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1巻
1-2
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現在、時計の針は六時三十分を指している。
異世界が、このホーム内の時間と連動しているかは不明だ。
あの納屋にいつ人が入ってくるのかわからないため、昨日着ていた服に着替え靴を履きかえる。
ステータス画面を呼び出し、ホームのタブをタップした。
『ハンフリー公爵邸内の納屋』という項目があったので、選択してみると、一瞬で景色が変わった。
どうやら無事に納屋の中に移動できたようだ。
納屋の中を確認すると、六畳くらいの広さで窓が一つある。
ガラスは透明ではなく、曇りガラスのようだ。薄汚れた布団以外、何もない。
「寒っ!」
転移したばかりの時は、突然の展開についていくのが必死で気にしていなかったけど、冷静になってみると、かなり気温が低い。
そういえば、今日は地球では十二月二十五日だった。もし、この世界に四季があって、時間が対応しているなら、今は冬なのかな? 忘れていたけどクリスマスじゃん。
本当なら仕事が終わってから実家に寄り、家族と一緒に夕食とケーキを食べる予定だったのに。
何故こんなことになっているのか、不思議でしょうがない。運命って残酷だ。
栄養失調でガリガリな体では、この寒さじゃ風邪を引くかもしれない。
アイテムボックスから冬用の下着二枚と、裏起毛のついたレギンス二枚を取り出し、着ていたワンピースの中に着る。
スカート丈が足首まであって助かった。これで大分温かくなる。
欲をいえば、このいつ洗濯したかわからないような服も別のものに替えたかったけど、仕方ない。
流石に昨日着ていた下着をもう一度使う勇気はなかったから、綿素材の長袖の下着とドロワースはアイテムボックスに収納している。今夜忘れずに洗濯しておこう。
さて、これからどうしようか……
まずはここから出られるか確認しよう。
目の前にある扉を開けようとしたけど、取っ手を掴んで、押しても引いても開かなかった。
うん、間違いなく監禁されてるね!
少し動いてみて気付いたけど、リーシャの体は体力がなさすぎる。
栄養失調のせいか、立っているだけでくらくらするのだ。
これからは私の体になるので早急に、この体力のなさと栄養失調の状態を改善しないとダメだわ。
このまま立っているのもしんどいため、地面に置かれたボロボロの布団に座る。
それにしても、公爵邸によくこんな酷い状態の布団があったな。
使用人だって使わないようなボロさだ。後妻が用意して、わざわざここへ運ばせたんだろうか。
なんと言うか、すごい執念を感じた。
いくら前妻の子供で疎ましいからといって、ここまでやる必要があるのか。
一体、リーシャの何がそんなに気に入らず、虐待をしているんだろう?
確か父親は、王都に社交に行っているんだったか……
ここから王都がどれくらい離れているかわからないから、あと何日監禁されるか不明だけど、殺されることは考えにくいから、誰かがこの納屋に食事を持ってくるだろう。
その時いなければ大騒ぎになってしまうため、やっぱりそれまでは大人しく納屋の中にいたほうがよさそうだ。
そういえば、昨日の封筒と手紙がない。どこに消えたのか?
もしかしてと思い、アイテムボックスを確認すると、『その他』の項目内に入っていた。
手紙の内容を全て覚えているわけじゃないから助かった。
時間は沢山ありそうだし、もう一度読んで、しっかり自分の能力を把握しよう。
【リーシャの能力】
※保障として左記の魔法を授けます。
●ホーム(時空魔法)
・地球の椎名沙良様の自宅アパートを、異空間に創造しました。
・自宅アパートに自由に移転できます。
・家賃・水道光熱費は無料です。
・四階建てアパート十二部屋、全て使用可能です。
・異世界お試し期間として、部屋にある全ての食料やアイテムは、それぞれ三百六十五個まで増やすことができます。
・室内は可能な限り、原状回復済みです。
・ホーム内にないアイテムの追加登録が可能です。追加登録したものは、使用したり食べたりすることができます。
三〇三号室のみ、追加登録したものを、三百六十五個まで増やすことができます。
・10レベル上がるごとに、異空間の範囲が広がり、自由に使用できる場所が追加できます。最大十か所。
●アイテムボックス(時空魔法)
・容量は無限です。
・入れたものの時間を停止させることができます。
●マッピング(時空魔法)
・地図を作成することができます。
・地図に表示されている範囲内であれば転移することができます。
●召喚(時空魔法)
・地球の人間を呼び出せます。
・召喚した人間は地球に送り返すことができません。
・10レベル上がるごとに、一人召喚できます。
・おまけとして、現在一人召喚可能です。
・召喚した人間には、異世界の能力をランダムに三つ与えます。
どうやらレベルというものがあって、上げることができるみたい。
上げる方法の定番は魔物を倒すとかかな?
そういえば、HPとMPがそれぞれ48だったけど、これって元の年齢?
ホームは自分の住んでいたアパートを使用することができる能力だ。
しかも十二世帯分の部屋にある全ての食料とアイテムが、三百六十五回まで使用可能……
この追加登録と復活というのがよくわからないんだけど……
私が住んでいた部屋以外は、登録済みのものしか補充できないのかしら?
他の世帯に何があるのか、ちょっと確認してみるか。
一○一号室は確か若い夫婦が住んでいて、幼稚園に通っている女の子がいたはず。
ずらずらと画面に表示される内容を見ていくと、基本的な家具・家電は揃っている。
私の部屋にないものは旦那さんと子供の洋服、下着、靴、鞄、私が購入してなかった食品、おもちゃ類ぐらいかな?
続けて他の部屋も見てみると、アウトドアや釣りなんかの趣味用品がある。
面白いのは昨日が十二月二十四日だったため、どの部屋にもホールケーキがあり、ピザやフライドチキンやお寿司もあったことだ。
このアパートの住人を全員知っているわけじゃないけど、私以外は家族で住んでいたから、大抵どの部屋にも、男性と子供用の服がある。
まっ、普通3LDKに一人では住まないか。
私は兄弟が多くて実家が手狭だったから、広い部屋に憧れていたのよね。
自分の部屋以外は特に追加登録するものもないので、食品類をさっさと三百六十五個まで増やして、アイテムボックスにしまった。
ホームで各部屋に入る必要があるのかと思ったけど、画面内でアイテムを増やすことができ、視界に入れずとも、全て収納することができた。部屋には何も残っていない状態だ。
これから他の部屋を使用する機会があるかわからないけど、誰かが住んでいた状態のままよりはいいだろう。
次にマッピングを使用すると画面に納屋が表示される。しかも三次元の状態で。
平面のほうが見やすいなぁと思ったら画面が切り替わった。
上空から見た納屋の屋根が映っている。なかなか便利な魔法だけど現在監禁中の私には役に立たない。
最後の召喚という魔法は……地球の人間を呼び出せるらしいけど、送り返してあげられないんじゃ気軽に使えないじゃん!
召喚なら魔物や精霊とかのイメージがあるけど違うのか。
呼び出した人の人生を背負う覚悟がなきゃ、無理だわ。
しいて言えば、呼び出せるのは家族ぐらいか……
私は突然死んでしまったから、家族はきっと悲しんでいると思う。
身内を召喚しても、私が生きてるとわかったら怒られないかも?
どうだろう……知り合いが誰もいないこの世界で、現在一人呼び出せるというのは、精神的にかなり助かる。今は無理だけど、落ち着いたら考えてみよう。
能力について、ひと通り復習と確認ができたので、改めて自分の格好と納屋の中に目をやる。
ああそうだ! 昨日、髪を洗ってしまったから、このままだと不自然だよね?
地面の土をすくい髪にかけて全体的にまぶしていると、ようやく誰かが来たのか、扉のほうから音がした。
扉が開き、灰色のメイド服を着た女性が、手にトレイを持ち入ってくる。
年齢は二十歳くらいだろうか? 茶色の長い髪に黒い瞳の、きつそうな顔立ちをしている。
彼女からなんとかして情報を聞き出さなくちゃ。
「おはようございます」
とりあえず挨拶からだろうと思って言ってみたけど、返事もなくそのまま無言でトレイに置かれたパン二つを地面に投げ捨てられる。
いや~、ないわぁ。思わず怒鳴りたくなったけど、十二歳のリーシャじゃ、何も言えないだろうと思い、口を閉じる。
「あの……お父様は、いつ王都から戻りますか?」
そう言ったものの、メイドは私を睨みつけ、何も言わず出ていった。
初めて遭遇した異世界人は、後妻側の人間だったようだ。
公爵令嬢のリーシャ相手に、メイドがこの態度を取れるということは、後妻は公爵邸でかなり権力を握っているんだろう。
後継ぎの娘を、ここまで蔑ろにするとは。
いや、待てよ? 私が喋っていたのは日本語だけど、通じたのかしら?
メイドは驚いた様子もなかったから、違う言葉を話していた感じはしない。
転移させた人が、サービスで言語理解の能力もつけてくれたのかな?
地面に落ちた掌サイズのパンを手に取ってみると硬く、これがこの世界の標準なのか、焼き上げてから数日たったものなのかは不明だけど、食べるのはやめておいた。
二つともアイテムボックスに収納する。
それにしても、硬いパン二つって……肉も野菜も飲み水もないとは酷すぎる。
その後、時間はわからないけど、朝と同じメイドが、お昼頃と夕方頃に、またパンを二つ地面へ投げ捨てていった。
私はアイテムボックスからペットボトルの緑茶と、温かいからあげ弁当を取り出して、昼食に食べたけどね。
もし私がリーシャの姿じゃなかったら、彼女の胸倉を掴み、地面に捨てたパンを拾わせただろう。
そのパンも誰かが作ったものなのに、食べ物を粗末に扱うなんてとんでもない!
厳格な身分社会に生きていたであろうリーシャは、メイドからこんな仕打ちをされても、何も言わなかったんだろうか?
公爵令嬢なら、自分より身分が上の人間は王族ぐらいしかいないと思うんだけど……
トイレは我慢できなかったため、ホームで自宅に帰り、済ませた。
何もすることがなかったので、小説を持ち込み時間を潰す。
三度目にメイドが出ていったあと、もう来ないだろうと、自分の部屋へ帰った。
今日一日で与えられたご飯は硬いパン六つで、リーシャの現状に泣けてくる。
一体いつから監禁されてるんだろう。
私は四十八歳のいい大人で、時空魔法を使用し自宅に帰り、元の世界と同じ生活を送れるからまだ大丈夫だけど、十二歳の少女には辛いだろう。
夕食は作る気がおきず、他の部屋にあったMサイズの宅配ピザ半分とオレンジジュースを飲んで済ませた。
そういえば、このアパートから出られるのだろうか?
疑問に思い、玄関の扉を開けると、そこには地球の景色があり、驚いた。
でも階段を下り、駐車場から一歩踏み出したら、何か透明な壁のようなものに遮られて、それ以上進めない。
時間は異世界と連動しているのか、外は暗くなっている。
部屋へ戻り、ベランダから手を出したら、また透明な壁に遮られてしまう。
そして、外の道路には一台も車が走っていなかった。
どうやら、このアパートの敷地内だけ使用できるらしい。
能力については確認したけど、このアパートの中や空間のことについては考えていなかった。これも色々と試してみる必要がありそうだ。
TVはつくか確認してみる。そしたら……なんと映った!?
そして日本で放送されていたものと同じ番組が普通に流れている。ここまで電波が届いているのか?
じゃあ携帯は……
親に電話してみたけど、繋がらず、PCはどうかと起動してネットを開くも、繋がらない。
え~っと、どういうことですかね?
現状できることは何もないとわかり、夜九時にお風呂に入り、眠った。
◇ ◇ ◇
次の朝、毎朝六時にセットされた携帯のアラームが鳴る前に目覚めた。
冷蔵庫の食材を使用し、ベーコンエッグと簡単なサラダを作ってパンを焼き、コンデンスミルクをかけたイチゴを食べた。
昨日メイドが来た大体の時間を予想し、七時三十分に納屋へ戻ろうと決める。
納屋に転移したら、昨日と同じように髪に土をまぶしておく。
それから三十分くらい経ち、同じメイドが来たけど、今日は手に何も持ってない。
もしや食事抜きか? と思っていると、布団に座った私の手を強引に掴み、外に引きずり出す。
納屋の外には、緩くウェーブした赤い長髪で、オレンジ色の目をした三十代の女性と、彼女によく似た小学六年生ぐらいの女の子がいた。二人はニヤニヤ笑いながら、私のほうを見る。
中世の貴族っぽい服装をしたこの二人が多分、後妻と連れ子だろう。
「反省しましたか?」
女性が手に短い棒のようなものを持ち、話しかけてくる。
やはり言葉の意味がちゃんとわかるのは、『手紙の人』が異世界で困らないよう、付けてくれた保障だろうか?
日本語に聞こえるけど、実際は異世界の言葉で話されているのかもしれない。
どう返事をしようか黙ったままでいると、その女性は右手に持った短い棒を左の掌に打ち付ける動作を二回したあと、もう一度問い詰める。
「反省したかと、聞いてるのよ!」
これは反省したと言わないと棒で叩かれるパターンだな。
「……反省しました」
小さな声で無難に答える。
「ついてらっしゃい」
そう後妻に言われ、メイドに手を引かれ、公爵邸の中へ連れていかれた。
広い庭には庭師がおり、大きな公爵邸の中では、メイド服を着た人と五人くらいすれ違った。
後妻は私の手を掴んだままのメイドに「あの部屋へ連れていきなさい」と指示を出し、リビングと思われる部屋へ、連れ子と一緒に入っていった。
メイドは私を三階の一番奥の部屋へ乱暴に押し込めたあと、扉を閉めて出ていく。
このまま部屋で大人しくしていろということかな?
部屋を見渡すと四畳くらいの広さで、小さな曇りガラスの窓から光が入っている。
この部屋には照明のようなものが見当たらないため、夜は真っ暗になりそうだ。
他にベッドと机に、椅子や小さな洋服ダンスが置いてあるけど、どう見ても公爵令嬢の部屋じゃない。そうか、連れ子に自室を取られているんだっけ。
洋服ダンスを開けると、今着ているのと同じような服と下着がそれぞれ一着と、いかにもお嬢様が着るようなピンク色のドレスが一着、手拭いのような布切れ一枚が入っている。
誰がいつ部屋に入ってくるかわからないから、ベッドの上に座り、しばらくぼうっとしていると、ノックの音が聞こえ、扉が開いた。
初めて見る、髪を後ろで纏めた、十六歳くらいのメイドが入ってくる。
入ってくるなり、トレイを机の上に置き、心配そうな顔で話しかけてきた。
「お嬢様、大丈夫ですか? 奥様に逆らってはいけませんと、あんなにお願いしたのにどうして……」
いや私は何も知らないんですとは、言えないわよね。
この人は味方のようだから、話を合わせ色々聞いてみよう。
「心配かけてごめんなさい。我慢できずに、つい逆らっちゃったの。私、何日閉じ込められてた?」
「二日です。納屋は寒かったでしょうに……風邪を引いていなくて、安心しました。カリナにぶたれたりしませんでしたか? ちゃんと、食事は食べられましたか?」
カリナって誰だろう? 後妻と連れ子の名前ではないから、あのいじわるなメイドだろうか?
「布団に包まっていたから大丈夫。食事はパンが毎回二つもらえたよ」
「えっ? それだけですか!? 私が不甲斐ないばかりに、お嬢様をお守りできず申し訳ありません。ファイナ様に頼まれていましたのに……」
「いいよ、いつものことだから。それより今日は何日? お父様は、いつ王都から戻ってくるの?」
「十二月二十六日です。旦那様は二日後にお戻りの予定です。お嬢様、旦那様がお戻りになるまで辛抱してくださいね。奥様に目を付けられるとまた何か言われるので、私は仕事に戻ります。お昼頃に食事をお持ちしますから、お手洗い以外で、部屋から出てはいけませんよ」
そう言うと、焦ったようにメイドは部屋を出て行った。
十二月二十六日ということは、やはり日本やアパートがある空間と日付や時間が連動しているようだ。
そして、父親が帰ってくるのは二日後の二十八日か……
どうにか二人きりで父親と会い、現状を話さなければ。
机の上に置かれたトレイには木のスプーンとコップに入った水、昨日と同じパン二つ、野菜くずが入ったスープがあった。
パンは昨日より硬くなさそうだけど、朝食を食べたあとだったので収納し、試しに野菜くずが入ったスープを一口飲んでみた。
スープは冷えており、薄い塩味で、とても美味しいとは思えない。
入っているのは人参とじゃがいもの皮に、薄くスライスされた玉ねぎだろうか?
量は一人前ありそうだけど、あまりにも具が貧相だ。
これは使用人が食べている食事なの? いやまさか、公爵邸の使用人がこんなスープを飲むわけがない。
公爵といえば、私の知識では大貴族だったから、これは嫌がらせをされているんだろう。
残すとさっきのメイドさんが心配すると思い、アイテムボックスからタッパーを出して、中身を移し替え、収納した。
今日はトイレ以外は外に出ず、部屋にいたほうがいいみたいだし、次は昼頃に食事を持ってくると言っていたから、しばらくは誰も部屋に来ないだろう。
時間潰しに公爵邸を調べようと、マッピングを使用してみた。周りの壁や床が透けて見え、ずっと同じ位置にいるのに、建物全体の様子がわかる。
三階は同じような部屋が十二部屋ある。
どうやら同じ場所に立ったまま、視点だけ近寄ったり離れたりもできるようだ。魔法って便利!
他の部屋はベッドが二段になっていたり、机の上に素焼きの入れ物や木の箱が置かれていたりするくらいで、この部屋と大きな違いはない。
トイレはもちろん水洗なんかじゃない。
一応個室にはなっているけど、床から三十センチくらいの高さに板が張り付けてあり、真ん中に穴が開いている。そして、その下には素焼きの壺が入っている。
うん、無理! 私はホームを使って、自宅でしようと心に決めた。
異世界が、このホーム内の時間と連動しているかは不明だ。
あの納屋にいつ人が入ってくるのかわからないため、昨日着ていた服に着替え靴を履きかえる。
ステータス画面を呼び出し、ホームのタブをタップした。
『ハンフリー公爵邸内の納屋』という項目があったので、選択してみると、一瞬で景色が変わった。
どうやら無事に納屋の中に移動できたようだ。
納屋の中を確認すると、六畳くらいの広さで窓が一つある。
ガラスは透明ではなく、曇りガラスのようだ。薄汚れた布団以外、何もない。
「寒っ!」
転移したばかりの時は、突然の展開についていくのが必死で気にしていなかったけど、冷静になってみると、かなり気温が低い。
そういえば、今日は地球では十二月二十五日だった。もし、この世界に四季があって、時間が対応しているなら、今は冬なのかな? 忘れていたけどクリスマスじゃん。
本当なら仕事が終わってから実家に寄り、家族と一緒に夕食とケーキを食べる予定だったのに。
何故こんなことになっているのか、不思議でしょうがない。運命って残酷だ。
栄養失調でガリガリな体では、この寒さじゃ風邪を引くかもしれない。
アイテムボックスから冬用の下着二枚と、裏起毛のついたレギンス二枚を取り出し、着ていたワンピースの中に着る。
スカート丈が足首まであって助かった。これで大分温かくなる。
欲をいえば、このいつ洗濯したかわからないような服も別のものに替えたかったけど、仕方ない。
流石に昨日着ていた下着をもう一度使う勇気はなかったから、綿素材の長袖の下着とドロワースはアイテムボックスに収納している。今夜忘れずに洗濯しておこう。
さて、これからどうしようか……
まずはここから出られるか確認しよう。
目の前にある扉を開けようとしたけど、取っ手を掴んで、押しても引いても開かなかった。
うん、間違いなく監禁されてるね!
少し動いてみて気付いたけど、リーシャの体は体力がなさすぎる。
栄養失調のせいか、立っているだけでくらくらするのだ。
これからは私の体になるので早急に、この体力のなさと栄養失調の状態を改善しないとダメだわ。
このまま立っているのもしんどいため、地面に置かれたボロボロの布団に座る。
それにしても、公爵邸によくこんな酷い状態の布団があったな。
使用人だって使わないようなボロさだ。後妻が用意して、わざわざここへ運ばせたんだろうか。
なんと言うか、すごい執念を感じた。
いくら前妻の子供で疎ましいからといって、ここまでやる必要があるのか。
一体、リーシャの何がそんなに気に入らず、虐待をしているんだろう?
確か父親は、王都に社交に行っているんだったか……
ここから王都がどれくらい離れているかわからないから、あと何日監禁されるか不明だけど、殺されることは考えにくいから、誰かがこの納屋に食事を持ってくるだろう。
その時いなければ大騒ぎになってしまうため、やっぱりそれまでは大人しく納屋の中にいたほうがよさそうだ。
そういえば、昨日の封筒と手紙がない。どこに消えたのか?
もしかしてと思い、アイテムボックスを確認すると、『その他』の項目内に入っていた。
手紙の内容を全て覚えているわけじゃないから助かった。
時間は沢山ありそうだし、もう一度読んで、しっかり自分の能力を把握しよう。
【リーシャの能力】
※保障として左記の魔法を授けます。
●ホーム(時空魔法)
・地球の椎名沙良様の自宅アパートを、異空間に創造しました。
・自宅アパートに自由に移転できます。
・家賃・水道光熱費は無料です。
・四階建てアパート十二部屋、全て使用可能です。
・異世界お試し期間として、部屋にある全ての食料やアイテムは、それぞれ三百六十五個まで増やすことができます。
・室内は可能な限り、原状回復済みです。
・ホーム内にないアイテムの追加登録が可能です。追加登録したものは、使用したり食べたりすることができます。
三〇三号室のみ、追加登録したものを、三百六十五個まで増やすことができます。
・10レベル上がるごとに、異空間の範囲が広がり、自由に使用できる場所が追加できます。最大十か所。
●アイテムボックス(時空魔法)
・容量は無限です。
・入れたものの時間を停止させることができます。
●マッピング(時空魔法)
・地図を作成することができます。
・地図に表示されている範囲内であれば転移することができます。
●召喚(時空魔法)
・地球の人間を呼び出せます。
・召喚した人間は地球に送り返すことができません。
・10レベル上がるごとに、一人召喚できます。
・おまけとして、現在一人召喚可能です。
・召喚した人間には、異世界の能力をランダムに三つ与えます。
どうやらレベルというものがあって、上げることができるみたい。
上げる方法の定番は魔物を倒すとかかな?
そういえば、HPとMPがそれぞれ48だったけど、これって元の年齢?
ホームは自分の住んでいたアパートを使用することができる能力だ。
しかも十二世帯分の部屋にある全ての食料とアイテムが、三百六十五回まで使用可能……
この追加登録と復活というのがよくわからないんだけど……
私が住んでいた部屋以外は、登録済みのものしか補充できないのかしら?
他の世帯に何があるのか、ちょっと確認してみるか。
一○一号室は確か若い夫婦が住んでいて、幼稚園に通っている女の子がいたはず。
ずらずらと画面に表示される内容を見ていくと、基本的な家具・家電は揃っている。
私の部屋にないものは旦那さんと子供の洋服、下着、靴、鞄、私が購入してなかった食品、おもちゃ類ぐらいかな?
続けて他の部屋も見てみると、アウトドアや釣りなんかの趣味用品がある。
面白いのは昨日が十二月二十四日だったため、どの部屋にもホールケーキがあり、ピザやフライドチキンやお寿司もあったことだ。
このアパートの住人を全員知っているわけじゃないけど、私以外は家族で住んでいたから、大抵どの部屋にも、男性と子供用の服がある。
まっ、普通3LDKに一人では住まないか。
私は兄弟が多くて実家が手狭だったから、広い部屋に憧れていたのよね。
自分の部屋以外は特に追加登録するものもないので、食品類をさっさと三百六十五個まで増やして、アイテムボックスにしまった。
ホームで各部屋に入る必要があるのかと思ったけど、画面内でアイテムを増やすことができ、視界に入れずとも、全て収納することができた。部屋には何も残っていない状態だ。
これから他の部屋を使用する機会があるかわからないけど、誰かが住んでいた状態のままよりはいいだろう。
次にマッピングを使用すると画面に納屋が表示される。しかも三次元の状態で。
平面のほうが見やすいなぁと思ったら画面が切り替わった。
上空から見た納屋の屋根が映っている。なかなか便利な魔法だけど現在監禁中の私には役に立たない。
最後の召喚という魔法は……地球の人間を呼び出せるらしいけど、送り返してあげられないんじゃ気軽に使えないじゃん!
召喚なら魔物や精霊とかのイメージがあるけど違うのか。
呼び出した人の人生を背負う覚悟がなきゃ、無理だわ。
しいて言えば、呼び出せるのは家族ぐらいか……
私は突然死んでしまったから、家族はきっと悲しんでいると思う。
身内を召喚しても、私が生きてるとわかったら怒られないかも?
どうだろう……知り合いが誰もいないこの世界で、現在一人呼び出せるというのは、精神的にかなり助かる。今は無理だけど、落ち着いたら考えてみよう。
能力について、ひと通り復習と確認ができたので、改めて自分の格好と納屋の中に目をやる。
ああそうだ! 昨日、髪を洗ってしまったから、このままだと不自然だよね?
地面の土をすくい髪にかけて全体的にまぶしていると、ようやく誰かが来たのか、扉のほうから音がした。
扉が開き、灰色のメイド服を着た女性が、手にトレイを持ち入ってくる。
年齢は二十歳くらいだろうか? 茶色の長い髪に黒い瞳の、きつそうな顔立ちをしている。
彼女からなんとかして情報を聞き出さなくちゃ。
「おはようございます」
とりあえず挨拶からだろうと思って言ってみたけど、返事もなくそのまま無言でトレイに置かれたパン二つを地面に投げ捨てられる。
いや~、ないわぁ。思わず怒鳴りたくなったけど、十二歳のリーシャじゃ、何も言えないだろうと思い、口を閉じる。
「あの……お父様は、いつ王都から戻りますか?」
そう言ったものの、メイドは私を睨みつけ、何も言わず出ていった。
初めて遭遇した異世界人は、後妻側の人間だったようだ。
公爵令嬢のリーシャ相手に、メイドがこの態度を取れるということは、後妻は公爵邸でかなり権力を握っているんだろう。
後継ぎの娘を、ここまで蔑ろにするとは。
いや、待てよ? 私が喋っていたのは日本語だけど、通じたのかしら?
メイドは驚いた様子もなかったから、違う言葉を話していた感じはしない。
転移させた人が、サービスで言語理解の能力もつけてくれたのかな?
地面に落ちた掌サイズのパンを手に取ってみると硬く、これがこの世界の標準なのか、焼き上げてから数日たったものなのかは不明だけど、食べるのはやめておいた。
二つともアイテムボックスに収納する。
それにしても、硬いパン二つって……肉も野菜も飲み水もないとは酷すぎる。
その後、時間はわからないけど、朝と同じメイドが、お昼頃と夕方頃に、またパンを二つ地面へ投げ捨てていった。
私はアイテムボックスからペットボトルの緑茶と、温かいからあげ弁当を取り出して、昼食に食べたけどね。
もし私がリーシャの姿じゃなかったら、彼女の胸倉を掴み、地面に捨てたパンを拾わせただろう。
そのパンも誰かが作ったものなのに、食べ物を粗末に扱うなんてとんでもない!
厳格な身分社会に生きていたであろうリーシャは、メイドからこんな仕打ちをされても、何も言わなかったんだろうか?
公爵令嬢なら、自分より身分が上の人間は王族ぐらいしかいないと思うんだけど……
トイレは我慢できなかったため、ホームで自宅に帰り、済ませた。
何もすることがなかったので、小説を持ち込み時間を潰す。
三度目にメイドが出ていったあと、もう来ないだろうと、自分の部屋へ帰った。
今日一日で与えられたご飯は硬いパン六つで、リーシャの現状に泣けてくる。
一体いつから監禁されてるんだろう。
私は四十八歳のいい大人で、時空魔法を使用し自宅に帰り、元の世界と同じ生活を送れるからまだ大丈夫だけど、十二歳の少女には辛いだろう。
夕食は作る気がおきず、他の部屋にあったMサイズの宅配ピザ半分とオレンジジュースを飲んで済ませた。
そういえば、このアパートから出られるのだろうか?
疑問に思い、玄関の扉を開けると、そこには地球の景色があり、驚いた。
でも階段を下り、駐車場から一歩踏み出したら、何か透明な壁のようなものに遮られて、それ以上進めない。
時間は異世界と連動しているのか、外は暗くなっている。
部屋へ戻り、ベランダから手を出したら、また透明な壁に遮られてしまう。
そして、外の道路には一台も車が走っていなかった。
どうやら、このアパートの敷地内だけ使用できるらしい。
能力については確認したけど、このアパートの中や空間のことについては考えていなかった。これも色々と試してみる必要がありそうだ。
TVはつくか確認してみる。そしたら……なんと映った!?
そして日本で放送されていたものと同じ番組が普通に流れている。ここまで電波が届いているのか?
じゃあ携帯は……
親に電話してみたけど、繋がらず、PCはどうかと起動してネットを開くも、繋がらない。
え~っと、どういうことですかね?
現状できることは何もないとわかり、夜九時にお風呂に入り、眠った。
◇ ◇ ◇
次の朝、毎朝六時にセットされた携帯のアラームが鳴る前に目覚めた。
冷蔵庫の食材を使用し、ベーコンエッグと簡単なサラダを作ってパンを焼き、コンデンスミルクをかけたイチゴを食べた。
昨日メイドが来た大体の時間を予想し、七時三十分に納屋へ戻ろうと決める。
納屋に転移したら、昨日と同じように髪に土をまぶしておく。
それから三十分くらい経ち、同じメイドが来たけど、今日は手に何も持ってない。
もしや食事抜きか? と思っていると、布団に座った私の手を強引に掴み、外に引きずり出す。
納屋の外には、緩くウェーブした赤い長髪で、オレンジ色の目をした三十代の女性と、彼女によく似た小学六年生ぐらいの女の子がいた。二人はニヤニヤ笑いながら、私のほうを見る。
中世の貴族っぽい服装をしたこの二人が多分、後妻と連れ子だろう。
「反省しましたか?」
女性が手に短い棒のようなものを持ち、話しかけてくる。
やはり言葉の意味がちゃんとわかるのは、『手紙の人』が異世界で困らないよう、付けてくれた保障だろうか?
日本語に聞こえるけど、実際は異世界の言葉で話されているのかもしれない。
どう返事をしようか黙ったままでいると、その女性は右手に持った短い棒を左の掌に打ち付ける動作を二回したあと、もう一度問い詰める。
「反省したかと、聞いてるのよ!」
これは反省したと言わないと棒で叩かれるパターンだな。
「……反省しました」
小さな声で無難に答える。
「ついてらっしゃい」
そう後妻に言われ、メイドに手を引かれ、公爵邸の中へ連れていかれた。
広い庭には庭師がおり、大きな公爵邸の中では、メイド服を着た人と五人くらいすれ違った。
後妻は私の手を掴んだままのメイドに「あの部屋へ連れていきなさい」と指示を出し、リビングと思われる部屋へ、連れ子と一緒に入っていった。
メイドは私を三階の一番奥の部屋へ乱暴に押し込めたあと、扉を閉めて出ていく。
このまま部屋で大人しくしていろということかな?
部屋を見渡すと四畳くらいの広さで、小さな曇りガラスの窓から光が入っている。
この部屋には照明のようなものが見当たらないため、夜は真っ暗になりそうだ。
他にベッドと机に、椅子や小さな洋服ダンスが置いてあるけど、どう見ても公爵令嬢の部屋じゃない。そうか、連れ子に自室を取られているんだっけ。
洋服ダンスを開けると、今着ているのと同じような服と下着がそれぞれ一着と、いかにもお嬢様が着るようなピンク色のドレスが一着、手拭いのような布切れ一枚が入っている。
誰がいつ部屋に入ってくるかわからないから、ベッドの上に座り、しばらくぼうっとしていると、ノックの音が聞こえ、扉が開いた。
初めて見る、髪を後ろで纏めた、十六歳くらいのメイドが入ってくる。
入ってくるなり、トレイを机の上に置き、心配そうな顔で話しかけてきた。
「お嬢様、大丈夫ですか? 奥様に逆らってはいけませんと、あんなにお願いしたのにどうして……」
いや私は何も知らないんですとは、言えないわよね。
この人は味方のようだから、話を合わせ色々聞いてみよう。
「心配かけてごめんなさい。我慢できずに、つい逆らっちゃったの。私、何日閉じ込められてた?」
「二日です。納屋は寒かったでしょうに……風邪を引いていなくて、安心しました。カリナにぶたれたりしませんでしたか? ちゃんと、食事は食べられましたか?」
カリナって誰だろう? 後妻と連れ子の名前ではないから、あのいじわるなメイドだろうか?
「布団に包まっていたから大丈夫。食事はパンが毎回二つもらえたよ」
「えっ? それだけですか!? 私が不甲斐ないばかりに、お嬢様をお守りできず申し訳ありません。ファイナ様に頼まれていましたのに……」
「いいよ、いつものことだから。それより今日は何日? お父様は、いつ王都から戻ってくるの?」
「十二月二十六日です。旦那様は二日後にお戻りの予定です。お嬢様、旦那様がお戻りになるまで辛抱してくださいね。奥様に目を付けられるとまた何か言われるので、私は仕事に戻ります。お昼頃に食事をお持ちしますから、お手洗い以外で、部屋から出てはいけませんよ」
そう言うと、焦ったようにメイドは部屋を出て行った。
十二月二十六日ということは、やはり日本やアパートがある空間と日付や時間が連動しているようだ。
そして、父親が帰ってくるのは二日後の二十八日か……
どうにか二人きりで父親と会い、現状を話さなければ。
机の上に置かれたトレイには木のスプーンとコップに入った水、昨日と同じパン二つ、野菜くずが入ったスープがあった。
パンは昨日より硬くなさそうだけど、朝食を食べたあとだったので収納し、試しに野菜くずが入ったスープを一口飲んでみた。
スープは冷えており、薄い塩味で、とても美味しいとは思えない。
入っているのは人参とじゃがいもの皮に、薄くスライスされた玉ねぎだろうか?
量は一人前ありそうだけど、あまりにも具が貧相だ。
これは使用人が食べている食事なの? いやまさか、公爵邸の使用人がこんなスープを飲むわけがない。
公爵といえば、私の知識では大貴族だったから、これは嫌がらせをされているんだろう。
残すとさっきのメイドさんが心配すると思い、アイテムボックスからタッパーを出して、中身を移し替え、収納した。
今日はトイレ以外は外に出ず、部屋にいたほうがいいみたいだし、次は昼頃に食事を持ってくると言っていたから、しばらくは誰も部屋に来ないだろう。
時間潰しに公爵邸を調べようと、マッピングを使用してみた。周りの壁や床が透けて見え、ずっと同じ位置にいるのに、建物全体の様子がわかる。
三階は同じような部屋が十二部屋ある。
どうやら同じ場所に立ったまま、視点だけ近寄ったり離れたりもできるようだ。魔法って便利!
他の部屋はベッドが二段になっていたり、机の上に素焼きの入れ物や木の箱が置かれていたりするくらいで、この部屋と大きな違いはない。
トイレはもちろん水洗なんかじゃない。
一応個室にはなっているけど、床から三十センチくらいの高さに板が張り付けてあり、真ん中に穴が開いている。そして、その下には素焼きの壺が入っている。
うん、無理! 私はホームを使って、自宅でしようと心に決めた。
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