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(スピンオフ)りょーすけとなおちゃん。
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そして現在。2年の冬休み、正月明け。
きょうは尚ちゃんの家に来た。親はハワイ旅行に行っていて、家には尚ちゃんしかいない。
「尚ちゃーん。台所にあったカステラ食っていい?」
「どうぞ」
1階へ下り、立派なキッチンのカウンターに置かれたカステラを切り分け、2階へ戻る。
すると、さっきまでうつらうつらしながら読書をしていたはずの尚ちゃんが、座椅子の上で寝ていた。
寝落ちか。まあ最近受験勉強を始めて、夜までやるから疲れてるみたいなこと言ってたしな。
ベッドに運んであげることにして、お姫様みたいに横抱きにして、運んだ。
起こさないようそっと下ろすと、尚ちゃんの顔が目の前にあった。
尚ちゃんは、オレのヒーローだ。
なんでもできて、頭が良くて喧嘩も強くて、すごいひと。それに、顔も整っている。
近い距離で眺めていたら、泣きたくなった。
オレは慧と渚みたいに、堂々と好きだと言えない。
ふたりなんかよりはるかに長い時間一緒にいるのに、果てしなく遠い。
「尚ちゃん」
起こさないようにしていたくせに、呼んでみた。
でも、全然起きそうにない。
ごめん。ちょっとだけ許して欲しい。
そっと顔を近づけて触れるだけのキスをしたら、尚ちゃんがぱちっと目を覚ました。
「あっ……ごめん」
どうしていいか分からなくて固まっていたら、尚ちゃんはため息混じりに言った。
「なんだ。涼介は俺のことなんかどうでもいいのかと思ってた」
答える暇もなく右腕を全力で引っ張られて、俺は思いっきり尚ちゃんの胸の上にダイブした。
「俺、結構分かりやすくしてたつもりなんだけど」
「何が……?」
尚ちゃんは、はーっと長くため息をついた。
「俺、大抵のことはうまくできる自信があるけど、涼介だけはどうにもなんなくて。どうやったら好きって分かってもらえるのか、どうやってもうまくいかなかった。まあ、男だし幼なじみで距離感麻痺してるし、仕方ないかなとは思ってたけど」
尚ちゃんは、ひじをついて上半身を起こした。
「ようやく俺のこと好きになってくれたの?」
「あ、え? うんと、ようやくじゃねーよ? 中学から」
「……ほんとバカだよね、涼介は」
そう言って尚ちゃんは、俺の胸ぐらを掴んで引き寄せて、キスしてきた。
「ん……、な、おちゃん? どーいうこと?」
「ただ心配なだけでこんな底辺校に来るわけないでしょ」
尚ちゃんがちょいちょいと手招きしたので、ベッドに上がったら、デコピンされた。
「涼介のしたいようにしていいよ」
「何が?」
訳が分からず聞き返すと、尚ちゃんは長いため息をつきながら、トレーナーを脱ぎ始めた。
「やっぱり涼介は手に負えない。なんで分かんないんだろ」
尚ちゃんの手が俺のパーカーのジッパーに触れて、慌てて止めた。
「あっ、えっ? いや、……えっ?」
「ちょっと、生娘じゃないんだから。服脱がされるくらいで驚くなよ」
「だ、だって。ちょっと待って、状況が分かんねーんだもん。尚ちゃんは俺のことが好きなの? そういう意味で?」
「さっきからずっとその説明をしてる」
「もうちょっと分かりやすく言ってよ。オレバカだから分かんねーんだもん」
尚ちゃんは、おでこをこつんとくっつけて言った。
「好きだよ」
そんな、さらっと言うんだ。面食らって、言葉を失ってしまった。
「涼介になら何されてもいいし、して欲しいなら何でもしてあげる。だから、涼介の好きにしていいよ」
「挿れんのどっちか決めていいってこと?」
「そう。それとも、したくはない?」
尚ちゃんの不安げな目なんて、初めて見た。
「ん、する。したい。しよ」
きょうは尚ちゃんの家に来た。親はハワイ旅行に行っていて、家には尚ちゃんしかいない。
「尚ちゃーん。台所にあったカステラ食っていい?」
「どうぞ」
1階へ下り、立派なキッチンのカウンターに置かれたカステラを切り分け、2階へ戻る。
すると、さっきまでうつらうつらしながら読書をしていたはずの尚ちゃんが、座椅子の上で寝ていた。
寝落ちか。まあ最近受験勉強を始めて、夜までやるから疲れてるみたいなこと言ってたしな。
ベッドに運んであげることにして、お姫様みたいに横抱きにして、運んだ。
起こさないようそっと下ろすと、尚ちゃんの顔が目の前にあった。
尚ちゃんは、オレのヒーローだ。
なんでもできて、頭が良くて喧嘩も強くて、すごいひと。それに、顔も整っている。
近い距離で眺めていたら、泣きたくなった。
オレは慧と渚みたいに、堂々と好きだと言えない。
ふたりなんかよりはるかに長い時間一緒にいるのに、果てしなく遠い。
「尚ちゃん」
起こさないようにしていたくせに、呼んでみた。
でも、全然起きそうにない。
ごめん。ちょっとだけ許して欲しい。
そっと顔を近づけて触れるだけのキスをしたら、尚ちゃんがぱちっと目を覚ました。
「あっ……ごめん」
どうしていいか分からなくて固まっていたら、尚ちゃんはため息混じりに言った。
「なんだ。涼介は俺のことなんかどうでもいいのかと思ってた」
答える暇もなく右腕を全力で引っ張られて、俺は思いっきり尚ちゃんの胸の上にダイブした。
「俺、結構分かりやすくしてたつもりなんだけど」
「何が……?」
尚ちゃんは、はーっと長くため息をついた。
「俺、大抵のことはうまくできる自信があるけど、涼介だけはどうにもなんなくて。どうやったら好きって分かってもらえるのか、どうやってもうまくいかなかった。まあ、男だし幼なじみで距離感麻痺してるし、仕方ないかなとは思ってたけど」
尚ちゃんは、ひじをついて上半身を起こした。
「ようやく俺のこと好きになってくれたの?」
「あ、え? うんと、ようやくじゃねーよ? 中学から」
「……ほんとバカだよね、涼介は」
そう言って尚ちゃんは、俺の胸ぐらを掴んで引き寄せて、キスしてきた。
「ん……、な、おちゃん? どーいうこと?」
「ただ心配なだけでこんな底辺校に来るわけないでしょ」
尚ちゃんがちょいちょいと手招きしたので、ベッドに上がったら、デコピンされた。
「涼介のしたいようにしていいよ」
「何が?」
訳が分からず聞き返すと、尚ちゃんは長いため息をつきながら、トレーナーを脱ぎ始めた。
「やっぱり涼介は手に負えない。なんで分かんないんだろ」
尚ちゃんの手が俺のパーカーのジッパーに触れて、慌てて止めた。
「あっ、えっ? いや、……えっ?」
「ちょっと、生娘じゃないんだから。服脱がされるくらいで驚くなよ」
「だ、だって。ちょっと待って、状況が分かんねーんだもん。尚ちゃんは俺のことが好きなの? そういう意味で?」
「さっきからずっとその説明をしてる」
「もうちょっと分かりやすく言ってよ。オレバカだから分かんねーんだもん」
尚ちゃんは、おでこをこつんとくっつけて言った。
「好きだよ」
そんな、さらっと言うんだ。面食らって、言葉を失ってしまった。
「涼介になら何されてもいいし、して欲しいなら何でもしてあげる。だから、涼介の好きにしていいよ」
「挿れんのどっちか決めていいってこと?」
「そう。それとも、したくはない?」
尚ちゃんの不安げな目なんて、初めて見た。
「ん、する。したい。しよ」
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