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Day4 - いっぱいくっつきたいよ
4-2
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「うわ、ちょっと、大丈夫? って、慶介か。どうした?」
「いや、変なのに絡まれただけ」
「マジか。……やっかみかな」
ディスプレイの順位を見ながらつぶやいたのは、声楽一科の有名人だ。
確か名前は……
「おいおいおい、ハルト何しとんねん。他の子泣かしたらあかんやろ」
「はあ? 俺が泣かせたわけな……」
「ごめんなー? うちのハルトのせいやったらオレが代わりに怒っといたるから」
「人の話を聞け」
僕がぽかんとして見ていると、水戸くんがぷっと噴き出した。
「あはは。ユーキ、違う。ほんとにハルトは声掛けてきてくれただけ」
「あ、そうなん? ははは、ごめんなーてっきりやらかしたかと…………、いや、ハルト、わる、悪かっ……」
声をかけてきてくれたのは、クラシック音楽の声楽一科生・落合晴人さんで、怒られている関西弁の人は、同じ科の志藤祐樹さん。
どちらも優秀で、デビュー前から注目されていると、噂で聞いたことがある。
「信じらんないな。仮にも交際相手に疑ってかかる奴とかいる?」
「いやー……、なんや大人しそーな子が泣いとるわと思ったらお前がおって、いつものレッスンの調子で叱りつけたんかと」
「ばか。飯食ってる人にいきなり怒る奴いるわけないだろ」
きょとんとする僕の頭を撫でながら、水戸くんはくすくす笑う。
「このふたりは同期で、科は違うんだけど仲がいいんだ」
ディスプレイを見ると、ふたりは4位。
まあ、ハルトさんは色素が薄くて貴公子感があるし、ユーキさんは短髪で精悍な顔立ちで、人気があるだろうなというのは簡単に想像がつく。
「……あのふたりより人気にならないと、水戸くんはデビューできないんだもんね?」
「まあ、弱気になりたくなる気持ちはわかるけど。ふたりとも魅力的だし。でも俺たちは俺たちで、やれることはいっぱいあると思うよ」
ギリギリとチョークスリーパーを決めながら、ハルトさんがにっこり微笑む。
「それじゃあ、お騒がせしました。慶介、あんまり気に病むなよ」
「あはは、ありがとう。ユーキのこと、そろそろ放してあげて」
「…………っだぁ。死ぬかと思ったわ。まあ、なんや、ボクちゃん。困ったことがあったらいつでも言うてな? げほ」
「どうも、ありがとうございます」
嵐のようなふたりが去っていく。
遠巻きに見ていた人たちも食事を再開して、なんとか場がおさまった。
「……はあ、どうしようかと思っちゃった。ほんとにごめんね、僕のせいで事が大きくなっちゃって」
「レストランに来るのは、精神衛生上あんまりよくないかもね。いままでどおり、ルームサービスにしようか」
「うん、そうする」
ちょっと、調子に乗ってしまっていたのかもしれない。
かっこいい人に甘やかされて、自分では絶対になれないような順位につけて、いっぱいコメントももらえたから、人気になったような気持ちになっていたのではないか。
でも、それは違う。
僕は、水戸くんのデビューのために、力を尽くさなくちゃいけないんだ。
「水戸くん。僕もっと、ちゃんとするから」
「理空? あの、ちゃんとなんかしなくていいから、……そろそろ気づいて欲しい」
「え? なに?」
「可愛い子に煽られっぱなしで、俺もう、キス我慢するの限界なんだよ。していい?」
一斉に周りの視線が集まる。
ぼんっと、顔から火を噴くかと思った。
「いや、変なのに絡まれただけ」
「マジか。……やっかみかな」
ディスプレイの順位を見ながらつぶやいたのは、声楽一科の有名人だ。
確か名前は……
「おいおいおい、ハルト何しとんねん。他の子泣かしたらあかんやろ」
「はあ? 俺が泣かせたわけな……」
「ごめんなー? うちのハルトのせいやったらオレが代わりに怒っといたるから」
「人の話を聞け」
僕がぽかんとして見ていると、水戸くんがぷっと噴き出した。
「あはは。ユーキ、違う。ほんとにハルトは声掛けてきてくれただけ」
「あ、そうなん? ははは、ごめんなーてっきりやらかしたかと…………、いや、ハルト、わる、悪かっ……」
声をかけてきてくれたのは、クラシック音楽の声楽一科生・落合晴人さんで、怒られている関西弁の人は、同じ科の志藤祐樹さん。
どちらも優秀で、デビュー前から注目されていると、噂で聞いたことがある。
「信じらんないな。仮にも交際相手に疑ってかかる奴とかいる?」
「いやー……、なんや大人しそーな子が泣いとるわと思ったらお前がおって、いつものレッスンの調子で叱りつけたんかと」
「ばか。飯食ってる人にいきなり怒る奴いるわけないだろ」
きょとんとする僕の頭を撫でながら、水戸くんはくすくす笑う。
「このふたりは同期で、科は違うんだけど仲がいいんだ」
ディスプレイを見ると、ふたりは4位。
まあ、ハルトさんは色素が薄くて貴公子感があるし、ユーキさんは短髪で精悍な顔立ちで、人気があるだろうなというのは簡単に想像がつく。
「……あのふたりより人気にならないと、水戸くんはデビューできないんだもんね?」
「まあ、弱気になりたくなる気持ちはわかるけど。ふたりとも魅力的だし。でも俺たちは俺たちで、やれることはいっぱいあると思うよ」
ギリギリとチョークスリーパーを決めながら、ハルトさんがにっこり微笑む。
「それじゃあ、お騒がせしました。慶介、あんまり気に病むなよ」
「あはは、ありがとう。ユーキのこと、そろそろ放してあげて」
「…………っだぁ。死ぬかと思ったわ。まあ、なんや、ボクちゃん。困ったことがあったらいつでも言うてな? げほ」
「どうも、ありがとうございます」
嵐のようなふたりが去っていく。
遠巻きに見ていた人たちも食事を再開して、なんとか場がおさまった。
「……はあ、どうしようかと思っちゃった。ほんとにごめんね、僕のせいで事が大きくなっちゃって」
「レストランに来るのは、精神衛生上あんまりよくないかもね。いままでどおり、ルームサービスにしようか」
「うん、そうする」
ちょっと、調子に乗ってしまっていたのかもしれない。
かっこいい人に甘やかされて、自分では絶対になれないような順位につけて、いっぱいコメントももらえたから、人気になったような気持ちになっていたのではないか。
でも、それは違う。
僕は、水戸くんのデビューのために、力を尽くさなくちゃいけないんだ。
「水戸くん。僕もっと、ちゃんとするから」
「理空? あの、ちゃんとなんかしなくていいから、……そろそろ気づいて欲しい」
「え? なに?」
「可愛い子に煽られっぱなしで、俺もう、キス我慢するの限界なんだよ。していい?」
一斉に周りの視線が集まる。
ぼんっと、顔から火を噴くかと思った。
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