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しおりを挟む部屋の中央にある、ガラス円柱の魔導具があるところで、エリカとアルメリアが互いを抱き合いながら、黒焦げの四隅を見つめていた。
アルメリアは、立てかけてあったボルトアクション式の銃を背負っている。しかし、背負っているだけでしかなかった。
その穴から、ライールが飛び出てくる。
エリカが彼の姿を認めた途端、前に一歩踏み出して言った。
「こんの……!! 大バカ男ッ!! 穴あけることしかできないのッ?!」
「狭いのが悪い」
平然と言ってのけるライール。彼は鍵を開ける道具を手にし、エリカの手錠を解き始めた。
「下手したら脱出前に死んでるじゃないッ!」
「そんなことより、どうやって脱出する?」
「そんなことじゃないッ!」
「悪かった。生き残ったらいくらでも文句は聞くから、今は落ち着いてくれ」
生き残ったらの部分に不満があるけれど、今はそれどころではないのも事実だから、大きく深呼吸して、
「ひとまず、あそこのハッチから上の部屋へ行く……!」
と、言葉を吐き出すように言った。
了解する意志を示すようにうがずいたライールが、解錠した手錠を道具と一緒に腰へ収め、アルメリアの持っていた長身の銃を握った。
「王女、お借りしても?」
「え、ええ。どうぞ」
彼女は肩から掛けていた銃を外した。
すぐさま彼は、自分のあけた穴の方へ向かい、のぼろうとしている男たちに向かって発砲する。
当然、銃弾で爆発するかもしれないから、男たちは一目散に逃げだした。
「お前と王女は早く行けッ!」
エリカは言われた通り、アルメリアの手を握って上開き式扉がある梯子のところへ向かった。
先にエリカが梯子をのぼり、上開き式扉の取っ手を九〇度ほど回して、力一杯に押しあげる。
「――ごめん、アルメリア。隣に来られる?」
「はい!」
彼女も梯子をのぼり、エリカがわずかにあけた梯子の隙間に足や手を乗せて、取っ手をつかんだ。
「せ~のッ!!」とエリカが声を出し、時宜を合わせて二人で扉を押しあげた。
やっと扉が動き、蝶番を中心に開いていってから、バタンと奥側へ倒れた。
ほぼ同時に、バリケードとして使っていた戸棚もろとも、扉が爆発して吹っ飛んだ。
黒煙が立ちこめ、硝煙の香りが漂う中、
「エリカアアァアァァッ!!」
と、ムハクの叫び声がしてきた。
ライールが円形座席の後ろに隠れながら、銃撃を始める。
「我れ等が秋分のためにッ!!」
ムハクの掛け声なんて聞いてもいないエリカは、さっさと梯子をのぼりきり、アルメリアの腕をつかんで引っ張りあげる。
そうして顔だけを下へ出し、
「ライールッ!! 来てッ!!」
と叫んだ。
彼はポーチに取ってあった球体爆弾を放り投げて、相手のところに到達する直前に、銃で狙い撃ち抜く。
閃光と爆炎が炸裂した。
衝撃で円柱のガラスが砕ける。
途端に、大きな揺れが発生した。
「早くッ!!」
悲鳴にも似たエリカの声に応えるように、ライールは俊足を活かして梯子に到達し、手早くのぼると、差し出していたエリカの手を握って、一気に上へ駆けあがった。
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