ドラゴンスイーツ!~拾った(奪った)スイーツを食べたドラゴンは目を覚ますと幼女の姿になっていた~

怠惰るウェイブ

文字の大きさ
上 下
12 / 12
2章

甘党ドラゴン 服を作る

しおりを挟む
「来たぞー」
「いらっしゃい、私の魔道具店にようこそ」

 フィメルは酒場の片付けを済ませた後、女店主の店にやって来た。
 
「それで服を作るのはどうやるんじゃ?」
「まぁまぁ、慌てないで?お菓子でも食べながら説明しましょ?」
「うむ!」

 フィメルは女店主に連れられて店の奥、魔道具を製作する工房にやって来た。

「まずフィメルちゃんのその羽のしまい方はどんな感じかしら」
「人化に近い呪いでこの姿になってるみたいでの、しまう時は力を抜けば良いだけじゃ」
「なるほど……なら魔力を通した時に背中に穴が開くようにしたら良いわね」

 ドライアドとの一件の後、自身に魔力があることに気がついたフィメルは自身の状態も確認することができた。
 その過程で羽を消す方法も身につけたのだった。

「魔法で体を変化させる人とかは魔力に反応して変化する服なんかを頼む人がいるのよ。それじゃ、コレに魔力を流してね」

 女店主はフィメルに大量の糸を手渡した。

「これは?」
「さまざまな環境に適応して変化するマナルドの繭から取り出した糸よ。これに魔力を通してフィメルちゃんの魔力に反応するようにするの」
「なるほど、ちなみにどのくらい込めれば良いんじゃ?」
「適量になったら光るからそれを目安にすると良いわ」

(残る魔力で足りると良いんじゃが)

 無くなる不安を抱えつつフィメルは糸に魔力を通していく。

「おっ?光ってきたぞ!」
「あら、早いわね。魔力の質がいいと速いらしいからフィメルちゃんは将来魔法使いがむいてるかもね」

 そうして全ての糸に魔力を通したフィメルは女店主と共に服を作ることになった。

「作るとは言っても儂、この服以外にどんな服があるか知らんぞ?」
「あら?確かにフィメルちゃんがその服以外に着てるとか見たことないかも」
「女将のお下がりでな、儂自身の服を買ったことはないなぁ」

 服を作ろうにもどんな服を作ればいいか分からなくなったフィメル。
 基本、花より団子の精神なので服を買うより甘いものを買うことにお金を使ってしまう。

「うーん、困ったわぁ。私はこの服くらいしか作れないし……お客さんがこんな服が良いって言ってくることが大半だったから」
「なら服屋に頼むのはどうじゃ?」
「そうね、それが一番良いわ。最後の仕上げで私が魔法を織り込めば良いから」


 そうしてフィメル達は服屋に頼み込んで幾つか服を作ってもらうことにした。

「フィメルちゃんの服?良いよ良いよ、何着でも作ったげる!」
「すまんのぅ、お店もあるのに」

 服屋の店主は一つ返事で了承してくれた。ただし、

「着たら見せてね?」
「うむ!」

 なぜ念押しするのかよくわからないもののフィメルは頷いた。

 それからしばらく鶴の恩返しのように店の奥から機織りの音が聞こえてきた。物凄いスピードで。

「本人から了承キターーーー!色んな服着せたかったんだ!!ヒャッハァー!」

 テンションマックスで機織り機を高速稼働させて何着も作っていく。火が出そうなくらい素早く織っていく服屋の店主の目はヤル気に燃えていた。

 そうして完成してしまったのがこちら。

「普段着用の服10着、それから各種族の伝統服風のものも!かなり作ったから足りないことはないよね?」
「むしろこんなに作ってもらえて嬉しいのじゃ!お疲れ様」
「フィメルちゃんが労ってくれる……!頑張った甲斐があると言うもの!」
「じゃあ儂達は仕上げをしなければならないのでじゃあな」

 フィメルが服屋から出て行こうとするその時、

「まだ、着てないの、あ、る、よ、ね♡」
「後生じゃ!アレだけはやめてくれ!」
「ダーメ♡」
「待て、脱がすな、服を持ってくるんじゃなーい!」

 まるでヘビのようにするりとフィメルの服を脱がしていく服屋の店主はフィメルが着るのを躊躇った服をどんどん着せ替えていく。

「あぁっ!勇者ってなんで素晴らしいのかしらッ私たちには思いつかないセンスがあるわね」

 メイド服、ナース服、チャイナ服から何故かスク水まで。多種多様なコスプレの数々をもはや着せ替え人形とかしたフィメルはなすがままに時間が過ぎるのを待った。

 律儀に作ったら全部着て見せると言う約束を守ってるあたり詐欺に弱そうである。

「ふぅーー眼福っ」
「つ、疲れた……最後のはなんじゃ、彼シャツ?じゃったかこの街に来た時の服装みたいで恥ずかしかったぞ」

 一通り着せられたフィメル達は今度こそ魔道具店に戻った。
 その後、魔法を織り込んで完成となった。

「おぉ!コレは楽じゃ」

 フィメルは何度も羽を出したり消したりして服の心地を確かめる。

「しっかり羽をしまったら穴が無くなるのは便利じゃな」


 その後、作った服を着て出歩いたフィメルは町民の話題になったがそれを本人は知らない。
 おそらく、酒場が再開したらさらに人は増えていることだろう。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたら職業がストレンジャー(異邦”神”)だった件【改訂版】

ぽて
ファンタジー
 異世界にクラスごと召喚された龍司だったが、職業はただの『旅人』?  案の定、異世界の王族貴族たちに疎まれて冷遇されていたのだが、本当の職業は神様!? でも一般人より弱いぞ、どゆこと?  そんな折に暗殺されかけた挙句、どさくさに紛れてダンジョンマスターのシータにプロポーズされる。彼女とともに国を出奔した龍司は、元の世界に戻る方法を探すための旅をはじめた。……草刈りに精を出しながら。 「小説家になろう」と「ノベルバ」にも改定前版を掲載中です。

聖女は聞いてしまった

夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」 父である国王に、そう言われて育った聖女。 彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。 聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。 そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。 旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。 しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。 ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー! ※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

自由気ままな生活に憧れまったりライフを満喫します

りまり
ファンタジー
がんじがらめの貴族の生活はおさらばして心機一転まったりライフを満喫します。 もちろん生活のためには働きますよ。

【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…

三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった! 次の話(グレイ視点)にて完結になります。 お読みいただきありがとうございました。

辺境伯令嬢に転生しました。

織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。 アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。 書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。

処理中です...