デリヘル頼んだら会社の後輩(根暗)が来た

御堂どーな

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3章 休ませてやりたいな

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 そうこうするうち、年内最後の金曜日を終えた。
 土日を挟んで月曜日が仕事納め。長期休暇まで、あと一息だ。
 軽く伸びをしながら、くるりとオフィスチェアを半回転させる。
 篠山は空気を読むこともなく定時で帰っていったので、もういない。
 ……いや、多分デリヘルに出勤している。

 エレベーターの中で公式サイトを見ると、案の定、待機中になっていた。
 それは、本人の意思なのか?
 めちゃくちゃ疲れているであろう体を引きずって、これからまた仕事?
 契約上の取り決めなのか、はたまた、1週間お預けだった『大好きなセックス』を謳歌するつもりなのか。

「あー……馬鹿だ。オレは馬鹿野郎だ」

 他人の私生活をあれこれ想像して勝手にもやもやする、意味不明の思考。
 イライラのあまり、ドアが開くと同時に、無駄に開くボタンをガチャガチャと連打してしまった。



 会社の最寄り駅の目黒から電車に乗り、ドア側に寄りかかって、はあっとため息をつく。
 今年はクリスマスが土日に重なった。
 金曜夜の街を歩く人々は、どことなく浮かれており、電車内の女性も、気合いが入っていそうなフルメイクの人が多い。
 窓の外は、各々の店が好きにライトアップした、なんともちぐはぐな夜景だ。
 そして、窓に反射する自分の顔は、めちゃくちゃ浮かない。

 ぼんやりと2駅揺られ、電車が渋谷に着いたところで……なぜだか分からないが、オレは唐突に、電車を降りた。
 去りゆく車両を、呆然と眺める。

「あれ? なんで降りた……?」

 つぶやいて視線を上げると、ホームの向こうに、ラブホテルの看板が見えた。
 サーッと血の気が引く。
 後輩社員の性生活のことを考えすぎて、無意識にラブホがある駅に降りたっぽい。
 やっぱり馬鹿野郎である。いや、疲れだと思いたいけど。

 ホームの端に寄り、スマホのブラウザを開く。
 表示しっぱなしだった予約ページを見ると、あゆむくんはまだ待機中。

 なんとなく、『休ませてやりたいな』という気持ちが湧き上がった。
 無茶な客に呼び出されてズタボロになったらどうしようなどと、お節介はなはだしい考えが頭をよぎる。
 そして気づけば、電話番号をタップしていた。

『お電話ありがとうございます、スターライドです!』
「すいません、あゆむくんっていまからいけますか」
『はい、大丈夫です! お時間はお決まりですか?』
「朝までコース、場所はホテルでお願いします』

 ハキハキとしゃべる店員にラブホテルの名前を伝え、電話を切る。
 軽蔑されるかもしれない。
 1週間仕事を振りまくってきた先輩が、さらに金を振りかざして、朝まで性サービスを要求してくるとか……。
 それに、羽振りが良くなって弾けたと思われるのもいやだな。
 うちの給料は、土日の前倒しで、きょうが振込日だ。
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