百色学園高等部

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家族旅行

ある日のないしょ話 リュカ視点

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リュカ視点


「嘘だ!」

大きな声で叫んでから、はっと気づく


唯利の病気が治らないと聞いて、つい大きな声をだしてしまった。


横を見ると、すでに母さんはすすり泣いていた。



昨日、両親が日本にきて、合流した。



今日はゆいりーと一緒に家族全員で病院へ行ってきた。

俺は、ずっとゆいりーの近くにいて、
ゆいりーが検査の後、栄養剤の点滴してるときもずっと一緒にいた。


ほとんど1日がかりで、検査の種類も多いし、結果がでるのも遅いし、妙だとは思ってはいたが。




夜中、唯利が寝静まったころに、


両親に静かに起こされた。


内容は、
唯利が病気にかかっていること。
余命はあと数年もないということだった。


治る病気だと思ってたのに、
余命が数年と聞いても、ピンとこない。



今日までのゆいりーを振り返る。

確かに、
貧血らしい症状として、

ふらふら歩いてたり、
顔色が青かった時があった。

風邪なのか、心配してたけど……


そういえば、
抱き心地から少し痩せたように感じたし、
ゆいりーが頑張って筋トレしてつけた筋肉も、少し減ってるようだった。


気のせいかとも思ってたけど……


きっと、もっと前から病気はあったんだろう。


痩せるなんて、そんなにすぐになることじゃない。



「本当に、治療法はないの?」

恐る恐る聞くけれども


「まだ見つかってないのよ…………」


「見つからない限り、衰弱して行くだけだ」


ゆいりーの病気は、
栄養がだんだん吸収できなくなる、まだ治療法が確立されていない病気らしい。


なんとか栄養接種機能を低下させずにいれば、そこまで余命は短くならない




けれども、

すでに、この4ヶ月で、進行が進んできているらしい。


今日のあの点滴も、
きっと、足りない栄養素を点滴で補ったってことだろう。



「方法はなくもないのよ、治験とか。」

「でも、それは…………」



治験とは、まだ、効果がわからない薬を、試しに投与してみる……つまり、人間がモルモットとして薬の実験体になるってことだ。




「本当に効果があれば治るかも知れないし、逆に危険な薬だったら副作用がでたり、後遺症が残る可能性もある。どう作用するかわからない」



だから、躊躇する。



「治験は本人の同意が必要なんだ」


「でも…………まだ、本人には病気の事を伝えてない」


「嘘を言ってサインさせるか、ほんとのことを言ってサインさせるか」




「余命はダメ!!病名もまだ言わない!反対!!!」



けれども、


これ以上、
病気を進行させないためには。



「対策は必要だ」




もし、唯利が薬を飲み忘れたら。

「病名は伏せても、薬を飲む大切さを伝えておかないと……」



それ以外にも。



これから、
脚力が低下して転ぶ事が増えたら。

「アザだらけにならないように環境を整えないと」


もし、人知れず倒れたりしたら。

「誰かが駆けつけられるように手配しないと」





考えることは、たくさんあった。





もしかしたら、余命が高校卒業向かえるまでに尽きてしまうかもしれない。


なにも、高校で人生を終らせなくてもいいのかもしれない。

「唯利の人生だ、最後まで、唯利の好きに生きて欲しい」

最後かもしれない、家族旅行。

大切に思い出をつくりたい




また今度家族会議するってことで、

ベットに戻った。




ゆいりーは、小さくなって布団を被って寝てる。

「息苦しいでしょ」


布団をかけなおして、
ゆいりーの顔がでるように毛布をセットし直す。


ピクッ、ってゆいりーが、動いて。


…………動かなくなる日が来るのか……


なんて思ってしまったら。


そんなの、考えられない。






私のかわいい従兄弟おとうと



願うならば、


ずっと一緒にいたい。

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