夜明けの輝き

田丸哲二

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夜明けの輝き

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 母と僕は父が諦めて川から上がって来た所を捕まえて、二人で夜明け前の散歩を辞めるように説得するつもりだったが、見ているの辛くなり、危険だと判断して迎えに行く事にした、

「もし聞き入れなかったら、専門家に相談して施設に入れるしかないわね」

「わかった。もうやめさせよう」

 しかし僕と母がハシゴを降りて川原を歩き、水の流れに立つ父に近付くと、思いもよらない奇跡のような現象を目の当たりにする。

 夜が明けて朝陽が川面をオレンジ色に照らし、その光りが父の笑顔を輝かせて水の流れに乗り、洗面器を揺らさないように抱えて母の名を繰り返し呼ぶ。

「幸江。幸江……」

 僕はまさか砂金を見つけたのかと思ったが、それは想像を超えた発見であり、
父は過去の時間に失った宝物を探していた。

「君を幸せにする。これを受け取ってくれ」

 父は母の前に近寄るとそれを手に取り、前に差し出して礼儀正しく跪く。

「僕と結婚してくれないか?」

 母は父が指に摘んで捧げて光り輝く物を見て全てを理解した。父は母が数十年前に川に捨てて失った結婚指輪を探し出してプロポーズしたのである。
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