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第二章・戦士チームの編成

女戦士エリアン

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「うわっ~と」

 盛り上がった胸は低反発で気持ち良かったが、引き締まった腹筋と腰に弾き飛ばされそうになり、逞しい腕に胸元を鷲掴みにされて宙に浮いている。

「ジェンダ王子か?女王エッダがこっちへ来ただろ?妖精の客が到着したので呼びに来た」

 自分より大柄な女戦士エリアンがそう言って王子を無事に立たせた。耳が三角で戦いの時は野獣仕様となり鋭い爪と牙が生えるが、目も唇もくっきりとしてセクシーだ。

「じゃー、一緒に見に行こうぜ。僕らの仲間になるメンバーだろ?」

「しかし俺は王子を呼びに来たわけではない」

「母上もすぐにこっちへ来る筈だ。しかし相変わらず、すげーファッションしてるな?」

「ファッションじゃねー。戦闘服だ」

 ショートボブで胸元と腹筋の見える黒革のジャケットにスパッツ。背中に大型の野獣の剣を装着し、胸カップの乳首の部分に突起の金具があり、腰のベルトは鎖、ファウルカップの股間には牙のチャックが装着されている。

「君が仲間で良かった。活躍を期待してるぜ」

「いや、別に王子の為に戦うわけではない。王女に戦士として命を捧げているだけだ」

 ジェンダ王子は女戦士エリアンがレズビアンで腐食の呪いから免れた事を知り、キューピッドの弓で男子を好きにならないか試してみたかった。

「王子こそ、もう少し普段から戦士らしい服装をした方がいいと思う」

「まっ、僕は悪戯好きなんでね。軽い感じでいいのさ」

 ジェンダ王子は弓と剣を持っていたが、フリフリの白いシャツにダメージジーンズの生地を腰に巻いていて、男子としてどうなの?と不満に思っていた。

『この軟弱な王子に国が守れるのだろうか?』

 それはエリアンだけではなく、この国民の嘆きでもある。

 ジェンダ王子とエリアンが大広場へ行くと、城の上空を旋回していたカワゲラが二匹降り立ち、妖精の族長チャチルともう一匹に乗っていたチーネとソングが降り立った。

 石畳の砂埃が羽の風圧で舞い上がり、チーネとソングが笑顔で手で振り払って現れた。

「少女と少年のようだが?」

「君にとってはみんなそんな感じだろうが、どちらも強い。特に少年の力には興味をそそられるね」

 王子が細い唇を指で摘み、青い瞳で見透かすようにソングの体を観察している。エリアンはその横で広い肩をすぼめて首を傾げた。

 アリダリが真っ先に出迎え、その背後にケインと侍女四人が立ち、周辺には民衆も集まって巨大なカワゲラに驚いている。

 ジェンダ王子と戦士エリアンは最前列を割って出て、侍女とケインの隣に加わった。

「やー、よく来てくれたな」

 アリダリがチャチルに近寄りハグすると、チャチルがお尻を触られる前に押し返して後ろに立つチーネとソングを紹介する。

「孫娘のチーネと、ゼツリの息子ソングだ」

「爺さん。久しぶりだな」

「おお、デカくなったじゃねーか」

 ソングがアルダリに軽く挨拶して、隣で礼儀正しく跪いているチーネに注意されたが、全然気にしてない。

「ソング。一応、敬意を払いなさいよ」

「いや、ただのスケベジジイだぞ。この世界に来る時、そう言われてた」

「子供の聞き間違いだろう。チーネは可愛いお嬢さんじゃな。しかも最強の戦士だと聞いておる」

「アルダリ、最強の名はまだ譲ってはおらぬぞ」

「そうか。わしだってまだバリバリの現役だぜ」

「ああ、それではお主に任せた。王の葬儀は空から見送る手筈で良いな」

 チャチルはそう言ってカワゲラに乗り込み、チーネとソングに手を振って飛び立った。もう一匹のカワゲラもその後ろから上昇し、チーネとソングは少し寂しそうに見送っている。

 その時、長いスカートの裾を捲りながら凄い勢いで走って来た王女エッダが立ち止まり、肩で息をしながら両手を上げて叫んだ。

「ああ~、チャチル。会いたかったわ。今度はゆっくり遊びに来てちょうだい」

 その声にチャチルは上空から王女を見つけ、カワゲラを湖から城へ滑空させて、王女に手を振り返してから白い雲の中へ消え去って行く。
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