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プロローグ

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「リリィ君のために花を摘んできたよ。健気に野に咲くこの一輪の花はまるでリリィのようだと思ったんだ」

「ふーん、ありがとうジェイミー様。じゃあ私眠たいからもう帰ってくれる?」

「リリィ! 僕は僕は君のために君に会うためにここまできたのにもうさようならかい?」

「じゃあねジェイミー様」

勢いよく扉を閉めた後、貰った花を床に投げ捨てて何度も何度も踏みつけた。
誰が野に咲く花よ、私はその辺にいるような女だって言いたいわけ? 本当ジェイミーってカスみたいな男よね。
私は使用人に念入りに鍵をかけるように伝えてイライラしながら自室へと帰ろうとした。

「ねぇリリィ……ジェイミー様がかわいそうじゃない。あんな風に言わなくても」

「お姉ちゃんまだジェイミー様が好きなの? 婚約破棄されたってのにウケる」

「それはリリィがジェイミー様のことが好きだって言って、それでジェイミー様もリリィの方が好きになってしまったから……」

かわいそうなお姉ちゃん。
みすぼらしい私の使い古したドレスを着ながら遠慮がちにそう言ったけど、私はお姉ちゃんの肩を押して自室へと帰っていった。何でお姉ちゃんが私に説教するの? 馬鹿みたい。

お姉ちゃんは今までも何でも私に譲ってきた。
欲しいおもちゃ、新作のドレス、友達、婚約者……お父さんもお母さんも馬鹿だから私が演技で泣けばコロッと騙される。でも私優しいからお姉ちゃんにもあげてきたんだ。古くなったドレス、流行遅れの化粧品、私が壊してしまった玩具。お姉ちゃんはいつも私に「ありがとう」って言って喜んで受け取っていた。

ジェイミー様も辺境伯様のご長男ということだし顔もそこそこ良かったから、妹という立場を利用してちょっと涙を見せればちょろいちょろい。私に対しての庇護欲を掻き立てられて最終的にはお姉ちゃんと婚約破棄して私と婚約を結ぼうと言うところまで来た。そう、今ちょうど結ぼうとしている最中なの。

でもなージェイミー様よりもいい男が現れるんじゃ無いかなって思ったり、最近ジェイミー様の愛情が重くてしんどかったり、あと単純にお姉ちゃんの婚約者だから良かったのであって婚約破棄までされちゃうともう興味が一つもわかないんだよな。

そうだ!
独身だけが集まれるパーティーが今度開かれるのよね! そこいっていいのがいなかったらジェイミー様にしよっと。リリィって賢い! ちょうどお姉ちゃんの婚約者探しって建前でもいけるし、お姉ちゃんちょうどいい私の引き立て役になるから都合が更にいいのよね~。

どんなドレス着ていこうかな?
胸元が空いたドレスにしようかな、背中がぱっくり割れたドレスにしようかな~。お姉ちゃんには目立ってもらったら困るし丁度いいやつ仕立てて貰おうかな? どうせ妹の私がプレゼントしたって聞けばお姉ちゃん喜ぶだろうし、利用しないては無いよね。
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