愛とはなんと尊いことか!!

兼定泉

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出会い、そして暴走 ※

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 華やかな装飾品に囲まれた広いホールは、今日の宴に招かれた客人たちで大いに賑わっていた。
 美しい貴婦人たちのめかし込んだ姿は、紳士たちの目を楽しませている。
 まだ始まったばかりのパーティでは、おしゃべりのタネがあふれかっている。
 しかし、今日に限ってはもっぱらこの話題が最初にあがる。

「ねえ、聞きまして?」
「ええ。あそこにいるお二人でしょう?」

 扇子で口元を隠した貴婦人方は、好奇心を隠さずにちらちらと視線を向けていた。

「あの暁様が直々に招待したっていう」
「ええ、そうよ。今までどんなご令嬢とだって噂ひとつたたなかった、あの方が。遠乗りの先で出会ってお声をかけたそうよ」
「まあ、でもそれにしたって……」

 そこから先を言うのははばかられた。しかし、この場にいる全員が同じ気持ちだろう。
 第一等の位を持つ貴族が主宰する夏の宴にはあまりにそぐわない二人組がそこにはいたからだ。

 粗末で時代遅れなドレスをまとった小柄な少女。顔立ちこそかわいらしいが、垢抜けないおどおどとしたふるまいが田舎娘であることをなによりも証明していた。
 そしてパートナーであろうほうは喪服じみた真っ黒な出立で、なんと成人男性ではなかった。  
 艶のある黒髪は首を隠せる程度の長さしかなく、男のように短い。しかし、顔の作りはどうみても女性だ。しかも、まだ幼さもある。こちらは周囲を気にした風もなく立っているが、それが逆に可愛げがない。仏頂面といっていい。おそらくは少女の従者だろう。

「暁様ったら、ああいう素朴な方がご趣味なのかしら」
「これじゃどのご令嬢にもお声がかからないわけね」
「ひっ!」

 ビクッと肩を震わせた友人に驚き振り向くと、まるで聞こえているぞと言いたげに黒服のほうが視線を向けていた。 
 なまじ整った顔立ちであるから、その鋭さもひとしおだ。
 
「も、もうやめましょう。そうだ、あのお芝居、みにいきまして?」
「え、ええ、そうね、楽しいお話をしましょう」

 ずいぶん生意気ね、という文句すらでず、温室育ちの貴婦人方は、それ以降彼女たちの話をやめることとした。
 しかし完全に忘れることなどできず、時折視線を投げることだけはやめられなかった。 







 愛する、という感情はきれいなばかりではない。
 この世界において、そう思える相手がいること自体はひどく幸福なことだろう。
 だが、それがすなわち望むべき世界へ直結するかというとそうではない。
 少なくとも、わたしにとっては。

 わたしというのは体も中身もめんどうくさい、そう自分自身を評価している。
 だから、恋愛という面において、素直にいった試しがない。

「ねえ、難しい顔してどうしたの」
「別に何もない」
「うそ! まさきがいっつも無愛想なのは知ってるけど、今日はもっとひどいもん!」

 幼なじみでもある彼女は、丸いほほをよりぷっくりと膨らませる。情けないが、わたしにとってはそれがたまらなく愛しい。
 
「そう思うんなら、自分のほうこそどうなんだよ、莉愛りあ。わたしにつっかかるヒマがあれば、ほかにやることはあるんじゃないのか」

 ああ、それだというのにわたしは彼女に素直に愛を示す手段がない。
 憎まれ口しか出てこないこの口がうらめしい。
 彼女はぐっとかれんな唇をかみしめ、悲しげにうつむく。だが、彼女にそんな顔をさせている本当の原因は自分ではない。
 そいつはシャンデリアの輝きの真下に立っていた。
 多くの人に囲まれながらも頭ひとつ抜ける長身で、髪はブルネット、瞳は星のように輝き、薄い唇はほのかに笑みをふくんでいる。
 この豪勢なパーティホールのヒーローにふさわしい、精悍で美しい青年。

「行ってくればいいじゃないか。どうせ田舎者と笑われるのがオチだけどね」
「どうしてそんなひどいことを言うの?」

 大きな瞳がまっすぐにわたしを捕らえる。だが、ここで罪悪感をいだいておれるわけにはいかない。

「この会場、よく見たのか。まさかあの王子様に釘つけで気づかなかった、なんて言うなよ。この場でわたしたちみたいな粗末な格好した連中が他にいる?」

 大理石の床に壁には絵画やら壺やらが煩わしくない程度にかざられ、天井にはクリスタルのシャンデリア。
 そこに集う人々の姿といったら! どれだけのビーズや刺繍糸が使われているのかわからない、光を反射するドレス。波打つドレープ。紳士達の着込む燕尾服の生地の上等さ。
 きっと莉愛たちの生活の半年以上まかなえるほどの代物だろう。

「わかってるから動けないんだろう。あんなにはしゃいでたくせに」
「……でも、あかつき様は誰でも参加していいとおっしゃったわ」
「本当に参加するなんて思ってなかったろうさ。ただの辺境の村の長の娘なんか」

 すべてはあの若君のお遊びだ。
 王の忠実なる騎士、と呼ばれる第一等の位を持つ大貴族、清瀧せいりゅう家の次男坊。
 寄宿学校の夏休み、別邸へと避暑におとずれ、さらに馬で遠乗りにでたあげく出会した一人の乙女。それがこの辺りのまとめ役の娘としり、別邸で行われるパーティに招待した。

 好奇心旺盛で田舎の単調な暮らしに飽きていた莉愛にとっては、物語のような展開だっただろう。
 だが、物語のようにうまくいくはずもない。
 社交界さえないような田舎で用意できたのは、一年前、十五になったお祝いにつくってもらった型遅れのドレス。わたしは葬式にも使える黒い礼服だ。あまりにも場にそぐわない。

 あんなに喜び勇んで迎えの馬車に乗ってきたというのに、屋敷の門の大きさにおびえ、玄関ホールの豪奢さに気後れし、結局このパーティホールでは入り口に一番近い隅っこでじっと動けずにいる。
 彼女の考えなしのところと、土壇場で怖気づく臆病さはかわいげがあって嫌いではない。いつもだったら適当に会話につきあいつつ、彼女の背をおしたことだろう。だが、今回は彼女の目的がまったく気に入らなかった。

「恥をかくのは君だ。笑い物にならないうちに帰ろう」
「でも……」

 煮え切らないその態度に舌打ちをしたくなる。
 認めるのも嫌だが、莉愛は突然目の前に現れた王子様に惹かれているのだ。恥をかいてもこの場にいて、チャンスを掴みたい、と思うほどに。

 しかし相手は大貴族。ともなれば、何か起きるといったってそれは一夜の夢。男にとっては都合がよいが、女にとってはリスクが大きすぎる。莉愛は同い年だというのにどうも世間に、そしてそういった方面にうとい。
 それに。「あのみすぼらしい連中は何?」という不審な眼差しの合間に、こちらを値踏みするような視線もわたしは感じとっていた。
 
 身内贔屓などではなく、莉愛はこんな辺境では珍しいほどに愛らしい顔立ちをしている。
 大きな栗色の瞳、けぶるまつげ、肌こそ健康的に焼けているが、はりがあってぴかぴかだ。
 いつもはひまわりのような笑顔だが、子犬のようにおびえる今の姿も庇護欲をそそるというもの。
 この場にそぐわない真っ黒な服を着た、ひどく無愛想なわたしが睨みをきかせていなければあっという間に食べられてしまう。

 それからもう一つ。懸念があった。
 これ以上この場にいるべきではない。
 だから、わたしは強硬手段にでることにした。

「もういい。それなら君だけ残っていればいい」
「そんな、柾」
「莉愛。わたしは最初から来たくなかったんだ。それを引っ張ってきたのは君だ。でももう義理は果たしたはずだ。わたしは帰る」

 わたしは一口も飲まないまま手に持っていた華奢なグラスをそのままに背を向けた。

「まってよ、柾!」
 
 ああ、待つさ。玄関を出てからね。どうせ一人で残る勇気もでず、すぐに追いかけてくるに決まっている。
 わたしが出口に向かって歩き出そうとした時だ。

「待ってくれ」

 グラスを握ったままだったわたしの手首を、力強い手ががっしりと捕まえた。

「まだ挨拶もできていなかったろう。せっかく来てくれたのに」

 さきほどまで中心に立っていた王子様が眼前へ迫っていた。これは比喩じゃない、本当に顔をスレスレまで近づけていたのだ。
 おかげで琥珀色の瞳がよく見える。見たくなかったが。
 
「まだ食事もでていない。発泡性の酒は嫌いだったか? いや、酒がだめなのか。すぐに別のを用意しよう、何がいい」
「お。お構いなく。もう失礼するところでした」

 失礼でない程度に首を後ろに引きつつ、わたしは答えた。
 相手はなんと言っても第一等のお貴族様だ。わたしの首を跳ねることなど簡単にできる。

「なぜだ。わたしは君を招待した。君はここに来た。わたしには君をもてなす義務がある」

 必死に、そう、あまりに必死な様子に、今まで彼を取り巻いていた連中があからさまに困惑している。
 わたしはそれが心底いやになる。

「貴方様のお馬にお水を差し上げた件なら、もう十分すぎるほどお礼をいただきました。主にかわり御礼申し上げます。身に余る光栄にこれ以上は、もう」

 わたしはちら、と莉愛を横目で見た。しかし、若き貴公子は逆にぐっとわたしの腰を抱き寄せてきた。

「どうか。わたしと会話を楽しんでほしいと思っていたんだ。早々に帰られては困る」

 眼差しは真摯そのものだが、その手が意味するものは何か。
 それを考えるだけで頭が痛い。
 実のところ、わたしが最も恐れていたのがこの事態だった。

「ま、柾」

 憧れの君を前にした緊張、相手にされていない現状、自分ではない相手に触れている事実。
 混乱した莉愛がわたしの服の裾を思いの外強く引っ張ったのは、まあ、許す。
 しかし、そのおかげで。
 自分の持っていたグラスからパシャっと頭からかぶることになったワインは、ひどく目にしみた。
 ああ、さっさとの飲み干すか使用人のだれかに押し付けるべきであった。

「ま、柾! ごめんなさい!」
「これはいけない。すぐに着替えを。さあ、早く、風邪をひいてしまう」
「いえ、けっこうです、帰る道中かわきます。莉愛、帰ろう」
「馬車で一時間もかかるところにお住まいだろう、馬鹿を言ってはいけない。さあ、こっちへ! 彼女には別の者をつけさせる、安心しなさい」

 紳士的に、かつ強引に。わたしの手をひく暁に、わたしは気が遠くなりそうだった。いっそ気絶したい。
 、莉愛が大泣きして癇癪を起こすことになりそうだ。

「ちょうど母のものがある、アンティークといえば聞こえはいいが古いものですまない。だが十分着こなせるはずだ。きっと似合う」
「あの」
「先にシャワーを。ああ、その、もちろん、使用人をよぶ。わたしでは、その、いきなりアレだろうから」
「そうではなくて」

 広間を出て屋敷の奥へと進む暁だったが、ホスト不在であのパーティはどうなるのか。莉愛はどうなっているのか。
 そしてわたしをどうしようというのか。
 やはり最初から来るのではなかった。

 なぜか恥ずかしがっている暁の背に蹴りをくれてやりたくなったが、わたしはもうある程度覚悟を決めていた。
 もういい、めんどうだ。
 どうせ莉愛が大泣きするんだ、だからわたしはわたしの恥をたえることにしよう。そのほうがきっと早い。

「暁様」

 わたしは初めて彼の名前を呼んだ。
 きっと王都の街中ならば不敬にも程があるのだろうが、ここは目をつぶってもらおう。

「わ、わたしの名前を知ってくれていたのか!?」

 急に立ち止まり、頬を染める暁に苛立たしさが募る。
 謙遜するのもしゃくなのでわたしははっきり認めているが、わたしの顔はそれなりに整っている。
 だが、わたしに言いよる男は村にいない。その理由を今ここで見せつける必要があった。
 今後のためにも、莉愛の淡い恋心を
叩き潰すためにも。

「もちろんです。貴方さまはわたしのような庶民にも、きちんと名を名乗ってくださいました。ですから、わたしは貴方さまに誠意を示そうと思います。お望みの通り、お話をしましょう」

 いっしょに浴室へ来てくださいませんか。

 そう言えば、暁は輝く双眸から何かが消え、かわりに、炎が宿ったように見えた。





「暁様。わたしは本来、王族に近い方と、それもリュウを冠する方と関わり合いになることなど許されぬ身なのです」

 わたしの寝床以上の広さの浴室に案内されたわたしはそう切り出した。
 わたしの意を汲んで、この場には二人きりだ。

 この話をするときは、わたしはきっとひどい顔をしている。
 冷たくて、無慈悲で、感情がない。
 そうでなくてはとても口にできない。

「わたしは王都でうまれました。しかし赤子のころより、莉愛の父が村長をつとめる、小さな村に身を置いています」
「……理由を聞いても?」

 本来ならば直接言葉を交わすことさえ許されない間柄だ。この方の度量には恐れ入る。当主不在の夏の宴だというのに、あそこまで盛況ぶりなのだから、相当期待されているのだろう。

「この身はあまりに醜い。不吉なのです。ご覧になれば、口を聞いていただくことも叶わないでしょう」
「醜いとわたしが思うことはない。断言できる。だが、君が納得しないのであれば、どうかそれを教えてほしい」

 わたしは浅くなる呼吸に耐えながら覚悟を決めた。
 おもむろに上着を脱ぎ、シャツのボタンを外す。
 目の前の相手が息を飲む気配がした。
 胸を包む下着を少しだけずらし、ソレをあらわにする。
 わたしは目を瞑ったまま言った。
 そこにある気味のわるいモノに、彼がどんな顔をするかみたくなかったからだ。

「どうです。わたしは呪われた、蛟の女です」

 自嘲気味に言えば、やはり暁は言葉をなくしていた。無理もない。わたしは、この体が原因で母親から捨てられたのだ。

 左胸に噛み付くように口を開けた蛟。その長い体はわたしの腹をとおり、ズボンの中の腰にまとわりつき、太ももまでからみついていた。
 赤紫色のアザが、わたしの身体中には広がっていた。

「龍を尊ぶ我が国において、蛟は似て非なるもの。神代の時代、国起こしの中争い呪いを残して死に絶えた神。リュウの呼び名をもつ貴方さまにとって、これほど卑しいモノはないでしょう」

 生まれついてのこのアザは呪われた印として、本来赤子なら誰でも教会で祝福されるはずなのに、それを拒まれた。

 呪い子として扱われたのだ。

 母親でさえ拒絶したわたしを拾ってくれた村長、つまり莉愛の父親には頭が上がらない。
 もちろん、わたしを軽蔑せずきょうだいのように接してくれている莉愛にも。
 しかし、辺境といえど蛟の呪いの話はきちんと伝わっている。呪いを身に宿した自分は、村でも遠巻きにされている。
 この体で誰かと結ばれるなんて、ありえない。
 だから、せめて、莉愛が幸せでいられるようにと努めてきた。
 そのためだけに生きようとしてきた。
 それだけだ。

「……もういいでしょう? わたしは帰らせていただきます」

 これで話は終わりだ。
 温室育ちのおぼっちゃまには、あまりに気味の悪い姿であっただろう。
 だが、これでもう二度とわたしに手を伸ばそうとはしないはず。
 そして当然莉愛にも。

 わたしは衣服を整えようと暁に背を向ける。これ以上晒す必要はないはずだ。
 しかし、その前にわたしの両肩には手がおかれ、眼前に暁の秀麗な顔が、いや、秀麗だったはずの顔があった。

「お、お前というのは……どこまで愚かなのか!!」

 血走った目、荒い呼吸、そして何より、高い鼻の片方の穴からは真っ赤な血が垂れていた。

「こんなにお前に下心をむけている相手に対して、脱いで見せるヤツがあるか!」
「は?」

 わたしは上半身をさらしたままままきょとんとしてしまい、何も言えなかった。いや、もう片方からも垂れてきた鼻血が彼の上等な服を汚さないがか気になっていたのだ。
 だから、彼の手が肩から少しずつ滑っているのに何もできなかった。その手がふらちにもわたしのズレた下着をぐっと引き下ろしたことにも。

「こ、こんなふんわりした乳房に、ぷっくりさせて、なんだ、これは! ふわふわじゃないか! 先っぽもい、色も、こんな、きれいで、ぷくっとしていて」
「ひっ」
「つまめば声まであげるのか!? そんなかわいい声を!? ふざけるなよ! ああ、なんというやわらかさだ、ここか、ここから感じているのか」
「あの、ちょっと、やっ、あっ」
「ああ、舐めても構わないな!? いや、あとにしよう、楽しみはとっておくほうだ。腰! ウエストの曲線から尻がなぜこんなにかわいらしいのだ、着痩せするほうだな!? 尻が丸い、やわい!   
この怪しげな艶かしいアザはどこまで続いているんだ!!」

 暁は獣同然の本能で、柾のズボンのベルトを引きちぎった。

「は? えっ!?」

 抵抗する間も無くすべてを引き摺り下ろされたわたしは、間抜けにもようやくこの異常事態に気づく。
 シャツは腕に引っかかるのみとなり、下履はズボンとともに足首にからまっていた。

「ああ、下生えがかわいいなんて思ったのは生まれて初めてだ、どういうことなんだ! こ、ここ、なんて、うそだろう、なんてハレンチな蛟だ、尾がこの太腿の間まで入り込んで! な、中はどうなっている」
「い、いやーーーーーッ!!!」

 床に押し倒されたわたしは生まれた時以来であろう絶叫をあげた。それも、暴漢に襲われる婦女子のような。
 あながち間違ってはいないのだが、問題は相手が暁であるということだ。

「どうなさいましたか!?」

 さすがに一流の家に仕える使用人は仕事が早い。
 悲鳴からいくらもたたずに、浴室の扉がノックされる。

「開けろ! はやく!」

 本来命令などできるはずもないのに、わたしは必死で声を上げた。それなのに暁は鼻息を荒くしてわたしの太腿に両手をかけた。

「ああ、わかった、ここをひらけばいいんだな、ゆっくりやるから安心してくれ!」
「扉のほうだばかーーーーー!! 誰かーーーーー!! あっ、さわるな、あっ、あっ、ひ、助けてーーーー!!!」

 尋常でないわたしの騒ぎに、無事扉は開かれた。
 なだれこんできた屈強そうな暁の側付きたちは、険しい顔つきを一瞬でひきつらせた。
 それはそうだろう、品行方正、清廉潔白、文武両道で慕われている暁が、あの暁が。
 酒に濡れてしまい気遣うはずの女を裸にひんむき、むりやりその肌をむさぼろうと鼻血をだしているのだから。
 今気づいた。こいつ、なんかこすりつけてきてる。ほんとうに意味がわからない。
 助けて欲しい。
 わたしは恥も外聞も、それこそ大一等の大貴族に対する礼儀もなく、喚き散らした。

「この変態を早くどけてくれーーーーーッ!!!」



 ほんとうに情けないことに、これがわたしと、莉愛と、どうしようもない大貴族様との出会いだった。

 そして、この騒ぎはもうしばらく他の人間をも巻き込んで続くことになるとは、まだこのときのわたしには知る由もなかった。

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