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夏イベ
回顧録 Rucas 視点2
しおりを挟むとうとう、あいつが学校に行く日がきた。
理由としては、
さすがにいつまでも学校に行かない訳には行かなくなったから。
まぁ、
お母さんも仕事をいつまでも休んでられないからっていうのもあるのだけど。
むしろ、あいつのために今まで休んでたのかって思うと、むしゃくしゃする。
俺のためにだったらきっと何日も休んでくれないよ!
「リュカ、ユイリが困ってたら、助けてあげてね。お兄ちゃんだから」
校門でお母さんと別れたとき、そう言われた。
(フランスの小学校は、親が校門まで子供を送り迎えする)
何で俺が。
そう思ったけど、
反論してもどうせ怒られるだけだから、
「わかってる。最初に教室に連れていけばいいんでしょ」
周囲をキョロキョロしているこいつの手をひいて、そのまま早足でこいつのクラスに行く。
くそ、
何でこんなに歩くのが遅いんだ。
こんな姿、クラスの皆に見られたらなんて言われるか……
だけど、こいつが
つまづきそうになったから、
仕方ない、
ゆっくり歩くことにした。
けれど、
教室まで行くのに
「リュカ、そいつリュカのガールフレンドか~??」
ってからかわれてしまった。
こいつも、俺の後ろに顔を隠しているのが悪い。だからそんな勘違いされるんだ。
「そんなんじゃねーよ!!!弟だ!!!」
って反論しても、
「あれ、お前兄弟いないって言ってなかったか?」
「嘘つきだ~」
「嘘つきは泥棒の始まりなんだぞー」
とまで言われる始末。
不意に、
「もう、ひとり…でクラ……ス??行くよ……」
っていう小さい声が隣で聞こえた。
驚いてそっちを見ると、こいつは足元を見てもじもじしていた。
俺の中のこいつの手が、きゅって縮こまっているのがわかる。
あーーーー!!!
もう!!!!
なんだよ、せっかくこっちが教室まで送ってやるって言ってんのに。
こんなビクビクしてるから、
こういうやつがつけあがるんだよ!!
だいたい、お母さんに教室まで連れていくっていう約束をしちゃったから、それを破るわけにはいかね~だろ。
だいたい、
もうクラスの皆に見られちゃったし……
「自分の教室わかんねーだろ」
小さくボソッって言って、
無言で無理やり連れていった。
ま、こいつのクラスにつくまでに、同じようにからかわれたけど、
「うるせー!!!」
って返しといた。
あいつが来てから、
何もかもが上手くいかなくなった。
得意なサッカーの授業はミスするし、
宿題は増えるし、
喧嘩して殴り返したら殴ったやつと一緒だって言われるし、
でも、今日は、テストで100点をとった。
早くお母さんに見せたい。
なんて言われるかな?
今夜の夕食はあいつの好きな食べ物じゃなくて、俺の好きなものにしてもらおう!!
なにがいいかな?
チーズはカマンベールの中がトロってしたやつがいいな。
下校時間
俺がウキウキしながら校門まで行くと、
母がいた。
「お母さん、あのね!」
急いで走っていくと、
そこには、
そいつもいた。
ついでにあいつの担任の先生もいたけど。
「お母さん、あの……」
話しかけようとしたけど、
「後にしなさい」
そう言われてしまった。
お母さんが、そいつと先生と一緒に話している。
我慢して待った。
遅い。
だんだんイライラしてくる。
やっとお母さんが先生とのお話が終わったみたいで、
「帰るわよ」
って言われたから、
「あのね、今日ね!!!」
って話しかけたら、
「何で昼休みユイリをひとりにしたの!?」
って怖い声で怒られた。
「え????」
って戸惑っていると、
「今日ね、お昼休みユイリお昼食べてなかったんだって。今日はユイリのはじめての学校に行く日だって言ったでしょう?何で一緒にいなかったの!!!」
詳しく
聞いてみると、
こいつは、ひるやすみの制度がわからなかったらしい。
フランスでは、昼休みは給食はない。
お弁当を持っていくか、学食で食べるかのどっちかだ。
さらに、その時間はクラスは閉鎖される。
生徒の俺たちは、校庭に行って食事をとったり外で遊んだりする。
いや、むしろ俺だって
日本の学校の制度なんか知らないんだけど。
つーか、こいつの周りの人が教えればよくないか!?
だいたいクラス違うし。
何で俺がそこまでしなきゃならないんだよ?
夕食の時間までお母さんの小言は続いた。
結局、夕食はあいつの好きなブイヨンっていうスープがでた。
お昼食べれなかったからって、
こいつの皿にいっぱい持ってある。
何でそこまで俺が責められるんだろう?
あまりにも理不尽すぎる。
お母さんとお父さん、
あいつのことが好きみたいだ。
むしろ俺の事なんか嫌いになっちゃったのかな。
お父さんにも怒られた。
「お兄さんだから、気遣ってあげてね。」
だって。
それを聞いて、あいつが、
「お兄ちゃん……」
って呟くから、
さらにむしゃくしゃした。
「俺はお前のお兄ちゃんじゃねぇ!!!一緒に暮らしてるだけだろ!だいたいお前気持ち悪いんだよ、何をしても笑いもしないし、泣きもしない。そのくせ、そうやって無駄に俺のお母さんに抱きつくんだ!」
それを聞いて、お母さんは、
「なんて事を!!唯利君はもう、家族に会えないのよ!!」
って言って、さらに怒った。
そうは言われても、
一度自分の気持ちを出したら止まらなかった。
「お母さんは、俺のお母さんでしょ!」
俺のお母さんは、あいつのお母さんじゃない。
それなのに。
「なんで俺のお母さんとお父さんなのに、あいつがとっちゃうの?」
なんで、俺より、あいつといっぱいしゃべるの?
なんであいつの方が、褒められるの?
お母さんもお父さんも、俺よりこいつのことが好きなんでしょ?
いつも、あいつの事ばっかり。
あいつの事なんか、どうでもいいよ。
何で????
俺のお母さんとお父さんなのに!
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