デリヘル頼んだら会社の後輩(根暗)が来た

御堂どーな

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3章 休ませてやりたいな

3-5

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 事後、ぐったりするオレを甲斐甲斐しく世話した篠山は、なんだか幸せそうな表情で布団に潜り込んできた。

「体、大丈夫ですか? 激しくしすぎちゃいました」
「平気」
「ならよかったです」

 慈しむように撫でられて、複雑な気持ちになる。
 他の客にもこんな風に、優しさを見せるようなサービスをするのか?
 ……なんて、全く言う筋合いのないことを考えてしまう。
 オレだって他と同じように、デリヘルのあゆむくんを金で買う客だ。

「せっかくご厚意で、休ませてもらえるなんて申し出だったのに、普通にしてしまっててすみません」
「別に。てか、かっこつけて大見得きった割に、いとも簡単に勃起する自分が恥ずかしいわ」
「ええ? うれしかったですよ。……その、安西さんと、って」

 穏やかな目だが、何を思っているかは分からない。
 他にも相手はたくさんいるだろうに、よりによって会社の先輩と……なんて。
 篠山はちょっと体をずらしてこちらに距離を詰めると、ふんわり抱きしめてきた。

「さっきの北川さんの話、俺、うれしかったです」
「……? なんだっけ?」
「第三者の目から見て、安西さんが俺に頼ってるように見えた。っていうの」
「まあ実際頼りまくってたみたいだしな。全くの無自覚で申し訳なかったけど」

 急に疲れを自覚して、まぶたが重くなる。
 辛うじて目を開けると、篠山はゆるく首を横に振りながら、ほんのり微笑んだ。

「申し訳なくなんかないです。自分はコミュニケーション下手くそだし、役に立ててるのかなって、よく思ってたので」
「んー? 役立ってるに決まってるだろ」
「今週、仕事楽しかったですよ。業務量は多かったですけど、安西さんと会社でしゃべれて、うれしかったです」
「……そっか」

 うれしく思っていたなんて、全く気づかなかった。
 いや、思い返してみても、常に無表情だった気がするが。

 布団に深く潜りながら、篠山の鎖骨の辺りに、額を寄せる。
 篠山は、いいこいいことするようにオレの頭を撫でた。

「なんか、もったいなくて、寝たくないです。朝までずっとこうしてたいな……って」
「それじゃ呼んだ意味ないだろ。寝てほしいっつってんのに」
「多分、自分が眠るより、寝てる安西さんを見てる方が癒されます」
「変わった奴だな」

 と言いつつ、本気で眠い。
 自分も意外と疲れていたのだと知る。

 現実と夢の境があいまいになる。
 うとうとしながら、篠山がくすっと笑うのが聞こえた。
 そして、こんなことを言った気がした。

 ――仕事納めしたら、しばらく会えないの。寂しいですね

 都合のよい夢なのか、本当にそう言ったのかは、分からなかった。
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