9 / 42
3章 休ませてやりたいな
3-2
しおりを挟む
そうこうするうち、年内最後の金曜日を終えた。
土日を挟んで月曜日が仕事納め。長期休暇まで、あと一息だ。
軽く伸びをしながら、くるりとオフィスチェアを半回転させる。
篠山は空気を読むこともなく定時で帰っていったので、もういない。
……いや、多分デリヘルに出勤している。
エレベーターの中で公式サイトを見ると、案の定、待機中になっていた。
それは、本人の意思なのか?
めちゃくちゃ疲れているであろう体を引きずって、これからまた仕事?
契約上の取り決めなのか、はたまた、1週間お預けだった『大好きなセックス』を謳歌するつもりなのか。
「あー……馬鹿だ。オレは馬鹿野郎だ」
他人の私生活をあれこれ想像して勝手にもやもやする、意味不明の思考。
イライラのあまり、ドアが開くと同時に、無駄に開くボタンをガチャガチャと連打してしまった。
会社の最寄り駅の目黒から電車に乗り、ドア側に寄りかかって、はあっとため息をつく。
今年はクリスマスが土日に重なった。
金曜夜の街を歩く人々は、どことなく浮かれており、電車内の女性も、気合いが入っていそうなフルメイクの人が多い。
窓の外は、各々の店が好きにライトアップした、なんともちぐはぐな夜景だ。
そして、窓に反射する自分の顔は、めちゃくちゃ浮かない。
ぼんやりと2駅揺られ、電車が渋谷に着いたところで……なぜだか分からないが、オレは唐突に、電車を降りた。
去りゆく車両を、呆然と眺める。
「あれ? なんで降りた……?」
つぶやいて視線を上げると、ホームの向こうに、ラブホテルの看板が見えた。
サーッと血の気が引く。
後輩社員の性生活のことを考えすぎて、無意識にラブホがある駅に降りたっぽい。
やっぱり馬鹿野郎である。いや、疲れだと思いたいけど。
ホームの端に寄り、スマホのブラウザを開く。
表示しっぱなしだった予約ページを見ると、あゆむくんはまだ待機中。
なんとなく、『休ませてやりたいな』という気持ちが湧き上がった。
無茶な客に呼び出されてズタボロになったらどうしようなどと、お節介はなはだしい考えが頭をよぎる。
そして気づけば、電話番号をタップしていた。
『お電話ありがとうございます、スターライドです!』
「すいません、あゆむくんっていまからいけますか」
『はい、大丈夫です! お時間はお決まりですか?』
「朝までコース、場所はホテルでお願いします』
ハキハキとしゃべる店員にラブホテルの名前を伝え、電話を切る。
軽蔑されるかもしれない。
1週間仕事を振りまくってきた先輩が、さらに金を振りかざして、朝まで性サービスを要求してくるとか……。
それに、羽振りが良くなって弾けたと思われるのもいやだな。
うちの給料は、土日の前倒しで、きょうが振込日だ。
土日を挟んで月曜日が仕事納め。長期休暇まで、あと一息だ。
軽く伸びをしながら、くるりとオフィスチェアを半回転させる。
篠山は空気を読むこともなく定時で帰っていったので、もういない。
……いや、多分デリヘルに出勤している。
エレベーターの中で公式サイトを見ると、案の定、待機中になっていた。
それは、本人の意思なのか?
めちゃくちゃ疲れているであろう体を引きずって、これからまた仕事?
契約上の取り決めなのか、はたまた、1週間お預けだった『大好きなセックス』を謳歌するつもりなのか。
「あー……馬鹿だ。オレは馬鹿野郎だ」
他人の私生活をあれこれ想像して勝手にもやもやする、意味不明の思考。
イライラのあまり、ドアが開くと同時に、無駄に開くボタンをガチャガチャと連打してしまった。
会社の最寄り駅の目黒から電車に乗り、ドア側に寄りかかって、はあっとため息をつく。
今年はクリスマスが土日に重なった。
金曜夜の街を歩く人々は、どことなく浮かれており、電車内の女性も、気合いが入っていそうなフルメイクの人が多い。
窓の外は、各々の店が好きにライトアップした、なんともちぐはぐな夜景だ。
そして、窓に反射する自分の顔は、めちゃくちゃ浮かない。
ぼんやりと2駅揺られ、電車が渋谷に着いたところで……なぜだか分からないが、オレは唐突に、電車を降りた。
去りゆく車両を、呆然と眺める。
「あれ? なんで降りた……?」
つぶやいて視線を上げると、ホームの向こうに、ラブホテルの看板が見えた。
サーッと血の気が引く。
後輩社員の性生活のことを考えすぎて、無意識にラブホがある駅に降りたっぽい。
やっぱり馬鹿野郎である。いや、疲れだと思いたいけど。
ホームの端に寄り、スマホのブラウザを開く。
表示しっぱなしだった予約ページを見ると、あゆむくんはまだ待機中。
なんとなく、『休ませてやりたいな』という気持ちが湧き上がった。
無茶な客に呼び出されてズタボロになったらどうしようなどと、お節介はなはだしい考えが頭をよぎる。
そして気づけば、電話番号をタップしていた。
『お電話ありがとうございます、スターライドです!』
「すいません、あゆむくんっていまからいけますか」
『はい、大丈夫です! お時間はお決まりですか?』
「朝までコース、場所はホテルでお願いします』
ハキハキとしゃべる店員にラブホテルの名前を伝え、電話を切る。
軽蔑されるかもしれない。
1週間仕事を振りまくってきた先輩が、さらに金を振りかざして、朝まで性サービスを要求してくるとか……。
それに、羽振りが良くなって弾けたと思われるのもいやだな。
うちの給料は、土日の前倒しで、きょうが振込日だ。
2
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる