デリヘル頼んだら会社の後輩(根暗)が来た

御堂どーな

文字の大きさ
上 下
37 / 42
9章 ほんとに、お前しかいないわ

9-4

しおりを挟む
 連休のど真ん中。天気は快晴。
 少しだけ開けた車の窓から、初夏の風が入ってくる。
 ハンドルを握る歩夢の黒髪がさらさらと揺れるのが、あまりにもきれいで……

「安西さん? どうしました?」
「あ、いや。次のサービスエリアで交代しような」
「まだ平気ですよ」

 移動手段を話し合った結果、レンタカーを借りて、気ままなふたり旅を楽しむことにした。
 歩夢がコソコソ調べていたのは、乗り心地のよい車だったようだ。

「意外だよなあ、歩夢が運転うまいの」
「田舎は車がないと生きていけないので。脱輪即ち死みたいなあぜ道を通らないと、最寄りのスーパーに行けないんです」
「へー」

 と、気の抜けた返事をしているが、内心ドッキドキである。
 女の子がよく、『バックするときの男の人の横顔が好き』なんてことを言っていたりするが、いまならすごくよく分かる。
 サービスエリアの駐車場で、全方位をでかいファミリーカーに挟まれた空間に一発で入れたときは、キュン死するかと思った。

 ポンッとナビの音が鳴って、無機質なアナウンスの声が聞こえた。

 ――この先、分岐が続きます

 道路標識を見ると、なかなか複雑だ。
 しかし歩夢はすいすいと車線変更していき、難なく目的地へのレーンに乗る。

「やべ、一生乗ってたいわ。お前の運転、乗り心地良すぎ」
「一生は困りますね。エッチできないじゃないですか」
「ぶ……ッ! おま、これドラレコついてんだぞ」

 オレが慌てるも、歩夢は涼しい顔のまま、進路を見据えている。

「車内の音声は、録音オフにしてます。なので、万が一安西さんがものすごく恥ずかしいことを言ってしまっても、俺しか聞いてません」
「……そうかよ」

 急に恥ずかしくなって、意味もなくバックミラーを見る。
 若いカップルのようで、小さな鏡越しでも、付き合いたてほやほやなのかなというような仲睦まじさが見えた。
 不意に、朝倉さんの目には、オレたちがこんな風に見えていたのだろうか……と考えてしまい、さらに恥ずかしくなった。



「おお~すげえ。思ったより広いし綺麗だな」

 通された和室に入るなり、年甲斐もなくはしゃいでしまった。
 老舗の旅館。夕食は部屋で懐石料理。天然温泉の内風呂付き。
 荷物を放り出しあちこち見るのを、歩夢はクスクス笑いながら見ている。

「床の間まであって、豪華ですね」
「風呂どんなだろ」

 掃き出し窓をカラカラと開けると、ヒノキ造りの露天風呂があった。
 掛け流しの天然温泉で、疲労回復や腰痛なんかに効くのだと、説明に書いてある。
 部屋ごとについた風呂なので、他人が入ってくることはなく……まあ、イチャイチャし放題ということで。

 時刻は16:00を過ぎたところで、夕食まではまだ時間がある。

「飯の前に、その辺散策する?」
「そうですね。5分くらい歩いたところに神社の参道があって、お土産物屋さんが並んでいるみたいですよ」
「下調べバッチリだな」
「……これでも結構、はしゃいでます」

 ぎゅうっと抱きしめられる。
 日常とは違うシチュエーションだからか、これだけでドキドキしてしまう。
 歩夢はするするとオレの髪を撫で、うれしそうに目を細めると、子犬顔を近づけてきた。

「キスしたらその先も我慢できないと思ったので、夕飯食べ終わるまで控えようとしたんですけど……。やっぱり我慢できないので、キスはしちゃいます」
「ん」

 軽く唇が触れて、思わず小さく吐息を漏らすと、口ごと食べるみたいに大胆にキスされた。
 抱きしめる腕に力を込めると、舌がぬるっと入ってくる。

「ふ……ぁ」
「がまん、我慢がまん……」

 ブツブツ唱えながら、唇をくっつけるのと離すのを繰り返している。
 舌で口の中をなぞられると、ゾクゾクと背中が粟立った。

「だめ、歩夢……ストップ」
「……理性が失われそうなんですけど、…………お土産見に行きましょうか」

 苦渋の決断、みたいな顔で、思わず笑ってしまった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...