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第四章・ヌガーの繁殖力
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茂人の家は坂田海岸近くの高台にあり、美月が自転車を漕ぐと海に映る夕陽に泳いでいるみたいな感じがして爽快な気分で走れた。
そして門の前に自転車を止めて藤崎家の豪邸を見上げる。もし空が澄んでいれば富士山がその方向に見えるのだが、最近は空半分が霧のような雲と湿気でモヤモヤと霞んでいた。
二階の部屋の窓から美月が庭を通って玄関へ入るのが見えたが、茂人はデスクに座ってパソコンで事故のニュースを調べて気付いてない。
「茂人さん。美月ちゃんが来ましたよー」
お手伝いさんが一階から呼ぶ声が聞こえて、茂人は返事をして席を立った。そのパソコンの画面に最新のニュースの見出しが映っている。
「人魚のような少女が高坂三兄弟を助け出した」
美月の名前は出てなかったが、茂人はその記事を見て自分の事のように誇らしく思った。しかも三兄弟は手術に成功して三週間程の入院で退院できるだろうと書いてあった。
「こんばんは」
玄関に立って待っていた美月は茂人が階段から降りて来たので軽く挨拶した。
「ミヅキ、ニュース見たぞー。助け出したの、あの三兄弟だったんだな?」
「なんだよ。いきなりそれ?」
「あっ、ごめん。でも快挙だし、人命救助したんだから喜んでいいんじゃないか?」
「それより、地球のこと。大事な話があるんでしょ?」
美月は茂人がヌガーの事をずっと調べていて、最近気になる研究結果が出ていると聞かされていた。
それが今日の事故にも関連しているかも知れないと言われて、美月はヌガーが未知の生物として人間にどう関わるのか好奇心と不安でいっぱいだった。
微かな希望だが、美月はサンゴの産卵の美しい夜の海を体験した翌日にヌガーが発見されたので、環境を良くする未知の微生物って事だってあり得ると願った。
しかし、魚の群れとカモメの死骸からヌガーが発見されたのを考えると悪夢しか浮かばない。
「わかったよ。研究室で話すか?」
「うん。でも、レモネードはお願いします」
美月はそう言って顔の前で手を合わせて微笑みかけた。夕食後に来たのはそれが楽しみってのもある。生レモンを絞った大人の甘酸っぱさが大好きだった。
茂人はリビングでもっと救出劇の話をしたかったのだが、お手伝いさんに冷たいレモネードを二つ頼み、美月を手招いて通路の奥にある研究室へ連れて行く。
そして門の前に自転車を止めて藤崎家の豪邸を見上げる。もし空が澄んでいれば富士山がその方向に見えるのだが、最近は空半分が霧のような雲と湿気でモヤモヤと霞んでいた。
二階の部屋の窓から美月が庭を通って玄関へ入るのが見えたが、茂人はデスクに座ってパソコンで事故のニュースを調べて気付いてない。
「茂人さん。美月ちゃんが来ましたよー」
お手伝いさんが一階から呼ぶ声が聞こえて、茂人は返事をして席を立った。そのパソコンの画面に最新のニュースの見出しが映っている。
「人魚のような少女が高坂三兄弟を助け出した」
美月の名前は出てなかったが、茂人はその記事を見て自分の事のように誇らしく思った。しかも三兄弟は手術に成功して三週間程の入院で退院できるだろうと書いてあった。
「こんばんは」
玄関に立って待っていた美月は茂人が階段から降りて来たので軽く挨拶した。
「ミヅキ、ニュース見たぞー。助け出したの、あの三兄弟だったんだな?」
「なんだよ。いきなりそれ?」
「あっ、ごめん。でも快挙だし、人命救助したんだから喜んでいいんじゃないか?」
「それより、地球のこと。大事な話があるんでしょ?」
美月は茂人がヌガーの事をずっと調べていて、最近気になる研究結果が出ていると聞かされていた。
それが今日の事故にも関連しているかも知れないと言われて、美月はヌガーが未知の生物として人間にどう関わるのか好奇心と不安でいっぱいだった。
微かな希望だが、美月はサンゴの産卵の美しい夜の海を体験した翌日にヌガーが発見されたので、環境を良くする未知の微生物って事だってあり得ると願った。
しかし、魚の群れとカモメの死骸からヌガーが発見されたのを考えると悪夢しか浮かばない。
「わかったよ。研究室で話すか?」
「うん。でも、レモネードはお願いします」
美月はそう言って顔の前で手を合わせて微笑みかけた。夕食後に来たのはそれが楽しみってのもある。生レモンを絞った大人の甘酸っぱさが大好きだった。
茂人はリビングでもっと救出劇の話をしたかったのだが、お手伝いさんに冷たいレモネードを二つ頼み、美月を手招いて通路の奥にある研究室へ連れて行く。
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