5 / 18
第一章・ヌガーの発生
4
しおりを挟む
茂人がマスクを外すと美月が濡れタオルで顔を綺麗に拭いてやり、さらにアルコール消毒して研究室での解剖は終わりにして、シンクの魚とカモメの死骸も廃棄容器に入れて始末する。
そして茂人がガラス容器に採取した白ネバの液体をスポイトでスライドガラスに滴らし、プレパラートを顕微鏡にセットして観察した。
「新種の原生生物のようだ。でも、残念ながら死んでるね」
海に潜む新種の微生物を発見し、美月にも見せてやる。それはバトミントンのシャトルのようにコルクと白い羽があり、ゼラチンのような細胞に包まれていた。
しかし空中へ浮遊した羽の動きはなく、他の微生物ケンミジンコとボルボックスと呼ばれる植物プランクトンと藻類の一種の動きが見られた。
「変な形で匂いも独特。クラゲの子どもかな?」
「とにかく、珍しい生物の発見だぞ」
この時、茂人と美月は海に生きる微生物だと思っていたが、浮遊できなかった微生物はゼラチンの細胞に包まれたまま海水に溺れて死滅し、魚とカモメの餌食になって体内に巣食った微生物も全滅していた。
もちろん二人が知る筈はないが、空中に浮遊した綿毛だけが大気の成分と太陽光を浴び、水蒸気の中で成育し生き残った。
そして二人はこの微生物を白ネバと甘い匂いから『ヌガー』と名付けたのである。
そして茂人がガラス容器に採取した白ネバの液体をスポイトでスライドガラスに滴らし、プレパラートを顕微鏡にセットして観察した。
「新種の原生生物のようだ。でも、残念ながら死んでるね」
海に潜む新種の微生物を発見し、美月にも見せてやる。それはバトミントンのシャトルのようにコルクと白い羽があり、ゼラチンのような細胞に包まれていた。
しかし空中へ浮遊した羽の動きはなく、他の微生物ケンミジンコとボルボックスと呼ばれる植物プランクトンと藻類の一種の動きが見られた。
「変な形で匂いも独特。クラゲの子どもかな?」
「とにかく、珍しい生物の発見だぞ」
この時、茂人と美月は海に生きる微生物だと思っていたが、浮遊できなかった微生物はゼラチンの細胞に包まれたまま海水に溺れて死滅し、魚とカモメの餌食になって体内に巣食った微生物も全滅していた。
もちろん二人が知る筈はないが、空中に浮遊した綿毛だけが大気の成分と太陽光を浴び、水蒸気の中で成育し生き残った。
そして二人はこの微生物を白ネバと甘い匂いから『ヌガー』と名付けたのである。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
視える棺2 ── もう一つの扉
中岡 始
ホラー
この短編集に登場するのは、"視えてしまった"者たちの記録である。
影がずれる。
自分ではない"もう一人"が存在する。
そして、見つけたはずのない"棺"が、自分の名前を刻んで待っている——。
前作 『視える棺』 では、「この世に留まるべきではない存在」を視てしまった者たちの恐怖が描かれた。
だが、"視える者"は、それだけでは終わらない。
"棺"に閉じ込められるべきだった者たちは、まだ完全に封じられてはいなかった。
彼らは、"もう一つの扉"を探している。
影を踏んだ者、"13階"に足を踏み入れた者、消えた友人の遺書を見つけた者——
すべての怪異は、"どこかへ繋がる"ために存在していた。
そして、最後の話 『視える棺──最後の欠片』 では、ついに"棺"の正体が明かされる。
"視える棺"とは何だったのか?
視えてしまった者の運命とは?
この物語を読んだあなたも、すでに"視えている"のかもしれない——。


ルッキズムデスゲーム
はの
ホラー
『ただいまから、ルッキズムデスゲームを行います』
とある高校で唐突に始まったのは、容姿の良い人間から殺されるルッキズムデスゲーム。
知力も運も役に立たない、無慈悲なゲームが幕を開けた。
すべて実話
さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。
友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。
長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。

りんこにあったちょっと怖い話☆
更科りんこ
ホラー
【おいしいスイーツ☆ときどきホラー】
ゆるゆる日常系ホラー小説☆彡
田舎の女子高生りんこと、友だちのれいちゃんが経験する、怖いような怖くないような、ちょっと怖いお話です。
あま~い日常の中に潜むピリリと怖い物語。
おいしいお茶とお菓子をいただきながら、のんびりとお楽しみください。
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる