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2 底辺ホモ

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 吉野くんは何も言わない。
 仕方なく、というか、全部俺の責任なので、澤村くんに聞いた。
「……何すればいいんですか?」
「お前はそこで寝っ転がってろ。吉野は何でもいいからそいつをイかせろ」

 嫌だ。そんなものをこんなにたくさんのひとの前で見せるくらいなら、死んだほうがマシだ。
 無理は承知で澤村くんに目で訴えたけど、ただポケットから新しいたばこを取り出すだけで、何も言わない。

 すると、吉野くんが、そっとキスしてきた。
 びっくりして固まっていると、唇をくっつけたまま、片手で俺の頭を支えつつ、そっと体重をかけて、俺を寝転ばせた。
 そして、耳元でささやく。

「くわえるから。適当にイッたフリして」
「え……?」
「出すとこ見られるよりマシでしょ」

 そう言うなり、吉野くんは俺のベルトに手を掛けた。
 恥ずかしい。吉野くんは嫌じゃないの?
 混乱している間に、下着ごとズボンを下ろされて、太もとの半分くらいまでが晒されてしまった。

「気持ちわりー!」
「おえー」

 泣きたくて、両腕で目と口元を覆った。
 するとすぐに、吉野くんは俺のものをくわえた。
「ぅゎ……っ」
 何の心の準備もなしにあったかいものに包まれて、思わず変な声が漏れる。

「え!? フェラ!?」
「あはははやっぱ吉野ガチじゃん!」
「オラ、倉持喘げよ」

 不愉快な気持ちでいるはずの吉野くんのためにも、なるべく早くイッたフリをしないと。
 顔は見せないように、息を詰めて、じっとする。
 フリ、フリ……そうしなきゃいけないのに、初めての感触に本当に気持ち良くなってきてしまって、少しずつ息が上がってきた。
 口の中のものも、固くなってきているのが分かる。

「吉野くん……だめ、ん……」
 拒否してみるけど、やめてくれない。
 早く終わらないと、いつまでも苦しい思いをさせてしまう。
 でも体は反応してしまっていて、せめて顔を見られないように、腕で隠すので精一杯。

「よ、……よしのくん、離して、……はなして、だめ」
 完全に固くなってしまった。
 これじゃあ、イッたふりをしても、ガチガチのままでバレてしまう。
 吉野くんに苦しい思いをさせるくらいなら、別に見られてもいいから、手でしてもらった方がいい。

「よしのくん、ぁ……っ、口、むり……離して、ダメ、だめっ、ん……」
 体をよじってみたけど、吉野くんは頑なだ。

「きっもちわりー」
「もっとアンアン言えよ!」

 好き勝手言う外野の声もだんだん遠くなってきて、ダメだという気持ちと、体の反応が、どんどんちぐはぐになってくる。
 吉野くんは、ペニスの先端に口をつけたまま、根本をしごきはじめた――彼も、フリは無理だとあきらめたのだと思う。

「ぁ、ん……よしのくん、ごめん、ごめ……、んっ、ん……っ」
 泣きながら謝る。
 謝りながらも、熱が真ん中に集まってくる感じがして、本当に限界。

「あっ、やだ、……もぉ、ん……っ、離して、吉野くん、……ぁあ、くち、はなしてっ」
「よしのーぜってー離すなよー」
 桜井くんが、気の抜けた声で命令する。
 しごく手が、スピードを上げる。

「はあ、ぁ……、だめ、あっ、出ちゃう、や……、ぁあッ、ん……っんん………ぁあっ……ッ!……!」

 体がビクビクと小さく揺れて、口の中に、たくさん出してしまった。

「うわーマジでイッたー!」
「ガチホモ変態おめでとー!」

 全身の力が抜けて、涙がぼろぼろとこぼれる。
 吉野くんはすっと体を起こして、俺のズボンを上げてくれた。
 おそるおそる見る。吉野くん、飲んじゃったんだ……。

 澤村くんは、やる気なさげに言った。
「じゃ、全員700円。明日もやるから他の奴も連れて来いよ」
 明日も……。
 もうダメだ、これ以上吉野くんに迷惑かけるわけにはいかない。

「あの、澤村くん。お金持ってきます。親の財布見てくるんで。だからもうこういうのは許してください」
「あ? 無理」
 即答だった。
「お前がちょろっと小銭ネコババしてくるより、こっちの方が儲かるもん」

 今日は10人以上いた。少なくとも7,000円。
 これはもう、ずっとやらされるかも知れない。

 呆然としながらソファに座っていると、松田くんが、出口に並ぶひとたちのスマホをチェックしながら言った。
「もっと宣伝しないとじゃない?」
 澤村くんはしばらく考えた後、俺たちに向かって低い声で言った。

「お前ら、先公がいる時以外、ずっと手繋いでろ」
「えっ?」
「倉持、お前吉野にばっか色々させて、ノーリスクすぎんだろ。教室ではお前からキスなり抱きつくなりなんなりしろ」

 見せ物って……もうずっと? 無理だ。耐えられない。
 しかし、そんな俺の考えを見透かすように、松田くんが言った。
「どっちかが学校来なくなったら、回すよ」
「回す……って?」

「溜まってそうな奴集めて、全員お相手。倉持、休んだら吉野がそうなるんだから、絶対来てね。吉野は休みたければどうぞ。元はと言えば倉持が悪いからね。ほんとは、回す方が楽に金取れるし」

 絶望した。
 来たらこれをさせられる。
 でも休んだら、吉野くんが酷い目に遭う。

 吉野くんの顔をそっと見ると、こんなことを言われてもなお、無表情で黙ったままだった。
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