【R15】婚約破棄イベントを無事終えたのに「婚約破棄はなかったことにしてくれ」と言われました

あんころもちです

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後編

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抵抗することもできず衣服を脱がされたエリンは泣いていた。しかしアレックスはそんな彼女に謝ることも、また罪悪感を持つこともなく行為をしようとしていた。自分の所有物があっさりと引き下がることがそれほど気に食わないのだろうか、エリンにはアレックスの考えは一つも理解できなかった。

アレックスがズボンを脱ぎ捨てようとした際、部屋の外にいるはずの使用人たちが何か話しているのが聞こえてくる。エリンの口をアレックスは手で塞ぐと、わざと大声をあげて使用人たちを萎縮させるような語気の強い言葉を放つ。

「おい! 静かにしろ! 解雇されたくなければ大人しくしていろ!」

そうアレックスが言っても使用人たちのざわめきは収まらない。アレックスはハンカチを無理やりエレンの口の中に押し込め手足を布で縛ると、はだけた服のまま部屋の扉へと向かう。

「俺の言うことが聞こえな……ジュードどうしたんだお前」

「義姉さんとお話ししに来たんだけど、なんで兄さんが出てくるのさ。あ、もう婚約破棄するんだから義姉さんじゃないよね? エリンさんって呼んでも良いかな?」

「婚約破棄はしない。エリンは第二夫人として迎えることにした」

「ふぅん、じゃあまた義姉さんになるわけか。じゃあお祝いの言葉を伝えたいから義姉さんに会わせてよ」

「駄目だ帰れ」

「でもさっき義姉さんの部屋から叫び声聞こえたんだ。助けてーって聞こえたのに使用人たちもだーれも何もしようとしない。おかしいよね、義姉さん公爵令嬢なんだから何かあったら大問題のはずなのに誰も様子見しに行こうともしないなんて」

ジュードがアレックスと話している間にエリンはベッドから転び落ちて、もう一度叫び声をあげる。

「義姉さんに何しようとしているの兄さん」

「婚約者なんだから何しても良いだろ」

「兄さんのそう言うところが俺ずっと嫌いだった」

ジュードはそう言い放つとアレックスの肩を押して部屋の中へと入ってきた。縛られたエリンを見てジュードはサッとシーツを被せると口に入れられたハンカチを取り、縛れていた手足を解く。アレックスはこちらにくるとジュードの頬を一発殴った。エリンは倒れそうになるジュードを抱きとめ、彼をぎゅっと抱きしめた。

「ほぉお前らそう言う関係だったのか?」

「何いってるのですかアレックス様」

「そうかそうか、俺と婚約破棄できて良かったなエリン。そうかお前弟の女になったから未練なく俺を捨てられたんだな。裏切り者だったんだなお前、俺がせっかく第二夫人にしてやろうと考えたのにお前はなんなんだエリン、体だけが取り柄の女のくせに」

「兄さん意味不明な考えを言わないでよ。聖女様も見てるのに」

「な」

アレックスが振り返ると涙目で立っている聖女がそこにいた。彼女は目を真っ赤にして小さく震えており、呼吸すらまともにできないほどであった。アレックスが聖女に何か言い訳をしようと、とりあえず彼女を抱きしめようとしたがその手は払い除けられてしまう。

「アレックス様、私アレックス様のこと信じていましたのに。婚約破棄だって元々エリン様と合意の上だったとか酷いです! あんまりですわ! こんな無理やり手込めにしようとしていたなんて、汚らわしい」

「違う違うよ聖女様、俺は、そう! 無理やりこの女に抱けと命じられたんだ」

「そんな嘘が通じると思うほど私を舐めていたのですか? こんな衣服を破かれ泣き腫らしている女性が自分から娼婦のような真似をすると思う女性がこの世にいるわけありません。アレックス様、明日は婚約発表ではなく教会による姦淫罪の裁きを行いますから。ご覚悟を」

「優しくしてきたじゃないか! 見逃せよ!」

へらへらと笑うアレックスに聖女は電撃の魔法を喰らわす。そのままアレックスが倒れこむと女性で編成された聖騎士団が部屋へ入り、アレックスを担いでどこかへ行ってしまった。そして聖女は座り込みエリンに深々と謝罪した。

「エリン様、大変申し訳ございませんでした。貴女をたくさん傷つけてしまった……」

「あ、あの結果として傷にはならなかったので。それに聖女様もアレックスがあんな人間だと知らずにいたわけです。お互い、その騙されましたね」

「また明日婚約破棄されたのち彼は教会により裁きます。恐らく王位の剥奪と留学という名の国外追放と言うところでしょうかね……公爵令嬢と聖女をコケにしたのですもの」

それでは、と一言言うと聖女は部屋から去っていった。ジュードは下を向きながらエリンと目を合わさないようにボソボソと言う。

「その義姉さん、あまり強く抱きしめないで。その……色々当たっているし」

「あ! ごめんなさいジュード!」

慌ててエリンは彼から離れた。ジュードは羽織っていた上着を脱ぎエリンにそれを渡したので、エリンはシーツで一旦体をぐるぐる巻きにしてから上着を羽織り体が見えないようにしてジュードの背中をトントンと叩いて彼に振り向くように伝えた。

「ジュードありがとう。そういえばいつもジュードは私のこと助けてくれるね」

「そんなことないよ」

(思い返せばやり直す前の世界でも、嫉妬に狂った私の愚痴を聞いて励ましてくれたのはジュードだけだった。いつでも彼は私の味方だったな)

「義姉さん」

「もう義姉さんじゃないわよ。婚約破棄するし、ほら。こんな襲われた女と結婚したがる人なんていないから修道院行きかな? 私ね修道院で素敵な歌声を聞いたことがあるの。それに女の人同士で楽しく過ごせそうじゃない?」

明るい口調でそういったエリンだったが、ジュードの顔は暗く今にも泣きそうな表情をしていた。その表情を見てエリンも釣られて落ち込んでしまう。アレックスと婚約する前から弟のように可愛がってきたジュードが辛そうな顔をすると、エリンまで釣られて辛くなるのだ。

「義姉さん俺はずっと義姉さんが好きだよ。どこにも行く宛がないなら俺が義姉さんと一緒になりたい」

「え?」

ダラダラとエリンは汗をかいた。弟のようにしか思っていなかったジュードの突然の言葉に戸惑い目は泳ぐ。ジュードの熱っぽい視線から目を逸らしてみたが痛いほど突き刺さる視線は目線を外しても貫いていくる。

「その、こんなこともあったし、その……まだ保留させてくれませんか」

「そうだよねごめんね義姉さん、でも俺もう遠慮しないから。義姉さんが受けた傷全部癒すぐらい俺が支えるよ。ずっと好きだったから。じゃあ使用人に換えの服を持ってくるように伝えてくるから。今日は一人で寝ていてねエリン」

そう言いジュードは去っていく。
あんなことがあったにもかかわらず、心は揺れ動く。

「人生やり直せてよかった」
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