上 下
790 / 820
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第785話 迷宮都市 地下16階 アマンダさんからの依頼 3 彼女の身分&本当の依頼内容

しおりを挟む
 翌日、水曜日。
 アマンダさんの依頼を受けるため、いつきおじさんと一緒に迷宮都市ダンジョン地下16階のテント内へ移転し、アマンダさんのもとへ向かう。
 彼女は朝食を食べ終わり、メンバーと装備の確認をしている所だった。
 
「アマンダさん、おはようございます。母を連れてきました」

「おはようサラちゃん。お母さんも、態々わざわざダンジョンにきて下さりありがとうございます。じゃあ、返事はテント内で聞かせてもらうよ」

 ここじゃまずいのかな?
 テントの魔石に樹おじさんが血液を登録し中へ入る。
 3人になった瞬間、アマンダさんが両膝を突き両手を組み深く頭を下げた。
 私は突然変化した彼女の態度に驚き固まってしまう。
 樹おじさんを、エルフの王女だと勘違いしてるのかしら?
 その状態のままアマンダさんは黙っているので、おじさんが仕方なく口を開いた。

「楽にしていいわ。今日は貴女の依頼を受けにきたのよ」

「姿を偽り、王女様の前にいる事をお許し下さい。私はエンハルト王国の第二王子・・・・、ヴィクター・エンハスと申します」

 うん?
 第二王子って聞こえたけど、聞き間違いよね?

「……姿変えの魔道具を使用していたの?」

「はい、禁制品を使っているため身分を秘密にしておりました」

 なんと!?
 アマンダさんは男性だったのか……。
 体格の良い姉御肌の女性だと思っていたよ!
 あ~、婚約者の話は本気だったらしい。
 樹おじさんの方へ視線を送ると、

「また、男か……」

 少し、がっかりした表情をして呟く姿があった。
 いや、それより王族なのも問題だよ!
 婚約者と紹介するのは王様なんじゃない?
 そんな身分の高い方をだませるのかしら……。

「ええっと、アマンダさんじゃなくてヴィクター様? 母が婚約者のフリをするのは、難しいと思いますけど……」

 一度、紹介してしまったら後に引けなくなりそうだ。
 
「それは大変申し訳ありません。王女様へ依頼したい内容は別にございます。実は数十年前から我が国を守護する青龍の声が届かず、巫女が困っております。精霊の加護を受けた王女様に、一度きて頂きたいのです」

「依頼内容は婚約者のフリではなく、青龍の様子見という事かしら?」

「私では王女様と身分が違い過ぎますから、結婚相手にはなりません。青龍の件は秘匿ひとく事項ですから、嘘を付きました」

何故なぜ、私が王女だと?」

「カルドサリ国王との挙式に、我が国も招待されておりました。その時の絵姿が残っております。私も何度か見た事があるので……」

 それならそっくりな私を彼女は、いや彼はエルフだと思っていたのか……。
 しかもヒルダさんの子供と勘違いされていそう。
 親切にしてくれたのは、同じ王族だと考えていた所為せい
 しかし、こちらもヒルダさんの姿をしているのは樹おじさんだと言えない。
 姿変えの魔道具ではなく、女性化の魔法を使用出来るのは秘密だ。
 もう、このまま通しておこう。

「お母さん、どうする?」

「青龍ねぇ~。私で役に立つかしら? 水の精霊王なら……」

 おじさんは、そう言って私の方を見た。
 
「青龍と通じるか確約は出来ないけど、やるだけの事はしてみるわ。その代わり、私達の件も秘密にしてくれるわよね?」

勿論もちろん、口外は致しません」

 樹おじさんは、依頼を受けると決めたようだ。

「ヴィクター様。兄と妹とセイさんを同行しても良いですか?」

「はい、王女様の護衛の方々もお連れ下さい」

 護衛ときたか……。
 
「そう、じゃあ少し人数が増えても大丈夫ね。移動は移転陣を利用するのでしょう?」

「王宮にある移転陣を借り、国へ帰る心算つもりです」

 カルドサリ王国からエンハルト王国へ、移転陣を使用するらしい。
 王宮にある移転陣は王族が利用出来ると聞いた。
 本人が第二王子なら、他国の移転陣を借りられるんだろう。

「じゃあ、兄達に事情を説明してきますね。出発はいつですか?」

「なるべく早い方が助かります。今週の土曜日にお願いしたい」

「分かりました。では土曜日、私の家で待ち合わせましょう」

「依頼を受けて下さり、ありがとうございます」

 もう一度、彼は私達に頭を下げる。
 テントから出てホームに戻り、樹おじさんは表情を改め父を呼んだ。
 兄と茜とセイさんも呼び、6人で依頼内容の変更を話し合う。
 アマンダさんがエンハルト王国の第二王子・・・・だったと伝えると、父が顔色を変えショックを受けている。
 兄と茜とセイさんは驚きに声も出ない様子。
 姿変えの魔道具で性別を偽っているとは思わなかったんだろう。
 実際、彼は女性のフリが上手かったし……。
 本当は、どんな姿をしているのか興味がある。

「彼は、お前と沙良をエルフの王族だと勘違いしているのか……。結婚式の時の絵姿を他国も持っていたとは……。絵師達が小遣い稼ぎをしたようだな。婚約者のフリより厄介やっかい事の臭いがするが、大丈夫なのか?」

 父が樹おじさんを見て眉をひそめた。

「まぁ、青龍に関しては問題ないんじゃないか? セイもいるし、護衛を連れてもいいらしいからガーグ老達へお願いしよう」

 元々、土曜日はダンジョンの魔法陣で次の階層を調べる予定だった。
 ガーグ老達に護衛を依頼しているから、付いてきてくれるだろう。
 茜が一番強いと感じるセイさんとガーグ老達が一緒なら、危険は回避出来るはず

「アマンダさん……いやヴィクター王子は、お前を見て何故なぜ依頼しなかったんだろうな」 

 兄がぽつりとそうこぼした。
 彼と知り合ってから2年近く経つ。
 私をエルフだと分かっていながら黙っていたのは、切迫した状況じゃなかったからか……。
 それとも見た目年齢から疑問を感じ、憶測が外れるのを心配したのかしら?
 偽装結婚式で、実の母親だと女性化した樹おじさんを紹介した事で確信し依頼に至ったとか。

「自分の身分を打ち明けるリスクを避けたのかもね。姿変えの魔道具は禁制品だし」

「はぁ~、結婚式が終ったばかりなのに面倒だな……。俺達は護衛としていくんだろう?」

「うん、そう思ってるみたい」

「きっと青竜王は、ご機嫌を損ねているだけですよ」

 セイさんは軽い口調でそう言い、依頼内容を一蹴いっしゅうした。
 聞いた父と樹おじさんは、安心したのか笑顔を見せる。

「とっとと依頼を片付け、帰ってこよう!」

 宣言した樹おじさんは、これからガーグ老へ伝えにいくらしい。
 私はガーグ老の工房までおじさんを送り届けてから、メンバーを連れ残り3日間の攻略を始めた。

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

3獣と檻の中

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:533

傲慢エルフと変態キメラ Vo1

BL / 連載中 24h.ポイント:298pt お気に入り:70

前世の記憶さん。こんにちは。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:376pt お気に入り:1,127

私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,081pt お気に入り:1,799

悪妻なので離縁を所望したのに、旦那様が離してくれません。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:198pt お気に入り:4,414

聖女には拳がある

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:2,046pt お気に入り:128

【完結】令嬢はされるがままに

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,307pt お気に入り:15

処理中です...