エアロゾル・ヌガー

田丸哲二

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第三章・守護者の救出

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 美月はちょっとハーフっぽい顔立ちで水圧のせいかスタイルもそれなりで、去年同じクラスの友達の付き合いで原宿へ行った時にスカウトされた事があった。

 それで雑誌モデルの仕事を少しやってみたのだが、学校では苛められるし、大人のビジネスの世界も大嫌いですぐに辞めてしまった。

 シングルマザーの母のために少しは家計を助けたいと思ったけど、やはり自分は海で魚たちと戯れていた方がいい。

 学校では未だに浮いているが、漁師達には可愛がられているし、茂人も信頼できる仲の良い友達だった。


 美月が陽に焼けた黒髪を輪ゴムで適当にローポニーテールにして、テレビのニュースを見ながら今日助けた強靭な女性のことを思い出す。

 岩場の小さな入江に泳ぎ着き、気を失っていた女性を美月が人工呼吸して蘇生させると、水を吐き出してゼイゼイと息をしながら美月を見てこう言った。

「お前は……私たちの、命の恩人だ」

 すぐ前に立っていた兄と弟が真剣な表情でその女性を見守りながら、美月の方を見て頷いた。そして女性は足の怪我の痛みも気にせず美月に微笑みかけたのである。


 世界最強と謳《うた》われた高坂三兄弟が千葉県館山市の国道で暴走するトラックとの衝突事故に遭い、乗っていた車が海に転落して大怪我をした。

 両親は死亡したが、アスリートの三人の子供達は奇跡的に助かった。しかし重症であり今後の競技活動は絶望的であるとアナウンサーが伝えた。

 その後もニュースは続き、台所のテーブルでおばあちゃんと母親の三人で夕食を食べていると、海に沈む車から救出された事を説明していたが、美月のことは触れられずに胸を撫で下ろす。

 そして美月はこのアスリートの過去の映像シーンを再度見ていて、自分はなんて凄い人達の命の恩人になってしまったんだろうと困惑した。

 高坂三兄弟のアスリートとしての成績はもちろん快挙なんだけど、個性的というか異端児のヒーローで、とにかく超人的な家族だった。
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