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2章

甘党ドラゴン 服を作る

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「来たぞー」
「いらっしゃい、私の魔道具店にようこそ」

 フィメルは酒場の片付けを済ませた後、女店主の店にやって来た。
 
「それで服を作るのはどうやるんじゃ?」
「まぁまぁ、慌てないで?お菓子でも食べながら説明しましょ?」
「うむ!」

 フィメルは女店主に連れられて店の奥、魔道具を製作する工房にやって来た。

「まずフィメルちゃんのその羽のしまい方はどんな感じかしら」
「人化に近い呪いでこの姿になってるみたいでの、しまう時は力を抜けば良いだけじゃ」
「なるほど……なら魔力を通した時に背中に穴が開くようにしたら良いわね」

 ドライアドとの一件の後、自身に魔力があることに気がついたフィメルは自身の状態も確認することができた。
 その過程で羽を消す方法も身につけたのだった。

「魔法で体を変化させる人とかは魔力に反応して変化する服なんかを頼む人がいるのよ。それじゃ、コレに魔力を流してね」

 女店主はフィメルに大量の糸を手渡した。

「これは?」
「さまざまな環境に適応して変化するマナルドの繭から取り出した糸よ。これに魔力を通してフィメルちゃんの魔力に反応するようにするの」
「なるほど、ちなみにどのくらい込めれば良いんじゃ?」
「適量になったら光るからそれを目安にすると良いわ」

(残る魔力で足りると良いんじゃが)

 無くなる不安を抱えつつフィメルは糸に魔力を通していく。

「おっ?光ってきたぞ!」
「あら、早いわね。魔力の質がいいと速いらしいからフィメルちゃんは将来魔法使いがむいてるかもね」

 そうして全ての糸に魔力を通したフィメルは女店主と共に服を作ることになった。

「作るとは言っても儂、この服以外にどんな服があるか知らんぞ?」
「あら?確かにフィメルちゃんがその服以外に着てるとか見たことないかも」
「女将のお下がりでな、儂自身の服を買ったことはないなぁ」

 服を作ろうにもどんな服を作ればいいか分からなくなったフィメル。
 基本、花より団子の精神なので服を買うより甘いものを買うことにお金を使ってしまう。

「うーん、困ったわぁ。私はこの服くらいしか作れないし……お客さんがこんな服が良いって言ってくることが大半だったから」
「なら服屋に頼むのはどうじゃ?」
「そうね、それが一番良いわ。最後の仕上げで私が魔法を織り込めば良いから」


 そうしてフィメル達は服屋に頼み込んで幾つか服を作ってもらうことにした。

「フィメルちゃんの服?良いよ良いよ、何着でも作ったげる!」
「すまんのぅ、お店もあるのに」

 服屋の店主は一つ返事で了承してくれた。ただし、

「着たら見せてね?」
「うむ!」

 なぜ念押しするのかよくわからないもののフィメルは頷いた。

 それからしばらく鶴の恩返しのように店の奥から機織りの音が聞こえてきた。物凄いスピードで。

「本人から了承キターーーー!色んな服着せたかったんだ!!ヒャッハァー!」

 テンションマックスで機織り機を高速稼働させて何着も作っていく。火が出そうなくらい素早く織っていく服屋の店主の目はヤル気に燃えていた。

 そうして完成してしまったのがこちら。

「普段着用の服10着、それから各種族の伝統服風のものも!かなり作ったから足りないことはないよね?」
「むしろこんなに作ってもらえて嬉しいのじゃ!お疲れ様」
「フィメルちゃんが労ってくれる……!頑張った甲斐があると言うもの!」
「じゃあ儂達は仕上げをしなければならないのでじゃあな」

 フィメルが服屋から出て行こうとするその時、

「まだ、着てないの、あ、る、よ、ね♡」
「後生じゃ!アレだけはやめてくれ!」
「ダーメ♡」
「待て、脱がすな、服を持ってくるんじゃなーい!」

 まるでヘビのようにするりとフィメルの服を脱がしていく服屋の店主はフィメルが着るのを躊躇った服をどんどん着せ替えていく。

「あぁっ!勇者ってなんで素晴らしいのかしらッ私たちには思いつかないセンスがあるわね」

 メイド服、ナース服、チャイナ服から何故かスク水まで。多種多様なコスプレの数々をもはや着せ替え人形とかしたフィメルはなすがままに時間が過ぎるのを待った。

 律儀に作ったら全部着て見せると言う約束を守ってるあたり詐欺に弱そうである。

「ふぅーー眼福っ」
「つ、疲れた……最後のはなんじゃ、彼シャツ?じゃったかこの街に来た時の服装みたいで恥ずかしかったぞ」

 一通り着せられたフィメル達は今度こそ魔道具店に戻った。
 その後、魔法を織り込んで完成となった。

「おぉ!コレは楽じゃ」

 フィメルは何度も羽を出したり消したりして服の心地を確かめる。

「しっかり羽をしまったら穴が無くなるのは便利じゃな」


 その後、作った服を着て出歩いたフィメルは町民の話題になったがそれを本人は知らない。
 おそらく、酒場が再開したらさらに人は増えていることだろう。

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