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第4章・ズンビの恐怖
想像を超える本能
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真紀子は人間の形状をしているが、肉感的な獣に近く、肉塊は完全に付着して肌の皮もむけ落ちて新しい皮膚が張り、骨が露出した指に鋭い爪が伸び、八重歯が犬歯に生え変わって微笑むと牙が覗く。
湧き上がる闘争本能と脳エキスを吸収する快楽で人間を狩るよりも同族を倒す事に興味を示した。
『強い者と戦いたい』
自分は美しさを備えた最強の戦士であり、この近辺に同族の者がいる事を感じて屋根に上り、仁王立ちになって威嚇するが、さっき投げ捨てた頭部を見て『ノゾミ』を想い出す。
「ペンダントまでしてるよ」
直太が望遠鏡を覗き、真紀子が首にロケットペンダントをして、隣の家の屋根に飛び移るのを見た。
「ずるいぞ。俺にも見せろ」
隼人が直太を押し退けて望遠鏡を覗くが、真紀子は既に中島家の二階の窓から侵入して消え去った。
「実験では明確なデータは得られなかったが、ズンビが脳アメーバを吸収して知識を得る事は分かっている。そしてもし知性と母性を兼ね備えたズンビが味方になってくれれば、我々が生き延びるチャンスがあるかも知れんぞ」
善三の言葉が隼人の哀しみと虚しさを掻き乱したが、今は生き残る希望と冷静な判断が必要である。
ハツカネズミの実験では初期症状の脳アメーバを吸収したズンビは他者の記憶を共有すると思われた。
『記憶の消化』
善三は人間もズンビに変貌する時に脳が溶け記憶を失うが、感染した人間の新鮮な脳アメーバを吸う事によって人間らしさを取り戻すと考えた。
「推測に過ぎないが、可能性はある」
「よくわかんねーけど、母は俺を覚えてるかもってこと?」
隼人が目に涙を溢れさせ、曇った潜望鏡から離れて泣きながら善三に詰め寄ると、善三は正面から隼人の肩を叩いて励ました。
「試してみるしかないが、その価値はあるとわしは思う」
「そうだよね。みんなでがんばろ」
直太も優しく微笑みかけ、隼人は軽い感じで頷き合う善三と直太を楽観的な家族だと思ったが、それが救いでもあると自分に言い聞かせた。
『モンスターでも母の愛を信じよう』
真紀子は吸い取った脳アメーバーの記憶から、中島家の二階の部屋で見た家族写真が気になり、再度窓から侵入して床に投げ捨て家族写真を拾い、少女だけを指の爪で囲って切り取って首のロケットペンダントの蓋を開けて入れた。
『ノ…ゾミ……』
壁側のベッドに寝ている少女を思い浮かべ、暫し温かいイメージに癒されたが、通路側から血の匂いがプンプンして顔を顰めた。
『フン、ぶち壊しだ』
階下に同族の侵入者が居る事に気付き、真紀子は忍び足で部屋を出て通路を歩き、階段はスリーステップで爪先立ちでジャンプして一気に一階に着地した。
『ハイエナだな』
身を屈めてリビングを見渡し、肉と内臓が散らばったゴミ屋敷に顔を顰め、一階のガラス戸を破壊して侵入したズンビを睨む。
真紀子が狩った獲物をぐちゃぐちゃにして漁り、食い荒らした血が床や壁に飛び散って赤く濡らし、貧相な痩せたズンビが二体、引き千切った腕と足を咥えて振り向き、「ウガァー」と吠えて脅したが、真紀子はうんざりした表情で睨み返す。
きっと肉の取り合いをして暴れ、肉の補修をする事も知らないのだと嘆いた。しかも二体とも肉付きも悪く、皮膚が所々剥がれて裂傷もある。
『私の敵じゃないわね』
真紀子は喉が潰れ、言葉は薄っすらと覚えているのだが、低音ボイスで片言しか話す事はできなかった。
「コロス……ゾ」
湧き上がる闘争本能と脳エキスを吸収する快楽で人間を狩るよりも同族を倒す事に興味を示した。
『強い者と戦いたい』
自分は美しさを備えた最強の戦士であり、この近辺に同族の者がいる事を感じて屋根に上り、仁王立ちになって威嚇するが、さっき投げ捨てた頭部を見て『ノゾミ』を想い出す。
「ペンダントまでしてるよ」
直太が望遠鏡を覗き、真紀子が首にロケットペンダントをして、隣の家の屋根に飛び移るのを見た。
「ずるいぞ。俺にも見せろ」
隼人が直太を押し退けて望遠鏡を覗くが、真紀子は既に中島家の二階の窓から侵入して消え去った。
「実験では明確なデータは得られなかったが、ズンビが脳アメーバを吸収して知識を得る事は分かっている。そしてもし知性と母性を兼ね備えたズンビが味方になってくれれば、我々が生き延びるチャンスがあるかも知れんぞ」
善三の言葉が隼人の哀しみと虚しさを掻き乱したが、今は生き残る希望と冷静な判断が必要である。
ハツカネズミの実験では初期症状の脳アメーバを吸収したズンビは他者の記憶を共有すると思われた。
『記憶の消化』
善三は人間もズンビに変貌する時に脳が溶け記憶を失うが、感染した人間の新鮮な脳アメーバを吸う事によって人間らしさを取り戻すと考えた。
「推測に過ぎないが、可能性はある」
「よくわかんねーけど、母は俺を覚えてるかもってこと?」
隼人が目に涙を溢れさせ、曇った潜望鏡から離れて泣きながら善三に詰め寄ると、善三は正面から隼人の肩を叩いて励ました。
「試してみるしかないが、その価値はあるとわしは思う」
「そうだよね。みんなでがんばろ」
直太も優しく微笑みかけ、隼人は軽い感じで頷き合う善三と直太を楽観的な家族だと思ったが、それが救いでもあると自分に言い聞かせた。
『モンスターでも母の愛を信じよう』
真紀子は吸い取った脳アメーバーの記憶から、中島家の二階の部屋で見た家族写真が気になり、再度窓から侵入して床に投げ捨て家族写真を拾い、少女だけを指の爪で囲って切り取って首のロケットペンダントの蓋を開けて入れた。
『ノ…ゾミ……』
壁側のベッドに寝ている少女を思い浮かべ、暫し温かいイメージに癒されたが、通路側から血の匂いがプンプンして顔を顰めた。
『フン、ぶち壊しだ』
階下に同族の侵入者が居る事に気付き、真紀子は忍び足で部屋を出て通路を歩き、階段はスリーステップで爪先立ちでジャンプして一気に一階に着地した。
『ハイエナだな』
身を屈めてリビングを見渡し、肉と内臓が散らばったゴミ屋敷に顔を顰め、一階のガラス戸を破壊して侵入したズンビを睨む。
真紀子が狩った獲物をぐちゃぐちゃにして漁り、食い荒らした血が床や壁に飛び散って赤く濡らし、貧相な痩せたズンビが二体、引き千切った腕と足を咥えて振り向き、「ウガァー」と吠えて脅したが、真紀子はうんざりした表情で睨み返す。
きっと肉の取り合いをして暴れ、肉の補修をする事も知らないのだと嘆いた。しかも二体とも肉付きも悪く、皮膚が所々剥がれて裂傷もある。
『私の敵じゃないわね』
真紀子は喉が潰れ、言葉は薄っすらと覚えているのだが、低音ボイスで片言しか話す事はできなかった。
「コロス……ゾ」
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