があるとは……
 ここに前世の双子の弟たちがいたら、喜んでしてくれただろうに。
 歳が八歳離れた双子たちは可愛く、そりゃもう目に入れても痛くないほど溺愛できあいしていた。
 弟だけど小さい頃は私が女の子の格好ばかりさせていたので、ご近所さんには妹だと間違えられていたっけ。昔の写真を見ると女児にしか見えない。
 小学生くらいまでは髪も長く、毎日私がリボンを結んでいた。今思うと、なんて迷惑な姉だったんだろうかと反省する。
 まぁ実際、大人になってからも二人は中性的な顔立ちをしていた。
 実の姉が思うのだ。双子たちは完璧な女顔だった!
 あれは性別を間違えて生まれてきたとしか思えない。
 さて、昔のことを思い返すのはこの辺にして、今日はシルバーになんのお話をしようかな?
 私はシルバーに、織姫おりひめ彦星ひこぼしの話を聞かせてあげた。あまりにも恋愛にのめり込むとやるべきことを忘れてしまい、結局は年に一回しか会えなくなるという話だけど……
 しかも天気がよくないと、その一回も会えないなんて悲しすぎるわ。恋って怖いわよね~。
 この話のポイントは、恋は盲目もうもくってことなのよ~。
 いつかシルバーも、素敵な相手と危険な恋に落ちるかもしれないわね。
 シルバーには、相手をいくら好きになっても私を忘れないでほしい。
 一時間ほど織姫と彦星の解説をして、自宅に戻った。


 日曜日はいつも通り、教会で子供たちに炊き出しをする。
 炊き出し後に子供たちに話を聞いたあと、兄が大きいみかんを配っていた。
 ぶどうは奏屋へ一房銀貨十枚で卸すから、流石さすがにそんな高価な果物を子供たちに渡せない。


         ◇  ◇  ◇


 月曜日。地下十一階でランダムに生る果物の収穫をしたいと言う兄と別れ、私と旭は地下十三階の安全地帯に向かい、マジックテントを設置する。
 兄がいないことに気付いたアマンダさんとダンクさんが不思議そうに聞くので、

「地下十二階の桃を収穫したいと言うから置いてきました」

 と答えると二人に大爆笑された。
 地下十一階の梨と地下十三階のシャインマスカットは内緒だから、桃の話にしておいたのだ。
 今回は地下十三階のピオーネのみ、私たち二人で収穫する。
 シャインマスカットを収穫したら、兄の楽しみを奪ってしまうからね。
 旭と別行動を開始して、薬草採取とピオーネの収穫をしながら、コボルトを倒す。
 すると、キラービーの集団がやってきた。ハニービーは換金額が高いので発見次第、昏倒させて槍で突き刺し、収納する。
 ピオーネを収穫しながら、川沿いを歩いていたら旭とバッタリ会った。
 旭はあらかたピオーネの収穫が済んだので、魔力草まりょくそうを採取しに来たらしい。
 私もピオーネの収穫をほぼ終えたところだったため、合流して迷宮サーモンを一緒に狩りに行く。
 旭がいい方法があると自慢げに言うから見ると、旭は川へサンダーボールを撃ち、迷宮サーモンを感電させた。そして、ぷかぷかと浮いてきた五匹の迷宮サーモンをトドメのライトボールで瞬殺する。おおっ、確かに簡単だ!


 そして私はあることが非常に気になり、すぐには収納せず、迷宮サーモンの体内をマッピングで調べる。そう、イクラは取れるのか疑問に思っていたのだ。
 体長三メートルある迷宮サーモンはイクラの大きさも……
 しかし、残念。卵はなかった。全部、雄だったのだろうか? 今後は全ての迷宮サーモンを調べて検証しようと思う。私の知的好奇心のために……


 三時間後、安全地帯のテントに戻ると兄の機嫌がいい。
 どうやら地下十一階の梨も地下十二階の桃も、無事収穫できたようだ。
 アイテムボックスに入れるために出してもらうと、梨と桃の他にリンゴもみかんも軒並のきなみ収穫していた。二階層分だから数が凄いことになっている。
 テントから自宅に戻り、昼食。本日のお弁当は鳥そぼろ、たまご、絹さやをご飯の上に載せ、キンピラとタコさんウインナーを添えてある。
 大根、えのき、豆腐の味噌汁と麦茶と一緒にいただきます。
 精神年齢六十歳手前の私たちのお弁当の中に、タコさんウインナーを入れるのはどうかと思ったけど、足がくるんとして可愛いからいいのだ! 同じ理由でウサギリンゴも止められない!
 ナポリタン好きな兄も、あらびきウインナーじゃなく赤ウインナーを使用しないと怒るから、家の冷蔵庫にはいつも両方のウインナーが入っている。


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