頭が堅くて何が悪いっ

御堂どーな

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14先輩の終わり

14-2

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 飯田と別れて、どこへも寄らずに帰ってきた。
 玄関を開けると、佑哉が夕飯の支度をしていた。

「おかえりなさい」
「ごめん、やらせちゃって」
「いえいえ。お疲れ会、楽しかったですか?」
「うん、まあ。……って言っても別に、マックでしゃべってただけなんだけど」

 なんとも言い訳がましいな、と思いながら、リュックを定位置のカゴに放り込む。

「ねえ、飯田から聞いたんだけど。佑哉、ボランティアの人集め手伝ったんだって?」
「あれっ、バレた」
「ええ? 隠してたの……? なんで?」
「いや、別に隠してたわけではないんですけど……なんか、先輩に褒められたくてやったと思われたら、恥ずかしいじゃないですか」

 佑哉は少し照れ笑いしながら、鍋の中でみそを溶く。
 僕は肩をすくめた。

「まあ、褒めるけど。えらいえらい」

 お玉と菜箸で手がふさがった佑哉の頭を、もふもふとなでる。
 佑哉はくすぐったそうに身をよじりながら、はにかんだ笑顔を見せた。

「で、なんで緑化のお手伝い? いつも飯田にライバル心メラメラ燃やしてるのに」

「いやあ、なんか俺、学校のためになること何もしてないなって思って。風紀は部外者が手伝えることはなさそうですし、何かないかなと思ってたら、ちょうどボランティア募集してて。まあ俺自身は断られちゃったんですけど」

 あははと笑って、火を止める。
 僕はお椀を並べながら言った。

「佑哉が人集めした日は、ゴミ袋の数が史上最多だったって、飯田がほくほく言ってたよ」
「役に立てたんなら良かったです」

 ふたりで向かい合って、手を合わせる。
 ご飯とみそ汁と焼くだけの餃子と山盛りの温野菜。
 まあ、男のふたり暮らしの自炊なんて、こんなもんだ。
 こんなもんだから楽しいのだけど。

「……ねえ、佑哉は、モデル以外の仕事に興味あったりするの? 芝居とか」
「んー、いまのところないですね。どっちかというと、にこりともせず黙ってランウェイを歩いてみたいかな」
「本格的にファッションモデル?」
「はい。パリコレとか憧れます」

 夢のスケールが違った。
 僕は「ふーん」と言って、お茶をすする。

「佑哉が高校生じゃなくなったら、ほんと、有名人になっちゃうね」
「仕事が途切れなければ御の字なんで。別に有名かとかは気にしてないです」

 やはり僕は、「ふーん」とごまかして、味噌汁に口をつけた。
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