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エピローグ

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目の前には、茹で上がったばかりの鮮やかな黄色の塊。
これでもかというほどに、今年初の、玉蜀黍が積み上げられている。

「熱いうちがいいのよね。どんどん、食べて食べて」

都さんはそう言って、笑顔で齧った。

「いただきます」

立ち上がる湯気に、僕も手を伸ばして、一つとるが流石に熱い。
息を吹きかけながら齧り付くと、口の中に甘みと旨味が広がる。

夏休みに入り、僕は先生の道場や家で過ごすことが多くなった。

あの夜「影」を斬ってから、ふっつりとおかしなことはなくなった。
けれど魔王と姫の記憶がなくなったわけではない。
たぶん、これからも記憶とも向き合わなければいけないのだろう。

それでも、僕には僕の日常があるのだ。

「まあ、なんとかなるんじゃない」と、都さんが僕の心を読んだように言った。

風鈴が縁側で揺れ、涼しい音立てる。



「なぜ僕を助けてくれたのですか」
あの夜、僕は先生に尋ねた。
先生は目を細めると、内緒話をするように、言った。


「俺も、異世界で英雄だったのさ。気がついたら日本だったがね―――」

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