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2章 金を払って呼ぶしかない
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家に帰ってからも、というかきのうからずっと、篠山のことばかり考えている。
電話一本、1万円支払えば、向こうの意思とは関係なく呼び出せて、会話ができてしまう。
さすがにそれは人としてナシかと思い、ためらっている……が、一方で、もう一度見てみたいと思っている自分もいる。
別に、またしたいとかいうわけではなく。
また呼んだら、あんな性格になっているのか。
会社で言っていたことも、外でなら全然違うことを言うのか。
デリヘルの仕事中だけ明るく振る舞っているのか。
仕事中もデリヘルのテンションも、どっちも演技だったりして?
――すごい、セックスが好きってだけです
思い出して、なんとも言えない気持ちになる。
他の客にもあんな感じでノリノリで突っ込んでるんだろうなあと考えると、要らぬ老婆心も出てくるし。
病気をうつされたりしないんだろうか。
篠山の予約枠を全て買い取ってしまえばその心配もなくなる……なんてバカなことを考えかけて、やめた。
普通に破産するし、ホスト狂いで貢いで養う女と似たような思考だ。
「待機中、ねえ……」
スマホの画面上では、あゆむくんは待機中になっている。
もう21:00だというのに。
呼ばれてヤッて帰ったら、御前様だろう。
あしたも当然仕事があるのだから、体を壊すのではないかと……。
「あーーもう、めんどくせえ!」
勢いに任せて、頼むことにした。
呼ばないでくださいと言われたばかりだが、これはもう致し方ない。
話すには、金を支払って呼ぶしかないのだ。
そして1時間後、きのうに引き続き、フードをすっぽり被った男が、オレの部屋に来た。
「スターライドの……」
「いいから、とりあえず上がれ」
コートを受け取りハンガーにかけ、振り返ると、篠山は棒立ちになっていた。
「悪いな、呼ぶなって言われたそばから呼んで」
「いえ。そこはもう、お客様が自由に選ぶことで。こちらはお金をいただく立場なので、どうこう言えないですし、お呼びいただいた以上はちゃんと……」
「やっぱ、こっちの方がよくしゃべるな」
陰気な雰囲気は職場と変わらないし、声も震えているが、少し言葉数が多い気がする。
篠山はキョトンとしていて、まばたきを繰り返している。
「よくしゃべるな、篠山。会社でもそんくらい言えばいいのに」
「あっ、……え」
うろたえながら、頬を赤らめている。
いや、耳まで真っ赤だ。
「あの、するならしましょう。きのうはあのあとオフだったので居られましたけど、きょうはまだあるので……」
「延長」
「え?」
「次の奴、もう決まってんの?」
「いえ、いまのところご予約はいただいてないです」
「何時まで待機なの?」
「1:00過ぎまでは」
「じゃ、そこまで延長するわ」
オレがスマホを取り出すと、篠山は慌てて手をバタバタさせた。
「ダメですダメです! 延長料金めちゃくちゃ高いので!」
「だってそうでもしなきゃ、そのあとの客ともヤるんだろ? 平日序盤でそんな体力使って、仕事に障ったら困る」
「いや……っ、ほんとに、大丈夫なので。ただの夜更かしです」
「はあ? 新しい客とヤるたんびにあの調子で突っ込むんだろ?」
篠山は答えなかった。
そして、首まで真っ赤になった。
「篠山?」
「…………すみません。本当は店の規約では、本番ナシです」
「は!?」
「手コキとかフェラとかでイッてもらうだけの仕事なので……」
「えっ、え!? じゃあなんできのうは」
「……すみません」
興奮しました、と、ひと言ポツリ。
そして時が止まる。
数十秒の沈黙ののち、俺は口を開いた。
「……う、そだろ。職場の奴で興奮、して?」
「すみません申し訳ありません。その、安西さんの反応があんまりにも可愛くて、抑えきれず」
「はええ?」
「いまも、その、すごい……可愛いです」
赤面がうつったか? オレも顔が熱い。
ごまかすように、声を張り気味に言った。
「よ、よし! じゃあ、ヤるか! 金もったいねーし。っつっても、ちゃんと規約に則れよ?」
篠山が、顔を上げた。
子犬のような童顔の目が、すーっと細められる。
「……守れるか分からないです。だって篠山さん、きょうも律儀に備考欄に書いてくれたじゃないですか。『前回と同様の内容で』って」
「は!? あ、あれはっ、おもちゃとか別料金のもん使わねえぞっていう」
「指だけで十分、気持ちよさそうでしたもんね?」
大股の1歩でずんっと距離を詰められ、そのまま抱きしめられる。
「し、しのやま」
「いまはあゆむです」
耳元で訂正されて、ゾクリと肌が粟立つ。
早速背中を這い回りだした手つきが妖しくて、思わず声を漏らす。
「は……、ぁ」
「安西さん。俺、セックス大好きですけど、何でもかんでも気持ちいいってわけじゃないですよ」
「なに、が」
「可愛いなって思ったひととするときが、一番気持ちいいです。ねえ、早く可愛い乳首しゃぶりたいです。それで」
つつつと、右手が降りてきて、股間の辺りをうっすらなぞった。
「ここ、ドロドロになるまで舐めて。こっちも」
尻の肉を掴み、やわやわと揉む。
「この中。ぐずぐずにしたいですね」
「やめ、……てめぇ、」
「やだやだ言うのも可愛いです」
両手で顔をがしっと掴み、激しくキスしてきた。
「…………っ、はっ、んんっ」
「すごい、興奮します。舌、ちゅうって吸ってみてください」
「ふ、……ぅ、んっ」
温かい舌に吸い付くと、絡めるように応えてきた。
歯列をなぞり、口の中をくまなく犯される。
膝が揺れて、立っていられない。
「は、ぁっ、……あ」
「可愛い。前戯でいっぱいイッてくださいね。それが俺の仕事なので。でも、そのあとは」
欲に濡れた目で見つめられて、ゾクゾクする。
篠山は俺を横抱きにし、ベッドに放り投げた。
電話一本、1万円支払えば、向こうの意思とは関係なく呼び出せて、会話ができてしまう。
さすがにそれは人としてナシかと思い、ためらっている……が、一方で、もう一度見てみたいと思っている自分もいる。
別に、またしたいとかいうわけではなく。
また呼んだら、あんな性格になっているのか。
会社で言っていたことも、外でなら全然違うことを言うのか。
デリヘルの仕事中だけ明るく振る舞っているのか。
仕事中もデリヘルのテンションも、どっちも演技だったりして?
――すごい、セックスが好きってだけです
思い出して、なんとも言えない気持ちになる。
他の客にもあんな感じでノリノリで突っ込んでるんだろうなあと考えると、要らぬ老婆心も出てくるし。
病気をうつされたりしないんだろうか。
篠山の予約枠を全て買い取ってしまえばその心配もなくなる……なんてバカなことを考えかけて、やめた。
普通に破産するし、ホスト狂いで貢いで養う女と似たような思考だ。
「待機中、ねえ……」
スマホの画面上では、あゆむくんは待機中になっている。
もう21:00だというのに。
呼ばれてヤッて帰ったら、御前様だろう。
あしたも当然仕事があるのだから、体を壊すのではないかと……。
「あーーもう、めんどくせえ!」
勢いに任せて、頼むことにした。
呼ばないでくださいと言われたばかりだが、これはもう致し方ない。
話すには、金を支払って呼ぶしかないのだ。
そして1時間後、きのうに引き続き、フードをすっぽり被った男が、オレの部屋に来た。
「スターライドの……」
「いいから、とりあえず上がれ」
コートを受け取りハンガーにかけ、振り返ると、篠山は棒立ちになっていた。
「悪いな、呼ぶなって言われたそばから呼んで」
「いえ。そこはもう、お客様が自由に選ぶことで。こちらはお金をいただく立場なので、どうこう言えないですし、お呼びいただいた以上はちゃんと……」
「やっぱ、こっちの方がよくしゃべるな」
陰気な雰囲気は職場と変わらないし、声も震えているが、少し言葉数が多い気がする。
篠山はキョトンとしていて、まばたきを繰り返している。
「よくしゃべるな、篠山。会社でもそんくらい言えばいいのに」
「あっ、……え」
うろたえながら、頬を赤らめている。
いや、耳まで真っ赤だ。
「あの、するならしましょう。きのうはあのあとオフだったので居られましたけど、きょうはまだあるので……」
「延長」
「え?」
「次の奴、もう決まってんの?」
「いえ、いまのところご予約はいただいてないです」
「何時まで待機なの?」
「1:00過ぎまでは」
「じゃ、そこまで延長するわ」
オレがスマホを取り出すと、篠山は慌てて手をバタバタさせた。
「ダメですダメです! 延長料金めちゃくちゃ高いので!」
「だってそうでもしなきゃ、そのあとの客ともヤるんだろ? 平日序盤でそんな体力使って、仕事に障ったら困る」
「いや……っ、ほんとに、大丈夫なので。ただの夜更かしです」
「はあ? 新しい客とヤるたんびにあの調子で突っ込むんだろ?」
篠山は答えなかった。
そして、首まで真っ赤になった。
「篠山?」
「…………すみません。本当は店の規約では、本番ナシです」
「は!?」
「手コキとかフェラとかでイッてもらうだけの仕事なので……」
「えっ、え!? じゃあなんできのうは」
「……すみません」
興奮しました、と、ひと言ポツリ。
そして時が止まる。
数十秒の沈黙ののち、俺は口を開いた。
「……う、そだろ。職場の奴で興奮、して?」
「すみません申し訳ありません。その、安西さんの反応があんまりにも可愛くて、抑えきれず」
「はええ?」
「いまも、その、すごい……可愛いです」
赤面がうつったか? オレも顔が熱い。
ごまかすように、声を張り気味に言った。
「よ、よし! じゃあ、ヤるか! 金もったいねーし。っつっても、ちゃんと規約に則れよ?」
篠山が、顔を上げた。
子犬のような童顔の目が、すーっと細められる。
「……守れるか分からないです。だって篠山さん、きょうも律儀に備考欄に書いてくれたじゃないですか。『前回と同様の内容で』って」
「は!? あ、あれはっ、おもちゃとか別料金のもん使わねえぞっていう」
「指だけで十分、気持ちよさそうでしたもんね?」
大股の1歩でずんっと距離を詰められ、そのまま抱きしめられる。
「し、しのやま」
「いまはあゆむです」
耳元で訂正されて、ゾクリと肌が粟立つ。
早速背中を這い回りだした手つきが妖しくて、思わず声を漏らす。
「は……、ぁ」
「安西さん。俺、セックス大好きですけど、何でもかんでも気持ちいいってわけじゃないですよ」
「なに、が」
「可愛いなって思ったひととするときが、一番気持ちいいです。ねえ、早く可愛い乳首しゃぶりたいです。それで」
つつつと、右手が降りてきて、股間の辺りをうっすらなぞった。
「ここ、ドロドロになるまで舐めて。こっちも」
尻の肉を掴み、やわやわと揉む。
「この中。ぐずぐずにしたいですね」
「やめ、……てめぇ、」
「やだやだ言うのも可愛いです」
両手で顔をがしっと掴み、激しくキスしてきた。
「…………っ、はっ、んんっ」
「すごい、興奮します。舌、ちゅうって吸ってみてください」
「ふ、……ぅ、んっ」
温かい舌に吸い付くと、絡めるように応えてきた。
歯列をなぞり、口の中をくまなく犯される。
膝が揺れて、立っていられない。
「は、ぁっ、……あ」
「可愛い。前戯でいっぱいイッてくださいね。それが俺の仕事なので。でも、そのあとは」
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