百色学園高等部

shine

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病気宣告

みーたんサイド~病気だってさ~

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その時俺は、保健室で健康診断のアンケートをチェックしてた。


貧血や立ちくらみの項目にチェックがついている。

桜河唯利。


何回か保健室に、絆創膏やら湿布やら取りに来ている。
体育張り切りすぎるのもいい加減にしろよ~って俺が言うと、桜河はへらへら笑って勝手に救急箱からとっていく。

金髪の美少年。

「でも、線は細そうに見えて、しっかり筋肉はあるんだよなぁ~」

鍛えてんのか~そりゃモテるよな~

今年の抱かれたいランキング1位候補だとか。生徒会の人をおいて、その噂が立つくらいだ。


「貧血か~今度来たら鉄分の錠剤でも渡しておいてやるかな。」


他の生徒のアンケートも見ながらそいつの用紙を片付ける。


ガラッ

突然、ドアが空いた。

生徒が金髪の少年を脇に抱えて焦ったように説明する。

階段から落ちて体を打ったらしい。


ばかっ。頭を打った可能性があるなら、揺らすなっ

慎重にベッドにねかせ、顔を確認する。
その少年は、俺のことをみーたんとかふざけた名前で呼ぶさっきアンケートで見た名前の人物…桜河唯利だった



桜河をつれてきた少年に手伝わせ、担架を使って俺の車にのせ、病院まで走る。



貧血や、他の病気もある可能性があるから、医者には今日中に結果がでなくてもいいからと、精密検査を頼んだ。

結果が出るのは一週間かかるかと思ったが、以外と早く医者に呼び出された。


まず、保護者を呼ぶように言われた。
しかし、こいつの保護者は遠い所に住んでる。学校の保険医だから、俺ではダメかと聞いたら、迷った末、後日保護者にこちらに来るように言うという条件で、俺に先に知らせると言ってきた。
まあ、当然だろう。保護者は知らせられるべきだ。


なんとなく、貧血のことを伝えられると俺は思ってた。
しかし、それ以上のことを医者は言ってきた。
欠乏性なんたら症……聞いたことはあるが、詳しい名前はなんか長くて忘れた。



要するに、栄養素が体内で吸収しにくくなっている病気。
当たり前だが、栄養を吸収できなきゃエネルギーが作れない。
エネルギーがなきゃ体は動かせない。
段々と体力を失っていく。

栄養を吸収できないなら、体をつくることもできない。
怪我の修復のために新しい皮膚を作ろうとしても、体内に摂取した物がなければ作れるわけがない。


つまり、病気や怪我をした際は自力で回復することが難しいってことだ。



この病気は、原因がまだわかっていない。

そのため、治療法がわからない。

よくて、栄養剤を直接注入して現状を維持するだけ。


悪化すればなお悪い。

大病を患えば、なかなか回復できず、

そのまま治らなければ衰弱死が待ち受けるのみ。



そのため、

どれだけ病気をしないように気をつけるか、
どれだけ現状(栄養摂取機能)を維持できるかで、


寿命は左右する。


大病を何度も経験すれば、数ヶ月も持たないで死に至る。

それほど大きな病気をしないでしっかりと健康に気を使けて現状維持できれば、平均寿命程度までなんとか生きれる…………が、それは理論上の話。

ほとんどのこの病気の患者は、病気が発覚してから徐々に進行し、約5年ほどで死んでしまうという。



『最大であと五年の命………五年後に薬ができてればいいが……』




医者には、本人に伝えるのは、症状も初期であることをかんがみて、まだ先にすることを勧められた。
余命を伝えるにはまだ早すぎると。
俺も、保護者の許可がないと本人に伝えられないから、今日は話さないことに同意した。


桜河は、
医者に病気のことを告げられたとき呆然としてた。
治ると医者に告げられても、なんとなく上の空だった。

寮への帰り道、膝に大量の薬を入れた袋をのせ、窓の外をボーッと見ていた。


「なあ、この事は桜河の親にも伝えるぞ」


「……えぇ……うーん、でも、治療費とかも貰わなきゃだし、そうだね……」


一応聞いてはいるらしい。

それ以上声をかけてはいけないような気がして、寮につくまで俺らは無言だった。



駐車場で桜河をおろしたら、
「車で送ってくれてありがとう~」
って丁寧にお礼を言う


「おう。明日薬飲むの忘れるなよ」

あいつはチャラいように見えて、礼儀正しい。
礼儀がなってないチャラ男は害虫と一緒だからな。俺はあいつのそんなところを買ってる。


バイバイって手をふって別れたあいつの金髪の先は、少し寂しげに揺れていた。



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