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第四章・ヌガーの繁殖力
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「この海で死んだ微生物と空中に浮遊する微生物が同種だと判明しました。つまりこれが世間に露見したら、その責任の一端は私たちにあると言う事です」
泉川はそう言って苦笑いしたが、実は別に反省などしてない。既に警察機関にも手を回して、浮遊微生物の存在を揉み消している。
「ヌガーって言った方が分かり易いんじゃないですか?茂人のネーミングセンスには息子ながら感心するわ」
友恵がそう言って微笑むと、俊彦も笑って頷いた。非常事態に直面しているというのにドーパミンが分泌されて論点はずれ、感染が広がる事よりも保身に囚われている。
「つまり、私たち夫婦の国政への歩みは途絶え、泉川先生も失脚になりますね」
「環境大臣の責任は大きいですよ。夫は協力しただけですから」
そう藤崎夫妻に責められて、温厚な泉川の表情が一変した。頬が引き攣って、白目を剥いて白濁の眼球をグルグル回らせて二人を睨んだ。
「死ぬって、セクシーだよね」
泉川が喉をザラつかせてそう呟いた後、ゴボッと咳き込むと、肺からヌガーが逆流して口から白い綿毛が漏れ出て夫妻の方へ浮遊した。
その泉川の変貌振りに夫妻の体内のヌガーが反応している。突然、ハイな気分から怒りと憎悪が湧き上がり、脳が暴力の欲望に満たされた。
その間、泉川の眼球の中でヌガーが蠢いて白濁の瞳がグルグル回っているように見えている。
ヌガーには狂気の伝達能力があるのか?
泉川にコントロールされるように二人が争う。俊彦はビール瓶を握って妻の頭上に振り上げ、友恵はフォークとナイフを掴んで夫の喉元に突き付けた。
泉川はそう言って苦笑いしたが、実は別に反省などしてない。既に警察機関にも手を回して、浮遊微生物の存在を揉み消している。
「ヌガーって言った方が分かり易いんじゃないですか?茂人のネーミングセンスには息子ながら感心するわ」
友恵がそう言って微笑むと、俊彦も笑って頷いた。非常事態に直面しているというのにドーパミンが分泌されて論点はずれ、感染が広がる事よりも保身に囚われている。
「つまり、私たち夫婦の国政への歩みは途絶え、泉川先生も失脚になりますね」
「環境大臣の責任は大きいですよ。夫は協力しただけですから」
そう藤崎夫妻に責められて、温厚な泉川の表情が一変した。頬が引き攣って、白目を剥いて白濁の眼球をグルグル回らせて二人を睨んだ。
「死ぬって、セクシーだよね」
泉川が喉をザラつかせてそう呟いた後、ゴボッと咳き込むと、肺からヌガーが逆流して口から白い綿毛が漏れ出て夫妻の方へ浮遊した。
その泉川の変貌振りに夫妻の体内のヌガーが反応している。突然、ハイな気分から怒りと憎悪が湧き上がり、脳が暴力の欲望に満たされた。
その間、泉川の眼球の中でヌガーが蠢いて白濁の瞳がグルグル回っているように見えている。
ヌガーには狂気の伝達能力があるのか?
泉川にコントロールされるように二人が争う。俊彦はビール瓶を握って妻の頭上に振り上げ、友恵はフォークとナイフを掴んで夫の喉元に突き付けた。
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