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9章 ほんとに、お前しかいないわ
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やわらかな朝日で目が覚める。
歩夢はなんとも幸せそうな表情でこちらを見ており、聞けば、30分ほど前に目が覚めてから、ずっとオレの寝顔を眺めていたらしい。
「なあ、歩夢。昨日の夜、最後、覚えてる? オレのこと名前で呼んだの。あと、敬語取れてたの」
先手を打った。
こう言ってしまえば、そのままタメ口で話してくれる気がしたからだ。
しかし、そうそううまくはいかないらしい。
「覚えてはいます、けど」
「あれ、勢い?」
「まあ、そう……ですね。いつか下の名前で呼んでみたいなって、思ってたので」
「敬語に戻ってんぞ」
「……まだ努力項目です」
真っ赤な顔で布団の中に潜っていくので、思わず笑ってしまった。
「んー。もっと甘えろ~無礼になりやがれ~」
「からかわないでください」
「だってすげー可愛いんだもん」
わしゃわしゃと髪をかき混ぜると、歩夢はくすぐったそうにしながら……やり返してきた。
「下の名前で呼ぶの、1ヶ月ください。その間にFixします」
いよいよおかしくなって、大笑いする。
「飯行く前に、風呂入らない? 朝風呂、気持ちいいと思うから」
「そうですね。温泉を味わっておきたいです。その……きのうは、安西さんを味わうのに夢中になってしまったので……」
と言いながら、ついにすっぽりと頭から布団をかぶってしまった。
オレも潜って、布団の中で小さくキスをする。
「かーわいっ」
「……こんなことしてたら、朝食ビュッフェに間に合わないですね」
と言いつつ、指を絡めて、何度も口づけてくれた。
幸せを噛みしめながら、ぼんやりと思う。
人と人は、少しずつ手順を踏みながら、仲を深めてゆくものらしい。
始まりは地獄体験だったが、歩夢は自分の殻を破ってけじめをつけ、オレはオレで、もやっとしていた過去を終わらせることができた。
求め合って、乗り越えて、たまに立ち止まりながら、この先もずっと一緒にいたい。
これがオレの、人生の最重要項目になった。
歩夢はなんとも幸せそうな表情でこちらを見ており、聞けば、30分ほど前に目が覚めてから、ずっとオレの寝顔を眺めていたらしい。
「なあ、歩夢。昨日の夜、最後、覚えてる? オレのこと名前で呼んだの。あと、敬語取れてたの」
先手を打った。
こう言ってしまえば、そのままタメ口で話してくれる気がしたからだ。
しかし、そうそううまくはいかないらしい。
「覚えてはいます、けど」
「あれ、勢い?」
「まあ、そう……ですね。いつか下の名前で呼んでみたいなって、思ってたので」
「敬語に戻ってんぞ」
「……まだ努力項目です」
真っ赤な顔で布団の中に潜っていくので、思わず笑ってしまった。
「んー。もっと甘えろ~無礼になりやがれ~」
「からかわないでください」
「だってすげー可愛いんだもん」
わしゃわしゃと髪をかき混ぜると、歩夢はくすぐったそうにしながら……やり返してきた。
「下の名前で呼ぶの、1ヶ月ください。その間にFixします」
いよいよおかしくなって、大笑いする。
「飯行く前に、風呂入らない? 朝風呂、気持ちいいと思うから」
「そうですね。温泉を味わっておきたいです。その……きのうは、安西さんを味わうのに夢中になってしまったので……」
と言いながら、ついにすっぽりと頭から布団をかぶってしまった。
オレも潜って、布団の中で小さくキスをする。
「かーわいっ」
「……こんなことしてたら、朝食ビュッフェに間に合わないですね」
と言いつつ、指を絡めて、何度も口づけてくれた。
幸せを噛みしめながら、ぼんやりと思う。
人と人は、少しずつ手順を踏みながら、仲を深めてゆくものらしい。
始まりは地獄体験だったが、歩夢は自分の殻を破ってけじめをつけ、オレはオレで、もやっとしていた過去を終わらせることができた。
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これがオレの、人生の最重要項目になった。
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