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第3章 ウェンザーズ
洗脳された猛獣の脅威
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「グルルルル……」
「キシャアアア!」
「ウウウウ」
耳障りな鳴き声が千花の耳に入ってくる。
何事かと恐る恐る前を見ると、そこには驚愕の姿があった。
「……猛獣?」
人間の体の3倍以上はあるであろう猛獣が牙を剥き、ヨダレを垂らしながら目の前で唸っている。
その数は肉眼で見えるだけでも3体いる。
各々容姿は全く異なるが。
「あっちも策を練ってきたか」
前で猛獣と対峙するシモンが予想通りとばかりに吐き捨てる。
「ですが、統率が執れているとは言えないですね。べモスが楽をしたいから放出した者でしょう」
邦彦の言う通り、猛獣1体1体は強そうだが、バラバラに動くその姿は今檻から出され勝手に飛び出してきた獣そのものだ。
「どうしますか」
「こいつらに花火は効かねえだろうな。理性がなけりゃ怯む感情もない」
「ということは」
「戦闘です」
数はこちらが優位だが、猛獣は1体だけでも相当な強さを持つ。
千花達は飛びかかってくる猛獣を避けるとそのまま魔法を展開した。
「シモンさんは鳥の猛獣、日向君は狼を。僕があれを引きつけるので田上さんは後ろから動きを封じてください」
瞬時に状況を理解した邦彦が避けながら指示を出す。
その通りにシモンは室内を大きな音を立てて羽ばたいている黒いカラスのような鳥へ。
興人は今にも人間を噛み殺しそうな牙を歯茎が見えるほど剥き出し、床にシミを作るほどヨダレを垂らしている灰色の狼へ。
そして千花は先程頭を掠めてきた尻尾──というのかはわからないが──を持つ、奇妙な音をさせながら舌を出している蛇へ向かう。
「殺すか? 元は獣人だが」
「ええ。少しでも隙を見せたら殺されます。慈悲は与えてはなりません」
酷ではあるが、理性を失った巨体を気絶し放っておけば自分達の命の危険性は上がる。
必要な犠牲とは言えないが、今は仕方ないことだと受け入れるしかない。
「火炎玉!」
興人が大剣から炎の玉を振りかぶりながら狼に向かって放出する。
素早く避ける狼だが、連発される炎の玉に腹を撃たれる。
「メテオ」
シモンはやかましく音を立てながら空中を舞う鳥の動きを冷静に見ながら鋭い岩をその体に突き刺す。
「田上さん、後ろへまわってください」
邦彦が拳銃を取り出して蛇に向けたまま千花に指示する。
千花はその通り、蛇の死角になる背後へ立つ。
「あなたには申し訳ありませんが、悪魔に捕まったことを後悔してください」
邦彦が引き金を引いて銃弾を蛇の頭や心臓に発砲する。
見た目より体は脆いらしく、弾は蛇の体に埋め込まれる。
「ギャアアアア!」
蛇は当然襲ってきた激痛に地響きが起きるような絶叫を上げる。
「田上さん、動きを封じてください! 僕がとどめを刺します」
「は、はい」
蛇の悲痛な叫びに尻込みをする千花だが、邦彦の言葉に従って杖を蛇に向ける。
そのまま先程の獣人にかけたような泥を、量を倍増して蛇にかけようとする。
「泥の海……」
「ギギャアアアア!」
千花が自己流の呪文を唱えようとした瞬間、蛇が尻尾を大きく振り上げて地面に叩きつけた。
その衝撃に床が地割れのようにひび割れていく。
「キケエエエエ!」
「!?」
同じく致命傷の攻撃を受けた鳥が足掻くように翼を大きく羽ばたかせる。
しかしここは室内。
たちまち竜巻のような突風が周りを包み、床の木材も倒れていた獣人の男達も武器も人間も全て巻き込まれる。
「わ、わっ!」
「くっ……田上さん!」
邦彦は自分の身を庇いながら千花がいたであろう場所を探りながら声を張り上げる。
しかしそこに千花の姿はない。
(まずい……このままでは)
突風が段々収まってくる。
空中に舞っていた木材が音を立てて割れながら落ちてくる。
下敷きにならないように邦彦は避けながら安全地帯に留まる。
その後、シモンが致命傷を負わせた鳥が力尽きて羽ばたきを止める。
そうして風が止むと辺りは静けさで包まれた。
「……田上さん! 日向君、シモンさん!」
邦彦が叫ぶが、答えはない。
突風により、全員引き離されてしまった。
「まずい。田上さん、生きていてくださいっ!」
邦彦は息絶えた猛獣の亡骸をそのままに、危険がある千花を探すため走り出した。
城の中央では、べモスが未だに食物を貪りながら怒りを従者にぶつけていた。
「うるさいんだぞ! 何なんだぞ!」
「そ、外から侵入者が現れたかと」
「だったら早くそいつらを殺すんだぞ! のろま共!」
「げ、現在猛獣を放っております。ですがあちらも対策をしているらしく、これ以上猛獣を出すと我々にも被害が」
「知らないんだぞ! 役に立てないならお前らも猛獣になればいいんだぞ!」
そう言うとべモスは従者の首に爪を立て、大量の血を流させる。
その傷口に黒い種を埋める。
「が、あ、うあああああアアア!!」
苦しそうに呻き叫んだ従者が徐々にその体型を変え、ドブネズミの姿に変わる。
「ひっ!」
「お前もさっさと殺してくるんだぞ!」
怯え、腰が抜けた他の獣人も首に種を埋められ、猛獣に変わる。
「はあ、めんどくさいんだぞ。僕の力を与えてるんだから感謝するんだぞ」
べモスは魔王の血を入れた種を他の獣人にも与え、凶暴化させていく。
たちまち部屋中には白目を剥き、野生化した獣が溢れかえっていた。
「キシャアアア!」
「ウウウウ」
耳障りな鳴き声が千花の耳に入ってくる。
何事かと恐る恐る前を見ると、そこには驚愕の姿があった。
「……猛獣?」
人間の体の3倍以上はあるであろう猛獣が牙を剥き、ヨダレを垂らしながら目の前で唸っている。
その数は肉眼で見えるだけでも3体いる。
各々容姿は全く異なるが。
「あっちも策を練ってきたか」
前で猛獣と対峙するシモンが予想通りとばかりに吐き捨てる。
「ですが、統率が執れているとは言えないですね。べモスが楽をしたいから放出した者でしょう」
邦彦の言う通り、猛獣1体1体は強そうだが、バラバラに動くその姿は今檻から出され勝手に飛び出してきた獣そのものだ。
「どうしますか」
「こいつらに花火は効かねえだろうな。理性がなけりゃ怯む感情もない」
「ということは」
「戦闘です」
数はこちらが優位だが、猛獣は1体だけでも相当な強さを持つ。
千花達は飛びかかってくる猛獣を避けるとそのまま魔法を展開した。
「シモンさんは鳥の猛獣、日向君は狼を。僕があれを引きつけるので田上さんは後ろから動きを封じてください」
瞬時に状況を理解した邦彦が避けながら指示を出す。
その通りにシモンは室内を大きな音を立てて羽ばたいている黒いカラスのような鳥へ。
興人は今にも人間を噛み殺しそうな牙を歯茎が見えるほど剥き出し、床にシミを作るほどヨダレを垂らしている灰色の狼へ。
そして千花は先程頭を掠めてきた尻尾──というのかはわからないが──を持つ、奇妙な音をさせながら舌を出している蛇へ向かう。
「殺すか? 元は獣人だが」
「ええ。少しでも隙を見せたら殺されます。慈悲は与えてはなりません」
酷ではあるが、理性を失った巨体を気絶し放っておけば自分達の命の危険性は上がる。
必要な犠牲とは言えないが、今は仕方ないことだと受け入れるしかない。
「火炎玉!」
興人が大剣から炎の玉を振りかぶりながら狼に向かって放出する。
素早く避ける狼だが、連発される炎の玉に腹を撃たれる。
「メテオ」
シモンはやかましく音を立てながら空中を舞う鳥の動きを冷静に見ながら鋭い岩をその体に突き刺す。
「田上さん、後ろへまわってください」
邦彦が拳銃を取り出して蛇に向けたまま千花に指示する。
千花はその通り、蛇の死角になる背後へ立つ。
「あなたには申し訳ありませんが、悪魔に捕まったことを後悔してください」
邦彦が引き金を引いて銃弾を蛇の頭や心臓に発砲する。
見た目より体は脆いらしく、弾は蛇の体に埋め込まれる。
「ギャアアアア!」
蛇は当然襲ってきた激痛に地響きが起きるような絶叫を上げる。
「田上さん、動きを封じてください! 僕がとどめを刺します」
「は、はい」
蛇の悲痛な叫びに尻込みをする千花だが、邦彦の言葉に従って杖を蛇に向ける。
そのまま先程の獣人にかけたような泥を、量を倍増して蛇にかけようとする。
「泥の海……」
「ギギャアアアア!」
千花が自己流の呪文を唱えようとした瞬間、蛇が尻尾を大きく振り上げて地面に叩きつけた。
その衝撃に床が地割れのようにひび割れていく。
「キケエエエエ!」
「!?」
同じく致命傷の攻撃を受けた鳥が足掻くように翼を大きく羽ばたかせる。
しかしここは室内。
たちまち竜巻のような突風が周りを包み、床の木材も倒れていた獣人の男達も武器も人間も全て巻き込まれる。
「わ、わっ!」
「くっ……田上さん!」
邦彦は自分の身を庇いながら千花がいたであろう場所を探りながら声を張り上げる。
しかしそこに千花の姿はない。
(まずい……このままでは)
突風が段々収まってくる。
空中に舞っていた木材が音を立てて割れながら落ちてくる。
下敷きにならないように邦彦は避けながら安全地帯に留まる。
その後、シモンが致命傷を負わせた鳥が力尽きて羽ばたきを止める。
そうして風が止むと辺りは静けさで包まれた。
「……田上さん! 日向君、シモンさん!」
邦彦が叫ぶが、答えはない。
突風により、全員引き離されてしまった。
「まずい。田上さん、生きていてくださいっ!」
邦彦は息絶えた猛獣の亡骸をそのままに、危険がある千花を探すため走り出した。
城の中央では、べモスが未だに食物を貪りながら怒りを従者にぶつけていた。
「うるさいんだぞ! 何なんだぞ!」
「そ、外から侵入者が現れたかと」
「だったら早くそいつらを殺すんだぞ! のろま共!」
「げ、現在猛獣を放っております。ですがあちらも対策をしているらしく、これ以上猛獣を出すと我々にも被害が」
「知らないんだぞ! 役に立てないならお前らも猛獣になればいいんだぞ!」
そう言うとべモスは従者の首に爪を立て、大量の血を流させる。
その傷口に黒い種を埋める。
「が、あ、うあああああアアア!!」
苦しそうに呻き叫んだ従者が徐々にその体型を変え、ドブネズミの姿に変わる。
「ひっ!」
「お前もさっさと殺してくるんだぞ!」
怯え、腰が抜けた他の獣人も首に種を埋められ、猛獣に変わる。
「はあ、めんどくさいんだぞ。僕の力を与えてるんだから感謝するんだぞ」
べモスは魔王の血を入れた種を他の獣人にも与え、凶暴化させていく。
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