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非日常への誘い2
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大きな掛け声で、目を覚ました。
野球部だろうか。
グラウンドから練習終了の挨拶が、三階にある図書室まで聞こえてくる。
窓の外には、初夏の夕暮れが広がっていた。
空や雲は、少しずつ色を変えてゆく。
完全に、日が落ちるまでには、もう少し時間がかかりそうだ。
試験勉強をしながら、眠ってしまったらしい。
図書室の中には、人の気配がなくなっていた。
なぜか受付カウンターは空っぽで、当番の生徒の姿が見当たらない。
閉室の時間までにはもう少しあるはずだが、追い出される前に帰ろうと思い、棚から借りてきていた本を戻した。
脳や記憶に関する専門書。
あれから何とはなしに、そういった類の本を気が向いたときに読むようになっていた。難しい論文や、いくらなんでもありえないトンデモ本まで様々な本を読んだ結果、僕がたどり着いた答えは「前世の記憶とは、脳が理解できないことのつじつまを合わせるために、意味がある物語のようにイメージの欠片をつないだもの」 だった。
机の上に広げていた教科書とノートをバックにしまいこみ、図書室を出た。
夕暮れの校舎には、不思議なほど人気が無かった。
窓からは夕日が差し込み、いつもの見なれた廊下のあちこちに影ができている。
階段に向かって歩いた。
と。
首筋にしびれたような感覚が走って、思わず歩みが止まった。
冷や汗を感じるのと同時に、鼓動も速くなる。
階段の傍に影がある。
それは徐々に濃さを増してゆき、形をとりはじめているように見えた。
口の中が次第に苦く感じられるのとは逆に、ひどく甘い匂いがしはじめる。
影から目をそらさないようにしながら、できるだけ離れようと僕が大きく後退しようとしたとき、しわがれた声が聞こえた。
「逃がさぬぞ」
巨大な斧を構えた人間のような形に見えた。
影は、ゆっくりと僕に向かって近づいてくる。
「逃がさぬぞ・・・魔王」
野球部だろうか。
グラウンドから練習終了の挨拶が、三階にある図書室まで聞こえてくる。
窓の外には、初夏の夕暮れが広がっていた。
空や雲は、少しずつ色を変えてゆく。
完全に、日が落ちるまでには、もう少し時間がかかりそうだ。
試験勉強をしながら、眠ってしまったらしい。
図書室の中には、人の気配がなくなっていた。
なぜか受付カウンターは空っぽで、当番の生徒の姿が見当たらない。
閉室の時間までにはもう少しあるはずだが、追い出される前に帰ろうと思い、棚から借りてきていた本を戻した。
脳や記憶に関する専門書。
あれから何とはなしに、そういった類の本を気が向いたときに読むようになっていた。難しい論文や、いくらなんでもありえないトンデモ本まで様々な本を読んだ結果、僕がたどり着いた答えは「前世の記憶とは、脳が理解できないことのつじつまを合わせるために、意味がある物語のようにイメージの欠片をつないだもの」 だった。
机の上に広げていた教科書とノートをバックにしまいこみ、図書室を出た。
夕暮れの校舎には、不思議なほど人気が無かった。
窓からは夕日が差し込み、いつもの見なれた廊下のあちこちに影ができている。
階段に向かって歩いた。
と。
首筋にしびれたような感覚が走って、思わず歩みが止まった。
冷や汗を感じるのと同時に、鼓動も速くなる。
階段の傍に影がある。
それは徐々に濃さを増してゆき、形をとりはじめているように見えた。
口の中が次第に苦く感じられるのとは逆に、ひどく甘い匂いがしはじめる。
影から目をそらさないようにしながら、できるだけ離れようと僕が大きく後退しようとしたとき、しわがれた声が聞こえた。
「逃がさぬぞ」
巨大な斧を構えた人間のような形に見えた。
影は、ゆっくりと僕に向かって近づいてくる。
「逃がさぬぞ・・・魔王」
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