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2巻
2-2
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◇ ◇ ◇
月曜日。ダンジョン地下六階の地図を買い、常設依頼を確認して、一気に地下六階まで駆け抜ける。
あっ、また宝箱があるか確認し忘れた。
地下六階に到着したので、攻略開始!
この階で初めて出会う魔物は、グリーンタートル。
グリーンタートルは体長三メートルほどの大きな亀だった。わざわざグリーンと書かれているということは他の色もいるのかな……?
ひとしきり攻略をしたら、拠点を作るため安全地帯に移動する。
ここも安全地帯は混雑していたけど、なんとかテントを張ることができた。
◇ ◇ ◇
地下六階も五階と同じで大きな事件などはなく、五日後、冒険者ギルドへ換金に行った。
グリーンタートルは珍しい魔物だから、一匹は換金せず持っておくことにして、残りは甲羅の状態がいいからと、また高値で買い取ってもらえた。
甲羅は鮮やかな緑色をしており、とても綺麗だ。
べっ甲みたいに装飾品として使用するんだろうか?
まさか甲羅を背負って訓練などはしないだろう。重しとしては活用できそうだけどね。
肉はスッポンみたいに美味しいのかな? それとも海亀系の味?
旭は地下一階から地下六階に出る魔物で、自分が持っている換金できそうなものを提出していた。
彼は日本で亡くなったあと、何故かリースナーのダンジョンマスターになっていて、ダンジョンから離れられなくなっていた。
だから、私が改めてこの世界に人間として召喚して、自由に行動できるようにしたのだ。
ダンジョンマスターだった期間は、独りぼっちで外にも出られず、とても辛かっただろう。
そして、そのダンジョンマスター時代に倒した魔物をアイテムボックスに入れているんだけど……十一年分あるから少しずつ換金してください。
あ、ハイオーガは出しちゃダメだってば、まだこの迷宮では出会っていないんだから。
脇腹を突くと気が付いたのか、旭が慌てて収納する。
用が終わり、ホームで自宅に戻ると、兄と旭は仲良く「華金だ~」と言いながら、飲みに出掛けた。
ホーム内の異空間には私たちが住んでいた日本の町が広がっており、店員はいないけど、飲食店で飲み食いしたり、スーパーで買い物したりすることもできる。
二人はこうして仕事終わりによく飲みに行っているんだよね~。
◇ ◇ ◇
土曜日、朝九時。
今日は出掛けると言っておいたのに、兄と旭は二日酔いのようで気分が悪そうだ。
露店で野菜とパンを購入し、依頼していた巾着を受け取りに行く。
乾物屋に寄り、ドライアプリコットを買ったらホームで自宅に戻る。
ここからは給食のおばちゃんに変身! あぁ、この作業が大変すぎる……
二日酔いの二人は、ドライアプリコットを無言のまま巾着に詰めていた。
◇ ◇ ◇
日曜日。教会に行き、朝七時から準備を始める。
子供たちは八時三十分頃から集まり始めた。料理ができるのを待っている間に、旭が子供たちが持っている空の巾着と新しい巾着を交換する。巾着は皆忘れず持参していた。
それだけ甘いものに縁のない生活をしているんだろう。
兄が作ったスープの味を私が調整したら、子供たちに食事を渡す。
パン係の旭が一人で忙しなく配る様子を見て、切実に手伝ってくれる人が欲しいと思う。
すると先週に引き続き、また誰かがこちらへ近付いてきた。
今度もすぐ二人が私を背に庇ってくれたけど、今回は女性だった。
あれ? この人、炊き出しのところから来たよね……
痩せており、精彩を欠いたその表情はかなり疲れているように見える。
「あのぉ。子供たちに炊き出しをしてくださり、ありがとうございます」
頭を下げながらお礼を言われ、この人も子供たちを気にしていたのかと思う。
「いいえ。日曜日しかできませんが、これから毎週するつもりでいます」
「本当ですか? とても助かります! 今日は息子がお腹いっぱい食べられることに感謝します」
「えっ? 息子さん? この中にいらっしゃるんですか?」
「はい、主人が亡くなったものですから……」
リースナーの町は両親ともいない子が多かったけど、こういうパターンもあるよね。
「あとで少し、お話しませんか?」
「はい。では子供が食べ終わったら、また寄ります」
女性はそう言い、立ち去っていった。
子供たちが全員いなくなり、撤収作業を始める頃、母親らしき人が五人ほどこちらにやってきた。
炊き出しのお礼を言われたあと、状況を確認するために話を聞いてみる。
一人一人話を聞くと、旦那さんが冒険者で亡くなり、母子家庭になった人たちが大半だった。
お~い、冒険者の旦那さん。稼いでいたんだからお金くらい残しておけよ。
宵越しの銭は持たない派か!
大型ダンジョンが近くにある迷宮都市は、他領から来る人も多いため、故郷が遠くにある場合は実家も頼れない。
子供がいるから再婚もなかなか難しく、親子ともに路上生活を送っているらしい。
働き口があるわけじゃなく、日払いの仕事を受けてなんとか暮らしているそうだ。
もうこの年から冒険者として働くのもリスクが高いし、まだ幼い子供を一人残してダンジョンを攻略するのは無理だろう。
「料理はできますか?」と尋ねたら、全員が「できます」と答えたので、毎週日曜日の炊き出し時に手を貸して欲しいとお願いする。
朝七時に教会へ来てくれるように伝えてから別れた。
兄と旭に、親子が一緒に暮らせるよう、お店の従業員として住み込みで雇いたい旨を伝えると、「やってみたら?」と賛成してくれた。
そのまま冒険者ギルドへ向かい、受付の女性にお店を購入したいと相談したら、店舗は商業ギルドの管轄だと言われる。
おお、そうか。商業ギルドがあるのか。
町娘の格好だと舐められそうなので、新品を扱う服屋へ行き、着替えよう。
服屋に入り、値段を確認してぎょっとする。
この世界の服は高いな~。この値段は普段着じゃないよ!
高すぎると思いながらも、仕方ないので無難そうな服を一着購入して、着替えてから商業ギルドに向かった。
初めて入った商業ギルドには、冒険者は一人もおらず、商人の姿が多かった。
新品の服に着替えてきてよかったと、胸を撫で下ろす。
店内は冒険者ギルドより広くて綺麗で、飲食店が併設されていないから、商談は応接室で行うのだろう。
受付の女性に飲食店を購入したい旨を伝えると、別室へ案内された。
席に着いて数分後、中年の男性が入ってくる。
この人が担当者らしく、見た目が優しそうで安心した。
「本日、担当させていただきますカマラと申します」
「サラです。よろしくお願いします。飲食店を購入したいのですが、物件はありますか?」
「商業ギルドの登録はお済みでしょうか」
「いいえ、してません」
「登録していただくと割引がありますが、どうされますか? 登録料は銀貨十枚となります」
「では、お願いします」
今後のことを考えると、していたほうがいいかもしれないので、商業ギルドも登録しよう。
用紙を記入して銀貨を十枚渡したあとで、商業ギルドカードが渡される。
血液を採取されて機械に通すと、カードに『サラ・十八歳・第一号』と表示された。
紛失すると、再発行手数料が銀貨二十枚掛かるらしい。
手数料が高すぎる!
登録が完了したので、物件の話に戻ろう。
条件を複数出し、いくつか空き物件を紹介してもらってから見にいく。
大通りに面した店は金額も高く、競合店も多そう。
五軒ほど紹介してもらったうち、比較的状態のいい店が一つあったので契約した。
店は冒険者ギルドから近く、店内は三十人ほど入れる広さがあり、二階には従業員用の部屋も三部屋あった。
テーブルと椅子は、そのまま使用して問題ないらしい。ラッキー!
洋服屋や魔道具屋で必要なものを購入し、兄と旭に相談したら、全て私に任せると言われた。
悩むなぁ~。
飲食店がいいかなと思っているんだけど、母親たちに作れて、集客が見込めるメニューを考えないといけない。
そもそも二人は料理ができないから相談しても無駄だったわ。
利益を追求するわけではないけれど、少なくとも給料を払えるくらいにはしなければ。
迷宮都市のダンジョンは地下三十階まであるから、攻略するのに数年は必要だ。
拠点を当分移さず、その間に顧客を確保して、異世界の料理を新たに考案しよう。
◇ ◇ ◇
月曜日。ダンジョン地下七階の地図を購入して常設依頼を確認したら、一直線に地下七階まで駆け抜ける。
宝箱? 昨日冒険者ギルドの受付で聞いたら、そんなものはないそうだ……ないんかよ!
今回の新しい魔物はレッドタートルとブルータートル。
緑・赤・青とくれば……次は何色だ?
五日後、冒険者ギルドへ行って、旭と換金を済ませる。
今回もタートルは甲羅の状態がいいからと、高値で買い取ってくれた。
せっかくだし全種類揃えたいので、レッドタートルとブルータートルは一匹ずつ、換金せずにアイテムボックスに収納しておこう。
◇ ◇ ◇
土曜日、朝九時。
依頼していたパンと野菜を購入後、野菜屋のおじさんに、新しく作るお店に毎日配送を頼めるか確認して、また営業日が決まったら連絡すると伝えた。
日曜日の朝七時に教会へ行くと、もう既に母親五人は子供たちと待っていた。
親子揃って石鹸を使用して手をよく洗い、水で流し、母親たちには頭を手拭いで覆うように指示を出す。
簡易テーブルを三つ設置後、その上にまな板六枚と包丁六本を取り出し、私も入れて六人で肉、野菜のカットをしていく。
いや~、流石に母親たちは手際がいい! 六人だと早いなぁ~。
百六十人分の材料も、あっという間に切り終わる。
五人の子供には、兄たちと一緒に、ドライアプリコットの詰め替え作業をお願いした。
八時三十分、子供たちがやってくる。
集合は九時でいいと言っておいたけど、不安だったのか、今回も三十分早く来たようだ。
それでも六時に並ぶより二時間半は遅いから、大分負担は減っただろう。
子供たちが待っている間、巾着の交換作業は五人の子供と兄たちの担当だ。
今日も全員が巾着を忘れずに持参していた。
もし忘れた子供がいても、予備の巾着があるので問題はないんだけどね。
約束を守ることを覚えて欲しいから、交換用の巾着を持参するよう、お願いしているのだ。
時間通りに具沢山のスープが出来上がり、パンを配り終えたら、母親たちにも子供と一緒に食べてもらおう。材料を最初に炒めてあるし、胡椒と塩とローリエに似た葉が適量入っているので、普段の炊き出しのスープとは、随分と味の違いが感じられるだろう。
これから母親たちには炊き出しを手伝ってもらうため、スープの作り方を覚えて欲しい。
スープを食べた母親たちは驚いて、目尻に涙を浮かべている。
親子にはそのまま待っていて欲しいと伝え、子供たちがいなくなったら撤収作業。
各自自己紹介をし終わったあと、親子を連れてお店へ案内すると、皆は不思議そうな表情をしていた。
「今日はお手伝いありがとうございます。皆さんはこのお店の従業員となり、住み込みで働いてもらいますから、よろしくお願いします。まずは店内の掃除から始めましょう!」
「えっ!? この店に住み込みで雇ってもらえるんですか?」
「はい、頑張ってくださいね」
「ありがとうございます!!」
母親たちは声を揃えて感謝の言葉を口にして頭を下げる。
まさかそんな提案をされるとは思っていなかったようだ。
でもこういった支援は、なるべく早いほうがいい。
母親たちは痩せて生気がなく、かなり疲れているように見えたからだ。
もし最悪の選択をしてしまったら、間に合わなかったと嘆くことになる。
子供たちは状況を理解できず、きょとんとしていた。
桶と手拭いを準備し、桶にウォーターボールで水を入れて、ファイアーボールで温め、手拭いを雑巾代わりにして、全員で店内を水拭きする。
終わったら、二階の清掃だ。各部屋に、大人用の布団、服と下着、生活用品を置いていく。
子供たちはまだ五歳程度と小さいから、親子で仲良く一つの布団で寝てもらおう。
「お疲れ様でした。子供たちもよく頑張ったね。ではお母さん、今からお子さんを洗ってください」
店内のテーブルと椅子を全てマジックバッグにしまい、大きな盥をいくつか出すと、私と兄と旭でお湯を張る。
購入した子供たちの服と下着を渡して、母親たちが子供を洗っている間に、大型の魔道調理器と業務用寸胴鍋を、厨房へ設置しに行く。
向こうは旭と兄にお願いしたから、私はお店で出すメニューの試作開始。
玉ねぎを切り、ファングボアの肉を薄くスライスし、すき焼きのタレを一・五倍に薄めたものを加えて煮込み、お湯を沸かして乾麺を十二分茹でる。
茹で上がったうどんを湯切りし、深い器に盛ったあと、煮込んだタレを上から掛けて完成。
厨房から店内に戻ると、皆洗い終わっていたので、盥の残り湯を裏庭の水場へ捨て、もう一度テーブルと椅子を設置する。
テーブルに完成した汁なし肉うどんを置き、いよいよ実食だ!
さて、この世界の人に肉うどんは受け入れられるだろうか?
私たちはお箸で、親子はフォークを使用して試食する。
味の感想を聞くと、とても美味しいと言ってくれたのでよかった~。
この世界には馴染みのない味だから、まずいと感じるようなら食事として出せない。
このお店のメニューは当分これでいくことを伝えた。
母親たちは私たちがいたら体を洗いづらいだろうと、再度盥にお湯を張ったあと、業務用の寸胴鍋で湯を沸かしてもいいと伝え、ファイアースライムの魔石を渡す。
魔石は魔物から採れる魔力の塊で、魔道具や武器など様々なものに使われている。
そして、また明日詳しいことを話し合いましょう、と言って店を出た。
来週一週間はダンジョン攻略を中止し、お店の開店準備にあてよう。
お店を経営した経験はないけど、経理事務をしていたからお金の流れは把握できる。
給料を払っても利益が出るよう、母親たちにはぜひとも頑張ってほしい。
◇ ◇ ◇
翌日、朝九時。
露店でパンと野菜と串焼きを購入し、お店に向かう。
小綺麗になった母親たちと人数分のスープを作り、パンと串焼きと一緒に食べてもらった。
昨夜、久し振りに布団の中で眠れたおかげか、母親たちの顔から疲れた表情が消えている。
早く行動して、お店を契約したのは正解だったな。
子供たちも路上ではなく、家の中で母親と一緒に眠れたのが嬉しかったんだろう。
朝から元気いっぱいに食べていた。
ご飯を食べ終わって、さて、打ち合わせ開始。
まず給料は一か月銀貨五枚で毎月一日に先払い(支払い日がダンジョン攻略中の場合は前後する)。今月分は今日手渡した。家に住めるだけじゃ生活できないからね。
店の営業時間は朝六時から夜六時。日曜日は炊き出しがあるので休日にする。
冒険者ギルドに近いので、ターゲットは冒険者だ。
冒険者の活動開始と終了時間に合わせるため、少し長めの営業時間となる。
価格は鉄貨七枚。ファングボアの串焼きが鉄貨五枚なのを参考にした。
肉うどんの作り方は、見ながら覚えてもらおう。
玉ねぎとお肉をスライスし、すき焼きのタレを一・五倍に薄めたもので煮込むだけだ。
すき焼きのタレは、事前に陶器の壺へ入れておいた。
うどんは茹でたあと水で締め、ざるへ上げる。
注文を受けたら熱湯に一分潜らせ、お客さんを待たせないように素早く配膳すること。
冒険者は忙しいので、注文後にすぐに提供される食事はウケがいいはずだし、慣れたら三分でできるだろう。
手順は何度も経験していく間に覚えられると思う。
火曜日は、実際に自分たちで肉うどんを作る作業と接客のマナー講習。
営業開始は水曜日。
初日は開店記念セールとして鉄貨五枚で販売し、客足の確保をしよう。
まずは一度食べてもらうのが、何より肝心だ。
いつも子供たちとしている約束事――体や家を清潔に保ったり、健康的な生活をしたりすることを教えて、母親たちに徹底するようお願いした。
飲食店だから衛生管理をするのは当然でしょう?
そのあと、露店の道具屋に行き、すき焼きのタレを入れる壺を五個購入した。
野菜屋のおじさんには店の場所を伝えて、毎週月曜日から土曜日に玉ねぎの配送を依頼する。
肉屋では、ファングボア肉を直接納品するから、うちの人間が来たら、部位別に解体したものを渡してほしいと交渉する。そうしたら、三匹以上卸してくれるならOKとのこと。
リースナーのダンジョンで手に入れたお肉を四匹分卸し、そのうち一匹は店用に保管してもらう。
倉庫内には、冒険者ギルドの解体場にあるのと同じような保管用の魔道具があるそうだ。
自宅へ戻り、兄と旭と一緒にすき焼きのタレを壺に移し替えあと、店に行って、母親たちにこの『すき焼きのタレ』は秘伝だと伝えた。
ホーム内のスーパーで乾麺を大量に買い込んだあと、袋を破り、旭が持っていたマジックバッグに移し替える。
どういう原理かわからないけど、スーパーの食材は、勝手に補充されるからとっても便利だ。
広告品お一人様一個とかの制限もなく、売り切れの心配もしなくて済む。
日本円がないと購入できないけど、ホーム内にあった十一部屋分の現金のおかげで当分は大丈夫。
いつか異世界の小麦粉で、うどんを作れるようにレシピ本を購入しよう。
◇ ◇ ◇
開店初日。
母親たちは朝五時から仕込みを開始。
来客がどれくらいになるか不明だけど、一応八十人分の準備をお願いしてある。
業務用寸胴鍋四つがフル稼働だ。
兄たちには店内の警備をお願いする。
私はエプロンをつけた子供たちと一緒に、お店の前で呼び込みを開始した。
「開店記念で、本日は鉄貨五枚で~す」
朝早くからダンジョンへ向かう冒険者たちに声を掛ける。
ファングボアの串焼き一本と同じ値段だからか、興味を持ち、お店に入ってくる人が何人かいた。
店内は母親たちに任せ、私たちはひたすら集客しながら、食べ終わった人に味の感想を聞くのも忘れない。
三時間くらい呼び込みをしたあとで一度店内へ戻ると、現在店内のお客は五名ほど。
店の前には書いて消せるプレートに『本日開店記念! 肉うどん鉄貨五枚』と書いた看板を立てている。新しいお店ができると気になるし、こう書かれた看板が毎日通る道沿いにあれば目を引くだろう。
昼食前にもう一度呼び込み作業をし、子供たちも頑張って声を上げる。
一時間ほど呼び込みをして店内へ戻ると、お客は十名。
店内が無人になったら、まかないとして私たちも肉うどんを食べる。
営業終了後、本日のお客の人数を集計したら五十六名だった。
お客の様子がどうだったか母親たちに確認してみる。
美味しいと言ってくれたそうだけど、フォークは少し食べづらかったらしい。
これは仕方ない、慣れてくれるのを待とう。
残った肉うどんは、頑張って働いてくれた親子たちの夕食にしてくださいね。
月曜日。ダンジョン地下六階の地図を買い、常設依頼を確認して、一気に地下六階まで駆け抜ける。
あっ、また宝箱があるか確認し忘れた。
地下六階に到着したので、攻略開始!
この階で初めて出会う魔物は、グリーンタートル。
グリーンタートルは体長三メートルほどの大きな亀だった。わざわざグリーンと書かれているということは他の色もいるのかな……?
ひとしきり攻略をしたら、拠点を作るため安全地帯に移動する。
ここも安全地帯は混雑していたけど、なんとかテントを張ることができた。
◇ ◇ ◇
地下六階も五階と同じで大きな事件などはなく、五日後、冒険者ギルドへ換金に行った。
グリーンタートルは珍しい魔物だから、一匹は換金せず持っておくことにして、残りは甲羅の状態がいいからと、また高値で買い取ってもらえた。
甲羅は鮮やかな緑色をしており、とても綺麗だ。
べっ甲みたいに装飾品として使用するんだろうか?
まさか甲羅を背負って訓練などはしないだろう。重しとしては活用できそうだけどね。
肉はスッポンみたいに美味しいのかな? それとも海亀系の味?
旭は地下一階から地下六階に出る魔物で、自分が持っている換金できそうなものを提出していた。
彼は日本で亡くなったあと、何故かリースナーのダンジョンマスターになっていて、ダンジョンから離れられなくなっていた。
だから、私が改めてこの世界に人間として召喚して、自由に行動できるようにしたのだ。
ダンジョンマスターだった期間は、独りぼっちで外にも出られず、とても辛かっただろう。
そして、そのダンジョンマスター時代に倒した魔物をアイテムボックスに入れているんだけど……十一年分あるから少しずつ換金してください。
あ、ハイオーガは出しちゃダメだってば、まだこの迷宮では出会っていないんだから。
脇腹を突くと気が付いたのか、旭が慌てて収納する。
用が終わり、ホームで自宅に戻ると、兄と旭は仲良く「華金だ~」と言いながら、飲みに出掛けた。
ホーム内の異空間には私たちが住んでいた日本の町が広がっており、店員はいないけど、飲食店で飲み食いしたり、スーパーで買い物したりすることもできる。
二人はこうして仕事終わりによく飲みに行っているんだよね~。
◇ ◇ ◇
土曜日、朝九時。
今日は出掛けると言っておいたのに、兄と旭は二日酔いのようで気分が悪そうだ。
露店で野菜とパンを購入し、依頼していた巾着を受け取りに行く。
乾物屋に寄り、ドライアプリコットを買ったらホームで自宅に戻る。
ここからは給食のおばちゃんに変身! あぁ、この作業が大変すぎる……
二日酔いの二人は、ドライアプリコットを無言のまま巾着に詰めていた。
◇ ◇ ◇
日曜日。教会に行き、朝七時から準備を始める。
子供たちは八時三十分頃から集まり始めた。料理ができるのを待っている間に、旭が子供たちが持っている空の巾着と新しい巾着を交換する。巾着は皆忘れず持参していた。
それだけ甘いものに縁のない生活をしているんだろう。
兄が作ったスープの味を私が調整したら、子供たちに食事を渡す。
パン係の旭が一人で忙しなく配る様子を見て、切実に手伝ってくれる人が欲しいと思う。
すると先週に引き続き、また誰かがこちらへ近付いてきた。
今度もすぐ二人が私を背に庇ってくれたけど、今回は女性だった。
あれ? この人、炊き出しのところから来たよね……
痩せており、精彩を欠いたその表情はかなり疲れているように見える。
「あのぉ。子供たちに炊き出しをしてくださり、ありがとうございます」
頭を下げながらお礼を言われ、この人も子供たちを気にしていたのかと思う。
「いいえ。日曜日しかできませんが、これから毎週するつもりでいます」
「本当ですか? とても助かります! 今日は息子がお腹いっぱい食べられることに感謝します」
「えっ? 息子さん? この中にいらっしゃるんですか?」
「はい、主人が亡くなったものですから……」
リースナーの町は両親ともいない子が多かったけど、こういうパターンもあるよね。
「あとで少し、お話しませんか?」
「はい。では子供が食べ終わったら、また寄ります」
女性はそう言い、立ち去っていった。
子供たちが全員いなくなり、撤収作業を始める頃、母親らしき人が五人ほどこちらにやってきた。
炊き出しのお礼を言われたあと、状況を確認するために話を聞いてみる。
一人一人話を聞くと、旦那さんが冒険者で亡くなり、母子家庭になった人たちが大半だった。
お~い、冒険者の旦那さん。稼いでいたんだからお金くらい残しておけよ。
宵越しの銭は持たない派か!
大型ダンジョンが近くにある迷宮都市は、他領から来る人も多いため、故郷が遠くにある場合は実家も頼れない。
子供がいるから再婚もなかなか難しく、親子ともに路上生活を送っているらしい。
働き口があるわけじゃなく、日払いの仕事を受けてなんとか暮らしているそうだ。
もうこの年から冒険者として働くのもリスクが高いし、まだ幼い子供を一人残してダンジョンを攻略するのは無理だろう。
「料理はできますか?」と尋ねたら、全員が「できます」と答えたので、毎週日曜日の炊き出し時に手を貸して欲しいとお願いする。
朝七時に教会へ来てくれるように伝えてから別れた。
兄と旭に、親子が一緒に暮らせるよう、お店の従業員として住み込みで雇いたい旨を伝えると、「やってみたら?」と賛成してくれた。
そのまま冒険者ギルドへ向かい、受付の女性にお店を購入したいと相談したら、店舗は商業ギルドの管轄だと言われる。
おお、そうか。商業ギルドがあるのか。
町娘の格好だと舐められそうなので、新品を扱う服屋へ行き、着替えよう。
服屋に入り、値段を確認してぎょっとする。
この世界の服は高いな~。この値段は普段着じゃないよ!
高すぎると思いながらも、仕方ないので無難そうな服を一着購入して、着替えてから商業ギルドに向かった。
初めて入った商業ギルドには、冒険者は一人もおらず、商人の姿が多かった。
新品の服に着替えてきてよかったと、胸を撫で下ろす。
店内は冒険者ギルドより広くて綺麗で、飲食店が併設されていないから、商談は応接室で行うのだろう。
受付の女性に飲食店を購入したい旨を伝えると、別室へ案内された。
席に着いて数分後、中年の男性が入ってくる。
この人が担当者らしく、見た目が優しそうで安心した。
「本日、担当させていただきますカマラと申します」
「サラです。よろしくお願いします。飲食店を購入したいのですが、物件はありますか?」
「商業ギルドの登録はお済みでしょうか」
「いいえ、してません」
「登録していただくと割引がありますが、どうされますか? 登録料は銀貨十枚となります」
「では、お願いします」
今後のことを考えると、していたほうがいいかもしれないので、商業ギルドも登録しよう。
用紙を記入して銀貨を十枚渡したあとで、商業ギルドカードが渡される。
血液を採取されて機械に通すと、カードに『サラ・十八歳・第一号』と表示された。
紛失すると、再発行手数料が銀貨二十枚掛かるらしい。
手数料が高すぎる!
登録が完了したので、物件の話に戻ろう。
条件を複数出し、いくつか空き物件を紹介してもらってから見にいく。
大通りに面した店は金額も高く、競合店も多そう。
五軒ほど紹介してもらったうち、比較的状態のいい店が一つあったので契約した。
店は冒険者ギルドから近く、店内は三十人ほど入れる広さがあり、二階には従業員用の部屋も三部屋あった。
テーブルと椅子は、そのまま使用して問題ないらしい。ラッキー!
洋服屋や魔道具屋で必要なものを購入し、兄と旭に相談したら、全て私に任せると言われた。
悩むなぁ~。
飲食店がいいかなと思っているんだけど、母親たちに作れて、集客が見込めるメニューを考えないといけない。
そもそも二人は料理ができないから相談しても無駄だったわ。
利益を追求するわけではないけれど、少なくとも給料を払えるくらいにはしなければ。
迷宮都市のダンジョンは地下三十階まであるから、攻略するのに数年は必要だ。
拠点を当分移さず、その間に顧客を確保して、異世界の料理を新たに考案しよう。
◇ ◇ ◇
月曜日。ダンジョン地下七階の地図を購入して常設依頼を確認したら、一直線に地下七階まで駆け抜ける。
宝箱? 昨日冒険者ギルドの受付で聞いたら、そんなものはないそうだ……ないんかよ!
今回の新しい魔物はレッドタートルとブルータートル。
緑・赤・青とくれば……次は何色だ?
五日後、冒険者ギルドへ行って、旭と換金を済ませる。
今回もタートルは甲羅の状態がいいからと、高値で買い取ってくれた。
せっかくだし全種類揃えたいので、レッドタートルとブルータートルは一匹ずつ、換金せずにアイテムボックスに収納しておこう。
◇ ◇ ◇
土曜日、朝九時。
依頼していたパンと野菜を購入後、野菜屋のおじさんに、新しく作るお店に毎日配送を頼めるか確認して、また営業日が決まったら連絡すると伝えた。
日曜日の朝七時に教会へ行くと、もう既に母親五人は子供たちと待っていた。
親子揃って石鹸を使用して手をよく洗い、水で流し、母親たちには頭を手拭いで覆うように指示を出す。
簡易テーブルを三つ設置後、その上にまな板六枚と包丁六本を取り出し、私も入れて六人で肉、野菜のカットをしていく。
いや~、流石に母親たちは手際がいい! 六人だと早いなぁ~。
百六十人分の材料も、あっという間に切り終わる。
五人の子供には、兄たちと一緒に、ドライアプリコットの詰め替え作業をお願いした。
八時三十分、子供たちがやってくる。
集合は九時でいいと言っておいたけど、不安だったのか、今回も三十分早く来たようだ。
それでも六時に並ぶより二時間半は遅いから、大分負担は減っただろう。
子供たちが待っている間、巾着の交換作業は五人の子供と兄たちの担当だ。
今日も全員が巾着を忘れずに持参していた。
もし忘れた子供がいても、予備の巾着があるので問題はないんだけどね。
約束を守ることを覚えて欲しいから、交換用の巾着を持参するよう、お願いしているのだ。
時間通りに具沢山のスープが出来上がり、パンを配り終えたら、母親たちにも子供と一緒に食べてもらおう。材料を最初に炒めてあるし、胡椒と塩とローリエに似た葉が適量入っているので、普段の炊き出しのスープとは、随分と味の違いが感じられるだろう。
これから母親たちには炊き出しを手伝ってもらうため、スープの作り方を覚えて欲しい。
スープを食べた母親たちは驚いて、目尻に涙を浮かべている。
親子にはそのまま待っていて欲しいと伝え、子供たちがいなくなったら撤収作業。
各自自己紹介をし終わったあと、親子を連れてお店へ案内すると、皆は不思議そうな表情をしていた。
「今日はお手伝いありがとうございます。皆さんはこのお店の従業員となり、住み込みで働いてもらいますから、よろしくお願いします。まずは店内の掃除から始めましょう!」
「えっ!? この店に住み込みで雇ってもらえるんですか?」
「はい、頑張ってくださいね」
「ありがとうございます!!」
母親たちは声を揃えて感謝の言葉を口にして頭を下げる。
まさかそんな提案をされるとは思っていなかったようだ。
でもこういった支援は、なるべく早いほうがいい。
母親たちは痩せて生気がなく、かなり疲れているように見えたからだ。
もし最悪の選択をしてしまったら、間に合わなかったと嘆くことになる。
子供たちは状況を理解できず、きょとんとしていた。
桶と手拭いを準備し、桶にウォーターボールで水を入れて、ファイアーボールで温め、手拭いを雑巾代わりにして、全員で店内を水拭きする。
終わったら、二階の清掃だ。各部屋に、大人用の布団、服と下着、生活用品を置いていく。
子供たちはまだ五歳程度と小さいから、親子で仲良く一つの布団で寝てもらおう。
「お疲れ様でした。子供たちもよく頑張ったね。ではお母さん、今からお子さんを洗ってください」
店内のテーブルと椅子を全てマジックバッグにしまい、大きな盥をいくつか出すと、私と兄と旭でお湯を張る。
購入した子供たちの服と下着を渡して、母親たちが子供を洗っている間に、大型の魔道調理器と業務用寸胴鍋を、厨房へ設置しに行く。
向こうは旭と兄にお願いしたから、私はお店で出すメニューの試作開始。
玉ねぎを切り、ファングボアの肉を薄くスライスし、すき焼きのタレを一・五倍に薄めたものを加えて煮込み、お湯を沸かして乾麺を十二分茹でる。
茹で上がったうどんを湯切りし、深い器に盛ったあと、煮込んだタレを上から掛けて完成。
厨房から店内に戻ると、皆洗い終わっていたので、盥の残り湯を裏庭の水場へ捨て、もう一度テーブルと椅子を設置する。
テーブルに完成した汁なし肉うどんを置き、いよいよ実食だ!
さて、この世界の人に肉うどんは受け入れられるだろうか?
私たちはお箸で、親子はフォークを使用して試食する。
味の感想を聞くと、とても美味しいと言ってくれたのでよかった~。
この世界には馴染みのない味だから、まずいと感じるようなら食事として出せない。
このお店のメニューは当分これでいくことを伝えた。
母親たちは私たちがいたら体を洗いづらいだろうと、再度盥にお湯を張ったあと、業務用の寸胴鍋で湯を沸かしてもいいと伝え、ファイアースライムの魔石を渡す。
魔石は魔物から採れる魔力の塊で、魔道具や武器など様々なものに使われている。
そして、また明日詳しいことを話し合いましょう、と言って店を出た。
来週一週間はダンジョン攻略を中止し、お店の開店準備にあてよう。
お店を経営した経験はないけど、経理事務をしていたからお金の流れは把握できる。
給料を払っても利益が出るよう、母親たちにはぜひとも頑張ってほしい。
◇ ◇ ◇
翌日、朝九時。
露店でパンと野菜と串焼きを購入し、お店に向かう。
小綺麗になった母親たちと人数分のスープを作り、パンと串焼きと一緒に食べてもらった。
昨夜、久し振りに布団の中で眠れたおかげか、母親たちの顔から疲れた表情が消えている。
早く行動して、お店を契約したのは正解だったな。
子供たちも路上ではなく、家の中で母親と一緒に眠れたのが嬉しかったんだろう。
朝から元気いっぱいに食べていた。
ご飯を食べ終わって、さて、打ち合わせ開始。
まず給料は一か月銀貨五枚で毎月一日に先払い(支払い日がダンジョン攻略中の場合は前後する)。今月分は今日手渡した。家に住めるだけじゃ生活できないからね。
店の営業時間は朝六時から夜六時。日曜日は炊き出しがあるので休日にする。
冒険者ギルドに近いので、ターゲットは冒険者だ。
冒険者の活動開始と終了時間に合わせるため、少し長めの営業時間となる。
価格は鉄貨七枚。ファングボアの串焼きが鉄貨五枚なのを参考にした。
肉うどんの作り方は、見ながら覚えてもらおう。
玉ねぎとお肉をスライスし、すき焼きのタレを一・五倍に薄めたもので煮込むだけだ。
すき焼きのタレは、事前に陶器の壺へ入れておいた。
うどんは茹でたあと水で締め、ざるへ上げる。
注文を受けたら熱湯に一分潜らせ、お客さんを待たせないように素早く配膳すること。
冒険者は忙しいので、注文後にすぐに提供される食事はウケがいいはずだし、慣れたら三分でできるだろう。
手順は何度も経験していく間に覚えられると思う。
火曜日は、実際に自分たちで肉うどんを作る作業と接客のマナー講習。
営業開始は水曜日。
初日は開店記念セールとして鉄貨五枚で販売し、客足の確保をしよう。
まずは一度食べてもらうのが、何より肝心だ。
いつも子供たちとしている約束事――体や家を清潔に保ったり、健康的な生活をしたりすることを教えて、母親たちに徹底するようお願いした。
飲食店だから衛生管理をするのは当然でしょう?
そのあと、露店の道具屋に行き、すき焼きのタレを入れる壺を五個購入した。
野菜屋のおじさんには店の場所を伝えて、毎週月曜日から土曜日に玉ねぎの配送を依頼する。
肉屋では、ファングボア肉を直接納品するから、うちの人間が来たら、部位別に解体したものを渡してほしいと交渉する。そうしたら、三匹以上卸してくれるならOKとのこと。
リースナーのダンジョンで手に入れたお肉を四匹分卸し、そのうち一匹は店用に保管してもらう。
倉庫内には、冒険者ギルドの解体場にあるのと同じような保管用の魔道具があるそうだ。
自宅へ戻り、兄と旭と一緒にすき焼きのタレを壺に移し替えあと、店に行って、母親たちにこの『すき焼きのタレ』は秘伝だと伝えた。
ホーム内のスーパーで乾麺を大量に買い込んだあと、袋を破り、旭が持っていたマジックバッグに移し替える。
どういう原理かわからないけど、スーパーの食材は、勝手に補充されるからとっても便利だ。
広告品お一人様一個とかの制限もなく、売り切れの心配もしなくて済む。
日本円がないと購入できないけど、ホーム内にあった十一部屋分の現金のおかげで当分は大丈夫。
いつか異世界の小麦粉で、うどんを作れるようにレシピ本を購入しよう。
◇ ◇ ◇
開店初日。
母親たちは朝五時から仕込みを開始。
来客がどれくらいになるか不明だけど、一応八十人分の準備をお願いしてある。
業務用寸胴鍋四つがフル稼働だ。
兄たちには店内の警備をお願いする。
私はエプロンをつけた子供たちと一緒に、お店の前で呼び込みを開始した。
「開店記念で、本日は鉄貨五枚で~す」
朝早くからダンジョンへ向かう冒険者たちに声を掛ける。
ファングボアの串焼き一本と同じ値段だからか、興味を持ち、お店に入ってくる人が何人かいた。
店内は母親たちに任せ、私たちはひたすら集客しながら、食べ終わった人に味の感想を聞くのも忘れない。
三時間くらい呼び込みをしたあとで一度店内へ戻ると、現在店内のお客は五名ほど。
店の前には書いて消せるプレートに『本日開店記念! 肉うどん鉄貨五枚』と書いた看板を立てている。新しいお店ができると気になるし、こう書かれた看板が毎日通る道沿いにあれば目を引くだろう。
昼食前にもう一度呼び込み作業をし、子供たちも頑張って声を上げる。
一時間ほど呼び込みをして店内へ戻ると、お客は十名。
店内が無人になったら、まかないとして私たちも肉うどんを食べる。
営業終了後、本日のお客の人数を集計したら五十六名だった。
お客の様子がどうだったか母親たちに確認してみる。
美味しいと言ってくれたそうだけど、フォークは少し食べづらかったらしい。
これは仕方ない、慣れてくれるのを待とう。
残った肉うどんは、頑張って働いてくれた親子たちの夕食にしてくださいね。
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