上 下
40 / 43
(スピンオフ)りょーすけとなおちゃん。

4

しおりを挟む
 そして現在。2年の冬休み、正月明け。
 きょうは尚ちゃんの家に来た。親はハワイ旅行に行っていて、家には尚ちゃんしかいない。

「尚ちゃーん。台所にあったカステラ食っていい?」
「どうぞ」

 1階へ下り、立派なキッチンのカウンターに置かれたカステラを切り分け、2階へ戻る。
 すると、さっきまでうつらうつらしながら読書をしていたはずの尚ちゃんが、座椅子の上で寝ていた。
 寝落ちか。まあ最近受験勉強を始めて、夜までやるから疲れてるみたいなこと言ってたしな。
 ベッドに運んであげることにして、お姫様みたいに横抱きにして、運んだ。

 起こさないようそっと下ろすと、尚ちゃんの顔が目の前にあった。
 尚ちゃんは、オレのヒーローだ。
 なんでもできて、頭が良くて喧嘩も強くて、すごいひと。それに、顔も整っている。
 近い距離で眺めていたら、泣きたくなった。

 オレは慧と渚みたいに、堂々と好きだと言えない。
 ふたりなんかよりはるかに長い時間一緒にいるのに、果てしなく遠い。

「尚ちゃん」
 起こさないようにしていたくせに、呼んでみた。
 でも、全然起きそうにない。
 ごめん。ちょっとだけ許して欲しい。
 そっと顔を近づけて触れるだけのキスをしたら、尚ちゃんがぱちっと目を覚ました。

「あっ……ごめん」
 どうしていいか分からなくて固まっていたら、尚ちゃんはため息混じりに言った。
「なんだ。涼介は俺のことなんかどうでもいいのかと思ってた」
 答える暇もなく右腕を全力で引っ張られて、俺は思いっきり尚ちゃんの胸の上にダイブした。

「俺、結構分かりやすくしてたつもりなんだけど」
「何が……?」
 尚ちゃんは、はーっと長くため息をついた。

「俺、大抵のことはうまくできる自信があるけど、涼介だけはどうにもなんなくて。どうやったら好きって分かってもらえるのか、どうやってもうまくいかなかった。まあ、男だし幼なじみで距離感麻痺してるし、仕方ないかなとは思ってたけど」

 尚ちゃんは、ひじをついて上半身を起こした。
「ようやく俺のこと好きになってくれたの?」
「あ、え? うんと、ようやくじゃねーよ? 中学から」
「……ほんとバカだよね、涼介は」
 そう言って尚ちゃんは、俺の胸ぐらを掴んで引き寄せて、キスしてきた。
「ん……、な、おちゃん? どーいうこと?」
「ただ心配なだけでこんな底辺校に来るわけないでしょ」

 尚ちゃんがちょいちょいと手招きしたので、ベッドに上がったら、デコピンされた。
「涼介のしたいようにしていいよ」
「何が?」
 訳が分からず聞き返すと、尚ちゃんは長いため息をつきながら、トレーナーを脱ぎ始めた。
「やっぱり涼介は手に負えない。なんで分かんないんだろ」
 尚ちゃんの手が俺のパーカーのジッパーに触れて、慌てて止めた。

「あっ、えっ? いや、……えっ?」
「ちょっと、生娘じゃないんだから。服脱がされるくらいで驚くなよ」
「だ、だって。ちょっと待って、状況が分かんねーんだもん。尚ちゃんは俺のことが好きなの? そういう意味で?」
「さっきからずっとその説明をしてる」
「もうちょっと分かりやすく言ってよ。オレバカだから分かんねーんだもん」

 尚ちゃんは、おでこをこつんとくっつけて言った。
「好きだよ」
 そんな、さらっと言うんだ。面食らって、言葉を失ってしまった。

「涼介になら何されてもいいし、して欲しいなら何でもしてあげる。だから、涼介の好きにしていいよ」
「挿れんのどっちか決めていいってこと?」
「そう。それとも、したくはない?」
 尚ちゃんの不安げな目なんて、初めて見た。
「ん、する。したい。しよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

男の子たちの変態的な日常

M
BL
主人公の男の子が変態的な目に遭ったり、凌辱されたり、攻められたりするお話です。とにかくHな話が読みたい方向け。 ※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

手作りが食べられない男の子の話

こじらせた処女
BL
昔料理に媚薬を仕込まれ犯された経験から、コンビニ弁当などの封のしてあるご飯しか食べられなくなった高校生の話

処理中です...