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7人質
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僕は近くの総合病院へ運ばれ、検査入院になった。
スマホは部屋に置きっぱなしだし、生徒の個人的な面会はできないから、佑哉がどうなったのかは分からない。
全ての検査が終わった夜、僕は、看護師さんに付き添われてナースステーションの前にいた。
「――別に、わざわざ帰ってこなくても大丈夫だよ」
『そういうわけにいかないわよ。オンラインでチケット取るから、あしたの夕方には成田に着くわ』
「ほんとに大丈夫。母さんが病院に来ても、世話することもないし意味ないから」
ドイツ、ベルリンからの国際電話。
僕が寮生活をしているのは、両親が海外で仕事をしているからだ。
車いすの上でぐったりしながら、心配する母をなだめる。
「校長先生から呼び出されるんだったらそうしてもらえるとありがたいけど、多分、ドイツから来いとは言わないでしょ」
『……また連絡する』
母は憮然として電話を切った。
傍にいたナースさんに、電話を返す。
「お母さん、なんて言ってた?」
「帰国するって言ってましたけど、仕事柄無理だし、僕も別に必要ないんで、断りました」
「顔見たら安心するんじゃない?」
「いや、顔見るためだけに飛行機で14時間って、どう考えても無駄なんで」
お腹の中に痛みを感じていたため、内臓の出血が心配されていたけれど、超音波検査の結果、問題なかった。
骨も異常なしだったので、浅いところの内出血で済んだようだ。
もし肝臓や膵臓にダメージがあったら、一晩おいたのが致命傷で、最悪、出血多量で内臓破裂を起こしていた可能性もあったらしい。
……佑哉には言わないでおこう。
怒って寝てしまったことを悔やんで、自分を責めるだろうから。
一応異常はなかったけど、普通に歩くだけでも痛いので、安静のために3日ほど入院する。
佑哉には、ひと言『大丈夫だよ』と言えればそれだけで十分なのに……何も知らせられないせいで、僕も彼も、きっと不安が膨れ上がる。
僕も、たったひと言、『寂しいです』とかなんとか言ってもらえれば、それだけで十分なのにな。
スマホは部屋に置きっぱなしだし、生徒の個人的な面会はできないから、佑哉がどうなったのかは分からない。
全ての検査が終わった夜、僕は、看護師さんに付き添われてナースステーションの前にいた。
「――別に、わざわざ帰ってこなくても大丈夫だよ」
『そういうわけにいかないわよ。オンラインでチケット取るから、あしたの夕方には成田に着くわ』
「ほんとに大丈夫。母さんが病院に来ても、世話することもないし意味ないから」
ドイツ、ベルリンからの国際電話。
僕が寮生活をしているのは、両親が海外で仕事をしているからだ。
車いすの上でぐったりしながら、心配する母をなだめる。
「校長先生から呼び出されるんだったらそうしてもらえるとありがたいけど、多分、ドイツから来いとは言わないでしょ」
『……また連絡する』
母は憮然として電話を切った。
傍にいたナースさんに、電話を返す。
「お母さん、なんて言ってた?」
「帰国するって言ってましたけど、仕事柄無理だし、僕も別に必要ないんで、断りました」
「顔見たら安心するんじゃない?」
「いや、顔見るためだけに飛行機で14時間って、どう考えても無駄なんで」
お腹の中に痛みを感じていたため、内臓の出血が心配されていたけれど、超音波検査の結果、問題なかった。
骨も異常なしだったので、浅いところの内出血で済んだようだ。
もし肝臓や膵臓にダメージがあったら、一晩おいたのが致命傷で、最悪、出血多量で内臓破裂を起こしていた可能性もあったらしい。
……佑哉には言わないでおこう。
怒って寝てしまったことを悔やんで、自分を責めるだろうから。
一応異常はなかったけど、普通に歩くだけでも痛いので、安静のために3日ほど入院する。
佑哉には、ひと言『大丈夫だよ』と言えればそれだけで十分なのに……何も知らせられないせいで、僕も彼も、きっと不安が膨れ上がる。
僕も、たったひと言、『寂しいです』とかなんとか言ってもらえれば、それだけで十分なのにな。
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