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ホテルの和室に布団が二枚、敷きっぱなしになっていて、片方の布団には若い女性が横たわっていた。
女性はパジャマ姿ではなく夏の普段着で、掛け布団の上で横たわっている。
しかし、それよりも目を引くのは机の上にある『女形人形』と、それを見つめる青年二人の姿だった。
お互いに見つめあっているあいだも、外から蝉の声や太陽の光が容赦なく入ってくるから、青年の一人が額の汗を拭きはじめた。
すると、もう一人の方が両腕を組んで、
「春平君」
と、彼の横顔を見た。
「どうしよう?」
「どうと言われても……」
ハンカチを仕舞って項をかいた春平が、視線を人形へ戻していた。
「なんでこうなってもたんか、見当も付きません……」
「しゃーない」青年が膝を打った。「もうちょい、昨日のこと思いだしてみよか」
「そうですね…… それがええと思います」
「え~っと…… 合宿の最終日で、演奏会やったわな、確か」
「小学校の体育館でやりましたね」
「そのあと、何やったかな?」
「紀州大学の栄谷さんらと、海水浴場で打ちあげのバーベキューやりましたやん」
「そうやっけ?」
春平が鼻筋を指でつまんで、首を横に振っていた。
女性はパジャマ姿ではなく夏の普段着で、掛け布団の上で横たわっている。
しかし、それよりも目を引くのは机の上にある『女形人形』と、それを見つめる青年二人の姿だった。
お互いに見つめあっているあいだも、外から蝉の声や太陽の光が容赦なく入ってくるから、青年の一人が額の汗を拭きはじめた。
すると、もう一人の方が両腕を組んで、
「春平君」
と、彼の横顔を見た。
「どうしよう?」
「どうと言われても……」
ハンカチを仕舞って項をかいた春平が、視線を人形へ戻していた。
「なんでこうなってもたんか、見当も付きません……」
「しゃーない」青年が膝を打った。「もうちょい、昨日のこと思いだしてみよか」
「そうですね…… それがええと思います」
「え~っと…… 合宿の最終日で、演奏会やったわな、確か」
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