8 / 18
第三章・守護者の救出
1
しおりを挟む
フロントガラスの左側が血飛沫で真っ赤に濡れ、眼球を白く濁らせた運転手が血の混じった汗を蒸気させてハンドルを握っている。
死の生贄を求めてアクセルを踏み込み、海岸沿いの国道を猛スピードで疾走すると、カーブから現れた黒いワゴン車が濁った眼に映り、トラックの運転手はその車をターゲットに選んだ。
久しぶりの家族旅行にワゴン車の五人の乗員はそれまで楽しそうに話していたが、対向車線から突っ込んで来たトラックに気付いて全員が悲鳴を上げた。
ドライバーの父親がハンドルを切って避けようとしたがもう手遅れで、ノーブレーキで正面衝突され、ガードレールから弾き飛ばされて崖の下へ転げ落ちて行く。
トラックも自爆するように崖の岩肌にぶつかり、岩場に落下して爆発して炎上した。
ワゴン車は奇跡的にタイヤ側から崖下の海面に着水したが、破壊された黒い車体にはすぐに海水が流れ込み沈み始めている。
その時、フリーダイビングの練習で付近の海底を潜っていた美月が水中まで轟かす音に驚き、海面に激しい泡をたてて落下した車体を下から眺めた。
魚たちも驚いて海藻やサンゴ礁に隠れて頭だけ出して海中を警戒している。美月は手にしていた貝を捨てて海面へ浮き上がり、15メートル程離れた車へ泳いで近付いて行く。
しかしその前に黒いワゴン車は家族全員を乗せたまま波に揺られながら水没し始めた。
それを美月が潜ってイルカのスピードで追いかけた。車が海底へ沈む前に割れたフロントガラスから車内に入って助け出そうとする。
運転手の父親と助手席にいた母親は最初の衝突事故で頭部を強打して即死状態だった。シートベルトに縛られて、潰れた顔と割れた頭から血を海中に放出して髪が海藻のように揺れている。
美月は後部席の男の子を真っ先に車から脱出させた。顔と腕に傷があり、打撲も酷そうだが奇跡的に骨折はしてないようだ。車内から脱出すると一人で泳いで浮き上がって行く。
もう一人の体格のいい男は腕を壊れたドアに挟まれ、もう一人の女性は足を座席に挟まれてもがいている。
二人とも意識があり、必死に水に争って車内から抜け出そうとしていた。美月は外側から壊れたドアをこじ開けて、男の方を先に脱出させてやった。
その時、足を挟まれた妹と死んでいる両親を見て、唖然とした表情で浮き上がって行く。腕の損傷は酷いと思うが、美月はその男の強さを感じた。
そして美月は海底へと沈んで行く車を見て一瞬迷ったが、すぐにもう一人の女性の救出へ向かう。
死の生贄を求めてアクセルを踏み込み、海岸沿いの国道を猛スピードで疾走すると、カーブから現れた黒いワゴン車が濁った眼に映り、トラックの運転手はその車をターゲットに選んだ。
久しぶりの家族旅行にワゴン車の五人の乗員はそれまで楽しそうに話していたが、対向車線から突っ込んで来たトラックに気付いて全員が悲鳴を上げた。
ドライバーの父親がハンドルを切って避けようとしたがもう手遅れで、ノーブレーキで正面衝突され、ガードレールから弾き飛ばされて崖の下へ転げ落ちて行く。
トラックも自爆するように崖の岩肌にぶつかり、岩場に落下して爆発して炎上した。
ワゴン車は奇跡的にタイヤ側から崖下の海面に着水したが、破壊された黒い車体にはすぐに海水が流れ込み沈み始めている。
その時、フリーダイビングの練習で付近の海底を潜っていた美月が水中まで轟かす音に驚き、海面に激しい泡をたてて落下した車体を下から眺めた。
魚たちも驚いて海藻やサンゴ礁に隠れて頭だけ出して海中を警戒している。美月は手にしていた貝を捨てて海面へ浮き上がり、15メートル程離れた車へ泳いで近付いて行く。
しかしその前に黒いワゴン車は家族全員を乗せたまま波に揺られながら水没し始めた。
それを美月が潜ってイルカのスピードで追いかけた。車が海底へ沈む前に割れたフロントガラスから車内に入って助け出そうとする。
運転手の父親と助手席にいた母親は最初の衝突事故で頭部を強打して即死状態だった。シートベルトに縛られて、潰れた顔と割れた頭から血を海中に放出して髪が海藻のように揺れている。
美月は後部席の男の子を真っ先に車から脱出させた。顔と腕に傷があり、打撲も酷そうだが奇跡的に骨折はしてないようだ。車内から脱出すると一人で泳いで浮き上がって行く。
もう一人の体格のいい男は腕を壊れたドアに挟まれ、もう一人の女性は足を座席に挟まれてもがいている。
二人とも意識があり、必死に水に争って車内から抜け出そうとしていた。美月は外側から壊れたドアをこじ開けて、男の方を先に脱出させてやった。
その時、足を挟まれた妹と死んでいる両親を見て、唖然とした表情で浮き上がって行く。腕の損傷は酷いと思うが、美月はその男の強さを感じた。
そして美月は海底へと沈んで行く車を見て一瞬迷ったが、すぐにもう一人の女性の救出へ向かう。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
視える棺2 ── もう一つの扉
中岡 始
ホラー
この短編集に登場するのは、"視えてしまった"者たちの記録である。
影がずれる。
自分ではない"もう一人"が存在する。
そして、見つけたはずのない"棺"が、自分の名前を刻んで待っている——。
前作 『視える棺』 では、「この世に留まるべきではない存在」を視てしまった者たちの恐怖が描かれた。
だが、"視える者"は、それだけでは終わらない。
"棺"に閉じ込められるべきだった者たちは、まだ完全に封じられてはいなかった。
彼らは、"もう一つの扉"を探している。
影を踏んだ者、"13階"に足を踏み入れた者、消えた友人の遺書を見つけた者——
すべての怪異は、"どこかへ繋がる"ために存在していた。
そして、最後の話 『視える棺──最後の欠片』 では、ついに"棺"の正体が明かされる。
"視える棺"とは何だったのか?
視えてしまった者の運命とは?
この物語を読んだあなたも、すでに"視えている"のかもしれない——。



やってはいけない危険な遊びに手を出した少年のお話
山本 淳一
ホラー
あるところに「やってはいけない危険な儀式・遊び」に興味を持った少年がいました。
彼は好奇心のままに多くの儀式や遊びを試し、何が起こるかを検証していました。
その後彼はどのような人生を送っていくのか......
初投稿の長編小説になります。
登場人物
田中浩一:主人公
田中美恵子:主人公の母
西藤昭人:浩一の高校時代の友人
長岡雄二(ながおか ゆうじ):経営学部3年、オカルト研究会の部長
秋山逢(あきやま あい):人文学部2年、オカルト研究会の副部長
佐藤影夫(さとうかげお)社会学部2年、オカルト研究会の部員
鈴木幽也(すずきゆうや):人文学部1年、オカルト研究会の部員
ルッキズムデスゲーム
はの
ホラー
『ただいまから、ルッキズムデスゲームを行います』
とある高校で唐突に始まったのは、容姿の良い人間から殺されるルッキズムデスゲーム。
知力も運も役に立たない、無慈悲なゲームが幕を開けた。
すべて実話
さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。
友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。
長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。

りんこにあったちょっと怖い話☆
更科りんこ
ホラー
【おいしいスイーツ☆ときどきホラー】
ゆるゆる日常系ホラー小説☆彡
田舎の女子高生りんこと、友だちのれいちゃんが経験する、怖いような怖くないような、ちょっと怖いお話です。
あま~い日常の中に潜むピリリと怖い物語。
おいしいお茶とお菓子をいただきながら、のんびりとお楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる