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4僕らに平等な罪があった
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電気を消した、真っ暗な部屋。
ベッドのなかで、眠る藤堂くんの息遣いを感じながら、もの思いにふける。
めちゃくちゃに抱かれて、文字通りむさぼりあって、興奮したし、自分の欲が際限ないように思われた。
「…………っ」
ふっと沸き上がる衝動を抑えようとする。
どうしても、どうしても欲しくてたまらなくなってしまう自分の罪深さが、みじめったらしい。
少しだけ顔をかたむけて、藤堂くんを盗み見る。
夜目にもくっきりと見える、整った造形。
伏せられた長いまつ毛を見ていたら、たまらなくなった。
――もう、我慢ができない。
そっと布団を抜け出し、手探りで机まで移動すると、ガタガタと音を立てる『それ』に手をかけた。
カコンと音を立てて、ロックがはずれる。
心臓の音が最高潮に達する。
血が沸騰するのを感じながら、そっと腕を入れた、そのときだった。
「……ふみ?」
びくりと肩が跳ねる。
藤堂くんは、ゴソゴソと布団から起き上がると、冷静な声で言った。
「ふみ、ダメだ。だいきちは」
部屋の明かりがつき、目が合う。
電気のリモコンを持ったまままっすぐおれを見つめる藤堂くんは、悲しそうだった。
「…………とうどうく、」
「漫画は盗んでもいい。けど、だいきちはダメだよ」
おれの右手の中では、哀れにも鷲掴みにされただいきちが、もごもごと抵抗していた。
藤堂くんは身を起こし、こちらに近づいてくる。
焦ってケージから腕を引き抜くと、その拍子に、机の上に置いていたペンケースをなぎ払ってしまった。
中身が散らばり、筆記用具に混じって、華奢なブレスレットが床に落ちる。
藤堂くんは立ち止まり、しばらくそれを見つめたあと、静かに口を開いた。
「……俺、そのブレスレット、失くしたと思ってた。乱交パーティーにつけて行ってたから、何かの拍子に落としたのかなと思ってたんだけど。ふみが盗ったんだね」
「違っ……」
何も違わない。おれが盗んだ。
タチのひとがつける赤いリストバンドに重なっていた、藤堂くんのブレスレット。
藤堂くんがおれを探して教室に来た日も、こんな風にペンケースの中身を床にぶちまけたと思い出す。
そして、一緒に拾ってくれた女の子がおれの名前を口にして、藤堂くんに気づかれた。
――朋永くん、ブレスレットつけたりするんだね。意っ外~
彼女の言葉を、頭の中で訂正する。
つけてない。
ペンケースの中に入れて持ち歩いて、毎日眺めていた。
こんなこと、絶対にいけないのにと思いながら。
ベッドのなかで、眠る藤堂くんの息遣いを感じながら、もの思いにふける。
めちゃくちゃに抱かれて、文字通りむさぼりあって、興奮したし、自分の欲が際限ないように思われた。
「…………っ」
ふっと沸き上がる衝動を抑えようとする。
どうしても、どうしても欲しくてたまらなくなってしまう自分の罪深さが、みじめったらしい。
少しだけ顔をかたむけて、藤堂くんを盗み見る。
夜目にもくっきりと見える、整った造形。
伏せられた長いまつ毛を見ていたら、たまらなくなった。
――もう、我慢ができない。
そっと布団を抜け出し、手探りで机まで移動すると、ガタガタと音を立てる『それ』に手をかけた。
カコンと音を立てて、ロックがはずれる。
心臓の音が最高潮に達する。
血が沸騰するのを感じながら、そっと腕を入れた、そのときだった。
「……ふみ?」
びくりと肩が跳ねる。
藤堂くんは、ゴソゴソと布団から起き上がると、冷静な声で言った。
「ふみ、ダメだ。だいきちは」
部屋の明かりがつき、目が合う。
電気のリモコンを持ったまままっすぐおれを見つめる藤堂くんは、悲しそうだった。
「…………とうどうく、」
「漫画は盗んでもいい。けど、だいきちはダメだよ」
おれの右手の中では、哀れにも鷲掴みにされただいきちが、もごもごと抵抗していた。
藤堂くんは身を起こし、こちらに近づいてくる。
焦ってケージから腕を引き抜くと、その拍子に、机の上に置いていたペンケースをなぎ払ってしまった。
中身が散らばり、筆記用具に混じって、華奢なブレスレットが床に落ちる。
藤堂くんは立ち止まり、しばらくそれを見つめたあと、静かに口を開いた。
「……俺、そのブレスレット、失くしたと思ってた。乱交パーティーにつけて行ってたから、何かの拍子に落としたのかなと思ってたんだけど。ふみが盗ったんだね」
「違っ……」
何も違わない。おれが盗んだ。
タチのひとがつける赤いリストバンドに重なっていた、藤堂くんのブレスレット。
藤堂くんがおれを探して教室に来た日も、こんな風にペンケースの中身を床にぶちまけたと思い出す。
そして、一緒に拾ってくれた女の子がおれの名前を口にして、藤堂くんに気づかれた。
――朋永くん、ブレスレットつけたりするんだね。意っ外~
彼女の言葉を、頭の中で訂正する。
つけてない。
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こんなこと、絶対にいけないのにと思いながら。
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