青少年の純然たる恋と興味

御堂どーな

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3章 ひみつ

3-4

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 テスト期間は、毎日達紀と一緒に勉強した。
 ただし、場所は学校の自習室で。
 情けない限りだけど、『家に行くと、そういう行為に及んでしまうかも知れない』という意見が一致したのだ。
 達紀は、苦笑い気味にあははと笑っていた。

 昼も放課後もずっと顔を合わせているのに、結局、サッカーのことは聞けないでいた。
 言いたくないことかも知れないし、テスト前に動揺させるようなことがあっては申し訳ないかなと思った。

 俺は、なんでもない風を装って、和やかに達紀との時間を過ごしていたけど、やっぱりなんとなく、喉の奥に小骨が刺さったままのような感じがしていた。
 そして、邪念を振り払うべく勉強。
 おかげで、きょう無事に返却されたテストは、どれも出来が良かった。

「イエーイ、テストおつかれー」

 昼休み、派手すぎるTシャツに身を包んだチャボが、教室に入ってきた。

「あおちゃーん。きょう、放課後ヒマ?」
「ん? 特に用はないけど。練習する?」
「いや、バンドじゃなくて、手芸部の方手伝って欲しくて」
「ええ……? 俺、裁縫とかできないよ?」

 眉間にしわを寄せて答えると、チャボは、人差し指を出して、チッチッチッと言った。

「立場が分かってないねー、あおちゃんは。君はねえ、うちの可愛い担当なんだよ。分かる?」
「全然分かんないです」
「採寸させろ。今回のコンクールのテーマがユニセックスなんだわ」
「えー? そんなの手芸部の人同士でやれば……」

 と言いかけて、気づいた。
 チャボが女子の採寸をするのは、まずい。

「俺の唯一の悩み、『採寸できないせいでゴツイ男の服しか作れない』が、あおちゃんのおかげで解決するってわけ! じゃ、よろしくな!」
「え! ちょっと!」

 身勝手に走り去るチャボを、止める術もなくぽかんと見送る。
 ややあって、達紀が教室にやってきた。

 軽音のメンバーが代わる代わるやってくるので、女子たちはちょっとはしゃぎながらこちらを見ているし、なんだか居心地が悪い。

「お弁当食べよう。ゆでたまご2個セット買ったよ。ひとつあげるからね」
「え、ゆでたまご好きって覚えててくれたの?」
「あおの好きなもの、全部知りたい」

 満面の笑みで言われたけど、俺は、周りに聞こえるんじゃないかと冷や冷やしてしまつた。
 ぎゅうぎゅうと背中を押すように教室を出る。

「チャボと何話してたの?」
「頼まれごと。なんか、コンクールに出す服を作るから、採寸させてみたいな」
「あー、毎回基也が断ってるやつだ。あお、オーケーしたの?」
「うん。まあ、サイズ測るだけなら別にいいかなと思って」

 俺が首をかしげると、達紀は、心底おかしそうに笑った。

「あはは、それはだまされちゃったね。あれ、作ったものをモデルに着せて、写真を添付して送るんだよ。それで、チャボのセンスは絶望的」

 着ているTシャツを思い浮かべる――きょうは確か、ピストルを構えたカウボーイが、ドロドロのピザを食べていた。

「なんか、男物しか作れなくて困ってるみたいだったから」

「アーサー、論外。僕、意外と筋肉質で無理。そういうわけで、いつも細身の基也にお願いしてるんだけど、そんな面倒なことをやりたがるはずないし」

 いまがチャンスか、と思った。
 体型について『筋肉あるよね。スポーツやってたの?』といった感じで聞けば、ナチュラルに話が運ぶかも知れない。
 ……と思ったのだけど、それは学校で話すべきではない話題に繋がってしまうので、やめた。



 放課後、1組に行くと、やる気満々でメジャーを構えたチャボが出迎えてくれた。

「お待たせ」
「いやー、マジでありがとう。んじゃ、早速」

 慣れた手つきで、背中にメジャーを当てる。
 そして、ふんふんと鼻歌を歌いながら、紙にメモしていく。

「なんでチャボは3つ兼部してるの? 大変じゃない?」

「んー。まあ忙しいけど、軽音も手芸も料理も、機材がタダで使えるからって理由だし。家にでっかいオーブンなんてないから、マシュマロチョコパイ作るなら料理部入るしかないっしょ、みたいな」

 端的に言って、変な人だなと思う。

「軽音は? いまのメンバーって最初からずっと?」
「いんや。1年の最初の時点では、アーサーと基也だけ。んで、当時の3年のバンドに混じってやってた」
「え、意外。いつもチャボとアーサーがじゃれてるから、付き合い長いのかと思ってた」

「いやいや、あいつら同中だしね。基也ってペルシャ猫だからさ。土日はアーサーんちに入り浸って、ベース弾きながら優雅にネコ缶食ってる」
「え? どういう例え……?」

 要するに、面倒見のいいアーサーと、気まぐれ美猫の基也……ということらしい。

「チャボと達紀はいつから?」

「おれは、家庭科系ふたつ入ったけど女子ばっかでつまんないなーと思ってて、軽音の先輩に聞いたら『1年がメンバー募集してるよ』って言うから、ちょっと遅れて入って。達紀は、夏休み明けに急にギター背負ってやってきて、入部したいですって」

「それはまでは何してたんだろ」
「サッカー。はい、前向いて」

 指示通りくるりと前を向く。

「ギターやるためにサッカーやめたのかな?」

「いや。ギターは元々趣味で中学からやってて、なんかサッカーやめたから軽音入ろうって思ったらしい。まあ、こっちは来る者拒まずだし、弾けるギターが来たらもう文化祭出るしかねーじゃんってなって、そこから10月まで怒濤の練習よ」

 その後も、俺が入るまでのマトムの歴史を聞いたけど、結局達紀のことはよく分からなかった。
 まあ、本人のいないところで秘密を暴くようなことをした、自分が悪い。
 達紀に直接聞くことに決めた。
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