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しおりを挟むライールが、預かった革腕輪を色々な角度から観察している。
「バーラントいわく、ベリンガール製法による革を使った、素人作成の腕輪らしいわよ?」
「そうだな」と、腕輪を見つめたままエリカへ返事するライール。
「何かありそう?」
「なんとも言えない…… 他に何かもらったり、預かったりしてないか?」
「何もないわよ? 特に名簿なんて大袈裟なモノ、手に入れてたら速攻で事態を把握できてたし」
「だろうな。ある意味で一件落着だ」
――そういえば、とエリカは思った。
モハクも革腕輪を探しているようだった……
ひょっとすると、ひょっとして……
「ねぇ」と呼び掛けるエリカ。「ライールはその腕輪、分解できたりする?」
「分解? 別に造作も無いが……」
「じゃあ、分解してくれない?」
「いいのか?」
「バーラントが買ってくれたのは、その細長い白革だけだし…… それさえ貰えれば、別にいいかな」
エリカがそう言って、アルメリアをチラッと見やった。彼女はその視線に気付き、エリカと視線を合わせる。
「私も、エリカさんが構わないなら別に構いませんよ?」
「じゃ、決定で」と、ライールに向く。
「分かった」
ライールは左胸に着けていた小型ナイフを取り出し、切っ先の先端をうまく使いながら、縫い糸を一つずつ切っていく。
「意外と器用ね」
「色々やるからな、仕事で」
「編み物とかは?」
「――それは未経験だ」
糸がどんどん解かれていくと、革がYの字みたいに二つに分かれた。どうやら革と革をうまいこと接合し、一枚のように見せかけていたようだ。
「中々、凝った造りをしている」
ライールがそう言うと、「ねぇ!」と、エリカが言った。
「何か挟まってる!」
「悪いが、反対側もやってくれないか?」
そう言って、ライールが小型ナイフを机に置くと、立ち上がって、戸棚にあったナイフの一本を取りだし、それを持って着席した。
「あの、私は何をすれば……?」
手持ち無沙汰なのか、アルメリアがそわそわして言った。
「じゃあ、取り出せた紙を並べていってくれない?」とエリカ。「その辺のモノで、両端を抑えながら」
「分かりました」
こうして、三人の奇妙な内職が始まった。
革腕輪は多重層になっているため、一つ一つが細くて、量が多い。
「――お二人とも!」
アルメリアが言った。
「人名が並んでいます!」
作業を中断したライールが、並んだ細切れの紙を見つめた。
「なるほど…… 裁断し、それを革で接合していったのか……」
「ライール」エリカが呼んだ。「手を止めないで」
「おっと、そうだった」
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