百色学園高等部

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夏イベ

回顧録Rucas視点3

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それでも
次の日は普通に授業があって。

嫌々ながらも、
一緒にあいつと学校に行く。
でも、あいつとなんかと一緒にいたくないから、少し離れて歩くけど。



昨日、俺があいつに向かって怒鳴ったせいか、
あいつはビクビクして、
俺に機嫌を伺うように顔をチラチラ見るんだが、
近づいてこない


そのくせ、

いつまでたってもこいつは一人で自分の教室に行けないから、俺が教室まで送り迎えしてる。早く覚えろよ。



午前中まではそう思ってた俺だが、







放課後になって、
俺は気が変わることになった。



俺があいつを、あいつのクラスまで迎えに行った時


その教室はざわつき、少し人だかりができていた。



そこの中心には、あいつがいて。










あいつが泣いているのを見たことがない俺は、
かなりムカついた


俺がちょっと強く言っても、
なんとも言わないで我慢してるあいつが、


今は、
声も出さずに泣いている。


涙が溢れてきてしまって止められない、
とでもいうように、
ハラハラ落ちる涙。



「俺の弟になにしてんだ!」


気がついたら、
鞄を振り回して周囲の人を殴ってた。


俺が年上だと知った奴らは、
すぐに逃げていき、俺らは二人きりになった。



あいつは、びっくりして、
逆に涙か引っ込んだようだった。






「お前、悔しかったら、反論してもいいんだよ」
気まずくなって、なげやりにそう言ったんだが、





それでも、
赤くなった目で俺を見つめて、口をポカンと開けて、何も言わない。


無言の時間と、

互いに見つめあっている、

この状況が
なんともいたたまれなくなって、





「よく我慢したな…………偉いよ」

軽くハグして背中をなでてやったら、



その途端、

「え、え……………どうしたんだよ…???」


あいつが、
嗚咽をこぼして、ポロポロ涙を流しはじめた。




あまりにも急すぎて、
予想していなかったことでもあり、慌てた。


「も……どうしたんだよ……?」

けれども、

しゃっくりが止まらなくてなかなか声にならないようで、


途切れ途切れに話すあいつ。




「僕、フランス語、ヒック……下手…たま…に、日本語……ヒック……と、英語……が……間違え……誰も、……理解……して、くれない……ヒッ…………ック……」


確かに、
あいつの話すフランス語はかなり間違ってる部分がある。
英語読みをしたり、アクセントが違ったり。


両親が英語も日本語もたまに話すから、
俺は理解できなくもないけど、

急に違う言語で話されると一瞬何を言ってるのかわからなくて悩むから、

正直いい加減にしろって思う。





けれど、


「わか……って、くれるの、……リュカ……だけ……」





その言葉を聞いて、

ハッとした。









その時やっと俺は、
あいつが、あいつなりに頑張ってたことに気づいた。







そして、
自分が自己中心的になってた事にも。


そっか。


こいつはこいつで、苦しんでたんだ。
急に日本の学校に入れられて、かとおもったら、フランスの学校に入れられて。


言葉がなかなか伝わらないなか、
住み慣れた土地を離れてはじめてのフランスに来て
知らない人達に囲まれて。

そんな環境のなか、1人で頑張ってたんだ。



なんとか学校に行けるように、お母さんに勉強を教えて貰ってた気がする。
正しいフランス語を覚えられるように、お父さんに絵本を読んで貰ってた気がする。


別に、
あいつが俺のお母さんとお父さんを一人占めしてた訳じゃなかったんだ。



それなのに、
あいつの言葉をわかってあげられる俺は、
今までずっと冷たく接してしまった。






あいつの言葉をわかってあげられるのは、俺だけだったのに。



猛烈に反省した俺は、


「俺が、教えてあげる。フランス語も、勉強も。困ったときは、俺に言えよ。絶対助けるから」


そういうと、
あいつは安心したように、

潤んだ目で


「ありがとう」



そして
ちょっと
はずかしそうに、目をそらす。


でも、つかんだ俺の袖は、

ギュッと掴んで放そうとしない。


あの後
お母さんが校門まで迎えに来たが、
あいつはずっと俺の後ろに隠れて、
抱きついて離れなかった。



まるで、
頼れるのは俺だけだとでも言うように。



ぐっと、込み上げてくる、ナニかがあった。






ーーーーーーーーーーーーー





「いやぁ~あの時のユイリーの顔といったら!可愛いっていう言葉だけじゃ足りないね!」





それからというもの、俺はユイリーを溺愛するようになった。


なんでも教えてあげた。
間違ったフランス語も訂正してあげた。

新しい発見、という顔のゆいりーも可愛いかった。



ゆいりーに教えるために英語も頑張って勉強した。
スペイン語もドイツ語も、ゆいりーが海外へ行ったときに俺が通訳なれるように勉強したら、


「リュカ、すごいね!」


って褒められる。


素直に感心するゆいりーの顔も可愛い。


最近
クラスメイトには、

「お前のいとこのかわいさは
もう十分わかったから……」

「つーか、お前いつからそんな性格になったんだよー」

「…………ブラコン」

って言われるんだけど、




まだ、語り足りないね!





「つーかさ、お前、あのこの前になると口調が変わりすぎなんだよ!」

「性格も結構変わるよな~」

「普段はつんけんしてるのにな」


そんなこと、あるかも。


だが、


「いや、仕方ないだろ~?俺の愛しのユイリーが、乱暴な口調はダメ!!って怒ってくるんだからさぁ~!」


そんな可愛いこと言われちゃったら、なおすしかないよな??




つい荒っぽい言葉使うと、




「リュカ!!!( ・`д・´)」




って感じに顔が歪むのもちょっと可愛くって 

たまに使っちゃうんだけどねぇ~

「本性知ったら幻滅されるぞ~」

「間違いない」

「よく今までバレなかったよな~」


「こっそり教えたら、どんな反応するんだろうね」

「あ、それいいかも!」


って、盛り上がってる所悪いけど

「それは困るなぁ……もしキミ達がばらしたら、●しちゃうよ~!!!」


これ、本気だからね??





「……コワ」

「そういう所が腹黒って言われるんだよ…………」

「二重人格すぎる………………」



友人達がごちゃごちゃ何か言ってるが、
気にしない~






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