聖女は呪いの王冠をかぶる ~缶詰生活に嫌気がさした聖女様は、王冠の呪いで幼女になって、夜の祭りを満喫するそうです~

暁 明音

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 定例礼拝は表面上、つつがなく終わった。 

 しかし、礼拝中にらしくないミスをしてしまったアリスは、その後の昼食を取らずに自室へと戻った。

 閉めた扉に背中を預けたまま、机に置いてある王冠が目に付いた。
 箱の上にある王冠は、青天白日はくじつの光を浴びて、宝石をきらめかせている。まるで、日陰にいるアリスをさらに黒くしようと輝いているように見て取れた。

 ――どうして箱の上に?

 アリスはそう思った。
 良からぬことが頭をよぎって、怖くなって、体が自然と震えだす。

 ――自分のおこないのせいで、マグニー大司祭が死刑にされてしまったら、どうしよう…… ユリエルたちにも飛び火したらどうしよう……

 義父が罰せられたら……

 アリスの頭には、そのことだけがグルグルと巡っていた。

 不意に、彼女の目がうるんできた。
 彼女は自分が、子供になったり罰せられてしまうのは構わなかった。
 そうなるかもしれないと予想もしていたし、その覚悟もあった

 だが、親しい人たちが巻き込まれて死ぬのだけは、耐えられそうになかった。

「どうして、無関係な人が……」

 苦しそうに言葉を出して、フラフラと歩き始めた。
 王冠の前に来る。
 王冠は変わらず輝いている。
 アリスは、なぜだか意識が昏睡こんすいしてきた。

「これ、は……?」

 机に手をついて、そのまま膝が崩れて、敷いてある絨毯じゅうたんの上に倒れ込んだ。


 次に目をあけると、うつ伏せで床に伏していた。

 ――絨毯じゅうたんの毛先が見える。

 恐怖から気を失ったのか、それとも……

 アリスが思考を巡らせる前に、自分の手の大きさが変わっていることに気付いた。

 ハッとした彼女は、上体をもたげて膝を立てる。
 服が大きくて、体から抜け落ちそうであった。

「そんな……」

 両手を見ようにも、袖や腕の布が邪魔で見られない。
 まさかと思ったアリスは、服を引きずりながら、全身鏡の前になんとか立った。

 ――以前よりも小さくなっている。

 おそらく九歳か八歳くらいだ。
 前が十二歳かそこらだったから、三つか四つほど若返ったことになる。
 困惑していると、足音がかすかに聞こえた気がした。
 慌てたアリスは、周りを一瞥いちべつした。
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