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第四章・ヌガーの繁殖力
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「これ、今日採取したエアー」
茂人は空気をガラス容器に密閉し、それを冷却して水分を抽出した。その液体をスポイトでスライドガラスに滴らし、顕微鏡にセットして美月に見せてやった。
「微生物は空気中では長くは生きてられない。大抵が地表とか海に落ちて死ぬけど、環境によっては異常に繁殖するんだよ」
顕微鏡を覗くと、塵に混じって細菌のような微生物が蠢いている。美月はため息をついて納得したが、ヌガーが浮遊微生物だとは限らない。
お手伝いさんがレモネードを二つ持って来てくれて、美月が椅子に座って美味しそうに飲んでいると、茂人が冷蔵庫を開けて何か探し始めた。
「あれ?変だなー」
「どうしたの?」
どうやら魚とカモメから発見したヌガーの入った容器が見当たらないようだ。久しぶりに顕微鏡で見たくなったらしい。
「ずっとここに保管してあったんだよ」
「シゲト。それ誰かに話した?」
「父には新種の微生物について調べて欲しいと頼んだ。もし僕の仮説が正しければ、犯人の体にヌガーが繁殖しているはずだから。それも警察に聞いてみてと頼んであるんだ」
「あっ、親の権力の行使だ。それでお父さんは?」
「父も母も仕事。最近ずっと帰り遅くて、公舎やホテルに泊まってるみたい」
茂人の母親は県会議員で、近々県知事の夫と一緒に国会議員に出馬するのではという噂があった。美月は政治にはまったく興味は無いが、おばあちゃんと母が話していたのを聞いた事がある。
そして驚いた事に、冷蔵庫からヌガーの入った容器を盗んだ犯人がわかった。防犯カメラに意外な人物が映っていたのだ。
「これ、お父さんだよね?」
美月はあまり会った事はないが、ポスターで何度も見せられている顔だった。室内は暗くてはっきりと確認できなかったが、冷蔵庫を開けた時の明かりで茂人の父親の脂ぎった顔が浮かび上がった。
「な、何故だ?」
茂人はモニターに再生した映像を見て椅子から転げ落ちて腰を抜かしている。盗難を恐れて設置した防犯カメラにまさか父が映っているなんて?
「せ、正義が口癖の父が……」
美月はゼイゼイしている茂人を落ち着かせようと、氷の溶けて水っぽくなったレモネードを飲ませて、深呼吸させてから椅子に座らせてやった。
「シゲト。もしかしたら、君の考えが当たっていて、私たちは見ちゃいけない物を発見してしまったんじゃないかな?」
美月はこの時、スパイ映画のような闇の組織と政治家が暗躍するシーン想像していたのだが、事態は複雑でもっと恐ろしいストーリーが展開していたのである。
茂人は空気をガラス容器に密閉し、それを冷却して水分を抽出した。その液体をスポイトでスライドガラスに滴らし、顕微鏡にセットして美月に見せてやった。
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顕微鏡を覗くと、塵に混じって細菌のような微生物が蠢いている。美月はため息をついて納得したが、ヌガーが浮遊微生物だとは限らない。
お手伝いさんがレモネードを二つ持って来てくれて、美月が椅子に座って美味しそうに飲んでいると、茂人が冷蔵庫を開けて何か探し始めた。
「あれ?変だなー」
「どうしたの?」
どうやら魚とカモメから発見したヌガーの入った容器が見当たらないようだ。久しぶりに顕微鏡で見たくなったらしい。
「ずっとここに保管してあったんだよ」
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「あっ、親の権力の行使だ。それでお父さんは?」
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